Z世代の消費者は、これまでの消費の中心だった年齢層が上の世代と比べて、地球環境や社会貢献に関する問題意識が強く、商品を購入する場合にも、そうした観点から判断する傾向にあります。このトレンドを受けて、近年のECビジネスは、環境に配慮した商品やサービスを提供することで消費者のニーズを満たす「サステナブルECへのシフト」が進んできました。
本記事では、ブランドイメージを高めて顧客層を拡大するための重要な指針となるサステナブルECについて、わかりやすく解説します。
Z世代の消費傾向について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
サステナブルECとは何か?
最初に「そもそもサステナブルECとは何か?」について、そして「なぜ今、それが注目されているのか?」を説明しておきましょう。
サステナブルECの定義
サステナブルECとは、文字通り、持続可能なECのあり方を表す言葉です。扱う商品やサービスが環境に優しく、社会貢献につながるものであることはもちろんですが、ビジネスを行う企業が、環境負荷を低減する取り組みを行っていたり、社会的責任を果たしながら事業を展開していたりすることも欠かせないポイントとなります。
具体的には、素材調達から製造工程、販売方法、不要になって処分するまでのすべての段階で環境へ配慮された商品の販売や、再生可能エネルギーの利用、梱包などに関わる廃棄物の削減など、ビジネスの様々な側面が持続可能な方法で運営されていることが、サステナブルECを実現するうえで重要です。
サステナブルECが注目される背景
このようにサステナブルECが注目されるようになった大きな理由としては、最近の消費者が、単にモノを買うだけではなく、それを販売する事業者のビジネス哲学や社会との関わり方にまで興味を持つようになったことが挙げられます。
特に、これからの消費の中心となっていくZ世代の人たちは、気候変動や社会問題を扱うことが増えた学校での教育や、同じくそうした情報が日常的に共有されて共感につながるSNSを常用している関係で、環境保護や社会貢献、持続可能性への関心がとても高いのです。
加えて、このままでは自分たちが社会に出る頃には問題がさらに深刻化している可能性が高く、自らの未来が危機にさらされていると感じている世代だともいえます。そのため、環境問題や社会課題の解決は決して他人事ではなく、その思いが消費行動にも反映されているわけです。
また、もう1つの側面として、企業自体の社会的責任の拡大もあります。国連でのSDGs(持続可能な開発目標)の採択によって、世界全体で持続可能な社会の実現が求められる中、企業もその一翼を担う必要性が高まっているからです。
EC分野の包装や物流は環境負荷が高い一方で、実際にはサステナブルな取り組みを導入しやすい領域でもあり、競争が激化するEC市場において、いち早く他社との差別化を図るための重要な要素ともなっています。
サステナブルEC成功のための販売戦略
サステナブルECを成功させるための販売戦略の大きなポイントとして、環境に配慮した商品展開、エコフレンドリーな包装と配送、透明性の高い情報発信、顧客エンゲージメントの強化の4つが挙げられます。
これらについて、もう少し深く掘り下げてみましょう。
環境に配慮した商品展開
商品をオーガニック素材や再生素材を活用したもので揃えることは、サステナブルECの第一歩といえます。そのためには、どのような製品がエコフレンドリーであるかをしっかりと理解し、オーガニック由来、生分解性、リサイクル素材使用などの条件を満たして、製造から廃棄までのライフサイクルで環境への悪影響を最小限に抑えた製品を積極的に展開することが大切です。
こうした商品カテゴリーとしては、持続可能なアパレル、グリーンテクノロジーに基づくガジェット、自然派コスメなどが挙げられます。また、自社で商品開発を行う場合には、製品の企画・設計段階から環境への影響を考慮し、リユースやリサイクルしやすい素材を使用したエコデザインを基本とすることも必要です。
エコフレンドリーな包装と配送
先にも触れましたが、EC分野で環境負荷を低減するうえでは、包装と配送の見直しが非常に効果的といえます。たとえば、プラスチックの使用を極力減らして、生分解性が高かったり、再利用が可能なパッケージング材料へ切り替えることは持続可能な梱包として有効ですし、進化の早いリサイクル素材の情報を常に把握しておくことも重要です。
倫理的な配送の実践という観点からは、カーボンニュートラル(*1)な配送オプションの提供や配送時のCO2排出量をオフセットする取り組みを考えてください。梱包を商品が保護できる必要最小限にとどめることや、CO2排出量を環境プロジェクトへの寄付で相殺するグリーン配送プログラムの導入なども有効です。
*1=カーボンニュートラルとは、CO2の排出量と同じだけ除去・吸収することで全体としてゼロとするというもので、主に企業間で排出削減量を売買可能にする仕組みをカーボンクレジットという。
透明性の高い情報発信
顧客との信頼関係を築くうえでは、トレーサビリティや透明性の高い情報発信を心がけることが必須となります。サステナブルな取り組みを行っていることを、しっかり消費者に理解してもらうために、自社ビジネスの環境への配慮を具体的かつ分かりやすく伝えるようにしましょう。
また、サプライチェーンの透明性を高めるために、扱い商品の原材料調達から製造、配送までの過程を公開してください。できれば、サステナブル・ラベル(*2)を取得して明記することで、顧客が安心して購入できる状況を整え、環境保護への貢献や成果をまとめたインパクトレポートを定期的に発行できれば完璧です。
*2=製品が環境に配慮しているか、持続可能な方法で製造されたかを消費者に伝える国際認証ラベル。農産品、海産物、繊維、フェアトレードなど様々な種類がある。
顧客エンゲージメントの強化
自社の生い立ちや製品に対するこだわりなど、共感を呼ぶストーリーテリングを利用して、顧客エンゲージメントの強化を図ることも効果があります。ブランドのストーリーを通じて持続可能性への取り組みや想いを伝え、SNSなども活用して、顧客とのコミュニケーションを深めるのです。余裕があれば、商品の購入金額に応じた植林など、顧客が環境保護活動に貢献できる参加型の企画や仕組みを導入するとよいでしょう。
サステナブルEC戦略の成功事例
ここでは、上記のような施策を行うことで、サステナブルECに成功した事例を紹介していきます。
エシカルインフルエンサーの活用で最高売り上げを達成
ベルギー発の「エシカルな調理器具ブランド」であるグリーンパンは、人にも環境にも有害な物質を一切使わずに、焦げ付きのないノンスティックタイプの製品を実現しています。しかし、海外では101カ国で人気のブランドでありながら、日本では「エシカルな調理器具」というカテゴリー自体の認知度が低いために伸び悩んでいました。
そこで、環境や健康への関心の高いエシカルインフルエンサーと連携し、「エシカル消費者の中でも、7割が知らない環境と健康に優しい調理器具」という調査結果を記事化して、それらのSNS上で公開することにより、そのキャンペーン実施月の売上が過去最高となったのです。
加えて、InstagramとECサイトを連携させ、商品と製造過程のシンプルな紹介やお手入れ方法の説明、アンバサダーによるレビューなどを発信することでフォロワーが急増した結果、多くのUGC(ユーザー生成コンテンツ)が作られるようになり、消費者へのリーチも拡大しました。
また、コンテンツマーケティングの一環として、商品紹介以外にも、食材の成分と効果や保存方法、おすすめの製品使用法、調理の仕方などの顧客が知りたい情報を提供することで、さらなるのファン獲得にも成功しています。
環境配慮型の商品戦略で多くの共感を呼ぶ
サステナビリティを重視するBtoB中心のヘアケアブランドのDavinesは、2018年以降、すべての商品パッケージをカーボンニュートラル包装に変更しました。カーボンニュートラル包装にしたことによって、製品のライフサイクル全体でCO2の排出量がプラスマイナスゼロの状態になり、さらに「2030年までに事業のすべてのCO2排出量をオフセットする」ことが次の目標です。こうした取り組みは、同社の環境への配慮と持続可能なビジネスモデルへのコミットメントを示すものとして評価されています。
このカーボンニュートラル包装は、次のような3つの要素を組み合わせて実現されました。
- 包装材自体の工夫:プラスチックの代わりに再生紙を使用し、パッケージを軽量化することで輸送時のCO2排出量を削減。
- 不可避的なCO2排出量の相殺:パッケージ製造に伴うCO2排出量は、温暖化ガス削減に取り組む組織への寄付金で相殺。
- 環境保護団体への寄付:エチオピアの土地と森林の再生に取り組む非営利団体「EthioTrees」に寄付。
また、2020年4月からはECサイトに30セントの追加料金でカーボンニュートラル配送を導入したところ、平均して約20%の顧客がこのオプションを選択するようになりました。その結果、1年も経たないうちに1万件の注文を通じて約8.4トンのCO2をオフセットすることができ、ビューティーサロンとの連携によるパッケージリサイクルプログラムの拡大も計画しています。
国際的な社会貢献を通じてビジネスを拡大
レザーグッズブランドのビジネスレザーファクトリーは、バングラデシュの貧困層に雇用を創出することを目的として2014年1月に設立されました。
バングラデシュでは、年に一度、イスラム教の祭りである「犠牲祭(イード・ウル・アザー)」が開催され、首都のダッカだけでも数万頭の牛が神に捧げられ、結果的に大量の牛革が余ることが問題化していたのです。
そこで、ビジネスレザーファクトリーは牛革の有効活用を雇用創出につなげ、日本のビジネスパーソン向けに高品質な革製品を日本全国の19店舗と公式オンラインショップで提供するという、エシカルなビジネスモデルの確立に成功しました。
貧困層や障がい者など、就職困難な人々をバングラデシュの自社工場で優先的に雇用し、800人以上の職人がアイテムを製作しています。また、車いす対応や託児所運営なども行って、働きやすい労働環境の整備と生活サポートにも努めてきました。
今では、韓国での販売も始まり、バングラデシュ以外の地域でも同様の施策を進める予定であるなど、さらなる躍進を続けています。
賛同企業と共に廃棄ロス削減でエシカルユーザーを取り込む
様々な日用品を扱っているLOHACOでは、商品廃棄ロス削減を目的とした「Goエシカル」という取り組みによって、エシカルユーザーの取り込みを図っています。2019年11月に開始されたこの取り組みでは、小売店からの返品商品やパッケージ不良品、期限切れ品など、品質に問題のない商品を77の賛同ブランドやメーカーから集め、アウトレット価格で販売することによって、それぞれのブランド価値を損なわずに廃棄ロスを削減することに成功しました。
Goエシカルでは、安価に販売される理由や廃棄削減数を明示し、サステナブルな暮らしやエシカル消費を重視する消費者に向けた選択肢として提供しています。その結果、2025年1月には200万個の廃棄削減を達成。それと並行して、サプライチェーン上流における廃棄ロス削減の推進や、製造工程で発生する規格外品・端材の販売、さらにはGoエシカルのオリジナル商品の開発というように、事業範囲が広がっています。
Shopifyで実現するサステナブルEC
これからのECビジネスの主流になっていくサステナブルECを実現するうえで、ECプラットフォームのShopifyは、カスタマイズのしやすさと豊富なアプリの両面で大きなアドバンテージを持っています。具体的な機能と活用事例を紹介します。
商品ページにサステナブルな商品であることを表記
商品ページの詳細情報の欄に、どのようなサステナビリティの取り組みがあるかを表示することができます。テーマエディタから任意の位置にエリアを追加して自由にデザインできるので、アイコンなども利用しながらエシカル消費になるメリットを効果的にアピールをしましょう。

また、メタフィールドを利用することで、情報の追加や変更をしたい時でも一括で更新できます。商品数が多い場合はこちらの方法がおすすめです。
メタフィールドについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
ギフトラッピングにエコパッケージを選べるオプション
ギフト需要の多いECサイトなら、ギフトラッピングの選択肢に包装を最低限に留めたり、再生紙などを使ったりするエコパッケージのオプションを追加しておくとよいでしょう。ギフトは贈る人と貰う人の両方に認知されるため、イメージアップ効果も高まりやすいです。
エコパッケージのオプションを追加するには、Shopifyの基本機能を使って管理画面からメニューを追加する方法と、ギフトラッピングのための専用アプリを利用して行うやり方があります。
Shopifyのギフトラッピングアプリについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
特定のエシカルな商品にだけボーナスポイントを付与する
日本のポイント市場は約2.5兆円規模で、2026年には3兆円を超えると予測されており、全世代に広く浸透しています。そのため、 エシカル商品購入に対するポイント付与は、サステナブルECを推進する効果的な施策なのです。
Shopifyのポイント系アプリは様々ありますが、商品ごとに購入ポイント付与率を設定できるアプリを使うことで、エシカル商品限定の特典とすることが可能です。
Shopifyのポイントアプリについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
サステナビリティECを支援するShopifyアプリ
サステナビリティEC実現のためにShopifyを利用するもう1つのメリットが、Shopifyアプリの存在です。サステナビリティEC向けに開発され、日本国内のECサイトでも利用しやすいアプリを紹介します。
Carbon Offset Cloud
Carbon Offset Cloudは日本語対応のカーボンオフセットアプリで、特に国内のECサイトに最適化されています。
このアプリでは、商品の重量と配送距離に基づいてCO2排出量を自動算定し、商品ページに表示することが可能です。排出量のオフセットには、環境省のJ-クレジット制度認証プロジェクトを活用しており、日本国内の環境保護活動に貢献しています。
また、ダッシュボードでCO2排出量やオフセット履歴を確認できるため、企業の環境への取り組みを可視化することも可能です。さらに、テーマエディタからアプリブロックをドラッグ&ドロップで簡単に配置できるという使いやすさも特長になっています。
1PLANET Carbon Offset
1PLANET Carbon Offsetは、配送や包装材から発生する炭素排出量の相殺ソリューションを提供しています。ブロックチェーン技術を活用した透明性の高いシステムを採用しており、オフセットの詳細情報を顧客に即時にメールで通知することが可能です。
また、気候に配慮した配送オプションを提供することで、環境意識の高い新規顧客の獲得を支援します。このアプリは世界中の気候プロジェクトを支援しており、グローバルな環境保護活動にも貢献できることも大きな特長です。さらに、1PLANETマーケットプレイスに参加することで、環境に配慮する企業としての認知度を高められる点もメリットの1つといえるでしょう。
Greenspark: Your Climate App
Greensparkは、植林、プラスチック回収、カーボンオフセットなど、さまざまな環境貢献の選択肢を提供しているアプリです。カスタマイズ可能なウィジェットや証明書、ダッシュボード、QRコードといった機能を通じて、顧客とのエンゲージメントを高めることができます。
また、多通貨・多言語対応によってグローバルに利用でき、MAツールのKlaviyo、ワークフロー自動化ツールのZapier、レビューアプリのJudge.meなど他のアプリとの連携機能も豊富に備えています。
無料プランも用意されているので、ビジネスの成長に応じて柔軟にプランを選択できる点も大きな魅力です。
Plant Trees with Ecologi
Plant Trees with Ecologiは、売上ごとに植林を行うというシンプルな仕組みを提供しているアプリです。ユーザーは仮想的な森を育てながら、実際の植林活動に貢献できるため、視覚的にもわかりやすいという特長があります。
また、具体的な植林数や環境への貢献度を顧客に示すことで、ブランドの環境への取り組みを明確に伝えることが可能なので、顧客とのエンゲージメントを促進する効果的なツールとしても活用されているアプリです。
ShopifyでサステナブルなECビジネスを
このように、これからのECビジネスの成長には、販売する商品や企業としての取り組みがサステナブルでエシカルであることが欠かせない要素となってきました。
EC構築・運用支援サービスのBiNDecでは、豊富な経験と知識を元に、サステナブルECを強力に支援する体制を整えています。今こそShopifyを活用して、地球と未来に貢献するサステナブルなECブランドを共に築いていきませんか?
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