この半年あまりで大きく進化した技術。それが、ここまで賢くなるとは誰も思わなかった会話系の生成AI「ChatGPT」です。特にアメリカでは、すでにマーケティング活動に不可欠のツールとなっており、ECとの組み合わせにおいても様々な形で活用されています。
ECプラットフォームShopifyのShopアプリにも、新たにChatGPTを利用したコンシェルジュ的な検索ヘルパー機能が組み込まれたほか、EC事業者が自社のShopifyストアに組み込めるチャットボットアプリも登場しました。今回は、それらの概要と、ChatGPTによるコンテンツ制作のコツをご紹介します。
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高機能な会話系AI「ChatGPT」とは?
ChatGPTは、OpenAIという企業によって開発されたAIです。AIは人工知能と訳されますが、その実体は、人間のように学習したり、理解する能力を持つコンピュータプログラムで、特に人とテキストを介した会話を行う機能に重点を置いた設計になっています。
こうした会話系のAIは、大量のテキストデータを学習することにより、人間の会話の中で、どのような単語の並びの確率が高くなるかを把握し、それに基づいて文章を生成したり、応答できるようになりました。そのため、「大規模言語モデル」とも呼ばれます。実際には人間のように思考したり、感情を持ち合わせたりはしていないのですが、あたかも文脈を理解して、質問に答え、情報を提供する知能を備えているかのような受け答えをすることが可能です。
ユーザーがChatGPTに指示を与えたり質問する際のテキストは「プロンプト」と呼ばれますが、このプロンプトは、ごく自然な、他の人に話しかけるような文章で構いません。そのため、すでに多くの、IT専門家ではない普通の人たちがChatGPTを利用しています。
ベーシックなChatGPT(GPT-3.5)は、登録すれば誰でも無料で利用できるようになっており、さらに学習量を高めたGPT-4は月額20ドルの有料サービスになりますが、アメリカの司法試験に対して上位10%に入る成績(GPT-3.5では下位10%)で回答するほどの能力を発揮するところまできています。その一方では、冷蔵庫の余った食材を入力して、レシピを考えてもらうような使い方をする人もいるのです。
その能力の高さと守備範囲の広さから、すでにChatGPTは、カスタマーサポートや教育、エンターテイメント、リサーチ、翻訳など、さまざまな分野で広範に利用されており、たとえば、ECやマーケティング関連では、ブログ記事、ソーシャルメディアへの投稿、広告のコピーなどのコンテンツなどの生成を担うようになってきました。そして、各種業務の効率化や新たなビジネスチャンスの創出に大きく貢献しており、Shopify本体やShopifyアプリの開発者も、顧客満足度の向上や、EC事業者に対する支援充実のために、ChatGPTの活用を積極的に進めているのです。
コンシェルジュのようなShopifyのAIチャット機能
その一環として、ShopifyユーザーにはおなじみのShopアプリやWebサイトにも、ChatGPTを利用したチャット機能が組み込まれました。このAIチャット機能は、検索画面の右上のアイコンから呼び出すことができ、あたかも人間のコンシェルジュとやり取りをするように希望を伝えて、それにピッタリのアイテムの提案を受けることができます。
現時点では、Shopアプリ自体のインターフェースが英語表示で、AIチャットも一見すると英語で行う必要があるように思えますが、実際には日本語でのやり取りが可能です。
また、一般の検索機能のように一問一答ではなく、返ってきた答えに対して、詳細を尋ねたり、より深い質問をすることができるため、Shopifyのサービスに対してユーザーのエンゲージメントを高める役割も果たします。
Shopアプリについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
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ChatGPT利用のShopifyアプリ、SmartPick
Shopifyでは、出店しているEC事業者に向けて、集客や購入率の増加、SNSとの連携、客単価の向上などの様々な目的に応じたアプリが、8000以上も公開されていますが、その中にもChatGPTを利用したアプリが登場してきています。
たとえば、株式会社Forest Bookが提供する「SmartPick-AIチャットボット」は、ChatGPTを活用して商品のレコメンドを行うチャットボットアプリです。
ShopアプリのAIチャットと同様の機能を自社のShopifyストアに組み込むことができ、ユーザーの希望や悩みに応じて適切なアドバイスやアイテムの提案を行えますが、大きな違いは、チャットデータを自社のマーケティング活動や業務に活用できるという点になります。つまり、チャットを通じて顧客の要望や、求められているアイテムの仕様などの情報を正確に把握して、将来の商品計画に活かせる一方で、AIがカスタマーサポート的な役割も担うため、限られた時間やスタッフを、販売戦略の策定や商品企画の立案に振り分けるなど、業務の効率化や集中を図ることが可能となるわけです。
継続的な利用には使用状況に応じたデポジットの購入が必要ですが、最初の30ドル分は無料で利用できるので、機能の確認や自社に合うアプリかどうかをチェックするために試用してみてもよいでしょう。
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EC事業者のChatGPT活用術
さらにEC事業者にとっては、直接ChatGPTを利用して、業務の効率化を図ったり、顧客のエンゲージメントを高める方法もあります。それは、商品のキャッチフレーズや説明文、ブログ記事などを、ChatGPTをパートナーとしてまとめるというやり方です。先にユーザーの立場でAIチャットを利用して、手作りキャンドル製品を探してみましたが、今度は販売目線から、その説明文をChatGPTと一緒に考えてみます。
1.商品の簡単な特徴で叩き台を作る
まず、商品の簡単な特徴をプロンプトとしてChatGPTに与え、説明文の叩き台を作ってもらいます。ここでは「初心者でも簡単に安心して使える手作りキャンドルセット」という情報を与えてみました。すると、セット内容を伝えていないにも関わらず、内容に含まれるであろうという要素も含めた説明文が、瞬時にできあがりました。
しかし、伝えた特徴の中に、このセット内容にしてはリーズナブルな価格であるというお買い得感を含めることを忘れていたので、続けて、その点も盛り込むようにプロンプトで指示してみます。すると、すぐに改訂版を書いてくれました。
このようにChatGPTは、まさに会話系のAIなので、一度に完璧さを求めなくても、回答を見ながらプロンプトを修正したり追加していくことで、期待する答えに近づけられます。そして、最後に冗長な部分や曖昧な表現を人間が調整すれば、短時間で要望に沿った文章をまとめられるというわけです。
2.修正したい部分を指示し、再生成する
たとえば、これが説明文としてはよくても、商品概要としては長すぎるとしましょう。そこで、「全体を400字程度にまとめて」と指示すると、先の文章を要約する形で、短めの説明が作られました。
実際の文字数は200字強なので、指示の半分程度になっていますが、こういうこともChatGPTでは少なからず発生します。内容に過不足があれば、改めて文字数を増減するなどの指示を与えればよく、何度ダメ出しをしてもChatGPTは冷静に対応してくれるので、積極的に修正指示を出してみてください。
3.売れる商品説明の要素を盛り込む
実は、Shopifyは「売れる商品説明の書き方」という記事を公開しており、その中で、以下の9つの要素に触れています。そこで、ChatGPTにこれらの要素を盛り込んだ説明文を書いてもらうことにしました。
- 理想とするお客さまに語りかける
- ベネフィットで惹きつける
- 「あー、はいはい」と思われないように
- 大げさな表現を正当化する
- ミニストーリーで理性の壁をこえる
- 感覚を刺激して誘い込む
- 口コミやレビューで魅力を強化
- 説明を読みやすくする
- 商品説明をほとんど書かない
これらのうち、9番目は「文字による説明の代わりに効果的な写真を使う」ということなので、ここでは省いて、残りの8つについてわかりやすくまとめ、図のようにプロンプト化してみました。
このプロンプトを利用して作られた説明文は箇条書きが中心となったので、地の文を増やすような指示を追加で行って得られたものが以下の説明です。
より整理されて特徴の訴求が強まり、感覚に訴えるニュアンスが加えられていますが、元のChatGPTの回答もそれなりに優秀だったことがわかります。しかし、まだ語尾の重複や冗長さが残っているので、手を加えて完成させたものを、以下に示します。
初心者でも簡単に安心して使え、価格もリーズナブルな手作りキャンドルセットをご紹介します。このセットは、美しいキャンドルを手作りする喜びを体験しながら、リラックスした時間を過ごしていただくために、専門家が時間をかけて吟味した素材から作られました。
特徴は以下の通りです:
・高品質なキャンドルワックスを使用しているため、溶けやすく、なめらかな質感のキャンドルを作ることができます。
・安全性もしっかり配慮されており、キャンドルワックスは煙や有害な物質を出さず、安心して使っていただけます。
・キャンドル芯は、長時間の燃焼にも耐える優れた品質のものを、厳選してお付けしました。
・カラフルな染料と香りのオイルが含まれており、自分だけのオリジナルなデザインと香りを楽しむことができます。
・溶かしたロウを流し込む容器もこぼれにくく外しやすいように工夫されたものを選んでおり、屋内で気軽に使用していただけます。
キャンドルの作り方は、キャンドルワックスを溶かし、染料や香りのオイルを加えて混ぜて容器に注ぎ、芯を立てるだけ。冷えて固まるまで少し待つだけで、自分だけの美しいキャンドルが完成します。丁寧な説明書もついていますから、キャンドル作りは初めてという方でも、気軽にトライしてください。
また、価格もリーズナブルなこのキットは、贈り物としても最適です。すでに多くのお客様に喜ばれており、寄せられたレビューからもその魅力がおわかりいただけるでしょう。
自分自身や大切な人への特別な時間を演出し、心を癒す手作りキャンドルの世界を、ぜひ楽しんでみてください。そのひとときは、新たな癒しの一部となることでしょう。
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ChatGPT利用上の注意点
このようにChatGPTは非常に優れたAIですが、様々な質問のプロンプトに答えようとするあまり、実際には存在しない事柄や、事実とは異なる情報を返してくることがあります。たとえば、あるアメリカの弁護士は、裁判に必要な過去の判例をChatGPTに探してもらい、それを実際の弁護で使ったところ、そんな判例は存在しないことがわかり、すっかり信用を落としてしまいました。これは極端な例ですが、ハルシネーション(幻覚)と呼ばれるこうした現象は、ChatGPTに限らず、会話系AI全体の課題です。
AI研究者たちは、ハルシネーションの解消に取り組んでいますが、まだ根本的な解決策には至っていません。そのためChatGPTの回答には、必ず目を通して確認し、特に商品説明やブログ記事の中に、誤った情報や確認が取れていない事柄が含まれていないかをチェックすることが重要です。
また、無料のGPT-3.5では、ユーザーが入力したテキストの内容がChatGPTの学習に使われるようになっており、GPT-4でも利用するデバイスごとに設定を変更しない限り、同様に処理されます。そのため、一般のSNSなどへの書き込みと同じように、個人情報や機密情報は入力しないようにするなどの注意も必要です。
まとめ
ChatGPTは使い方次第でとても有用なパートナーとなりうるので、利用しないという選択肢はないといってもよいでしょう。そして、プロンプト次第で様々な回答や会話を引き出すことのできるChatGPTの可能性は、開発しているOpenAIの当事者であっても、全貌が見えているわけではありません。ぜひ、自分なりの使いこなしで、普段の生活や業務に役立ててみてください。
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