FBAは、AmazonがEC事業者向けに提供する在庫保管や配送などの代行サービスです。FBAを利用することで、商品の配送や注文管理、在庫保管などの手間をかけずにインターネット上で商品の販売ができます。
本記事では、FBAで代行してもらえる業務やメリット、注意点、手数料、利用手順について詳しく解説します。新たにEC事業に参入したい人や、Amazonでの商品販売を手軽に行いたい人は、本記事を参考にしてください。
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FBAとは、商品の保管や注文処理、配送を代行するAmazonのサービス
FBAは、「フルフィルメント by Amazon」の略称で、販売する商品の保管、受注処理、配送という一連の業務をすべてAmazonが代行してくれるサービスです。具体的には、下記のような業務を代行してもらうことができます。
- 商品の入荷
- 入荷時検品
- 保管
- 受注処理
- ピッキング
- 発送時検品
- 梱包(Amazonのロゴが入った資材を利用)
- 発送
- 返品対応などのカスタマーサービス
さらに、次の「FBAのメリット」の項目でも紹介しますが、Amazonで商品を販売する上で有利になるさまざまな付帯サービスも利用可能です。
ただし、FBAを利用するためには、通常Amazonへ支払う手数料とは別に費用がかかります。
EC事業者がFBAを利用するメリット
FBAを利用すれば、Amazonに登録した商品をフルフィルメントセンターに発送するだけでEC業務の多くの部分をアウトソーシングできるだけでなく、ほかにも多くのメリットがあります。下記の10点が主なメリットとして挙げられますが、Amazonでの売上に影響する部分もあるため、特にAmazonに出品する事業者はしっかりと押さえておきましょう。
1. 業務負担が減る
FBAの最も大きなメリットは、業務負担の軽減です。自社で商品の保管や受注対応、ピッキング、梱包、配送、顧客対応などを行う場合、多大なリソースが必要になります。それらをAmazonに任せることで、少ないリソースでも事業を運営できるようになるため、企画・販売戦略立案などのコア業務に注力することも可能です。
また、物流業務や顧客対応をプロに任せることで、トラブルを回避し、スムーズに業務を遂行できるようになります。
2. Amazonプライムの対象商品となる
FBAを利用している商品はすべてAmazonプライムの対象商品になるという点は、Amazon出品者にとっては見逃せないメリットです。
プライム会員がAmazonを利用する際に、商品の検索結果にプライムマークが表示され、「配送料無料」「お急ぎ便無料」「お届け日時指定便無料」といったプライム会員向けサービスを利用できることがひと目でわかります。
プライム会員への登録には会費の支払いが必要ですが、会費負担よりも配送料無料などのメリットが大きいといった理由から会員登録をしていると考えられるため、Amazonでの購入頻度も高いでしょう。そのため、プライム会員に向けたアピールは売上アップにつながりやすいと考えられ、実際にAmazonの「フルフィルメント by Amazon(FBA) サービス概要」では、FBA利用者の74.9%が売上増を実感しているとのアンケート結果が出ています。
3. Amazonによる高品質な発送を利用できる
当日配送などを可能にしているAmazonの高品質な発送ノウハウを利用できる点も、FBAのメリットです。FBAを利用している商品は、商品ページの発送元欄に「Amazon」と表示されます。これによって、商品がAmazonの倉庫にすでに確保されており、Amazonが責任をもって発送作業にあたることを顧客も知ることが可能です。
Amazonでは、さまざまな出品者が商品を販売しています。中には注文通りの商品が届かなかったり、発送が大幅に遅延したりするようなケースもあるでしょう。Amazonが発送するという表示は、悪質な事業者を避けたい消費者にとって、商品を選定するひとつのポイントになりえます。
事業者にとっても、Amazonのスピーディーで高品質な物流サービスを利用することで、商品を確実に顧客に届けやすくなります。また、自社では対応が難しい、受注・発送の365日対応もFBAでは可能です。
4. Amazonの商品検索結果で上位表示されやすくなる
FBAのメリットとしては、FBAに登録した商品はAmazonの商品検索結果で上位表示されるようになるという点も挙げられます。
Amazonで商品を買おうとするときは、まず、商品名などで検索を行うのが一般的です。検索結果にさまざまな商品が表示される中で、目につきやすいのは上位に表示された商品です。FBAに登録することで消費者の目にふれやすくなり、同時に商品ページにプライムマークが表示されることで、購入につながりやすくなります。
5. 決済手段を増やせる
Amazonでの決済手段を増やせるという点も、FBAのメリットです。Amazonの買い物では、クレジットカードやデビットカードが主な決済手段として想定されていて、そのほかの決済方法には対応していないケースがあります。FBAを利用した場合は、代引きやコンビニ払いに対応できるようになるため、決済手段が増えることで、顧客の利便性を高められるでしょう。クレジットカードを持っていない顧客の要望にも対応できるようになるため、カゴ落ちを減らす効果も期待できます。
なお、一定の条件を満たした場合は、FBAを利用しなくても代引きやコンビニ決済が利用できる可能性があります。
6. カートボックス獲得の可能性を高められる
FBAのメリットとして挙げられるのは、カートボックス獲得の可能性を高められるという点です。Amazonで同じ商品を複数の事業者が販売している場合、商品情報はひとつのページにまとめられ、事業者ごとの価格や配送料などは「カートに入れる」ボタンとともに複数表示されるというシステムになっています。中でも、商品ページ冒頭の最も目立つ位置に表示される「カートに入れる」ボタンの表示欄はカートボックスと呼ばれ、多くのAmazonユーザーはこのカートボックスから商品を購入しています。
そのため、Amazonに出品する事業者にとって、カートボックスに表示されること(カートボックスの獲得)は非常に重要です。カートボックスを獲得できなかった事業者は、カートボックスの下部にある「新品(◯)件の出品」という欄をクリックした際のリンク先や、「こちらからもご購入いただけます」という欄などにしか表示されないため、利用されにくくなるでしょう。
カートボックスに表示される事業者は主に下記の要素を元に総合的に判断されています。
- 商品の価格
- 出荷までの日数
- カスタマー評価などの顧客満足度
- 在庫数
- Amazonにおける出品期間
- Amazonにおける取引件数
FBAを利用することで、上記の条件のうち「出荷までの日数」を短縮できます。Amazonが当日配送に対応していることからもわかるように、FBAでの出荷までの日数は非常に短期間です。商品価格といったそのほかの要素もあるものの、カートボックスの獲得では一歩リードできるでしょう。
7. Amazonの商品ページに「最短お届け日」が表示される
Amazonの商品ページに最短お届け日が表示されるようになる点も、FBAのメリットです。最短でいつ商品を受け取れるのかが明記されるため、顧客から「必要な日に間に合うだろうか」という心配を取り除くことができます。
8. 海外配送プログラムも提供されている
FBAのメリットのひとつが、海外配送プログラムの利用も可能になるという点です。ECサイトは世界中に向けて商品を販売できるというメリットがある反面、越境ECを自社で行うためには、輸送網や通関手続きといったハードルに対応しなければなりません。
FBAなら、FBAの手数料以外の追加負担なしで海外配送プログラムを利用できます。海外配送プログラムの利用を希望する事業者は、FBAの設定から「FBA海外配送設定」メニューの「編集」から「FBA海外配送を有効にする」を選択し、最後に「更新」をクリックするだけで設定が可能です。
9. FBA小型軽量プログラムを利用できれば手数料も抑えられる
FBAでは、FBA小型軽量プログラムを利用すれば手数料を抑えられるという点もメリットです。販売価格が1,000円以下、重量が1kg以下などの条件はあるものの、配送パッケージのサイズに応じて1個あたり220円以下という低コストで手軽にFBAの充実したサービスを活用できます。
10. Amazon以外で販売していても同様のサービスを利用できる
Amazon以外の自社ECサイトなどで商品を販売した場合でも、物流業務の委託サービスとして「マルチチャネルサービス」を利用できる点もFBAのメリットです。Amazonセラーセントラルから出荷依頼を出すだけで、在庫管理やピッキング、梱包、配送といった一連の業務を代行してくれます。
ただしマルチチャネルサービスは、カスタマーサービスやギフトラッピングには対応できません。また、梱包用の段ボールについては、申請すればAmazonのロゴが入ったものではなく無地の段ボールで出荷してもらうことも可能ですが、条件があり、配送パッケージのサイズなどによってはその対応ができない場合もあります。さらに、納品書などに出荷元としてAmazonの名称が表示されることにも注意が必要です。
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FBAを利用する際の注意点
うまく活用すれば非常に便利なFBAですが、注意点もあります。下記の4点を踏まえた上で、自社にとってFBAの利用が最適かどうかを判断しましょう。
Amazonの倉庫に入れた後は商品の状態を管理できない
FBAを利用する場合、商品をAmazonの倉庫に送った後の管理は、すべてAmazon任せになる点に注意してください。自社で商品の管理や保管を行うことはできません。
「デリケートな商品や経年劣化が起こりやすい商品について、状態をこまめに確認したい」「商品の保存方法に特殊な配慮が必要なため、状態がわからないのは困る」といった場合、FBAの利用は適さないといえます。
なお、FBAでAmazonの倉庫に預けた商品の状態をどうしても確認したい場合は、一度返送してもらわなければなりません。
梱包・配送はAmazonのルールに従わなければならない
FBAでは梱包や配送をAmazonに委託するため、細かいカスタマイズなどはできないという点にも注意が必要です。ギフトラッピングもAmazonの仕様で行われるため、顧客の要望に応じた複数のオプションを用意することはできません。配送用の梱包も、マルチチャネルサービスで無地のダンボール申請を行う場合などを除いて、基本的にはAmazonのロゴが入った封筒や箱で行われます。
自社独自の取り組みでブランディングや顧客満足度向上につなげたいという場合は、Amazonに任せるのは避けたほうが良いでしょう。
保管できない商品がある
取り扱う商品によっては、FBAが利用できない可能性がある点にも注意しなければなりません。下記に該当する商品を取り扱う場合は、自社対応などを検討してください。
- 動植物(*1)
- 危険物や化学薬品(*2)
- 温度管理が必要な商品(*3)
- 医薬品
- 金券類
*1=生死を問わず、植物は種子も含む
*2=消防法に規定される危険物第1類から第6類に該当する商品や、輸送が禁止されている商品、「可燃性」「火気厳禁」などと記載された商品など
*3=冷蔵品や特定の温度管理が必要な商品、保管中の温度変化によって爆発する危険性があるものなど、ただし2023年4月より冷凍食品の取り扱いは可能になっている
FBA以外にも物流代行の選択肢はある
FBAのような商品の保管・受注処理・配送などを代行してくれるサービスはAmazon以外にもあるという点も、忘れてはならない注意点です。
物流会社が提供しているアウトソーシングサービスでは、商品の保管、在庫管理、梱包、配送代行などを一手に引き受けてくれます。中には、受注処理や顧客問い合わせ対応、流通加工にまで対応してもらえるフルフィルメントサービスを行う業者や、保管は行わず配送代行だけを受託している業者などもあるため、自社に合うサービスを探してみましょう。
例えば、EC事業者それぞれのこだわりに応じながら在庫管理から受注代行、入出荷管理、配送などの業務をまとめて代行するサービスを展開している業者もあります。
物流会社を選ぶ際は、下記のポイントをチェックするのがおすすめです。
- 誤出荷率
- 配送以外のサービス内容
- カスタマーサポートの充実度
- 返品交換対応ができるか
- トラブル発生時の補償体制
商品の保管や配送は、顧客が手にする商品の品質にかかわる問題です。コストだけで比較してしまうと、誤配送や破損といった問題につながる可能性もあります。倉庫見学なども行って、慎重に検討してください。
とはいえ、数多くのサービスの中から、最も希望に合う事業者を探すのは困難なこともあるでしょう。そのような場合は、BiNDecのようなEC事業の総合支援を行う事業者に相談するのもひとつの有効な選択肢です。
物流業務の代行について詳しくは、下記の記事をご参照ください。
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サイズ毎で異なるFBAの手数料
FBAを利用する際は、配送代行手数料と在庫保管手数料が必要です。なお、FBAでは梱包を含めた商品サイズによって、3辺のサイズと重量が25cm×18cm×2cm以下かつ250g以下の場合は小型サイズ、45cm×35cm×20cm以下かつ9kg以下の場合は標準サイズ、標準サイズを超える場合は大型または特大型サイズとする分類があり、この分類に応じて配送代行手数料と在庫保管手数料が設定されています。具体的には、それぞれ下記のように計算されます。
配送代行手数料
配送代行手数料は、販売された商品の配送数に応じて発生する従量課金制の料金です。梱包資材を含めた商品のサイズや重さによって金額が決まり、小型サイズから標準サイズの配送代行手数料は下記のように定められています。
小型サイズから標準サイズの配送代行手数料一覧
(cm) |
25×18 ×2以内 |
35×30 ×3.3以内 |
3辺合計 40以内 |
3辺合計 50以内 |
3辺合計 60以内 |
3辺合計 80以内 |
3辺合計 100以内 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
250g以内 | 1kg以内 | 2kg以内 | 5kg以内 | 9kg以内 | |||
288円 | 318円 | 434円 | 465円 | 485円 | 514円 | 603円 |
例えば、21cm×12cm×2.5cm、172gのTシャツであれば配送代行手数料は318円です。1辺でも基準を超えると上のカテゴリー扱いになる点に注意しましょう。
配送代行手数料は離島を含め、全国一律上記の金額です。配送料を別途加算されることはありません。上記を超える大型・特大型サイズの配送料は下記のように設定されています。
大型サイズの配送代行手数料一覧
60cm以内 | 80cm以内 | 100cm以内 | 120cm以内 | 140cm以内 | 160cm以内 | 180cm以内 | 200cm以内 | |
2kg 以内 |
5kg 以内 |
10kg 以内 |
15kg 以内 |
20kg 以内 |
25kg 以内 |
30kg 以内 |
40kg 以内 |
|
589円 | 712円 | 815円 | 975円 | 1,020円 | 1,100円 | 1,532円 | 1,756円 |
特大型サイズの配送代行手数料一覧
200cm以内 | 220cm以内 | 240cm以内 | 260cm以内 | |
50kg以内 | ||||
2,755円 | 3,573円 | 4,496円 | 5,625円 |
上記の基準を超える荷物については、FBAの利用対象外です。自社で対応しなければなりません。
なおFBAには、小型軽量商品プログラムという小型で低単価な商品向けの安価な配送代行手数料が設定された料金システムがあります。販売単価が1,000円以下で、過去4週間に25個以上の販売実績がある場合、このプログラムに登録すれば梱包時のサイズに応じて、下記の料金でFBAを利用できます。
小型軽量商品プログラムの配送代行手数料
25cm×18cm×2cm以下 | 35cm×30cm×3.3cm以下 | |
250g以下 | 1kg以下 | |
208円 | 220円 |
梱包時に上記のサイズを上回る商品は、小型軽量商品プログラムには登録できません。
在庫保管手数料
在庫保管手数料は、配送量とは関係なく発生する費用です。商品の種類などによって決まる「月額基準金額」と、商品サイズ、保管日数に応じて、下記の計算式で算出します。
在庫保管手数料の計算式
月額基準金額×{商品サイズ(cm3)÷(10cm×10cm×10cm)}×(保管日数÷当月の日数)
月額基準金額は、服・ファッション小物・シューズ・バッグに該当するか、在庫期間、商品サイズの3点によって下記のように変わります。
服・ファッション小物・シューズ・バッグに該当しない場合の月額基準金額
小型・標準サイズの月額標準金額 | 大型・特大型サイズの月額標準金額 | |
5.676円 | 10.087円 | |
4.37円 | 7.76円 |
服・ファッション小物・シューズ・バッグに該当する場合の月額基準金額
月額基準金額 | |
3.1円 | |
5.5円 |
※服・ファッション小物・シューズ・バッグの月額基準金額は、商品サイズによる違いはなし
FBAの料金計算は複雑ですが、公式の料金シミュレーターを使えば簡単に見積もることができます。Amazonセラーセントラルのアカウントがあれば自由に利用できるため、うまく活用しましょう。
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3ステップで完結するFBAの利用手順
FBAは、3ステップで簡単に利用を開始できます。下記の手順で手続きを進めてください。
- 商品情報・配送方法などの登録:セラーセントラルにFBAを利用する商品の情報や発送元、商品の梱包タイプ、納品数量などの情報を登録
- 商品へのラベルの貼付と梱包:セラーセントラルからの商品ラベルのダウンロード・印刷・商品へのラベル貼付を行い、商品を梱包
- フルフィルメントセンターへの発送:任意の方法で商品を発送、送料は自己負担
手数料もシミュレーションして、FBAを有効活用しよう
FBAは、出品者にとっても顧客にとってもメリットの大きいサービスです。Amazonに出品していない事業者でも利用できることから、EC事業者全般におすすめだといえるでしょう。ただし、利用には手数料も発生します。
また、Amazonで商品を販売していない場合は、Amazonプライムの対象となることやカートボックスの獲得などのメリットは意味がありません。自社のECサイトでDtoCを行っている事業者にとってのメリットは限定的です。加えて、FBAでは梱包も、申請によって無地の段ボールが利用可能になるだけで、自社ブランドの梱包は利用できないという点も、ブランディングが重要なDtoC事業者にとってデメリットになります。
また、「FBAがあるからAmazonを利用する」と考える必要もありません。Amazon以外のECプラットフォームとしては、例えばShopifyは、デザインや機能拡張性の高さから世界中の事業者に利用されている魅力的な選択肢です。Shopifyでは、FBAのマルチチャネルサービスを利用できるほか、自社のこだわりにも対応可能なほかの物流サービスとの連携も可能で、Amazonと併用して在庫情報などを連携することもできます。
Shopifyについて詳しくは、下記の記事をご参照ください。
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