Googleの生成AIのEC活用テク|トレンド調査やPR素材制作もAIで効率化

Googleの生成AIのEC活用テク|トレンド調査やPR素材制作もAIで効率化

生成AIは、毎日のように進化を続け、私たちの仕事や暮らしに欠かせないものになっています。今回は、ネット検索領域のリーディング企業である一方で、生成AI分野の技術開発にも力を入れているGoogleの生成AIサービスのECでの活用法について解説します。

ECで生成AIを活用するメリット

EC分野における生成AI活用のメリットについては、これまでも何度か扱ってきましたが、ここで簡単におさらいしておきましょう。

ビジネスの質を高められる

生成AIは、世の中に存在する膨大な情報や、各分野の専門家の知見を学習し、そこから様々なインサイト(洞察)を導き出したり、既存のシステムと連携して煩雑な作業の自動化を行うことができる技術です。

たとえばECの領域では、従来は担当者が表計算ツールなどを使って行っていたデータ分析を生成Aiに代行させることで、業務の効率化や工数の削減が可能になります。これは、コスト削減に直結し、思い違いや入力ミスなどによる人的エラーの低減にもつながりますが、より重要な点は、情報の分析力が強化されて販売予測などの精度を向上させることができ、ビジネスの質を高められるということです。

ビジネスの質を高められる

もちろん、今も生成AI特有のハルシネーション(正しくない情報を作り出す幻覚)が完全には排除されていないため注意する必要がありますが、そこは人間が持つ知識や経験と照らし合わせたり、効率化で省けた時間を情報の精査に割り当てるなどして対処することができます。

ECでの生成AI活用方法

特にEC分野での活用方法については、以下のような8つのポイントが考えられます。

  1. 商品説明の自動生成:大量の商品説明を短時間でブランドに合わせて作成。
  2. コンテンツ配信の自動化:SNSやブログのコンテンツ生成と配信を効率化し、継続的な発信をサポート
  3. パーソナライズとレコメンド:顧客に最適な商品を提案し、売上と満足度を向上
  4. 在庫管理と需要予測の最適化:需要を予測し、在庫補充を自動化してコスト削減と顧客満足度を向上
  5. ECマーケティングの自動化:顧客データを分析し、最適なマーケティング戦略をリアルタイムで自動化
  6. CRMの自動化:AIで顧客の購入パターンを分析し、リワードやリマインダーを最適化
  7. カスタマーサポートの自動化:AIチャットボットで対応時間とコストを大幅に削減
  8. キャンペーンアイデアの立案:生成AIによる迅速なデータ分析でマーケティング企画をサポート

これらの点について、より詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。

Googleの生成AIツールとECでの生かし方

一般に利用できるGoogleの生成AIツールの代表的なものとしては、次の4つが挙げられます。

Gemini

ChatGPTに相当するチャット系の生成AIで、同様に高度な自然言語処理技術が用いられており、無料で使えるGeminiと有料サブスクリプションのGemini Advanceがあります。
ChatGPTとの大きな違いは、GeminiはGoogleが得意とする検索に基づいて回答を生成するという点です。そのため、最新の情報が得られやすい反面、ネット上の掲示板から誤った情報を取得して提示される場合があり、問題化したこともありました。
GoogleのChatGPTに相当するGemini。月額2900円の有料サービスとしてより高機能なGemini Advanceもあるが、無料プランでも十分に使える

NotebookML

NotebookMLは、その名の通り、生成AI(Googleの生成AIで最も能力の高いGemini 1.5 Pro)とチャットした結果をメモとして残したり、指定した人と共有できるデジタルノートです。ファイルやURLによってソースとなる情報や知識を指定し、そこに含まれる情報のみからインサイトを得ることができます。

表形式のデータの分析などには対応していませんが、たとえば企業のホームページを情報ソースとして指定し、その情報を元にしてFAQを作成するといった用途にも利用可能です。また、ユーザー自身が情報ソースを指定するため、ハルシネーションを起こしにくいことも特徴として挙げられます。
ちなみに、現在は実験的な技術公開という段階にあり、完全無料で利用可能です。
NotebookMLは、ファイルやURLで指定した情報を元に様々な質問に答え、回答をメモとして保存したり、他者と共有できる生成AIサービス

Ideogram

Ideogramは、アルファベットのテキストを含む画像生成に関して業界トップレベルにある生成AIです。ただし、プロンプトによる字体の指定はサポートされておらず、「Serif」(ひげ飾りのあるスタイル)や「Sans-serif(ひげ飾りのないスタイル)」を指定できる程度で、イメージの雰囲気に合わせて自動的に選択されます。
無料プランでは1日あたり10クレジットが付与され、最大40イメージまで生成可能です。さらに多くのクレジットを付与される有料プランもあります。
従来は難しかった文字入りの画像を、かなり高い精度で生成することができるIdeogram

Product Studio

商品写真と、プロンプトで生成した背景を合成して商品ページなどで使えるイメージを作ってくれるサービスで、GoogleのMerchant Center Nextもしくは、ShopifyのGoogle & YouTubeアプリから無料で利用できます。
Shopify Magicのメディア編集機能のように、製品イメージを元ににして、プロンプトで背景などを自在に変更できるProduct Studio。複数の製品写真から3Dイメージを作り出す機能も備わる。

商品企画におけるNotebook MLの活用

上記で紹介したツールの中から、ここではNotebookMLを商品企画のためのトレンド調査に用いる方法と、Ideogramを使ってプロモーションやキャンペーンに応用できるブランドイメージに沿ったグラフィックスの生成手法を紹介していきましょう。

Webの情報を集約してファッショントレンドのインサイトを得る

前述のようにNotebook MLは、ファイルやURLによって情報ソースを指定し、関連する質問をすると、ソースの情報を元に生成AIが回答を行います。サポートされているファイルの形式はテキスト系から音声系、動画系まで多彩です。
しかし、WordファイルのdocxやExcelファイルのxlsx、表計算データのcsvなどは非サポートで、表をpdfファイルにして読み込ませても分析できませんので、ご注意ください。この点は、将来的に改善されていくかもしれません。

ファイルはドラッグ&ドロップしたり、コンピュータのストレージやGoogleドライブから読み込ませられるほか、テキストを直接ペーストすることもできます。また、必要な情報があるWebページのURLを貼り付けてソースとすることができますが、トレンド調査などにおいて最新情報を参照するうえでは、このURLの貼り付けが最も有効です。
回答の元になるソースをアップロードする。ただしサポートされていないファイルをアップロードしようとすると、このようなエラーメッセージが表示される。

そこで、ファッショントレンド分析のために、まず「ファッショントレンド2025」を検索ワードにして、ネット検索を行ってみました。この検索ワードを目的に応じて変えることで、様々なジャンルの商品トレンドを対象にすることができます。ただし、有料記事は対象外となるため、その点は要注意です。
ここでは2025年に向けてのファッショントレンド情報をWebで検索し、トップの5サイトのURLを利用してみた
この例では上位5サイトのURLを無条件に選びましたが、本格的な利用時には担当者が最も適切と思えたり、信頼が置けると考えるサイトに絞って利用すると良いでしょう。

指定のフィールドにURLを貼り付けて、挿入ボタンをクリックすると情報がアップロードされる
URLを1つ貼り付けて「挿入」ボタンをクリックするたびに、そのサイトの情報の概要と質問例が表示されます。これを必要な回数繰り返して、情報ソースを確定してください。
生成AIの利点として、海外のサイトを指定しても日本語で回答が得られるので、越境ECのための調査の効率化にも貢献するはずです。
ここまでの作業のみでも、サイト内の情報の要約と質問の例が表示される

こうしてすべてのサイトの登録後に、最下段の「入力を開始します」のフィールドに「2025年春夏トレンドで最も注目すべきキーワードは?」という質問を入れてリターンキーを押してみると、5つのソースからの情報を分析して、詳細な回答が得られます。さらに回答を絞り込むための質問もできますが、ここでは、後から参照したり共有できるように「メモを保存」をクリックしておくことにします。
記録しておきたい情報は「メモに保存」を選ぶと、後から参照したり、共有することができるようになる。
このようにして適宜質問を繰り返すことで、同じ情報ソースから様々なインサイトを得ることができるようになります。有用な回答が得られたら、メモとして保存しておくようにしてください。

要望に沿って生成AIが企画をサポート

NotebookMLの、もう1つの強力な機能が、「メモの内容に関連するアイデアを提案」してくれるというものです。たとえば商品企画に関連して思いついたことを、とりあえずNotebookMLのメモに書き込んでおき、後から生成AIにソースから得られるインサイトと合わせてアイデア出しをしてもらえます。
メモに要望を書き込み、それに対する提案を、ソースの情報から導き出すことができる
ここでは「2025年春の新規出店に備え、トレンドアイテムを揃えたい。」という要望をメモに書き込み、ソースから得られたトレンドのインサイトを元に、関連情報と品揃えの提案をさせてみました。なお、この例の提案は比較的シンプルなものですが、必要に応じて情報ソースを追加したり、質問を重ねていくことで、回答の精度を高めていくことが可能です。

社内やチーム内での情報共有

このようにして構成されたNotebookMLのページは、いつでも社内やチーム内のメンバーと共有し、活用してもらうことができます。手順は、右上の共有ボタンをクリックしてダイアログを表示し、共有相手のメールアドレスを入力してユーザーを追加するだけです。また、共有者に編集権限を与えて共同作業を行なったり、閲覧者として編集結果を見てもらうだけに留めることができます。
企画会議の資料作成などの機会に、ぜひ利用してみてください。
共有ボタンから、共有相手のメールアドレスを入力してユーザーを追加することでアクセス可能となる。

Ideogramによるプロモーション素材生成

続いて、Ideogramを活用したプロモーション素材の作り方を手順を追って説明します。

生成画像に対するブランド要素の反映

プロモーション素材を作る際は、ブランドのイメージカラーやロゴを積極的に利用することで、顧客のエンゲージメントを少しでも高めることが期待できます。Ideogramを使ってブランドイメージに沿ったグラフィックスを生成する場合にも、この考え方を取り入れいくことにしましょう。
イメージのスタイルや縦横比、カラーパレットなどを指定できる。
たとえば、架空のトラベルグッズストアであるBiND Travelのイメージグラフィックスを生成する際に、ブランドのイメージカラーとしてブルーグリーンを基調としてみます。
Ideogramに与えるプロンプトは日本語でも問題ありませんので、「トラベルグッズを販売するBiND Travelのイメージグラフィックス。テーマカラーはブルーグリーン。」としてみました。すると、店内を想起させる4つの候補が、どれもブルーグリーンの色調で生成されました。
自社のCIに基づいてテーマカラー(ここではブルーグリーン)を設定すれば、そのカラーをベースにしたイメージが生成される
どのような画像を生成させる場合でも、「テーマカラーはブルーグリーン」のように指定することで、統一感のあるグラフィックスを揃えることができます。さらに凝りたいときには、生成時のカラーパレットを「Custom」にして、細かく色指定することもできますが、言葉で表現できる色合いであれば、カラーパレットを「Auto」にしてプロンプトで指定するほうが簡単です。
また、Magic Promptを「ON」にしておくと、入力されたプロンプトを生成AIがアレンジして表現力を高めてくれるのでお薦めです。

生成ルールの策定と適用

さらに、ブランドの雰囲気やテイストを画像生成時のルールとして策定し、プロンプトに加えることで、より統一的な印象を与えられるようになります。ここでは、「ノスタルジックで旅情を誘い、常に頼もしいパートナーとして旅をサポートする。」と「若いエネルギーに満ち溢れ、常に新しい冒険を応援する。」のように対照的な2つの異なる生成ルールを適用して、その違いを見てみましょう。冒険志向で若々しいブランドであることをアピールしたイメージでは、テーマカラーは同じでも、雰囲気がガラッと異なってくることがわかります。
ブランドのモットーやアイデンティティを元にして、プロンプト内に必ず含めるセンテンスを決めておくことで、統一感のあるイメージ生成が可能となる。

足りない機能を後処理で補う工夫

Ideogramは、確かに文字生成に秀でていますが、基本的に字体の指定はできず、画像内に特定のロゴなどを入れ込むこともできません。この制約を回避するための工夫としては、文字を看板やタグ、ネームプレートのような枠の中に生成させて、後から別のグラフィックツールで加工することが考えられます。
こうすると比較的シンプルな地色の部分に文字が合成されるため、元の文字を消してロゴなどで置き換える編集作業が楽に行えるのです。

たとえば、「BiND」は「i」のみ小文字が正しい表記ですが、Ideogramではすべて大文字になりました。しかし、看板部分を描き変えることで、ロゴを反映することができたのです。
本来、BiNDは”i”のみ小文字にしたいが、そこまで細かく指定できないため、グラフィックツールで加工することで、希望するイメージに近づける

生成AI利用ですべきこと、すべきでないこと

最後に、生成AIを賢く使ううえで、すべきことと、すべきでないことに触れておきましょう。
すべきことは、「生成AIから一度の質問だけで回答を得るのではなく、会話を重ねて回答の粒度や精度を高める」ということです。そのためにも、どのような質問をすれば適切な回答が得られるかを考える必要があります。生成AIを使うことは、自分で考えるのをやめるのではなく、これまでとは違った考え方をすることが求められるのです。
画像の生成についても、一度で思った通りのイメージが得られることは稀で、プロンプトを追加したり修正しながら、意図したものに近づけていく必要があります。

一方で、特にECにおける利用法としてすべきでないのは、商品画像そのものを生成することです。Shopify Magicのメディア編集機能やGoogleのProduct Studioもそうですが、あくまでも商品画像は実物の写真を用いて、背景のみを生成するようになっています。購入客も、実物の外観やパッケージが表示されていることを期待していますから、その点は守るべきルールなのです。

生成AIをEC業務に活用して効率的に運用しよう

今では様々な生成AIサービスがありますが、それぞれに専門の領域を持ち、一見、機能が似ていても、得意とする処理が異なっていることが普通です。Googleの生成AIも同様に、それぞれが独自の機能や処理に特化しており、個々の特性を見極めて他の生成AIと使い分けるには、何よりもまず利用してみることが一番です。

生成AI活用し、効率的に運用できるECの構築なら、BiNDecにご相談ください。豊富な導入実績とハイレベルな技術力・知識量を認められたShopify Plusパートナーとして、中小規模から大規模のビジネスに向けた最適な運用戦略の提案も可能です。
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POINT

  • NotebookMLは指定した情報ソースからインサイトを得たりアイデアを提案してもらえる
  • Ideogramはテキストを含むクオリティの高い画像生成が可能
  • 生成AIを上手く活用するコツは、会話を重ねて回答の粒度や精度を高めること