ECプラットフォームのShopifyは、年間2000億円以上を投じて新しい機能の開発や改善しています。そのため、他のECプラットフォームに比べて進化スピードも早く、毎回100を超えるアップデートをラインナップしたShopify Editionsが半年ごとに発表されます。
先日のShopify Editions 2025 Summerの中で、特に注目しておきたい新機能をピックアップして解説していきます。

Shopify Editions 2025 Summer|今回のリリースのテーマは、新たなデザイン基盤の名称でもある「Horizon」
進化を続けるAI活用機能
最近ではあらゆるサービスにAIが搭載されてきていますが、ShopifyのAIはEC運用に特化しています。今回は、よりAIの活躍の幅が広がるアップデートが用意されていました。
AIとの対話でデザインカスタマイズできる「Horizon」
まず、無料のデザインテーマの新作が複数リリースされていますが、デザイン面での大きな進化として「Horizon」という新デザイン基盤が登場しました。
従来のテーマ編集は、ブロックやセクションを自分で選んで配置する必要がありましたが、HorizonではAIとの対話によって必要なデザインやレイアウトを指示し、カスタマイズできるようになります。
「どんなデザインにしたいか」を伝えるだけで、AIがコード化してくれるため、Liquidの知識がなくても簡単にデザイン編集が実現できるでしょう。
意図通りの細かい調整などは難しいかもしれませんが、コーディングの時短やデザインアイディアの参考にも活用できそうです。
購入体験を向上するショッピングエージェント
「Shopify Knowledge Base」は、AIを活用してFAQを充実させる公式アプリです。このアプリは、ECサイトのポリシーや設定情報からAIが自動的にFAQを生成し、顧客からの質問に即座に答えられるよう支援します。
マーチャント側はFAQの回答内容を柔軟にカスタマイズでき、さらにAI経由で実際に寄せられた質問ログを確認・改善に活用可能です。これにより、問合せ対応の効率化や一貫した顧客体験の提供が実現します。返品・配送・支払いなどの定型質問にも強く、カスタマーサポートの負担軽減に大きく寄与します。
また、ストアフロントMCP(モデルコンテキストプロトコル)を活用することで、リアルタイムに製品情報、カート管理、注文状況などと連携し、チャットを通じて商品購入をサポートする自社EC専用のAIショッピングエージェントを構築できるようになります。これにより、FAQ対応だけでなく、顧客の「探す・聞く・買う」をすべてAIで支援する次世代の購買体験が実現します。
Sidekickは日本語対応に加え、さらに機能性アップ
管理画面からアクセスできるAIアシスタントのSidekickが、日本語を含む20言語対応が実現し、グローバル展開するマーチャントにとっても使いやすくなりました。
画像生成機能も搭載され、キャンペーン用バナーなども数秒で作成可能になります。さらに、音声での指示にも対応するようになったため、より自然にAIとコミュニケーションをとりながら活用できる環境が強化されています。
モバイルアプリでもSidekickが利用可能になっているので、外出先でも売上の分析やキャンペーンのアイディアを整理することができます。
Sidekickについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
グローバル展開もスタンダードにするアップデート
Shopifyは世界175以上の国と地域でシェアを広げており、越境ECにおいては他のECプラットフォームと比べて多くの機能が揃っています。自国の市場と国外の市場を並列にとらえる、Shopifyらしいグローバル展開のためのアップデートにも注目しておきましょう。
大きな地域に国別のECを管理できるサブマーケット
複数の国や地域の市場に合わせた設定ができるShopifyマーケットに、「サブマーケット」機能が強化され、グローバル展開するマーチャントにとって各EC管理が一層簡単になりました。
ヨーロッパやアジアなど大きな地域を親マーケット、各国単位のサブマーケットとして細分化できるように改良されたため、例えば、ヨーロッパという親マーケットの配下に、フランス専用の言語・価格・配送オプションを用意したり、独自のプロモーションを設定できるようになります。設定画面はグラフビューで視覚的に操作できるため、管理負荷を最小限に抑えられます。
各国の顧客に最適化された購買体験を提供できる点が大きな魅力です。

商品購入時に関税の徴収が可能
これまでShopify Plus限定だった「チェックアウト時の関税・VAT自動徴収機能」が全プランで利用可能になりました。これにより、国際配送の際に関税や輸入税を決済時に顧客から徴収でき、配送時の追加請求やトラブルを防ぐことができます。
さらに商品価格に関税額を含めた「内税表示(関税込み価格)」にも対応したため、国外の消費者安心感を提供できます。これまで複雑だった越境ECの税務設定が簡素化され、特に多国展開のマーチャントにとってカゴ落ち防止や顧客満足度向上に直結する大きな改善といえます。
売上金の受け取りに最大8つの通貨を設定可能
Shopifyペイメントを利用するマーチャント向けに、売上金の受け取り通貨を最大8種類まで設定できる新機能が追加されました。これまで米ドルやユーロなど特定の主要通貨でしか入金できなかったため、為替手数料や両替コストが事業者の負担となっていました。
今回のアップデートにより、欧州やオーストラリアなどのマーチャントは自国通貨で売上を受け取れるため、為替による利益の目減りを防ぎ、資金管理が一層スムーズになります。グローバルにECを展開するマーチャントにとって、財務効率の大幅な向上が期待される重要な強化ポイントです。
マルチチャネルのビジネス展開を促進
マルチチャネル展開は単純な売上向上だけでなく、顧客維持にも貢献するため、ECビジネスには欠かせない戦略となっています。Shopifyは複数のチャネルを連携したり新たな展開を支援することにも積極的にアップデートを行なっています。
B2Bビジネス向けにOracle NetSuiteの連携強化
Shopify Plus限定の公式ERP連携機能として、Oracle NetSuiteとのデータ連携アプリ「NetSuite ERP Connector」がさらに強化されました。従来の基本的な受注・在庫データの同期に加え、企業情報、発注書番号、支払い条件などの詳細データが双方向で自動連携されるようになり、業務フロー全体の整合性が大幅に向上しています。
BiNDecでは、コスメブランドのジョンマスターオーガニックでOracle NetSuiteの導入を支援しています。詳しい事例については下記の記事をご覧ください。
Robloxで始める、Z世代向けの新たなビジネス
最近、Shopifyでは仮想空間プラットフォーム「Roblox」と連携し、物理商品のバーチャル販売が可能になりました。ShopifyのマーチャントはRoblox内で自社商品を展示・販売し、ユーザーはバーチャル空間で実物商品を購入できる初のチェックアウト統合を体験できます。
RobloxはZ世代を中心に、世界中で人気のゲームや仮想体験を作成・共有できるメタバースプラットフォームです。若年層の高い没入率とコミュニティ参加型の特性から、次世代マーケティングの場として注目されているため、バーチャル空間での消費行動に慣れた層にリーチする強力な手段です。
従来のSNS広告やECサイトでは届かなかった層へのアプローチ方法として、ブランドの認知拡大と新たな収益源の創出となるでしょう。
CV率向上につながる決済・割引の強化
AIやグローバル展開など、大きなビジネスのトピックももちろんですが、基本的なEC機能の強化もしっかり行われています。EC運用に役立つ新機能は積極的に活用していきましょう。
Apple Payがサブスク商品の支払いに対応
ShopifyペイメントでのApple Payの対応範囲が拡大し、MastercardまたはVisaカードで支払い登録されている場合は、定期購入(サブスクリプション)商品にも利用可能となりました。
Apple Payは世界で5億人以上に利用されており、特にアメリカのデジタルウォレット市場では90%以上のシェアを占めています。顧客が慣れ親しんだ支払い方法でサブスクができるのはメリットでしょう。
1つのクーポンに複数の割引を適用
これまで1つのクーポンコードで適用できるのは1種類の割引のみでしたが、今回のアップデートで複数の割引を同時に適用できるようになりました。例えば「SUMMER2025」というコードを入力するだけで、商品20%オフと送料無料の両方が一括で反映されるといった複合的なプロモーションが簡単に実施可能になります。
対応するディスカウントアプリを活用することで、店舗側はキャンペーンの柔軟性を高め、より高いコンバージョン率を期待できるようになります。
EC運用を加速させる新機能を使いこなそう
今回のShopify Editions 2025夏では、AIの活用、グローバル対応の強化、マルチチャネル展開の進化など、EC事業者にとって魅力的なアップデートが数多く登場しました。これらの新機能を効果的に取り入れることで、日々の運営効率を高めるだけでなく、顧客体験や売上成長にも直結します。
BiNDecでは、Shopify Premierパートナーとして、競争が激化するEC市場で一歩先を行くために、最新機能を積極的に活用したShopifyのEC構築・運用支援を行なっています。
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