販売チャネルが多様化している昨今、事業の安定と拡大のためには、販売戦略をもとに自社商品の魅力を効果的に顧客に伝え、適切な販売方法を実行していかなければなりません。しかし、どのように販売戦略を立案すればよいか、悩んでしまうことも多いのではないでしょうか。
本記事では、販売戦略と営業戦略との違いや、販売戦略を立てるメリットなどのほか、立案手順や戦略の種類、立案に役立つさまざまな分析手法のフレームワークを解説します。
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販売戦略とは、自社の商品・サービスの販売方法を定める戦略
販売戦略とは、自社の商品やサービスの販売方法を定める戦略のことです。具体的には、商品の売り方に関する5W1Hを検討します。
- Who:誰をターゲットに売るのか
- What:何を売るのか
- Why:なぜ顧客はそれを買うのか
- When:いつ買うのか
- Where:どこで、どの媒体で売るのか
- How:どのように顧客にアプローチするのか
例えば、ペンを売りたい場合、ペンの在庫を自社で抱えているだけでは、買いたいという人は現れません。顧客に対して、ペンを売ることができるとアプローチをする必要があります。では、顧客とはどのような人物でしょうか。また、アプローチされた顧客はいつ、どのような理由でペンを買うのでしょうか。
顧客に商品を買ってもらうためには、適切なターゲットに、ターゲットが必要としている商品を、適切な方法でアピールし、必要なタイミングで販売しなければいけません。5W1Hを検討し、販売戦略を明確にすることで、売上の最大化を狙いやすくなるでしょう。
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営業戦略との違い
販売戦略と似た言葉に営業戦略がありますが、販売戦略では、効果的に商品を販売するための仕組みづくりを考えるのに対し、営業戦略では、あくまでも営業方針を決定するという点が異なります。
営業戦略とは、売上目標達成のために立案される中長期的な計画です。売上の最大化を目指すという意味では、営業戦略と販売戦略のゴールは同一ですが、営業戦略は営業活動に特化した戦略です。まずは目標の売上ありきで、それを達成するためにどのように新規顧客やリピーターを獲得していけばよいのかといったことを検討します。
一方、販売戦略では、市場調査や顧客分析を行って自社の立ち位置や顧客のニーズを把握することを最初に行い、調査にもとづいて課題の洗い出しや目標設定などを行って売上の拡大を目指していきます。販売を効率的に行うための、総合的な仕組みづくりを行うのが販売戦略です。
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社内リソースを効率化。販売戦略を立案するメリット
販売戦略のメリットは、立案することでより効率良く自社の持つリソースを活用できる点です。
例えば、これまで自社のショップ店頭に並べて販売していた商品があったとします。これをECサイトで販売しようと思った場合、販売戦略を立案していないと、自社ECサイトでの販売と楽天市場やAmazonといったECモールへの出店のどちらが適しているのかはわかりません。また、ターゲット層にはどのような宣伝方法が合っているのか、スマートフォンとパソコンどちらで買う顧客が多いのか、といったことなども何もわからないまま、場当たり的な展開をすることになってしまいます。
運が良ければ、偶然ターゲットの状況と販売方法がマッチして想定した売上が得られるかもしれません。しかし、通常は販売方法がマッチせず、期待どおりの売上につながらない可能性のほうが高いでしょう。将来、売上が落ちた際も、最初に販売戦略を立てていなければ、これまでの何が良くて売上が上がり、今はどのような原因で売れなくなったのか、といったことが把握できません。
顧客への販売方法や販売チャネルが多様化している昨今では、幅広い選択肢の中から効果的に自社商品を売り込む方法を選択するために、販売戦略によってアプローチ方法を明確にする必要があります。その上で効果検証を行い、改善していくことで、限りあるリソースで最大限の効果を得るための方法を見つけられるのです。
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まずは調査からスタート。販売戦略を立案する手順
販売戦略の立案は、調査や課題の把握といった準備を経て行わなければなりません。販売戦略立案の手順を、3つのステップに分けて解説します。
1. 競合・市場・顧客ニーズの調査
最初のステップでは、競合と自社、市場、顧客の現状について調査を行いましょう。競合他社の現状はどうなのか、その中での自社の立ち位置は現状どこにあるのか、市場がどのような状況にあるのか、顧客の現在のニーズはどこにあるのかを明確にします。
2. 課題の把握
競合と自社、市場、顧客の現状を把握できたら、次のステップはその調査を元に自社の課題を洗い出すことです。最初に現状を正しく把握しておくことで、自社の課題を深掘りして客観的な視点で見つけられるようになるでしょう。
他社との差別化要因や、利益向上の重要指標となる原価率、売上向上に重要なリピート率・顧客満足度など、さまざまな視点から自社の商材を分析し、業績アップへの課題がどこにあるのかを検討します。
顧客アンケートを実施すると、顧客のリアルな声を把握することが可能です。アンケートによって、顧客が自社商品について何を考え、どのようなことを求めているのかを把握すれば、課題解決のためのヒントになります。
3. KPIの設定
課題を把握したら、課題を解決し、自社の状況を改善していく際の基準となるKPIの設定が必要です。
KPIとは、戦略のパフォーマンスを測定するための指標です。何をKPIに設定するかは企業ごとに異なりますが、一般的には利益率やリピート率、月間売上高などを設定します。
課題を解決することで自社の何を改善したいのかを明確にして、目標とする指標と数値を設定してください。具体的な目標数値が決まったら、目標を達成するための販売戦略を立て、関係者に共有することで販売戦略の立案は完了です。
販売戦略が立てられたら、戦略を実行に移して適宜効果測定を行い、目標達成を目指していきます。
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代表的な4つの販売戦略の種類
販売戦略には、さまざまな種類があります。代表的な方法として挙げられるのは、下記の4種類です。
ランチェスター戦略
フレデリック・ランチェスターが提唱した、弱者が強者に勝つための戦略がランチェスター戦略です。元々は第一次世界大戦の際の戦争理論として考え出された戦略ですが、現在では企業の経営戦略にも応用されています。
経営におけるランチェスター戦略では、競争力は「商品力×販売力」で決まると考えます。幅広い市場で勝負しようとすると、販売力に劣る中小規模の事業者が大企業に勝つのは困難です。しかし、市場を細分化し、一部のニーズに特化した高い商品力を持つ商品を開発し、特定のターゲットに刺さるマーケティングを行うことで差別化をすれば、中小企業でも戦っていけるというのがランチェスター戦略の考え方です。
ランチェスター戦略で成功を収めるためには、適切なターゲットを設定して、自社ブランドや自社商品の立ち位置を明確にし、的確な商品開発やマーケティングを行っていく必要があります。
コストリーダーシップ戦略
コストリーダーシップ戦略は、競合に対して価格的な優位に立つことで競争力を高める戦略です。ただし、やみくもに価格を下げようとすれば利益率も下がってしまうでしょう。コストリーダーシップ戦略を成功させるためには、いかにコストを削減し、利益率を落とさずに価格を抑えるかが重要です。
コストを抑えるためには、大量生産や業務効率化による人件費削減など、さまざまな方法があります。その中のひとつの方法が、D2Cによる中間コスト削減です。小売店を通さず、メーカーが直接顧客に商品を販売するD2Cでは、コストを抑えて効率良くエンドユーザーに自社商品を届けられます。
D2Cのビジネスモデルについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
サンドイッチ戦略
サンドイッチ戦略は、中間の価格帯に最も利益率が高い商品やサービスを設定する戦略です。
例えば、松竹梅と3つのプランがあった場合、日本の顧客は中間の竹を選びがちな傾向があります。そのため、真ん中の価格帯に利益率の高い商品を設定することで、効率的に利益を上げやすくなります。
サンドイッチ戦略は、あくまでも顧客の傾向をもとに行う戦略で、企業側が中間の価格帯の商品を買わせようと働きかけるわけではありません。そのため、顧客に不満や違和感を抱かせることなく利益率を上げられます。
ただし、本当に自社のターゲット層が中間の商品を選んでいるかどうかについては、事前の調査や効果測定が必要です。
バンドル戦略
バンドル戦略は、利益率の高い商品と低い商品をセット販売する戦略です。「バンドル」は「束」「束ねる」といった意味を持つ言葉で、バンドル販売やバンドル効果といった使われ方をすることもあります。
飲食店のセットメニューなどは、バンドル戦略の典型例だといえるでしょう。2つ以上の商品をセット販売することで、顧客には定価よりも安いセット価格で商品を提供できます。一方、企業側としても、利益率の高い商品と低い商品をセットにすることで、結果的に利益率の底上げを狙えます。
ただし、人気の高い商品と低い商品を組み合わせて販売する「抱き合わせ商法」は、独占禁止法が定める「不公正な取引方法」とみなされる可能性があるため、注意が必要です。例えば、一般に入手が困難な商品を自社の不良在庫と組み合わせて販売し、消費者を「欲しい商品を手に入れるためには、不要な商品も買わなければならない」といった状況に立たせることは避けなければなりません。
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販売戦略立案に役立つフレームワーク
フレームワークとは、課題や状況などを特定のフレームに当てはめて、整理、分析する考え方です。市場分析や、顧客のニーズ・行動の分析、自社の立ち位置の把握などに役立つフレームワークの代表例を紹介します。
PEST分析
PEST分析は、外部環境の状態を総合的に把握するための分析手法です。PESTは、それぞれ「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」を意味します。
政治動向や法改正などの「政治」、為替や景気動向などの「経済」、トレンドの変化や人口動態などの「社会」、新技術や特許などの「技術」の4つの面から、外部環境による自社への影響を明確化することで、世情にあった商品展開が可能になります。
3C分析
3C分析は、「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの「C」の動向をもとに、自社が抱える課題や強みを明らかにするための分析手法です。特に、新規事業の計画やマーケティング戦略の決定をしようとする事業者にとっては、競合他社の中でどのように自社の魅力を打ち出していくのかを検討する際に役立つ分析手法です。
自社の顧客の属性やニーズ、競合他社の現状や顧客からの評価を含めた強み・弱み、自社への評価と強み・弱みなどを書き出して、どこに商機があるのかを検討します。
STP分析
STP分析は、ターゲットの設定や自社の立ち位置の確認に役立つ分析方法です。STPはそれぞれ「Segmentation(市場の細分化)」「Targeting(ターゲット設定)」「Positioning(ポジショニング)」を意味します。
人口、地域、ライフスタイルなどによって市場を細分化し、その中から自社の強みを活かせるターゲット市場を選び、ターゲット市場内での競合他社に対する優位性や自社の立ち位置などを明らかにすることで、販売戦略の土台となる考え方を構築できます。
SWOT分析
SWOT分析は、現状の問題を洗い出したり、経営戦略を検討したりする際に役立つ分析手法です。
「SWOT」は、それぞれ「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」を示します。このうち、強みと機会はプラス要因、弱みと脅威はマイナス要因となり、強みと弱みは内部環境、機会と脅威は外部環境に分類されます。
プラス要因 | マイナス要因 | |
強み | 弱み | |
機会 | 脅威 |
内部環境は、自社でコントロールが可能な要素です。まずは自社の持つ強みと弱みを書き出してみてください。一方、外部環境は、自社ではコントロールできない外部の環境です。自社の強みと弱みを把握したら、社会情勢やトレンド、他社の動きなどの中から、自社に有利となる機会の要素と、自社に不利となる脅威の要素について検討します。
強みを活かせる機会を見逃さず、弱みをカバーして脅威の影響を抑えるといった対策を実施することで、課題解決を目指しましょう。
4P分析
「Product(商品)」「Price(価格)」「Place(流通・販売方法)」「Promotion(販売促進)」の4つの「P」について考えるのが、4P分析です。
ある商品を販売するにあたっては、価格や販売方法などについて検討する必要があります。妥当な決定ができているかどうか、4P分析の4つの要素から自社商品を客観的に分析してみるのがおすすめです。商品の魅力は、4つの要素を掛け合わせることで決まります。価格帯に対して販売方法は妥当かどうかなど、4つのバランスを確認してください。
4C分析
4C分析は、「Customer Value(顧客価値)」「Cost(顧客にとってのコスト)」「Communication(顧客とのコミュニケーション)」「Convenience(顧客にとっての利便性)」の4つの「C」をもとに、商品・サービスの魅力を分析する方法です。
4P分析が事業者目線での分析であるのに対し、4C分析では、顧客から見た商品の魅力を考えます。顧客のニーズに沿っているか、顧客が負担するコストは妥当か、事業者側のメッセージが顧客に届いているか、顧客が便利に商品を購入できるか、といったことについて検討します。
ペルソナ分析
ペルソナ分析とは、ターゲットを明確にする際に役立つ分析手法です。「ペルソナ」は、商品やサービスを利用する顧客のモデルとなる人物像を指します。通常のターゲティングでは、年代や性別などを大まかに設定するだけですが、ペルソナ分析では、商品・サービスの販売とは関係のない個人の経歴や、趣味・嗜好、家族、住環境、金銭感覚などまで詳しく設定します。
細かいペルソナを設定することで、モデル像となる人物がどのような価値観を持ち、どんな商品やマーケティングに興味を示すのかがわかりやすくなります。
カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップとは、自社と顧客が接点を持つさまざまなシーンでの顧客の行動や考え方を検討するための手法です。顧客のペルソナを設定して、その行動を日常生活から総合的に分析していくことで、適切なマーケティングを行いやすくなるでしょう。
顧客が自社と最初に接点を持つきっかけとなるウェブ広告やSNSなどからスタートして、その後、自社のECサイトに訪れ、商品ページを見て、レビューなどを見て検討を行い、購入に至り、商品が届き、商品を使用するといった一連の流れの中で、どのようなことを考え、感情が推移するのかを検討します。
市場の分析も大切ですが、ペルソナ分析やカスタマージャーニーマップなどによって、自社の商品・サービスが顧客にとってどのような価値を持ち、顧客の感情がどのように動いていくのかを分析することも重要です。可能であれば、実際の顧客にアンケートを実施するなど、実態との乖離がないかどうかの調査も行うことをおすすめします。
コホート分析
コホート分析とは、「コホート」という共通する要素を持った顧客グループごとに、時間経過によってどのような変化が生じるのかを分析する手法です。ECサイトの戦略立案では、リピート率の向上が重要な要素になります。コホート分析を行ってリピート率を把握し、顧客の状態に応じたフォローを行えば、リピート率を向上することも可能です。リピート率の向上が重要なECサイトでの戦略立案には、特に重要な分析手法といえるでしょう。
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まとめ:ECサイトで販売戦略を効率的に立案するなら、Shopifyを活用しよう
販売戦略は、綿密に現状分析を行った上で業績向上を目指すために立案します。販売チャネルが多様化した昨今、安定的な企業成長のためには、販売戦略は必要不可欠です。
ECサイトにおいて、自社ならではの価値を顧客に浸透させるためには、市場や顧客のニーズを把握し、それに沿ったデザインや機能を備えたECサイトを構築しましょう。
ECサイト構築プラットフォームShopifyは、デザイン性の高さやアプリによる機能拡張性の高さなどが魅力のサービスです。どのウェブサイトを経由してECサイトを訪問したのかがわかる集客分析や、ECサイト内で検索された単語などの行動分析、購入に至る経緯などのマーケティング分析、リピート購入の期間ごとに分類したコホート分析など、販売戦略の立案や効果測定に役立つ分析機能も充実しています。
そのほかのShopifyのメリットなどについて詳しくは、下記の記事をご参照ください。
D2Cをこれから始めたい事業者や、ECサイトの販売戦略にお悩みの事業者は、Shopifyの利用を検討してみてはいかがでしょうか。Shopifyでどのようなことができるか気になる場合は、Shopifyのサイト構築・支援サービスであるBiNDecを提供する、WEBLIFEまでお気軽にお問い合わせください。
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