BtoBのDXを国内外で加速。KINTOがShopifyで実現した地域別対応と運用負荷を抑えるERP連携

BtoBのDXを国内外で加速。KINTOがShopifyで実現した地域別対応と運用負荷を抑えるERP連携

KINTOはShopifyとBiNDecを活用してBtoB向けのECサイト構築・拡張をどのように進めたのか──本記事では、株式会社キントー チーフブランディングオフィサーの小出 慎平氏、コミュニケーションDivisionの古内 果歩氏・中尾 友美氏にお話を伺い、BtoBでの業務効率化の加速、グローバル展開、ERP連携といった実務課題の解決方法について紹介します。
株式会社WEBLIFE 代表取締役 山岡 義正(左)/株式会社キントー チーフブランディングオフィサー 小出 慎平氏(右)

ブランド体現を大切に、海外、多店舗展開BtoC ECを叶えたShopifyの裏側も公開中。下記の記事も併せてご覧ください。

受注業務の効率化を加速。取引形態に応じたBtoB受注のデジタル化を推進

KINTOには、直営の実店舗はもちろん、卸先のショップやOEM提供先など多様な取引先が存在します。BtoBにおいても、取引先企業の買いやすさを考慮したうえで業務の効率化を図るべく、Shopifyを活用したEC構築を検討しました。

これまでも、取引規模や注文頻度が異なる法人顧客に対し、EDI受注も導入するなど、顧客それぞれに合わせた対応を行なってきました。しかし、従来の受注フローでは、社内リソースの圧迫や属人化が避けられず、業務の拡張性にも限界がありました。こうした課題に対し、Shopifyを活用したBtoB向けのECサイトの導入により、受注プロセスを再設計。少人数体制のまま、BtoB取引を加速できる仕組みを構築しました。

メール受注と人による在庫確認|BtoB対応で抱えていた課題とその影響

従来、KINTOのBtoB取引ではメールを通じて受注を行っていました。注文が届き、在庫を手で調べ、あれば注文受けるというような、在庫確認から決済までのプロセスは人の手が多くかかるフローで対応していたと中尾氏は振り返ります。

経済産業省の調査でも、近年BtoB取引におけるECサイト活用は着実に増加しています。その背景には、購買担当者のオンライン化志向や、業務効率化・非対面対応へのニーズの高まりがあります。従来の電話やFAXに依存した受発注体制では対応しきれない場面が増え、企業側にも受注業務の標準化や運用負荷の見直しが求められるようになっています。
経済産業省 令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書:BtoB-EC市場規模の推移 より抜粋
こうした潮流のなか、KINTOでも人的工数がかかっていたBtoB取引の一部をECサイトに移行し、少人数でも安定した運用を実現する仕組みづくりに取り組みました。

4つのBtoB ECをわずか3年で展開。欧米対応を支えたShopifyの強み

ECサイトでのBtoB受注にあたり、プラットフォームとして採用されたのがShopifyです。KINTOでは、BtoCで構築した国内ECサイトをベースに、デザインと構造を大きく変えることなくBtoB向けに転用することで、短期間での構築を実現しました。
これは、構築のスピードだけではなく、販売店にもKINTOの世界観や価値観を体感してもらいたいという考えに基づいています。KINTOらしさを知り、その先の顧客へ届けてもらうための体験設計を重視した結果、BtoBにおいてもBtoCのWEBアセットをそのまま活用できるようShopifyを選択しました。

ShopifyでのBtoB向けECサイト構築は「かかるリソースやスピードだったりが全然違った」と語る小出氏
2022年頃に日本国内向けのBtoB ECサイトからスタートし、その後、アメリカ、欧州、イギリスといった海外市場向けに全部で4つのECサイトを展開。国内向けの公開から海外向けに展開するまでに要した期間はわずか3年でした。元のECサイトを流用する構築を行う際の参照のしやすさや、最低限のところだけカスタマイズができれば、海外それぞれのマーケットに合ったECサイトが立ち上げられる点がShopifyを利用して得られた大きなメリットだったと中尾氏は話します。

海外展開において、国ごとに異なる税制や配送オペレーションへの対応がハードルとなりがちですが、BiNDecでは、これらの要件に対して、Shopifyの構成を可能な限り共通化した上で、各国の事情に応じたカスタマイズポイントを明確に切り分ける方針をとりました。
たとえば、アメリカのBtoB向けEC構築時には、送料計算の仕組みを整えるために想像以上の工夫が求められました。開発途中でShopifyのAPI仕様が一部変更される場面もありましたが、そうした変化にも柔軟に対応し、実現に向けた具体的な代替策を迅速に講じることで、安定した運用を可能にしています。欧州やイギリスにおいても、送り先や税制の違いに合わせてシステム側の処理を最適化するなど、Shopifyの柔軟性を活かしつつ、国別に異なる条件へ個別対応を行っています。
こうした設計により、KINTO側では開発や運用を最小限の負荷で回しながら、各国の法制度や物流要件に適応したEC運用が実現できる体制が整えられました。
「共通で対応できる構成は流用しつつ、細かい違いもヒアリングの上でShopifyに適応する方法を詰めていった」と振り返る山岡

日本のBtoB取引に合わせた要件をShopifyでどう実現したのか

BtoB向けのECサイトでは、取引先ごとに異なる価格設定や支払い条件など、BtoC向けのECサイトとは異なる要件が求められます。ShopifyでBtoB向けのECサイトを構築する際には、アプリやカスタマイズを活用するケースと、Shopify PlusプランのBtoB機能を利用するケースの2つの選択肢があります。

Shopify PlusプランのBtoB機能では、法人取引向けの要件に対応するための専用機能が用意されており、拡張アプリや個別開発に頼らずとも、多様な条件に合わせた設計が可能です。企業情報の登録、支払い方法や条件、最低注文数などを個別に設定でき、法人取引ならではの多様な要望に応えることができます。
Shopify PlusプランのBtoB機能。Shopifyをすでに利用していれば、PlusにアップグレードすることでBtoBの販売が可能になる。

Shopify PlusプランのBtoB機能はグローバル基準で日々進化を続けています。一方で、日本独自の商習慣や運用には細かな調整が求められるケースもあります。たとえば、ログイン時にメールで届く認証コードを使うパスワードレス認証は、セキュリティや利便性の観点で優れた仕組みでありつつも、日本の法人取引においてはまだ一般的ではありません。

KINTOでは、そうした日本の商習慣や運用実態も踏まえ、BiNDecの支援のもと、BtoCのECサイトをベースにアプリを活用することでBtoB取引に必要な機能を柔軟に実装する手法を採用し、BtoB向けECサイトの構築を進めました。
KINTOのBtoB ECサイト。アクセスした時点で、個別のログイン情報を求めることができる。

WEBLIFE eye
Shopify PlusプランのBtoB機能を活用する方法と、BtoCの仕組みを利用して対応する方法のどちらも選択できる柔軟性こそがShopifyの強みです。BiNDecでは、企業ごとの運用や業務フロー、国内外の商習慣に応じて、BtoBに最適な形でのShopify導入・活用をご提案しています。

Shopify × Celigo × NetSuiteで実現。変化に強いBtoB EC基盤

グローバルでBtoB ECを展開するうえで、ERPとの安定的な連携は避けて通れない課題です。KINTOでは、各国の業務要件に対応しながらも保守性と効率を両立するため、ShopifyとCeligoとOracle NetSuiteという構成を選びました。なぜこの構成が最適だったのか。実運用での成果とともに、その理由を紐解きます。

複数チャネル運営や海外EC管理をスムーズにするERP連携

BtoB向けのECサイトを構築するうえで特に大きな課題になるのが、ERP(Enterprise Resource Planning)とのデータ連携です。受注や顧客情報、在庫や出荷状況など、社内のあらゆる情報を正確にECサイトとつなげるには、単純な作りではなく、将来の運用も見据えた柔軟な設計が必要になります。
KINTOでは、複数チャネルでの在庫管理をまとめたり、海外との取引を管理するためにOracle NetSuiteをERPとして導入しています。ただ、国ごとに異なる業務ルールや情報を正確にやり取りするには、ECサイト側とのデータ連携がとても重要です。

そこでBiNDecでは、個別にシステムを開発してつなぐのではなく、汎用的で拡張性の高いiPaaSの「Celigo(セリゴ)」を中間に入れる方法を採用しました。Celigoを使うことで、ShopifyとOracle NetSuiteの間で必要なデータを正しく受け渡し、形式を変換したりマッピングを調整したりする作業を自動化できます。これにより、大がかりな専用開発を減らしつつ、安定した連携と将来的な変更への対応を両立できるのが大きなメリットです。

トラブルなく運用できた理由は構築時の整備とCeligoにあり

この仕組みによって、ShopifyやERP側の仕様が変わった場合でも、直接ECサイトやERPそのものを大きく作り替える必要はありません。間に入る仕組み(Celigo)が「変換役」となって調整を吸収するため、保守性とコスト効率を両立できます。たとえば、新しい項目が追加されても、フルスクラッチ開発ではなく設定変更レベルで対応が可能です。
KINTO側では、在庫データのズレや受注情報の取り込みエラーなど、連携特有のトラブルを気にすることなく、受注から出荷までを安定して運用できるようになっています。
ShopifyとOracle NetSuite間で注文、商品、顧客、決済情報をスムーズに統合できる
山岡は、ECサイトとERPをつなぐ部分は、構築でつまずきやすいポイントだと指摘します。特に、企業ごとに一から作り込んだ専用システムでは、仕様が変わるたびに大きな改修が必要になり、その分コストや運用負荷も増えるリスクがあります。その点、Celigoを使った仕組みでは、あらかじめ用意された連携の型をベースに、必要な部分だけを軽く調整するだけで対応できるため、長期的な運用でも無理なくメンテナンスが続けられます。
また、ノーコードや簡単な設定で、各国ごとに異なる取引条件や業務ルールにも対応できるため、KINTOでもトラブルを抑えながら安定した情報連携を維持することができています。
欧州、イギリスのBtoB ECサイト。最初にどちらを利用するのか選択する仕組みになっている。

ただし、構築フェーズでは十分な仕様調整やテストは必要です。例えば、ストアの構成がシンプルな欧州向けのECサイトでも特有の税率対応が必要でした。日本でいう「消費税」のような付加価値税(VAT:Value Added Tax)が欧州での取引には適用されます。このVATは、欧州のどこの国に所在地がある企業なのかでも税率が異なるため、購入者の国に応じて正しいVATを計算・適用する必要があります。
KINTOの場合、「1アカウント1配送国」の制限を設けることで、国ごとのVAT対応をシンプルに管理できるように対応を行っています。

一般的にはカスタマイズを増やすほど運用管理が複雑になりがちですが、KINTOではCeligoやERP上での調整が必要なことはありつつも、この数年間大きなトラブルはなく、負荷を抑えることができています。実際、海外ストアの運用担当者からも、特殊な要望を含みながらも安定して稼働しているという評価が寄せられているようです。

Shopifyは常に最新。API更新に自動対応し、保守コストを抑えて長期運用

さらに、Shopify自体が常に最新のクラウド環境を提供することで、ERP連携を含む全体設計が長期的に陳腐化しにくい点も大きな強みです。
独自開発のECプラットフォームでは、システムの老朽化による大規模アップデートや保守コスト増大が課題になりがちですが、Shopifyは最新機能やAPI更新への追従を自動で行えるため、ERP側の変更や拡張にも柔軟に対応しやすくなります。
山岡は、「初期開発だけでなく、将来的な保守コストを見据えた設計こそが重要」だと話します。KINTOが選んだShopify×Celigo×NetSuiteの構成は、グローバル展開でも国ごとの要件に対応しつつ、一貫して管理・運用できる体制をつくりあげています。

Oracle NetSuiteとShopifyの連携や事例について、詳しくはこちらの記事でも紹介しています。

少人数でも多国展開できる。BtoB取引の関係構築まで可能にする仕組み

ECサイトが法人とのつながりを支える大きな役割を果たすようになり、今後、BtoB取引でも「業務効率化」だけでなく「関係性構築」の役割を担う存在としてECサイトは進化していくと考えられます。

KINTOでは、これまでメールで対応していた法人取引を一部ECサイト化することで、業務の負担を大きく減らすことができました。そして、BtoCの売上が伸びているなかでも、限られた人数で複数の国、さまざまな法人顧客と安定してやり取りを続けられる体制を整えています。
小出氏は売上が伸びている今でも担当者を増やさずに対応できていると話します。Shopifyを導入して業務プロセスの自動化が進んでいなかったら、より多くの時間や人員が必要だったかもしれません。
さらに、特定の担当者に頼らず、誰でもキャッチアップしやすいシステムと運用体制を用意したことで、担当が交代する場面や組織が大きくなるときにも対応できる柔軟さを持たせています。

ECサイトは、単に業務を効率化するだけでなく、取引先との関係をどう築き、深めていくかという場であるという視点がこれからますます大切になっていきます。BtoC ECサイトにおける海外、多店舗展開も含め、KINTOの取り組みはそんな未来を一歩先に示すモデルケースと言えるのではないでしょうか。

価格切替や取引先対応を標準化、ERP連携まで網羅|BiNDec MODEL BtoB

BiNDec MODEL
BtoBのECサイトには、取引先ごとの価格切り替え、大口注文、掛け払いや請求書発行など特有の商習慣への対応といった基本的な機能はもちろん、KINTOのように、単なる販売だけでなく顧客との関係性を深めていくためには、MAツールの導入やAIによるWEB接客なども今後必要になっていくでしょう。ただし、それをゼロから実現するには大きな知見と労力が求められます。

「BiNDec MODEL BtoB」は、WEBLIFEが長年にわたり培ってきたECサイト構築・運用の知見と、最新のトレンド・技術を掛け合わせたECサイトの構築モデルです。ゼロ設計ではなく、実績ある構成と機能をベースにすることで、コストとスピードの両立を可能にしつつ、段階的な拡張にも対応します。
できる限り構成を標準化し、必要なソリューションを段階的に導入していくことで、カスタマイズを重ねがちなECサイト運営で起こりうる、過度なカスタマイズによる保守性・互換性の低下を避けられます。

アナログな法人対応に限界を感じているブランドにとって、次の卸売の形を実現するための起点となるよう、BiNDecがサポートします。

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POINT

  • KINTOではBtoBのECにもShopifyを採用。既存のBtoCサイトを基盤にすることで効率的な構築を可能にした
  • Shopify・Celigo・Oracle NetSuiteという構成でグローバルのBtoB運用でも保守性と効率を両立している
  • BiNDecでは、過度なカスタマイズを避け安定稼働を叶えるBtoB EC構築をトータル支援している