ECにおけるカゴ落ちは「価格」や「商品力」の問題で顧客が購入に至らないのではなく、購入直前の入力の手間や、支払い方法に対する迷いや不安によって引き起こされている可能性があります。
「Apple Pay」は、そうした購入時のストレスを解消できるモバイル決済手段で、Shopifyを利用しているECサイトであれば、簡単に導入可能です。
本記事では、Apple Payがなぜカゴ落ち防止やCVR改善につながるのか?どのように導入・最適化すべきかを、実務視点から解説します。
Apple Payは安全なモバイル決済の代表格
Apple Payは、単に「iPhoneでクレジットカード情報を呼び出して決済するための仕組み」ではありません。他に類を見ないプライバシー保護とセキュリティ機能を備え、Apple製品の利用者であれば誰もが対応カード(※)と紐付けして使える決済手段です。
基本的には、Visa/Mastercard/JCB/American Expressなどの国際ブランド付きのコンタクトレス決済可能カードであればApple Payに登録でき、対応しているリアル店舗やECサイトで利用できます。後述するように、特にiPhoneでのモバイル決済に最適の仕組みといえるでしょう。
Apple Payは、支払いに関するカード番号や個人情報を加盟店に渡すことがなく、Apple自体もその内容を知ることはできません。代わりに、トークンと呼ばれる暗号化された情報を使って決済処理を行い、支払い時にはFace IDやTouch IDなどの生体認証が必要なため、不正アクセスのリスクが低く、プライバシーとセキュリティの両面で優れた設計となっているのです。
また、EC事業者にとっては、決済に伴う個人情報の取り扱いリスクを低減できるメリットもあります。一般的なクレジットカード決済の場合、加盟店側でカード情報を扱う必要があるため、クレジットカード業界の情報セキュリティ基準であるPCI DSSなどの遵守負担が発生しますが、カード情報を知り得ないApple Payでは、その負担を大きく軽減できるわけです。
米国で一般的な支払い手段になりつつあるApple Pay
世界的に見てもApple Payは普及が進んでおり、とくに米国ではその存在感が大きいです。直近の統計では、米国内のモバイルウォレット取引のうち約54.8%がApple Payによるもの(*1)であるとされており、いわゆる「スマホ決済」の分野で主要な位置を占めています。
また、米国の小売業者の約85%がApple Payを受け入れているとされ(*2)、実店舗・ECを問わず幅広い場面で利用が可能です。 米国は元々クレジットカード文化が強い国ですが、デジタルウォレットの利用率は上昇傾向にあり、Apple Payのような決済手段が消費者行動の一部になりつつあります。

オンライン決済ではPayPalや一般的なクレジットカードとの競争も激しいものの、ユーザー数の多いiPhone利用者にとってのハードルが低いことや、カード情報や住所を入力せずに使えることから、有力な決済手段としてシェア拡大中です。
このような背景があるため、日本のEC事業者にとっても、越境ECや米国をターゲットとする場合は、Apple Payへの対応がおすすめです。
*1=Apple Pay Statistics
*2=PYMNTS INTELLIGENCE ApplePay@11
Apple PayがECのCVR向上に効く3つの理由
ECサイトにおいて、最終的に購入を完了する割合(CVR)を左右するのは、商品力だけではありません。決済直前における「入力のストレス」や「セキュリティへの心理的抵抗」による離脱を防ぐことが極めて重要です。Apple Payは、以下の3つの側面からこの問題にアプローチし、CVRを確実に押し上げます。
1. 「入力不要・即時認証」による離脱の防止
Apple Payは、配送先住所やクレジットカード情報をフォームに入力することなく、Face IDやTouch IDなどの生体認証だけで決済を完了できます。 決済サービスのStripeによる調査では、Apple Payのボタンをチェックアウトの早い段階(カート画面など)に表示することで、CVRが2倍になったという結果も報告されています(*3)。購入意欲が最も高い瞬間に「手間のない購入体験」を提供できることが、カゴ落ち防止の決定打となります。
2. 「カード情報を渡さない」安心感の提供
初めて利用するECサイトに対し、購入者は「カード情報を入力して大丈夫か」という不安を抱きがちです。Apple Payはトークン化した暗号化情報で決済を行うため、加盟店側に実際のカード情報が渡りません。 この「個人情報を渡さずに安全に支払える」という体験は、特に新規客の心理的ハードルを下げ、コンバージョンへと導く強力なフックとなります。
3. 運営側のリスク低減と信頼性の向上
Apple Payの導入は、事業者にとっても大きなメリットがあります。カード情報を自社で保持・管理する必要がないため、個人情報の取り扱いリスクを大幅に低減できます。 セキュリティ事故のリスク低減だけでなく、内部統制や監査対応の負担軽減にもつながるうえ、Appleという世界標準のブランドが提供する安全な決済インフラを提示できるため、サイト全体の信頼性向上にも寄与します。

*3=Testing the conversion impact of 50+ global payment methods
Apple Pay決済を導入したECサイトならShopifyがおすすめ
Apple Payは高度な決済技術を使ったサービスですが、実は、Shopifyを利用しているECサイトにとっては、導入のハードルが非常に低い決済手段でもあります。その理由は、ShopifyがEC運営に必要なインフラやセキュリティ要件を、あらかじめ包括的に整えているためです。
Apple Payの導入にあたって、EC事業者が直面しがちな「技術的な設定の複雑さ」や「セキュリティ要件の厳しさ」は、存在しないといって良いでしょう。
ShopifyならApple Payの導入条件をほぼクリア
Apple Payを利用するには、WebサイトがHTTPS(TLS)に対応していることや、一定のセキュリティ要件を満たしていることが前提となりますが、Shopifyではすべてのサイトに対して常時SSL(HTTPS)が標準提供されており、証明書の取得・更新・管理もShopify側で自動的に行われます。
また、Shopify Paymentsを利用している場合は、Apple Payとの連携も公式にサポートされており、Apple側への個別申請や複雑なドメイン認証作業も必要ありません。
ただし、Apple Payに登録されたカード会社や決済代行側の制限として、一部のデジタル商材や特定の業種(金融・投機性が高いものなど)、あるいは国・通貨の組み合わせによって利用できない場合や、LPがWordPressなどの外部CMS利用、サブドメインで別サーバー運用、iframeで外部ページの読み込みなどがあって、それらのページがHTTPSをサポートしていない場合には、Apple Payを使うことができません。
Apple Payによる決済のコスト・手数料
新たな決済手段を追加する場合には、その利用に関わるコストも気になります。この点に関して、Apple Payそのものには、Appleに支払う利用料や月額費用などが一切発生しません。「Apple Payを使うことでコストが上乗せされる」ということはないので安心してください。
注意すべきなのは、Apple Payはあくまで決済手段(支払い方法の窓口)であって、実際の決済処理はShopify Paymentsなどの決済代行サービスを通じて行われるという点です。つまり、Shopify Paymentsのクレジットカード決済手数料や利用するプラン・国・通貨に応じた処理手数料といった、通常の決済手数料は発生します。
| 日本のクレジットカード | 海外・AMEXのクレジットカード | |
| 5% | 5% | |
| 3.55% | 3.9% | |
| 3.4% | 3.85% | |
| 3.25% | 3.8% | 2.9% | 3.75% |
Shopify Paymentsについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
ShopifyはApple Payのエクスプレスチェックアウトに対応
Apple Pay導入において大切なのは、「ショッピング導線のどこに表示するか?」という視点です。Shopifyには、あらかじめ決済サービスに保存された情報と認証だけで支払いを完了できるエクスプレスチェックアウト(かんたん決済)という機能があり、Apple Payも対応しています。
情報入力の途中で離脱しやすい課題をクリア
Apple Payが最も力を発揮するのは、顧客に「面倒な入力をしなくても、すぐに支払える」ことを認識してもらえた瞬間です。
一般のクレジットカード決済では、購入者が、住所、氏名、メールアドレス、カード情報などを入力した後で決済サービスを選択しますが、この過程に手間取ると購入意欲が削がれ、カゴ落ちを招いてCVR低下の要因となることが少なくありません。
Apple Payによるエクスプレスチェックアウトでは、チェックアウト画面の最上部にApple Payのボタンが表示されるため、ワンタップで項目が自動入力されます。購入を決めた際に、心理的なハードルを一段下げ、離脱が起きる前に、購入完了まで導くためのショートカットとして機能するのです。

顧客のモバイル比率が高いほど出やすい効果
また、Apple Payの効果は、顧客の利用環境によっても差が出ます。Apple PayはAppleデバイスを前提とした決済手段です。そのため、顧客のAppleユーザー比率が高いサイトほど、利用率も自然に高まります。
中でも影響が大きいのがモバイル比率です。特にデスクトップMacやノートMac、iPadに比べて画面が小さく物理的なキーボードを持たないiPhoneでのEC利用では、文字入力やフォーム操作の負担が大きくなります。したがって、入力を省略できるApple Payの価値は、iPhoneユーザーが多いサイトほど高まるのです。
そこで、まずは自社ECのアクセス解析を行って、AppleデバイスとWindows/Androidデバイスの比率、iPhoneユーザーの割合、カート〜チェックアウト間の離脱率などの指標をチェックしてみましょう。その結果、上記の条件に当てはまるECサイトであれば、Apple Payをエクスプレスチェックアウトとして活用することで、その効果を最大化できることになります。
Shop Payとの比較と他のペイメントサービスと併用する意味
一方で、Apple Payを検討する際には、Shopify公式の決済サービスであるShop Payの存在を意識しておくことも大切です。「どちらを選ぶべきか」、あるいは「どちらか一方に絞るべきか」と迷うEC事業者もいることでしょう。
結論からいえば、Apple PayとShop Payとは、競合というより役割の異なる補完関係にあります。重要なのは、どちらか一方を導入することではなく、顧客が慣れた支払い手段を選べる状態を作り出すことなのです。
Shop Pay:Shopify公式決済の強み
Shop Payは、Shopifyが公式に提供している決済サービスで、Apple Payと同じくエクスプレスチェックアウトに対応しています。他のECサイトでも一度Shop Payで購入したことがあれば、初めて購入するECサイトでも配送先や支払い情報を入力することなく、確認コードの入力だけで購入を完了できます。
この仕組みは、リピート購入との相性が非常に良いことが特徴です。特に、同一ECサイトやShopifyエコシステム内での購入経験があれば「迷わず使える安心な決済手段」として機能します。
また、Shopifyの管理画面や分析機能との親和性が高く、Shopify運営者にとって扱いやすい決済手段である点も大きなメリットです。Shop Payは、北米市場を中心にCVR改善効果を示すデータも多く、ECサイトにおける標準決済サービスとして位置づけられています。Shop Payの特徴や使い方について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
Apple Pay:デバイス起点の安心感と即時性
これに対して、Apple Payの強みは、Shopifyというプラットフォームに限らず、購入者が日常的に使っているAppleデバイス起点で完結する点にあります。iPhoneやApple Watchを使い慣れている人にとって、Apple Payは「どのECサイトでも同じ操作で使える」決済手段なのです。
そして、Face IDやTouch IDによる生体認証は、支払い時の安心感とスピードを同時に提供してくれるほか、Apple Payには初回購入時でもフォーム入力や確認コードが不要なので、初めてのECサイト利用客にも効果を発揮しやすいこともメリットです。
こうしたポイントを踏まえると、新規顧客が多くiPhoneユーザーによるモバイル経由の購入が中心のECサイトであれば、Apple PayによるCVR改善効果を期待できることになります。
複数決済から選べることの重要性
これまで説明したように、Shop Payは「過去にShopifyで購入したことがある」顧客に強い一方で、Apple PayはAppleユーザーを中心にECサイト初訪問・初購入の顧客でも使いやすいという違いがあり、ターゲット顧客が異なります。これと関連して、ECにおける決済体験で見落とされがちなのが、「どの決済が最も優れているか」よりも「顧客が慣れている決済を選べるか」という視点です。
購入者は、必ずしも最先端の決済手段を求めているわけではありません。「いつも使っている」、「安全だと理解している」方法で支払えることが、購入完了の後押しになるのです。
逆に、特定の決済手段に絞ることは、一部のユーザーにとっての利便性を高める一方で、別の購入者にとっては「使い慣れない不安要素」になる可能性すらあります。
そのため、Apple PayかShop Payかという二者択一ではなく、また、クレジットカードやPayPalとの優劣比較でもなく、それらのすべてを適切に併用する導線設計が、結果的に全体的なCVRの底上げにつながるわけです。
決済の安心感を伝えるECサイト設計
もちろん、どれだけ便利で安全な決済手段を用意していても、顧客にそれが正しく伝わっていなければ、CVR改善にはつながりません。とくに初回購入の多いECサイトでは、「このECサイトで安全に支払えるのか」という不安が最後の離脱要因になることも少なくないため、丁寧な説明が求められます。
Apple PayやShop Payのような信頼性の高い決済手段は、選択できること自体が購入体験上の安心材料になりますが、それをどう伝えるかによって、効果に大きな差が生まれるのです。
決済説明ページが与える心理的効果
このことをよく理解している一部のECサイトでは、Apple PayやShop Payについて専用の説明を用意しています。これは決済機能を詳しく解説することが目的なのではなく、「このECサイトは支払いの仕組みをきちんと説明している」という安心感を顧客に与えるための設計です。
顧客は、決済の技術的な詳細を理解したいわけではありません。しかし、「どんな方法で支払えるのか」、「本当に安全なのか」が、きちんと明示されていることで、不安は大きく軽減されるのです。
Apple Payに関しては、特に、基本的な仕組みに加えて、カード情報がECサイト側に保存されないことや生体認証による支払いである点を簡潔に説明するだけでも、購入直前の心理的ハードルを下げる効果が見込めます。
Shopifyのチェックアウトページには、フッターに任意の各ポリシーへのリンクが設定できます。ポップアップ表示でチェックアウトページを離脱しないため、この機能を活用すると良いでしょう。

「安全に支払える」ことの可視化が効果的
決済に対する安心感は、文章だけでなく、視覚的な要素によっても強化されます。つまり、Apple PayやShop Payのロゴを提示したり、「安全なチェックアウト」や「迅速で安心できる支払い」などの短いメッセージを表示することが、顧客にとって直感的に信頼感を抱くための手助けになるのです。
そうするうえで重要なのは、これらをフッターの奥や利用規約の中に埋め込むのではなく、購入導線の中で自然に目に入る位置に配置することにあります。たとえば、カート画面やチェックアウトの冒頭、決済ボタン周辺などで「安全に支払える」ことが視覚的に伝わると、顧客が次のアクションへ進みやすくなるためです。
チェックアウト画面に任意の文言を入れるには、Shopify Plusプランの契約と専用のShopifyアプリが必要です。BiNDecのチェックアウトカスタマイズアプリなら、ノーコードでチェックアウト画面をカスタマイズできるようになります。詳しくは下記のページをご覧ください。
ShopifyでのApple Pay導入は「カゴ落ち対策」の要
Apple Payは、即決性や安心感の点で、他のモバイル決済にはないメリットを持つ決済手段です。しかし、「導入すれば終わり」ではなく、「ECサイト自体をどう設計し、どう使うか」が、その真価を発揮させるための重要なポイントになります。本記事で解説した通り、Apple Payの真価を引き出すには、単に機能を有効化するだけでなく、エクスプレスチェックアウトの最適な配置や、顧客の不安を払拭する導線設計が不可欠です。
「自社のショップでApple PayがどれほどCVRに寄与しているか」「Shop Payや他の決済手段とどう併用すべきか」といった課題にお悩みの方は、Shopify Platinum パートナーであるBiNDecへぜひご相談ください。
BiNDecでは、豊富な導入実績に基づき、チェックアウト画面のカスタマイズから、ターゲット層に最適な決済UXの設計まで、一気通貫でサポートいたします。カゴ落ちを最小限に抑え、売上を加速させるECサイト構築を目指しましょう。



