BtoB-ECとは?取引を効率化する仕組み EDIの基礎知識と2024年問題への対策

今回は、今後の動向が注目されるキーワード「EDI」について取り上げます。ECサイト構築サービスのShopifyでもこの動きを踏まえて続々と新機能をリリースしていますのでご紹介していきます。

EDIとは?

EDI(Electronic Data Interchange)は、日本語では「電子データ交換」と訳されます。企業間でやり取りされる書類(契約書や受発注関連の書類など、商取引で必要な文書)を、電子データとして専用回線やインターネットを通じて自動的にやりとりするしくみのことです。

これまでは、こういった文書を紙で出力して郵便やFAXで送ることが一般的でしたが、電子データにして自動的に送るしくみにすることで、送付コストの削減やペーパーレス化が実現できます。また、管理が効率化されて人為的なミスも減るので人的コストも削減されることが期待できます。

日本での電子商取引の市場規模は年々増加

日本では1980年代から大企業を中心に専用回線を用いたEDIの導入が行われてきました。 2022年8月に経済産業省が発表した報告書によると、EDIを含めた日本での企業間での電子商取引の市場規模は年々増加しています。

日本でのBtoB-EC 市場規模(EDIも含む)

参照元:令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書(2022年8月:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課)

EDIのしくみと種類

EDIは、文書を電子データ化し、取引先のシステムへ取り込めるようにデータを変換してやりとりします。このため、取引先のシステムの仕様に応じて、どのように変換を行うかルールをあらかじめ決めておく必要があります。このルールの決め方によって、EDIにはいくつかの種類があります。

個別EDI:取引先ごとにルールを決める

取引先ごとにそれぞれ変換するルールを決めるEDIです。細かな仕様まで取引先に合わせることができるというメリットがある一方、複数の取引先とのやりとりの場合には取引先ごとにルールを決めなければならず、EDIを導入していても管理が煩雑になってしまうというデメリットがあります。

標準EDI:中立的な機関により標準ルールを決める

取引先とのやりとりについてあらかじめ決められた共通の変換ルールに従うEDIです。取引先の拡大にも対応がしやすく、企業間の力関係にも左右されないため、受注側の負担を軽減できるというメリットがありますが、各企業のシステムをそのルールに合わせる必要があり、調整が必要になります。

業界VAN:業界ごとにルールを決める

業界ごとに決められたルールを定めたEDIで、標準EDIの一種です。たとえば、商品コードや取引先コードを共通にすることで、同じ業界VANを利用している企業同士のやりとりがしやすいという特長があります。

WEB-EDI:インターネット経由のEDI

これまでのEDIは専用回線経由で行われてきましたが、インターネットの普及によりWEB-EDIが登場しました。インターネットとPCがあれば利用可能で、専用のEDIシステムが不要なため低コストでスピーディに導入ができること、専用回線よりもスピードが早いことが特長です。

ただし、WEB-EDIには標準ルールがなく、取引先ごとにルールを確認して対応しなければならないため、個別EDIと同様に取引先との調整が必要です。また、専用回線ではないためセキュリティ面の考慮も必要になります。

EDIをめぐる2つの課題と解決手段

この先の数年にかけて、EDIをめぐった大きな課題が2つあります。多くの企業に大きな影響が出ることが予想されています。

2024年問題

これまでのEDIでのデータのやりとりは専用回線(ISDN)経由で行われてきましたが、2024年にISDN回線の提供が終了することに伴い、既存のEDIを利用している企業が他のしくみに乗り換えなければならない状況を「2024年問題」と呼びます。どのような形に乗り換えるか、各企業に選択が求められています。

電子帳簿保存法の施行

2022年1月から施行された改正電子帳簿保存法で、電子取引で使われる帳票の電子データ保存が義務付けられました(2023年12月末まで猶予期間)。電子保存の対象となるデータにはEDIでやりとりされる文書も含まれていますが、EDI導入企業にとっては法律の要件を満たすように改修が必要であったり、未導入企業では電子取引の導入が必須となり、大きな影響があります。

2024年問題の解決手段・WEB-EDI

EDIの2024年問題の解決手段として登場したのがWEB-EDIです。

EDIは基本的に帳票のやりとりのような定型業務を効率化する目的で、受注側(売り手)が発注側(買い手)のシステムにフォーマットを合わせることが必要なため、システムの導入が「買い手主導」になる傾向があります。先述の通り、WEB-EDIはやりとりのルールが標準化されていないため、「買い手主導」の状況の中で受注側では取引先ごとに管理画面がある「多画面化」という状況も引き起こしています。取引先が多くなればなるほど管理が煩雑となり、コストが上がる場合もあります。

近年導入が増えている「BtoB-EC」とは?

こういった状況の中で、導入企業が増えてきているのが「BtoB-EC」です。 これまでは消費者に対する取引(BtoC)が多かったECサイトのシステムを使って、企業間取引(BtoB)を行うことを指します。

ECサイトのシステムを使うと、これまでEDIが担っていた受発注の帳票管理だけではなく、取引自体をWeb上で行うことで顧客管理も行うことができます。これによりスピーディな取引を可能にし、マーケティング施策もできるなど、業務効率化のメリットに加えて販路・売上の拡大も期待できるため、注目されています。

BtoB-ECは業務効率化だけでなく顧客にもメリット

Shopify構築・運用支援サービスのBiNDecにて、取引先向けにECサイトを運用しているワイン卸売業のAGRIの事例をご紹介します。以前は営業担当者がFAXや電話などで直接対応していた注文業務を、ECシステムが担うことで業務効率化が進み、他業務にもっと時間をかけられるようになりました。
ECで注文する顧客は紙の商品カタログを必要としないため、カタログ制作のコストも減り、新作商品もいち早く掲載できます。また、24時間いつでも注文できることも夜間に営業している顧客にとってメリットとなっています。
AGRIのtoB向けECサイト

ECシステムを使ったBtoBの取引は、以下のように利用されています。

会員登録が必要な「クローズドショップ」

既存の取引先との継続的な受発注業務や、代理店向けのECサイト、商品に関連する部品などのアフターセールスなどに利用されています。

顧客それぞれに対する設定の調整

顧客の状況によって売値や割引率、決済手段などを顧客別に調整することで、取引先ごとに対応がバラバラな問題を解決しています。

オンライン見積

ECシステムを使って商品の見積書を自動発行することで、お問い合わせを受けて手作業で見積書を作成して送信、といった売り手側の手間がなくなります。また、買い手側はいつでも簡単に見積書が発行でき、その見積書で購入処理も可能となるので、購入しやすくなります。

BtoCよりも販売規模が大きい購入方法への対応

「◯個以上から購入可能」といったロット購入や、親となる商品に付属して子商品を販売するバンドル購入、購入するものや個数が決まっている場合に登録しておき、いつでも購入できるリピート購入など、BtoCよりも規模が大きい購入にも活用されています。

高額商品のフォローとしての役割

ECシステムではボタンをクリックすれば購入できるため、初めて購入する高額商品では心理的に障壁がある場合もあります。そんなときに、初回の契約では営業担当が直接契約を交わし、2回目以降の取引でECを使うことで、2回目以降の契約のハードルを下げます。

ShopifyでBtoB-ECを実現する機能

ShopifyのBtoB向けの機能についての<a href="https://www.shopify.com/jp/plus/solutions/b2b-ecommerce" target="_blank">紹介ページ</a>。今年に入ってからも多数の新機能がリリースされている

オンラインでECサイトを構築できるサービスShopifyでは、BtoB-ECを実現する機能である「B2B on Shopify」を2022年11月から提供しています。

Shopifyは、2004年にカナダで創業したサービスです。2017年にShopify Japan株式会社が設立され、日本語対応も万全です。料金は月額固定で、モール型のような決済ごとの販売手数料がかかりません。自社でサーバーやシステムを構築する必要がなく、オンラインショップを手軽に始められるところが注目され、現在175ヵ国100万店舗以上で導入されています。ECサイト構築の分野では世界最大規模のシェアとなっています。

B2B on ShopifyはShopify Plusプランへ加入することで利用することができます。 Shopify Plusプランは、取引額の多い企業向けの最上位プランで、月額2,000USドルとなっています。他のプランと比べると月額費用は高額ですが、Shopifyのすべての機能が利用可能となり、専任のサポートを受けられるようになります。

ここでは、B2B on Shopifyで利用できる機能をいくつかご紹介します。

DTCとB2Bを同時に実現

メーカーが直接消費者に販売するDTC(D2C=Direct to Consumer)と、企業間の取引であるB2B(BtoB=Business to Business)を同じストア内で同時に実現できます。購入する人により表示する画面を振り分けられる一方で、管理側では商品を一元管理する、といったことが可能になります。もちろん、同じシステム内でサイトを分けることも可能です。

取引先企業専用のプロフィール設定

企業によって「カタログ」を設定し、取引先ごとに商品ラインナップの設定ができます。また、配送先も企業の拠点ごとに設定できるため、購入の都度発送先を入力する必要がなく、購入手続きがスピーディになります。

決済方法やタイミングの設定

通常のECサイトでは購入時に即決済されることが多いですが、BtoBの場合、日本では月末締め翌月末払いといった「支払いサイト」が存在する場合も多くあります。このような決済方法や決済のタイミングを取引先ごとに設定しておき、決済のタイミングで通知を送ることができます。

取引先ごとに割引価格を設定する

取引先ごとに販売価格を変えることができます。また、たとえば「◯個以上の購入で10%OFF」といった割引率の設定が取引先ごとに可能になります。

下書き注文機能

たとえば、電話やメールなどで注文が入った際に、販売側でShopify上で「下書き注文」を行って請求書を作成し、取引先に請求書を送る、といったやりとりができます。また、お客様からの注文をうけたあと、ストア側が承認してから受け付ける、といったフローにも使うことができます。

数量購入ルールの設定

特定の数量以上を注文しないと購入画面に進めない、といったルールを設定することができます。ロット購入が必要となる取引には役に立つ機能です。

簡単な再オーダー

よく購入する商品がマイページに登録され、簡単に再注文をすることができます。リピート購入のハードルを下げるため、B2Bの取引では重要な機能です。

現在も新機能が続々と開発・リリースされており、対応するShopify Appも増えてきています。
ShopifyでのBtoBにおすすめのShopify Appや活用事例については、以下の記事でもご紹介しています。

BtoB向けECサイトの構築に迷ったら、プロに相談

今回は、EDIとそれを取り巻く社会の流れから、これからの選択肢の一つとなりうるBtoB-ECのお話をしてきました。電子商取引をめぐる大きな変化の流れの中で、BtoBのECサイトの構築の需要も高まっています。

とはいえ、これまでの取引のフローから大きく変わることに不安な方もいらっしゃるかと思います。
BiNDecでは規模や業種を問わずBtoB向けのECサイトを構築しており、Shopify公認の構築パートナー企業でも最上位のShopify Plusパートナーです。これまでの取引先との関係も活かしながら、新たに販路を広げていくためのアドバイスやサポートができます。ぜひ相談してみてください。
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POINT

  • EDIとはなにか、どんな種類があるのかの基礎知識の解説
  • WEB-EDI導入の課題を解決する方法として、BtoB-ECへの需要が高まっている
  • ShopifyのBtoB-EC機能の紹介。現在も新機能が続々と開発されている

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