Shopifyが強い理由を大解剖。成長軸はパートナーシップとエンタープライズコマース

Shopifyが強い理由を大解剖。成長軸はパートナーシップとエンタープライズコマース

10月3、4日の2日間に渡り、世界最大のコマースプラットフォームShopifyのリアルイベント「Enterprise Partner Summit 2023」が開催されました。
米国カリフォルニア州ロサンゼルスに世界中のShopifyビジネスパートナーが集い、幹部社員から直接最新情報のレクチャーを受けたり、互いにコミュニケーションを図って親交を深めるイベントです。

WEBLIFEのCEOである山岡 義正も参加し、アジア-パシフィック関連のセッションに日本のパートナー代表として登壇したこのイベントレポートを、数回に渡って掲載します。
初回は、1日目の午前中に行われたキーノートセッションで語られた、Shopifyのパートナーシップとエンタープライズ対応を中心に、2024年への展望も含めてお伝えしましょう。

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Shopifyパートナーになる最善のタイミングは「今」

今回、Enterprise Partner Summit 2023の会場となったのは、ロサンゼルス中心部から自動車で10分ほどのところにある、Rolling Green Nurseryという施設です。Partner Summitは初日の朝10時のウェルカムセッションからキーノートに続く流れでスタートしました。

パートナーと共に成長していくコマースプラットフォーム

まず、ウェルカムセッションではShopifyのHarley Finkelstein社長が登場し、ステージの上を活気あふれるジェスチャーを交えながら歩き回り、詰めかけた参加者に感謝の言葉を述べ、このイベントに世界各国から650社、900人にものぼるパートナーたちが集まっていることを告げました。
今回のイベントの中心となるパートナーは、Shopifyを利用しているエンタープライズ(大企業)ユーザーや、それぞれの地域でEC事業者たちがShopifyを効果的に使うためのコンサルティングを行ったり、標準機能を拡張するShopifyアプリを開発しているサードパーティ企業です。

Shopifyは、まさにこうした熱心なパートナーたちに支えられており、Finkelstein氏の熱い口調からも、同社がこうしたコミュニティを大切にして、共に成長していこうとする姿勢が感じられます。それは”Make Commerce Better for Everyone”(すべての人々にとってコマースをより良いものにしていく)というスローガンにも込められていました。ここで、あえて「Eコマース」ではなく「コマース」という言葉が使われていますが、その理由はキーノートの後半で明かされていくことになります。
Shopifyの社長でCOO(最高運営責任者)も務めるHarley Finkelstein氏

利用者は15%の収益増、売れるECと証明されたShopify

パートナーを大切にするという精神を反映して、続くキーノートセッションの第1部も、まずパートナーシップをテーマとして始まりました。登壇者は、パートナーシップ担当副社長であるRitu Khanna氏と、CRO(最高収益責任者)のBobby Morrison氏です。
このセッションでは、Shopifyが直近で前年同期比の31%の収益増を果たすなど、これまでで最高の成長を見せている点に触れ、チェックアウトのコンバージョン率が競合他社よりも最大36%も高いことがショップ事業者にとって大きな魅力であるとアピール。すでに世界のEコマースサイトの1割がShopifyのシステムを利用している背景には、こうした実績があるというわけです。
パートナーシップ担当副社長のRitu Khanna氏(左)と最高収益責任者のBobby Morrison氏
また、「Shopifyは、もはやD2Cのためだけのプラットフォームではない」というメッセージも強く打ち出されました。
つまり、過去にはスタートアップや中小企業が生産した製品を消費者に直接販売するために利用されてきたことがShopifyの成長の原動力でもあったのですが、今では様々なブランドの製品をセレクトして扱う大手の販売業者もコンポーザブルな(=コンポーネント化された)サービスを必要に応じて組み込み、自社のショッピングサイトの体裁を保ったままでShopifyの決済インフラなどのメリットを享受しているということなのです。
世界的な調査会社のForrester Researchによれば、Shopifyを活用しているEC事業者は、平均して15%の収益増と最大で前年比2倍の収益を上げ、9割がサービスの利用を継続しています。これは、とりも直さず、Shopifyが優れた技術とサポートを提供していることの証といえるでしょう。
ShopifyがD2C以外のエンタープライズに利用されていることを示す事例として挙げられたAuthentic Brands Group (左)とPAIGEのショッピングサイト

ShopifyのEC事業者にチャンスをもたらす世界規模のパートナーシップ

さらに、今も世界規模のパートナーシップを積極的に拡大している例として、UberやShopifyなどにも採用されている決済代行サービスのadyen、ブラジルで12の産業分野にまたがる7万社ものクライアントを持つソフト開発企業のTOTVS、ロンドンを拠点に企業や社会の変革のためのクリエイティブワークを提供するWPP、そして、グローバル規模の未公開株式投資会社として様々なコンシューマーブランドに資金援助をしてきたL Cattertonなどの例が紹介されました。

このようなパートナー企業との提携により、Shopifyを利用する事業者は成長の機会を最大限に活かせることはもちろん、新製品開発においても心強い味方を得ることになったといえます。Ritu Khanna氏は、Shopifyを取り巻くこのような環境の充実を前提に「今が、Shopifyパートナーになる最善のタイミングです」と宣言して、パートナーシップキーノートセッションを締めくくりました。
Shopifyとパートナーシップを組む企業の例

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POS、EC実績、AIでエンタープライズコマースを革新

キーノートセッションの第二部は、Shopifyの新たな挑戦となるエンタープライズコマースがテーマとして選ばれました。登壇したのはVanessa Lee氏とGlen Coates氏で、2人とも製品担当副社長の役職に就いています。
どちらも製品担当副社長のVanessa Lee氏(左)とGlen Coates氏

リアル店舗でのショッピングを一新するShopify POS

これまでShopifyはオンラインコマースの事業者のためのインフラ整備を中心にビジネスを展開してきたわけですが、新型コロナウイルス禍が落ち着いた今、リアル店舗にも客足が戻ってきていることを念頭に、小売業を営むエンタープライズに対しても優れたサービスを提供していくことになりました。そのための強力なツールとして開発され、すでにいくつかの小売チェーンなどで運用がスタートしているのが、Shopify独自のPOS端末です。
タッチスクリーン式のこのPOS端末は、ワイヤレスのバーコードリーダーによって店内のどこでも商品のバーコードを読み取って買い上げリストに加えることができるため、買い回り中でも、ショップ店員がアドバイスしながら購入の確定したアイテムを加算していくことが可能になります。また、Shop Payと連動して、来店した顧客が、過去にオンラインで購入したアイテムがわかるため、その履歴を元に、店頭の商品を薦めて相乗効果をあげられるのです。
リアル店舗がShopifyのサービスを利用する際の核となる、独自開発されたPOS端末
Shopify POSの詳しい機能については以下の記事をご覧ください。

あらゆるビジネススタイルをサポート

このような端末や、先に触れた、Shopifyがエンタープライズコマースを徹底分析して開発したコンポーザブルなサービスを提供できる体制を整えたことで、Shopifyは、以下のように事業対象を拡大していくことになります。すなわち、オンライン販売業者に限らず対面販売業者、各国の国内市場だけでなくグローバル市場を目指す企業、D2C企業に留まらずB2B企業、直販業者とともに小売業者、中小企業から大企業まで、そして、販売プラットフォームの提供者のみならず商品をセレクトして販売するアグリゲーターもサポートできるようになったというわけです。
対面販売、世界市場対象、B2B、3P、大企業対象、アグリゲーターなどが、Shopifyの考えるエンタープライズコマースのキーワード

世界のどこでも買いやすさを実現する優秀なチェックアウト

Shopifyの利用を検討するエンタープライズ企業に対して強調された点は、Shopifyのチェックアウトにおけるコンバージョン率が競合他社よりも平均して15%も高いということと、同じくShop Payのコンバージョン率が競合他社よりも10%上回っているという事実でした。すでに自社のショッピングサイトや小売店を運営している企業でも、販売上のボトルネックとなっている部分をこれらのコンポーネントで置き換えることにより、これまでの体裁を維持したままビジネスを拡大できる可能性があるのです。
Shopifyのチェックアウトのコンバージョン率は競合他社よりも平均15%高い

また、事業のグローバル展開を目指す企業に対しては、国ごとに異なる決済手段や配送、関税その他の税制、在庫管理、割引といった越境コマースに関わる煩雑な処理をまとめてサポートするMarkets Proというサービスも用意され、世界市場への進出を後押しします。中でも、Shopifyが800種を超えるペイメントプロバイダーを束ねて世界最大のエコシステムを築いているという事実は、海外進出を考える企業にとって、心強い限りでしょう。
越境ECを様々な側面から支援するためのサービスとしてMarket Proが用意されている

新たな技術で課題をクリアしていくShopifyの機能

そして、これからのECサイトの構築と運営に欠かせないShopify独自の生成AI機能であるShopify MagicやSidekickについても言及がありました。これらを使うことで、商品選びから解説、ショッピングサイトの季節ごとの模様替えまで、AIに相談しながら行うことができ、大幅な時間と労力の節約になります。
このキーノートセッションでは、2024年に向けて、デジタルアイテムの取り扱いや、コンバージョン率向上が期待できるB2Bのための1ページチェックアウト、分割払いへの対応など、32項目に渡るサービスと技術開発のロードマップも公開されました。このようにShopifyは、コマースを知り尽くしたサービス開発によって、オンラインかリアルかを問わず選ばれるプラットフォーム、および技術のプロバイダーになろうとしているのです。

近日公開予定のイベントレポート第2回では、WEBLIFE代表の山岡が、アジア地域のトップパートナー達と登壇したセッションの様子をお届けします。

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