ポップアップストアでECの顧客を広げよう。出店で把握すべき注意点と事例を紹介

ポップアップストアでECの顧客を広げよう。出店で把握すべき注意点と事例を紹介

2023年秋のShopify Enterprise Summitでも示されたように、新型コロナウイルスの沈静化に伴って、消費者のショッピング傾向もオンラインだけでなくリアル店舗での買い物も復調傾向にあります。こうしたトレンドを受けて、自社のブランドを特定エリアのコミュニティに浸透させたいときや、扱い商品がリアル店舗にも向いているかを探りたいという場合には、ポップアップストアを利用することが効果的です。
今回は、ポップアップストアを展開するメリットや注意点、そして目的に合った出店場所を見つけるためのマッチングサービスをご紹介します。

ポップアップストアのメリット

ポップアップ店舗で商品を眺める人のイメージ写真

ポップアップストアとは、様々なスペースに期間を限定して開設される「一時的な店舗」を意味しています。しかし、単に商品を販売するだけの場ではなく、企業やブランド、ショップなどの存在感を高めるためのプロモーションの機会としての役割も果たす存在です。

そのため、SNSでの情報拡散を目的として企画されることも多く、来場者が写真を撮ってInstagramなどに投稿したくなるようなディスプレイや商品アイテムが用意されたりします。また、出店場所やタイミングによってテレビや雑誌などのマスメディアからの取材を受ける可能性もあり、その場合には広告効果が期待できるわけです。
さらに、オンラインストアの事業者が恒久的なリアル店舗を開設するに際しては、まとまった予算の確保や場所選びなどの課題があります。そこで、比較的低予算で様々な場所を試すことができるポップアップストアによって反応を確かめて、適切な出店計画を立てるための試金石的な利用法も考えられるでしょう。

ユーザーによるコンテンツ拡散を狙いたいなら知っておきたい「UGC」。詳しい解説はこちらをご覧ください。

多くの出店企業も状況の変化を実感

ショッピングモール事業者など向けの専門紙の商業施設新聞が行なった調査結果でも、7割を超える回答企業がポップアップストアや関連イベントへの来場者が増加傾向にあると答えています。

さらに、ポップアップストアの区画や期間の拡大、出店企業の業種の多様化を実感した旨の回答もありました。

消費者の行動にも変化が

経済産業省「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」を元に作成したグラフ

20代~60代までの男女1036人が回答した、経済産業省の令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)によると、リアル店舗にはオンラインショッピングでは得られないメリットを感じているという結果が出ています。

このように顧客との直接的なつながりを築けることのほかにも、期間限定という希少性を利用した購買意欲の促進、ブラックフライデーセールなどで消費者の購買意欲が高まっているときの売り上げ向上、そして季節商品の在庫一層などの効果を期待できる点が、ポップアップストアの強みです。ビジネスの次の飛躍のために、ポップアップストアを開設する意義も、そのための環境も十分に整ってきているといえるでしょう。

ECと連携したポップアップストア展開の事例は下記の記事をご覧ください。


ポップアップストア出店時の2つの注意点

ポップアップストアは、既存の施設や周辺のスペースをそのまま利用することが多いため、ゼロから企画して外観や内装をカスタマイズできる常設店舗とは異なる注意点があります。

立地の確認

店舗へのアクセスの良さは、駅などの公共交通機関との関係においても、また、店内への入りやすさという点でも、重要なポイントとなります。ショッピングセンター内などの専用スペースではなく、独立した建物などの施設を利用する際には、店頭の飾り付けや、飲食関連業種であればテイクアウトの容易さのためにも、なるべく間口の広い物件を選ぶほうが良いでしょう。
また、屋外の場合には開店期間中に天候が安定しているとは限らないため、風雨の影響を受けにくいか、影響があってもすぐに対処できるかどうかを事前に確認しておくことも重要です。

もちろん、周囲に競合店が存在しないことも必須条件といえますし、時間帯による人通りの変化なども把握しておかなければなりません。

設備の確認

ポップアップストアの看板イメージ写真

インターネットの設備やBGM用のオーディオ&スピーカー、在庫品の収納スペース、演出効果の高い照明や防犯カメラなどの盗難防止装置、補償保険の有無などもチェックしておきましょう。
さらに、見落としがちですが、立て看板など、ポップアップストアの存在に気づいてもらうためのサインを設置できるか否かや、既存の看板がある場合には、それをアレンジして利用することが可能かどうかも調べておく必要があります。

オンラインショップとは異なり、リアル店舗にはリアル店舗なりのアピールの仕方や、物理的な制約があるので、特に初めてポップアップストアを出店する際には、来店する側の視点からも物件をよく吟味するようにしてください。

ポップアップストアの出店傾向と事例

ポップアップストアを取り巻く状況には、場所を提供する側にも、また出店する側にも、興味深い動きが見られてきました。
場所を提供する側の動きとしては、ウイルス禍の間に減った客足を回復させるために、大手のショッピングセンターやデパートなどの商業施設も、積極的にポップアップストア向けのスペースを設けて、出店社を募っていることが挙げられます。

大手商業施設のポップアップストアスペース提供事例

大手のショッピングセンターやデパートなどの商業施設を利用する利点は、施設自体が一定の集客力を持っているため、それなりの来場者数を期待でき、新たな客層を開拓できる可能性を秘めていることです。その環境が自社のブランドイメージと一致し、賃料などの折り合いがつくのであれば、良い選択肢の1つとなるでしょう。

AEON TOWN

AEON TOWNのポップアップストア募集ページキャプチャ

大手ショッピングセンターのイオンタウンも、ポップアップストアの受け入れに力をいれてきています。また、ショップの構造部分に強化段ボールを用いているため、出店社がSDGsに取り組む企業であるというイメージを与えられる点も特徴的です。

そごう・西武

Online Merges with Offline公式サイトキャプチャ

老舗デパートのそごう・西武グループも、ミレニアル世代とZ世代をメインターゲットとし、店舗とECの完全在庫連携を目指すメディア型OMO(Online Merges with Offline)ストア「CHOOSEBASE SHIBUYA」を展開し、積極的にポップアップストアを誘致しています。

OMOとは?OMO施策の例、成功のために必要となる対策、実例について解説。ぜひあわせてご覧ください。

JR-PLUS

JR PLUSのストア事業

JR東海の関連企業、JR PLUSも通過人員の多い公共交通機関の利点を活かす事業の一環として、プラットホーム上のキオスクを利用し他企業と連携したポップアップストアの展開を行なっています。

認知拡大以外の効果も。有名ブランドでもポップアップストアを実施

一方で、出店する側としては、中小企業だけでなく有名ブランドの取り組みも目立ち、新たな商材のアピールのためにポップアップストアを利用したり、既存顧客とのコミュニケーションを深め、新たな顧客層の開拓などに活用する事例も目立っています。
消費者にとっても、いつ、どこに出現するかわからないポップアップストアは、まさにリアルなショッピングの楽しみにつながり、次の出店への期待も高まるので、大手以外のショップ事業者も積極的に取り組むチャンスといえるでしょう。

無印良品

無印良品のポップアップ店舗

すでにブランドとして確立している無印良品などの企業も、市場調査や新たな事業・店舗展開のためのテストケースとしてポップアップストアを活用するケースがあります。

フェリシモ

YOU+MOREのポップアップ情報サイトキャプチャ

通販大手のフェリシモは、普段は購入前に手の取ることができないアイテムに触れてもらえるポップアップストアを利用して、既存顧客との関係を深めたり、新規顧客の獲得を図っています。

理想の場所と出会うためのマッチングサービス

ポップアップストアの出店場所としては、空き店舗、ショッピングセンターやデパート内の催事場、ギャラリー、イベントスペースのほか、既存の店舗やホテル内のショップとコラボして一部を間借りするポップインという形式も考えられます。
しかし、地元で馴染みのある商店街の一角のような場所でない限り、独力でそうした場所を見つけて確保することは難しいものです。そのため、企業と人材を結びつけるマッチングサービスのように、空き物件や専用スペースとストア事業者を結びつけるポップアップストアの検索・予約サービスが発達してきました。ここでは、代表的なものを2つ挙げておきます。

NOKISAKI BUSINESS

nokisaki公式サイトキャプチャ

手続きの簡便さを謳うNOKISAKI BUSINESSは、累計3,8000件を超えるポップアップストア出店数を誇るマッチングサービスだ


1つ目は、NOKISAKI BUSINESSで、サービス名は雨宿りなどで「軒先を貸す」の「軒先」からきています。1万件以上の登録スペースと2万4千件以上の登録利用者数、そして、3万8千件以上の累計ポップアップストア出店数により、累計売上No.1を謳うサービスとして、出店希望の地域やスペースのタイプ(屋内、屋外、屋上、広告、飲食営業)、付帯条件(販売可、車出店可、PR可、教室/セミナー可、撮影可、防音、鏡あり)を指定した検索が可能です。
nokisaki公式サイト検索画面キャプチャ

出店希望の地域やスペースのタイプ、付帯条件などから検索を行うことができ、広さや価格を比較して目的に合うスペースを見つけることができる


希望する場所が見つかり、空きのある日付を予約すれば、貸主からの承認を得て出店するという流れになりますが、いくつかの候補物件に目星をつけた時点で、個々の詳細ページに掲載された住所を訪れて、現地の様子を確認してから最終決定すると良いでしょう。

SHOPCOUNTER

SHOPCOUNTER TOPページキャプチャ

SHOPCOUNTERはトップページの検索機能を充実させ、地域や業態の選択以外にも、用途、テーマ別にスペースを分類したセクションを設けている


2つ目は、SHOPCOUNTERで、地域や用途(ポップアップストア・商品販売、食物販・食品の販売、販促プロモーション、展示会・受注販売会、撮影・ロケ、募金・NPO活動、個展・ギャラリー・作品展示、音楽・演劇・公演イベント)を指定しての検索機能に加え、用途とテーマによって分類されたセクションを利用しての候補の絞り込みも可能です。
SHOPCOUNTER公式サイト検索結果ページ

こちらの検索結果では同一ページ内に地図も表示でき、付近の駅など、ランドマークとの位置関係も把握しやすいといった特徴がある


また、検索結果の一覧ページに地図を表示することができるため、最寄駅からの距離感や位置関係を直感的に把握しやすいという特徴があります。
直近に具体的な出店計画がなくても、思わぬビジネスのインスピレーションが得られるかもしれないので、これらのサービスを利用して気になるエリアなどを対象に検索してみても良いでしょう。

ポップアップストアの実施は、今後の事業展開の指標となる

ポップアップストアは、リアル店舗を持っていないオンラインショップにとっても、また、すでにリアル店舗を展開している事業者にとっても、トータルな費用を抑えつつ新たなビジネス展開やブランディング、新規商材の反応を試すのに適した手法といえます。
Shopifyも、オンラインとリアル店舗をシームレスに融合するための施策を色々と打ち出してきており、ポップアップストアの出店にチャレンジすることは、事業拡大を目指すうえでの着実な第一歩となるはずです。

株式会社ウェブライフでは、Shopifyを利用したECサイト構築から運用までサポートする「BiNDec」を提供し、オンラインとリアル店舗の展開に関するノウハウ提供も含めて、ビジネスに最適な運用戦略をご提案しています。EC構築や運用に関してお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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POINT

  • ポップアップストア実施には、認知拡大、ブランディング、テストマーケティングなどの効果がある
  • ポップアップストア開催場所は立地と設備の確認が必須。来店する側の視点からも物件をよく吟味しよう
  • 馴染みのない地域でのポップアップストア出店場所探しは、マッチングサービスを利用するのもおすすめ

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