TikTokと「買う」を直結:Shopify連携で伸びる動画コマース
ショート動画をきっかけに、その場で購入まで完結する「TikTok Shop」が、いま国内外で急成長中です。特にコスメやアパレル、ガジェットのような“映える”商品カテゴリでは、ライブ配信やショート動画から数秒で購入に至るケースも見られます。しかし、一方では、実際の始め方や最適な運営・管理の方法についての疑問を持つEC事業者も少なくありません。
本記事では、TikTok Shop市場への参入を考えるD2Cブランドや中小のEC事業者の参考となるように、ライブコマース、Shoppable(ショッパブル)動画、アフィリエイトなどのTikTok ShopのEC支援機能から、成功事例、Shopifyとの連携方法、必須関連アプリなどの情報をわかりやすくまとめました。
ビューティー商品が2秒に1件売れるTikTok Shop
ショート動画の共有でインターネットを席巻しているTikTokは、もはや空き時間のエンターテイメントを提供するだけのサービスではありません。それは、動画を駆使して即断即決のセールスを実現する、ネット上の商業スペースへと進化、拡大しているのです。
特に、2023年9月にアメリカでの本格展開が始まり、日本でも2025年6月30日に正式ローンチされたTikTok Shopは、まさにEC界の台風の目として話題になっています。
世界規模で急拡大するTikTok Shop市場
TikTok Shopの影響力がいかに大きいかは、2023年12月のひと月だけで3.49億ドル(約524億円)もの収益を記録した(※1)ことからもわかります。
この巨大な市場を支えているのが、旺盛な購買意欲にあふれたTikTokユーザーであり、世界的に見ると過半数を超える58%のユーザーがTikTok Shopで商品を購入しているのです。この数字を人数に置き換えると10億人に相当し、アメリカだけでも7000万人がTikTok Shopで買い物をしていることになります。
また、2023年の通年では、アメリカで約8,550万ドル(1ドル150円換算で約128億円)規模のGMVを記録し、2026年までにさらに67%拡大すると予想されており、その勢いは留まることを知りません。
特に売れ行きの良いコスメなどのビューティ商品では、2秒に1件売れているアイテムもあり(※2)、こうした即断即決的なセールスが行われるプラットフォームとして、TikTok ShopがEC事業者から注目されているのです。
TikTokの公式レポート(※3)によれば、日本ではまだTikTok Shopが展開されていなかった2024年でも、すでにTikTok経由で発生した消費額は推定で2,375億円とされ、前年比で37%の成長を見せていました。TikTok Shopがローンチされた今、年間の取引額や成長率がそれを大きく上回ることは容易に想像できるでしょう。
※1:AMZScout より引用
※2:next IN beauty より引用
※3:TikTokの公式レポート より引用
Z世代・ミレニアル世代の購買スタイルにベストマッチ
TikTok Shopがこれほどまでに人気を集めている大きな理由としては、購買力が高いZ世代・ミレニアル世代のスタイルに合致していることが挙げられます。
これらの世代は自らの検索ではなく、レコメンドから購入に至る傾向が強く、「TikTok上でバズっている商品を購入する」「インフルエンサーにおすすめされた商品を購入する」という導線が自然にできあがっているのです。このような購買の流れをTikTokは自ら「ディスカバリーEコマース(発見販売)」と呼び、既存のECのあり方とは異なるものと位置づけています。
TikTok Shopの仕組み
具体的には、ユーザーがショート動画を次々に見ていくと、レコメンドシステムによって選び出された「ユーザーが欲しいであろう商品」の動画が流れて潜在的な欲求が刺激され、購買につながる仕組みです。しかも、ショート動画と商品リンクが直結しているTikTok Shopは、ユーザーにとって「気になる」から「買う」までのプロセスが3タップ以内で完了するように設計されています。
消費者自身が必要な商品を検索して最適なものを選ぶのではなく、システム自体が能動的に消費者の隠れた欲求に直接アプローチする点がこれまでのECの常識を覆し、「コンテンツを見て、その場で買える」ことがZ世代・ミレニアル世代にささっているのです。
TikTok Shopでは、インフルエンサー起点のライブコマースや「おすすめフィード」のレコメンドもターゲットユーザーに届きやすく、商品の発見から購入へと自然に流れるようになっています。このようにTikTokは、自社のショート動画共有サービスを利用するユーザーの心理や特性を徹底的に分析し、TikTok Shopのビジネスモデルを練り上げてきたといってよいでしょう。
Z世代の消費行動について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
ECビジネスを加速するTikTok Shopの支援機能
ここまで、TikTok Shopでは「ディスカバリーEコマース」のための導線が確立していることに触れましたが、それ以外にもECビジネスを加速する支援機能が揃っています。
迅速な販売や限定販促に適したライブショッピング
TikTok Shopのライブショッピング機能では、商品リンクが画面に表示されて、その場でワンタップ購入が可能になっています。視聴者のコメントやリアクションによるエンゲージメントの高まりも即時反映されるので、バズる→買うのサイクルを作りやすいといえるでしょう。
さらに、ライブ中にはクーポン配布や割引などの限定施策もでき、その場で買えばお得という気分を盛り上げることも可能です。
拡散型の購入導線を確立するショッパブルビデオ
ショートビデオショッピングとも呼ばれるショッパブルビデオ(Shoppable Video)は、TikTokの通常投稿(フィード動画)の中に、商品への購入リンクを直接埋め込む形式です。ショート動画を見ているユーザーが、そこに表示されたバナーや「商品タグ」から該当ページに飛び、そのままTikTok Shop内で商品の購入ができるようになっています。
動画ごとに複数商品をタグ付けすることも可能で、TikTokアルゴリズムによってレコメンドで拡散されやすい仕組みになっており、Shoppertainmentとも呼ばれる「自然な視聴体験の中での購入行動」を誘発するのに適しています。
特に、ユーザー生成コンテンツやクリエイター投稿との組み合わせが効果的とされていて、Shopifyで管理している商品に対し、動画ベースの訴求素材を量産し、タグ付けして拡散することによって無理なく購入導線を作れることもメリットです。
一覧機能がブランディングにつながる商品ショーケース
商品ショーケースは、TikTokのプロフィール画面に「商品一覧タブ」を追加して、そこに登録した商品を画面上に陳列できる機能で、インスタグラムのショップ機能に近い機能です。ブランドの世界観に合う商品ラインナップを一覧表示できるため、ブランディングの強化につながります。そのプロフィールリンクから直接商品へ誘導することも可能です。
動画にリンクしていない商品もショーケース内に掲載できることが利点ですが、商品画像や説明文は、TikTok Shopに登録されたものが使われる点に注意してください。
コストをかけずに販促ができるアフィリエイトプログラム
TikTokのクリエイターが自分の動画やライブ配信で他社商品の販売に協力し、売上に応じた成果報酬(コミッション)を受け取る仕組みです。インフルエンサーとの連絡もTikTok Shopの管理画面から行うことが可能で、商品ごとに報酬率を変えることもできます。
Shopifyと連携する場合には、TikTok Shopへ同期したうえで、アフィリエイト対象に設定する必要がありますが、インフルエンサーが自分の意思で商品を選んで宣伝するので、自然な拡散が見込める機能です。
国別の最適化で購入率向上が期待できる決済手段
TikTok Shop内での購入に使える決済手段は各国で異なります。日本では、Visa・MasterCard・American Express・JCBブランドのクレジットカード、デビットカードやPayPay、主要なコンビニ決済(セブン-イレブンを除く)に対応済みで、今後も幅が広がる可能性があります。
ただし、決済フローはTikTok Shop独自の売上・入金サイクルになることに注意が必要です。
広告から購入までの最短導線を叶えるGMV Max
TikTok Shop向けに最適化された広告メニューです。広告配信とショップ連動を最適化してGMVを最大化することを目的としているため、GMV Maxと呼ばれます。
オーディエンスターゲティングやクリエイティブの最適化を自動で行う機能を備え、総売上、販売数、ROAS(広告費用対効果)といったショップ向けのKPIに最適化。TikTok Shopの商品に直接リンクし、広告→動画→商品→購入の一連の導線をTikTok内で完結できるため、離脱を最小限に抑えて購買まで誘導しやすい仕組みです。
「買うためにTikTokを開く」を促すショップタブ
現時点では未実装ですが、アプリ内のメニューに専用のショップタブが追加される予定です。Instagramのショップタブに近いものですが、予想されている機能としては、ユーザーごとにパーソナライズされた商品リスト表示や、セール情報/キャンペーンが一覧表示される「モール」的な機能、クリエイターやブランドごとのフォローやお気に入り登録があります。
ショップタブが実現すれば、フィードやライブ配信を見るだけでなく「買うためにTikTokを開く」というユーザーの増加が期待できるでしょう。
国内外のTikTok Shop成功事例とShopify連携の実績
ここでは、TikTok Shopの成功例を紹介します。特に、ECプラットフォームのShopifyで構築した自社ECサイトを背景に持ち、その連携によって成果を上げているブランドを紹介していきます。
Shopifyアプリの活用でShop Adsと在庫・注文を同期|7NaNatural
7NaNaturalはZ世代・ミレニアル世代の興味関心とマッチする、天然由来成分100%・ミニサイズ設計・容器回収/リサイクルなどの環境に配慮したエシカル消費型のビジネスを展開しています。
日本でのTikTok Shopローンチ後に、ShopifyとTikTok Shopを併用し、ファン層向けのライブショッピングやユーザー生成コンテンツ投稿経由で販路拡大に成功しました。自社のECサイトをShopifyで構築したうえで、Shopifyアプリを活用したShop Ads(TikTokショッピング広告)と在庫・注文同期することによって、TikTok Shopでの露出と売上を拡大しています。
顧客獲得単価を80%削減に成功|MySmile
D2CビューティーブランドのMySmileは、主に歯のホワイトニングキットを販売して収益をあげています。同ブランドは、TikTok Shop開設から3ヶ月でGMVが100万ドル(約1億5000万円)を超え、ROASは3倍になり、CPA(顧客獲得単価)の80%削減を実現するなど劇的な成功を収めました。
同社が取った戦略は、Shopifyでの商品登録後にTikTok Shopの商品カタログと同期し、オーガニック/アフィリエイト/Shop Adsを統合的に活用するものでした。具体的には、TikTokアフィリエイトプログラム(Creator Affiliate)を活用して、既存ユーザーやクリエイターによるレビュー動画を商品販売につなげる施策により高い信頼性と拡散性を実現しています。
さらに、Shop Adsを積極的に活用し、広告費はゼロだった状態から毎週5桁ドル規模へと本格化。ShopifyのEC基盤を活かしつつ、広告とオーガニックを融合させて売上を向上させていきました。
ちなみにTikTokはレコメンドベースのため、公式アカウントでの通常投稿やユーザー生成コンテンツ、バズ動画やハッシュタグチャレンジによるオーガニックな購買誘導であっても、「おすすめ」に取り上げられれば爆発的な拡散が可能となるのです。
ShopifyとTikTok Shopの注文管理の一元化が成功の鍵|Canvas Beauty
スキンケアブランドのCanvas Beautyは、創業者が自ら出演して製品の使い方を説明する実践的でリアルなコンテンツをTikTokで展開しています。
そして、TikTok Shopでは、1回のライブショッピングで100万ドル以上の売上を記録。当初はその金額を6時間かけて達成していましたが、後にはわずか3時間で到達するなど、驚異的な成長を見せています。その結果、年間3,700万ドル(約55億5000万円)規模の売上を達成しており、そこで得られたブランドの認知が自社ECサイト(D2C)や他の販売チャネル全体の売上にも好影響を与えています。
ライブショッピングの他に成功の鍵となった戦略は、Shopifyをマスター在庫管理として使い、TikTok Shopの販売と注文処理を一元化したうえで、インフルエンサー連携を動画と商品ページに直結させるという運用方法でした。
販売チャネル別の戦略の重要性について、こちらのイベントレポートでも韓国コスメの事例を用いて解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
Shopifyで管理する商品カタログへのリンクする販売構造を確立|Edikted
ファッションブランドのEdiktedは、TikTok Shop導入後の新商品キャンペーン時にGMVが111%増加。注文数も98%アップし、GMVではファッションカテゴリーの1位に輝きました。
成功の要因はShop Adsと有力インフルエンサーによるオーガニック投稿を併用したマーケティング戦略によってターゲット精度と訴求力を両立し、Shopifyで管理する商品カタログの連携させる販売構造にしたことです。
そして、25万人以上のTikTokフォロワーと、63,000件超の関連ハッシュタグを背景に、ソーシャルメディアでのブランド認知を実店舗の出店拡大にもつなげています。
TikTok ShopとShopifyの連携におすすめの外部ツール3選
ShopifyとTikTok Shopを“完全に連携”させるには、在庫や注文データをつなぐ専用のコネクタとなるアプリの導入や、初期設定・データ構造の調整など、現状では専門的なコーディネートがあると安心です。
実販売チャネルとしてTikTok Shopを活用するために、商品情報・在庫・注文・返品などをShopifyとリアルタイムに同期するサードパーティ製ツールとして、AfterShip Feed for TikTok Shop、CoreLink for TikTok Shop、ロジレスなどがあります。
そして、Shopifyと公式にパートナーシップを結んでいる「Shopifyパートナー」であるBiNDecでは、こうしたShopify × TikTok Shop連携の導入支援から、運用設計・CRM活用までを一貫してサポートしています。
AfterShip Feed for TikTok Shop
Shopifyアプリとしてグローバルで使われているAfterShipは導入実績も多く、確立された仕組みを活かして商品連携やカテゴリ設定をすぐに行えるのが魅力です。国内外に対応でき、例えば、日本とアメリカなど複数のTikTok Shopの相互連携も可能なため、複数の国や地域に拠点を持ちTikTok Shopを運営したいEC事業者にも向いています。
BiNDecでも導入支援を行なっており、最短ルートでのTikTok Shop展開を実現することが可能です。2025年9月頃よりアプリの管理画面も日本語に対応予定で、今後国内のEC事業者にとって真っ先に考えたい選択肢のひとつとなるでしょう。
基本機能では、商品登録や在庫・注文の同期を自動化し、Shopifyの商品・価格・在庫情報をリアルタイムで反映。複数チャネルの販売状況をひとつの画面で管理でき、返品・返金対応まで一通りカバーします。さらに、AfterShip側で商品掲載可否の事前チェックが可能で、TikTok Shop側で発生しやすい画像や説明文によるエラーも、理由が不明なケースを含めて事前に解消できます。
加えて、AIとテンプレートを組み合わせたカテゴリマッピング機能を搭載。TikTok Shop特有のカテゴリ構造に合わせて自動最適化されるため、分類ミスや審査の差し戻しを防ぎ、登録スピードと精度を両立できます。さらに、フルフィルメント保留機能により、在庫や注文を確認してから出荷でき、不正注文や在庫過剰販売による損失も未然に防げます。
CoreLink for TikTok Shop
CoreLink for TikTok ShopはShopifyのシステムやカートとの連携が可能な、国内初のTikTok Shop専用コネクタです。商品・在庫・受注・キャンセル情報をリアルタイムに双方向で同期してTikTok Shopの運用を自動化でき、Shopify側での商品登録や在庫変更がTikTok Shopにも即時反映されるため、手動作業によるミスや転記漏れなどを防げます。
なお、CoreLink for TikTok Shopは外部サービスとしてAPIベースで提供されるため、Shopifyのアプリストアには掲載されていません。
ロジレス
OMS(受注管理)とWMS(倉庫管理)を一体化した国産の自動出荷システムで、TikTok ShopとのAPI連携に対応しています。TikTok Shopでの注文を自動で取り込み、出荷指示や送り状発行までの一貫処理が可能です。
リアルタイムで在庫が連携することによって複数チャネルでの売り越しを防止することができるほか、ライブショッピングやバズりによる急な注文増加にも対応できるスケーラビリティを備えています。Shopifyアプリも提供されていて、Shopify-LOGILESS-TikTok Shop間の連携をスムーズに構築できることが特徴です。
成功ブランドがTikTok Shop連携にShopifyを選ぶ理由
では、TikTok Shopで成功しているブランドは、なぜShopifyとの連携を選ぶのでしょうか。
その背景には、「Shopifyアプリ・外部ツールでの連携」「商品・在庫・注文管理の一元管理」「顧客エンゲージメント施策の実施」「ブランド体験の提供」「柔軟な拡張性と越境EC機能」など、TikTok Shopの売上を最大化し、ビジネスを拡大するうえでのメリットがあるからです。
具体的にどのような点でShopifyが選ばれているのか、5つの理由をご紹介します。
1.TikTokとの連携アプリ・外部ツールの充実
ShopifyはTikTokと戦略的パートナーシップを結んでおり、ShopifyのアプリストアでTikTokの公式アプリが提供されています。
このアプリによって、TikTok Adsの効果測定や最適化のトラッキングコードであるTikTok Pixelの設置がワンクリックで行えたり、商品フィードを自動連携してShop Adsを配信したり、ユーザーの流入元を識別するUTM付きのトラッキングを自動管理することも容易にできるのです。
こうしたアプリ連携によって、広告・オーガニック投稿・TikTok Shopへの導線のすべてが一気通貫で運用可能になります。
2.商品・在庫・注文管理の一元化
TikTok Shop単体では管理が煩雑になりがちな業務が、Shopifyと連携することにより1つのダッシュボードから管理できるようになります。
具体的には、商品タイトル・価格・説明・画像を一括更新可能になり、複数のチャネルと在庫数をリアルタイムで同期できるため、大幅な省力化になるのです。注文処理や出荷通知もShopifyを経由すれば一括処理でき、出荷完了通知の自動化も実現できます。
3.リピート購入・ファン化施策の展開が容易
ShopifyにはD2Cに欠かせない顧客の管理機能やマーケティングツールが揃っているため、CRM(顧客管理)が容易になり、LTV(ライフタイムバリュー)の最大化にもつながります。
たとえば、メールマーケティングツールや購入履歴に応じたパーソナライズ、ストアロイヤルティプログラム、カート放棄リマインド機能などを活用することで、TikTok Shopで獲得した顧客を自社ECへ送客する仕組みを作ることで「顧客資産」として育てていけるのです。
LTVについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
4.ブランドとしてのEC体験の強化
TikTok Shopは、動画を起点に商品を見つけて購入する動線に特化しており、「商品ごとの購入体験」が中心です。今後、プロフィール画面に「商品一覧タブ」が追加される予定もありますが、ブランド全体の世界観やストーリーを伝えるにはやや限界があります。
一方、Shopifyでは、ブランド独自のUI・UXを重視したECサイトの構築が可能で、ランディングページの活用、定期購入や限定オファーといった施策も柔軟に展開できます。TikTokからShopifyへ送客し、顧客との継続的な接点を設計することで、クロスセル・アップセルだけでなく、ブランドへの理解や愛着を深めてもらうことも可能になります。
つまり、TikTokで新規顧客との出会いを生み出し、Shopifyでその関係性を育てていく。このような導線設計が、ブランディングを重視するD2C事業者と非常に相性が良いのです。
5.柔軟な拡張性と越境EC機能
TikTok Shop単体では、多言語・多通貨対応、配送アプリとの連携、さらには海外展開時の税制対応などにおいて、難易度の高い場面があります。こうした課題に対しては、Shopifyで構築した自社ECに誘導することで解消を図ることが可能です。
そのため、将来的にTikTok Shopを通じて越境展開を視野に入れるブランドにとって、Shopifyとの連携はひとつの有効な選択肢となり得るでしょう。
TikTok Shopの始め方
それでは、ここでTikTok Shopの始め方を簡単にまとめておきましょう。すでにShopifyでECサイトを開設しているという前提で話を進めます。
開設手順と必要な準備
STEP 1|必要書類の準備
まず、TikTok Shopのセラーセンターで販売者アカウントを開設しますが、この際に適正な事業であるかどうかの審査を受けます。そのために本人確認や銀行口座などの情報が必要です。
なお、法人の事業者が出店申請をする際には以下の書類も必要となるので、あらかじめスキャンや撮影などでデジタルデータを用意しておきましょう。
- 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 代表者の本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
STEP 2|TikTok Shop セラーセンターで販売者アカウントを開設
TikTok Shopのセラーセンターで販売者アカウントを開設します。出店登録自体は無料で、アカウント開設時に料金は発生しません。
<発生する費用>
- 登録・アカウント開設:無料
- 商品販売時:マーケットプレイス手数料(決済手数料を含め、売上に対して標準7%の手数料が発生)
なお、TikTok Shop内で広告を配信する場合や、発送代行サービスなどを利用する場合には、別途費用が必要です。また、新規出店者向けに一定期間手数料が割引されるキャンペーンが実施されている場合もあります。
STEP 3|ShopifyにTikTok公式アプリをインストールし商品データを連携
ShopifyにインストールしたTikTok公式アプリを通じて、以下の設定を行い、データを連携させます。
- Shopify App StoreからTikTok公式アプリをインストール
- インストール後、TikTok for Businessアカウントと接続
- Shopifyで管理している商品データはTikTok Shopに自動反映
詳しくは、TikTok Shopの日本版セラーセンターや出店登録ガイド、初期設定サポートページを参照してください。
無事に販売者アカウントが開設できたら、ShopifyでTikTok公式アプリをインストールし、TikTok for Businessと接続してください。
そして、紹介したサードパーティ製の連携プラグインやコネクタを利用して、Shopifyでの在庫がTikTok Shopに反映されるように連動させ、注文はShopifyから処理してTikTok Shopに結果を返す、というフローを構築しておきます。
商品情報はShopifyからTikTok Shopに同期
なお、タイトル・説明文・画像・価格などの商品情報は基本的にShopify側で作成・管理し、それをTikTok Shop側に同期させるのが一般的です。コネクタを利用して、Shopify側の商品情報をTikTok Shopに送り、一括登録・自動更新するフローを構築するようにしてください。
Shopifyの管理画面からTikTok Adsの広告マネージャー連携も可能に
上記のようにTikTok公式アプリをインストールし、TikTok for Businessと接続することで、Shopifyの管理画面からTikTok Adsと連携し、広告の作成・管理・効果測定が行えるようになります。
TikTok Adsには、とにかく多くの人に見てもらうための「Reach」、サイト訪問などを促す「Traffic」、”いいね”やシェアを促す「Engagement」、アプリインストールを促す「App Promotion」などの設定があり、目的に応じた使い分けが可能です。特に「購入」などの明確なコンバージョンを目的とする場合には、Conversions設定のTikTok AdsとShopifyの商品カタログを管理画面で連携させます。
Conversions設定では、TikTokピクセルやEvents APIと連携して、CVをリアルタイムで追跡可能なほか、Shopify連携時には「購入完了」まで計測できることが特徴です。
なお、現状のTikTok公式アプリは、現状では広告連携が中心で販売チャネルであるTikTok Shopとの商品・在庫・注文の同期機能は限定的です。
TikTok Shopとの連携に商品・在庫・注文の同期機能がありますが、出品~出荷・返品までの全面的な運用は限られているため、より高度な受注・出荷管理にはサードパーティアプリなどが必要です。
この点は、今後改善される可能性がありますが、後ほど触れるサードパーティ製の連携プラグインやコネクタも併用することで、より直接的な連携ができるため、大きな問題にはならないといえるでしょう。
「戦略設計と運用力」が売れるTikTok Shopの鍵
TikTok Shopの注目度は非常に高いですが、もちろん、商品を掲載すればそれだけで売れるわけではありません。TikTokユーザーの特性を見極めて、それに照準を合わせた戦略設計と運用力が成功の鍵となります。
「検索」より「おすすめ」対策が重要
冒頭でも触れましたが、TikTokの中心ユーザーとなっているZ世代・ミレニアル世代は、「検索ではなくおすすめで買う」傾向が強い層です。この層にアピールするためには、TikTokのおすすめのアルゴリズムに最適化されたプロモーションを行う必要があります。
その意味で、人気の#(ハッシュタグ)・楽曲・トレンドに即した投稿はTikTokの「おすすめ」になりやすく、レビューやコメントの活発化でエンゲージメントを上げて表示頻度を増やすことも有効です。
Shopify PixelやUTMを活用して、視聴→流入→購入の流れをしっかりトラッキングすると共に、「検索結果で見つけてもらう」のではなく「見つかる前提でバズりを仕掛ける」といった積極的な戦略を心がけてください。
ビジュアル訴求の強い商品が狙い目
人気商品の条件として「見て楽しい」ことが挙げられるので、「ひと目で欲しい」と思わせる体験価値を重視しましょう。色味や質感が魅力的な商品はもちろんですが、たとえば塗ると色が変わるリップのように意外な変化のある商品も有利です。
そのため、ライブ配信やショート動画内でも、使用前→使用後などの違いが明確にわかるものが好まれる傾向にあります。そして、手間やコストを省いた静止画のスライドショーのような動画ではなく、視認性が高く印象に残りやすいダイナミックな演出を取り入れてください。
「映える」画像・動画が売上に直結
商品単体よりも、それを使っている人のイメージやライフスタイルまで含めた世界観に関心を持つのが、TikTokユーザーの特徴です。そこで、トレンドのBGMやフィルターなどを活用し、背景・音楽・編集スタイルにも「TikTokらしさ」を取り入れた画像や動画によって、ブランドイメージに沿いながら「売れる世界観」を作り込めるかどうかが売れ行きを左右します。
「つかみ」と呼ばれる冒頭の1~3秒で目を惹きつけるサムネイルや演出は特に重要であり、リアルな体験レビュー風の動画や「使ってみた」系のコンテンツもCV率の向上に貢献する要素です。
TikTokで“選ばれる動画”に仕上げるコツは、こちらの記事でもご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
箇条書き+絵文字による機能訴求と感情喚起
TikTok Shopでは、製品説明のコピーも、機能だけでなく感情に訴えることが購入者の心に響きます。特に、タイトルや説明文のテンポと親近感に気を配ってください。動画のキャプションや商品説明は、以下のような「3〜5行の箇条書き+絵文字」が鉄則です。
- 超密着!💄24時間ヨレない
- 肌荒れしにくい低刺激処方🌿
- 今だけ限定パケ🎀かわいすぎ注意!
Z世代・ミレニアル世代は「共感+即理解」できる表現に反応しやすいので、「悩みを解決」「気分をアゲる」などの感情に刺さるコピーを意識して使いましょう。
さらに、商品名も30文字以内にして、動画やライブショッピングで使われるキーワードを説明内やタグに含めると、レコメンドされやすくなります。
スピード重視の顧客対応
TikTok Shopでは、ライブショッピングやバズ動画から突然注文が殺到する可能性があります。いわゆる「バズに乗った」後の対応力がビジネスの命運を分けるので、在庫や出荷、問い合わせ対応の体制をあらかじめ整えておくことが必要です。
また、スピード重視の顧客が多く、問い合わせに対して即レスできないと評判を落としかねません。「発送が早い」、「対応が丁寧だった」などの口コミは新規&リピート需要にもつながるため、スピーディな顧客対応を心がけましょう。自動応答ボットやFAQ連携の強化も有効といえます。
TikTok Shopの注意点
最後に、TikTok Shopならではの注意点にも触れておきましょう。
商品カテゴリを正確にマッピングする
TikTok Shopには独自のカテゴリツリー(例:ビューティー>スキンケア>フェイスミスト)があり、Shopify側のカテゴリ名称と一致していないことが多いため、両者の連携時にはそれらをマッチさせるマッピング設定が必要となります。商品登録の際にはTikTokによる申請審査があり、不正確なカテゴリマッピングは商品の出品却下や審査の遅延につながる可能性があるので、正確な割り当てを行うようにしましょう。
コスメ類は成分書類の提出が必要
TikTok Shopでは商品の申請審査があり、コスメ類など一部カテゴリでは成分表などの追加の書類提出が求められるので、該当する場合にはあらかじめ準備しておくことが必要です。
また、審査落ちを避けるために、商品タイトルや画像内に誇大表現や薬機法に抵触しそうな文言などのNGワードが含まれていないか、確認しておきましょう。
医薬品、サプリメント、医療機器は出品不可
TikTok Shopでは、医薬品、日本で認可を受けていない成分を使用したサプリメント、タバコ類、医療機器などは出品不可とされています。特に越境販売を行う場合には、国別のルールによって、さらに広範な規制がかかる可能性もあるので注意してください。
公式の越境EC制度は中国・香港法人のみが利用可
TikTok ShopにはGlobal Sellingという公式の越境販売制度がありますが、これは中国本土と香港に法人登記がある企業だけが利用可能です。この制度を前提にすると、中国企業は日本への越境販売をスムーズに行えますが、逆に日本企業が中国への越境販売をするには現地法人が必要となり、非常に難しいといえます。
そのため、日本企業がTikTok Shopで越境販売を行う場合には、販売先の国の規制や口座などの要件を満たしたうえで現地のTikTok Shopに個別に登録し、海外発送対応を行うことが必要です。
TikTok Shop連携を始めるなら、今!
TikTok Shopは、今、まさに伸びているセールスチャネルです。いち早く参入してShopifyと連携することが、利益の最大化につながります。Shopify PremierパートナーのBiNDecでは、TikTok Shopを活用したビジネス拡大のためのアドバイスも行なっていますので、お気軽にご相談ください。
\TikTok ShopとShopifyの連携にお悩みなら/