近年、ファンビジネスという言葉は、エンターテインメント業界に限らず食品・アパレル・美容・ライフスタイルなど、さまざまな業界で使われるようになっています。商品そのものだけではなくそこから生まれる体験価値が購買理由になる時代において、ブランドは一種のIPとして機能し始めています。
その最前線にあるのが、エンタメ業界のECです。日本最大級のクリエイターマネジメント企業として有名なUUUM株式会社。そのグループ企業として、人気YouTubeクリエイターやインフルエンサーのアイデンティティを形にするブランド開発、商品企画、そしてEC運用までを一気通貫で担っているのがP2C Studio株式会社です。

今回はP2C Studioの野中 崇央氏と、Shopify PlatinumパートナーとしてEC構築・運用を支援するBiNDecを提供するWEBLIFEの山岡 義正による対談を通じて、エンタメ業界の第一線で成長するためのファンビジネスの哲学やECのあり方を紐解きます。
ファンの熱量に寄り添った購入体験をつくるために、どのようなECサイトを持つことが理想なのか、ファンの声をどうやって掬い上げて反映しているのか、顧客ロイヤルティのよくある課題に対して、具体的な戦略と想いに迫ります。
クリエイターの個性を最大化する、UUUMのIPグッズ事業
P2C StudioはUUUM株式会社のグループ企業で、YouTuberなどのクリエイター、インフルエンサーのIPグッズの企画、制作、販売を手掛けています。P2C(Person to Consumer, PtoC)領域において「ヒトを起点としたブランドづくり、モノづくり」を掲げ、リアルイベント等で商品を販売するほか、Shopifyでも自社のECサイトを複数運用しています。
「モノ」ではなく「ヒト」への共感がクリエイタービジネスの本質
P2C Studioが目指すのは、単なるグッズ販売の枠を超え、クリエイター自身の世界観を体現したブランドを創出することです。
BiNDecとして支援を行う山岡は、ヒトが中心となるファンビジネスの購買動機は、商品スペックへの評価よりも、『そのクリエイターが好きだから』『活動を応援したいから』という共感がベースにあると語ります。
例えばTシャツ一つとっても、『これを着てイベントに行こう』というコミュニケーションツールとしての意味合いが強いため、ECサイトに求められるのは、商品のクオリティを引き立てる演出や複雑な機能よりも、クリエイターの魅力がストレートに伝わること、そしてファンが迷わずシンプルに購入できる体験となるのです。
ECサイトをファンとの絆を深めるプラットフォームに
P2C StudioがECサイトを構築・運用する上で最も重視しているのは、単なる決済手段としての利便性ではなく、クリエイターとファンが深く繋がるためのプラットフォームとしての役割です。
野中氏は、クリエイターの世界観を形にしてファンに届けるため、ECサイトはブランドのアイデンティティを表現する最前線の接点となると語ります。あらゆるチャネルで「ヒト」を起点とした熱量の高いブランド体験を提供し続けることが、ファンを熱狂させ続けるファンビジネスの核心と言えます。

なぜShopifyだったのか?安定したインフラとマルチストア管理の両立
P2C Studioがグッズを販売するECサイトは、BiNDecの支援により、Shopifyで構築・運用されています。ヒトを中心としたファンビジネスのECサイトに、なぜShopifyが適しているのかを伺いました。
フルスクラッチECの限界とアクセス集中時のサーバーダウンからの脱却
Shopifyを導入する前のP2C Studioの自社ECサイトは、デザインや機能面が自由に設計できるフルスクラッチで構築されていました。
しかし、クリエイターがSNSで告知をした直後ファンが一斉にサイトに訪れるため、サーバーダウンしてしまうことが度々あり、その都度サーバーを強化するなどの対策が必要で、保守・運用にかかる多大な工数とコストが大きな負担となっていたのです。
そこで、BiNDecが支援する形で世界最大級のインフラを誇るShopifyでECサイトをリプレースし、アクセス集中時もサイトが落ちることなく安定したEC運用を実現しました。
IPビジネスにShopifyが向いている理由
Shopifyへリプレースした当時は、個別にカスタムアプリを開発しなければ実現できなかった要件も、今ではShopifyの標準機能や世界中の開発者が提供するShopfiyアプリによって容易に実装が可能になっている、と野中氏は実感しています。
自社でメンテナンスし続ける必要のないShopifyアプリは、開発コストを抑えながら常に最新のマーケティング手法に対応できる拡張性は、スピード感が求められるクリエイタービジネスにおける大きな強みとなっています。
BiNDecでは、日本の商習慣に対応した30以上のShopifyアプリを独自で開発・提供しています。詳しくは下記のページをご覧ください。
IPビジネスに最適なECを実現するBiNDecの技術力と伴走支援
Shopfiyは個人でも簡単にECサイトを開設できるプラットフォームですが、P2C Studioのような戦略的に収益を見込む法人向けのECサイトには専門の構築支援会社に依頼することが一般的です。
P2C StudioのECサイトは、構築から運用、グロースまで一期通貫でBiNDecが支援しています。
エンタメEC特有の要件に応える、Shopify Platinumパートナーの技術力
Shopifyには、ECサイトを構築・運用支援を専門とする公式パートナー企業があり、BiNDecは国内で数社しかいない最上位のランク「Shopify Platinumパートナー」です。
P2C Studioのように多彩なクリエイターごとに展開される膨大な商品・注文データを統合管理する仕組みを、Shopifyの仕様へ的確に落とし込むには、高度な技術力やディレクション能力が求められました。
また、ECサイトは構築して終わりではなく、日々の運用のなかで改善を繰り返すことが不可欠です。BiNDecの支援は、初期の構築にとどまらず、変化する現場の要望を即座に機能追加や改善へと繋げる伴走体制が大きな特徴です。
ストア別にみる、目的に合うECサイト作りの最適解
P2C Studioでは、クリエイターの規模やブランドの特性に合わせ、複数のECサイトを最適化しています。運用の効率化と独自の世界観をいかに両立させているか、3つの事例を紹介します。
Creator Store |150名超のクリエイターグッズを効率的に運用できるモール構造のEC
150以上のクリエイターグッズが並ぶ「Creator Store(クリエイターストア)」は、以前「MUUU(ムー)」というECサイトでした。
2021年にShopifyへのリプレースした当初はフルスクラッチで運用していたMUUUを再現するような作りで、複雑なID連携や独自のカスタムアプリを多用していましたが、システムが複雑化しすぎることは運用の重荷となっていました。そこで、Shopifyにリプレースしてから3年後に現在のCreator Storeへリニューアルする方針になりました。
Creator Storeでは、カスタムアプリを極力廃止し、Shopifyの標準機能とサードパーティ製のShopifyアプリからなるエコシステムを最大限に活用するシンプルな構造になっています。
この転換により、新たなクリエイターページの開設もスピーディになり、運用負荷とコストの削減に成功しました。保守コストのかからないShopifyアプリをうまく組み合わせて運用することで、システムメンテナンスの工数を抑えつつ、安定したEC運用が実現できています。

また、ファンは特定のクリエイターのグッズを求めてECサイトを訪れるため、複数のクリエイターを跨ぐ回遊性よりも、欲しいものを迷わずに買えるということを重視し、AというクリエイターのページにはAの商品のみが並ぶ、というような導線設計になっています。
どのページも基本的にはフォーマット化されたシンプルなデザインではありますが、バナーのクリエイティブや特集ページによってクリエイター独自の魅力を打ち出しています。

東海オンエア|イベント・メディア・ECが分断されない“王道IP”のストア
UUUMに所属する多くのクリエイターの中でも、圧倒的な知名度と販売規模を誇る「東海オンエア」のECサイトは、Creator Storeの一部ではなく独立したサイトとして構築されています。
Shopifyで構築されてはいるものの、ECサイトとしての機能のほか、東海オンエアのメンバーが出演するイベント案内など最新情報を発信するメディアも含めた東海オンエアというブランド独自のカラーを色濃く反映した公式ポータルサイトとしての役割を担っています。

FRONT ROW by UUUM|ファッションIPを活かすマルチブランドEC設計
クリエイター発のアパレルブランドを取り扱う総合ECの「FRONT ROW(フロントロウ)」は、各ブランドの独自性を極限まで追求した非常にユニークな設計のECサイトです。
通常、一つのShopifyストア(管理画面)で複数のブランドを運営しようとすると、ヘッダーやフッター、メニュー構造などは共通化されるデザインの制約になってしまいます。しかし、FRONT ROWではブランドごとの世界観を損なわないよう、URL配下でヘッダーからデザインまでをガラリと切り替える高度な構成を採用しています。
単独のブランドサイトに来たかのような没入感のある体験を提供しつつ、裏側では1つのECサイトとして統合管理することで、運用効率を劇的に高めています。ブランドごとに管理画面を分けてしまうと運用負荷がネックになってしまうところ、この仕組みなら最小限の工数で個別のブランディングが可能になる、と野中氏はそのメリットを語ります。
Shopifyの仕様を熟知したBiNDecによる技術的なディレクションが、この1ストア・マルチデザインの実現を支えています。

リアルの熱量をECにつなぐ、P2C StudioのEC活用戦略
ファンビジネスにおいて、ライブやファンミーティングといったリアルイベントは、ファンの熱量が最高潮に達する瞬間です。P2C Studioが展開している、リアルの体験を最大化するためのオンラインとオフラインをシームレスに繋ぐ独自のEC活用戦略について、野中氏に伺いました。
イベントと連携し、販売機会の最大化
リアルイベントの現場では、物販会場の混雑や在庫切れによる機会損失が大きな課題となります。
ECサイトでイベントグッズを事前に販売することにより、イベント当日は会場物販エリアの混雑を軽減するだけでなく、イベント終了後も会場で買い逃したファンへ確実に商品を届けるフローを構築しています。
イベント会場の物販の現場では、スピード重視でPOS導入が難しい面もありますが、ECサイトなら購入データを取得でき、その後の顧客マーケティングに活用することも可能になります。
イベント限定ページでPOS要らずのEC活用例
アパレルブランドの展示会などの小規模なイベントでは、ECサイトに用意した会場限定商品のページをQRコードで読み取ってもらい、そのままEC上で購入手続きまで完了してもらう、という方式も採用しているそうです。
物理的なレジ端末が不要になるだけでなく、支払いも顧客自身のスマートフォン上で完結するため、効率的なイベント物販を可能にしたOMO(Online Merges with Offline)の好例と言えます。Shopifyでは、特定の商品ページをURLを知っている人だけがアクセスできる限定公開の状態にすることができるため、このようなEC活用も容易です。
OMOについて、詳しくは下記の資料も併せてご覧ください。
AIでファンビジネスを支えるShopifyの分析とマーケティング機能
Shopifyの強みは、インフラの安定性だけではありません。専門知識がなくても直感的に扱える分析ツールが、運用の現場をデータを基に考えるマーケティング組織へと変貌させています。
Shopifyのストア分析機能でEC運用担当者がマーケターに
P2C Studioでは現在マーケティングにも力を入れており、野中氏も所属しているコマースマーケティングユニットがEC運用業務とマーケティング領域を担っています。
マーケティングで必要となるデータの分析には、主にShopify標準のストア分析が活用されているそうです。現場のスタッフが自ら改善ポイントを見つけ出し、ダイレクトに施策へ繋げる文化が根付いている、と野中氏は手応えを語ります。
Shopifyのストア分析は、重視したい数値が見やすいようにダッシュボードをカスタマイズしたり、直感的にデータを把握できるUIがメリットです。また、GA4と連携した複合的なデータ分析も可能です。詳しくは下記の資料をご覧ください。
Shopify AIが実現する、一歩先を行く高度なデータ分析
Shopifyには膨大な購買データが蓄積されるため、それらを使いこなすにはある程度の専門知識が求められます。しかし、AIを活用することでデータ分析のハードルも下がりつつあります。
Shopifyには対話型AI「Sidekick」が搭載されており、なぜ売れたのかという要因分析や、複雑なデータからのインサイト抽出が、対話ベースでより深く、スピーディーに行えるようになっています。
野中氏も、以前までマニュアルを調べながらセグメントをかけて抽出していたデータがSidekickに聞くだけですぐ出てくるようになった、など積極的に活用しているとのことでした。
山岡は、これからリリースが予定されているSymGymにも注目しています。これは、AIが顧客の購買データを学習してペルソナとして振る舞い、ECサイトの購入導線を辿って課題を指摘してくれる新機能です。
こういった最新のAIを武器にして、いち早く実務に落とし込める環境作りもBiNDecのグロース支援として充実させていきたいことの1つとして挙げました。

これからのファンビジネスにおけるECの役割
最後に、P2C Studioがヒトを起点としたファンビジネスにおいて最前線のポジションを確立している中、ECを通じた新しい顧客ロイヤルティの形について伺いました。
購入体験を超えたロイヤルティと温度感の醸成
これからのファンビジネスにおいて、ECサイトは単にモノを売る場所以上の価値が求められています。クリエイターとファンのどちらにも愛されるECサイトであるために、購買以外のエンゲージメントをいかに生み出すかを重視し、クリエイターの気配や情熱を感じられるような温度感を大切にしたいと野中氏は語ります。
効率的なEC運用だけでなく、ファンの熱量に寄り添う体験を提供し続けることが、長期的なブランドへの愛着(ロイヤルティ)の醸成に繋がっていきます。

ECサイトは人と人を繋ぐツール。ファンの熱量を高めるデジタル接客への期待
野中氏は、ECサイトを究極的には人と人を繋ぐツールであると考えています。今後のShopifyの進化について、特に音声コンテンツの強化に期待しており、例えば、ECサイト上のAIチャット上で商品について質問したら、クリエイターの声で返答してくれる購入体験も作れるのではないか、という具体的なアイディアも語られました。
こうした温度感のある体験を通じて、LTV(顧客生涯価値)を最大化していくこと、テクノロジーでファンの熱量をどこまで高められるかという挑戦はこれからも続きます。
Shopify×BiNDecで実現。体験をつくるファンビジネスのためのECへ
IPは、圧倒的な知名度や巨大なファンベースがなければ成立しないものではありません。カフェ、美容、アパレル、食品など、体験や思想に共感する顧客が存在する限り、どんなブランドもIPになり得ます。それらをEC・イベント・SNS・リアル店舗といった複数の接点で一貫して育てていくための基盤として、Shopifyは適した選択肢であり続けています。
P2C Studioの事例が示す通り、イベントやSNSなど多様な接点とECを、ファン目線で体験と購買をつなぎ直し改善を積み重ねていくことが、ブランドやIPを一過性で終わらせずビジネスとして成長させ続ける土台となっています。
BiNDecでは、Shopify Platinumパートナーとしての豊富な実績と技術力で、ECの構築にとどまらず、IPやブランドの世界観を起点としたファンビジネスを“継続できる仕組み”づくりまで一貫して支援しています。
エンターテインメント業界はもちろん、イベントやコンテンツと連動したEC、ファンとの関係性を重視したブランド運営に取り組みたい企業様に向けて、Shopifyを活用した最適なEC設計をご提案します。ぜひお気軽にご相談ください。
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