アップセルは、新規顧客の獲得が難しくなる中、効果的に売上を向上させることができるセールス手法として注目されています。ただし、アップセルで成功するためには、その目的を正しく理解して適切な施策を実施することが必要です。
本記事では、アップセルとクロスセルとの違いやアップセルを行う目的、成功させるための方法などについて、成功事例と合わせて解説します。売上やLTVを向上させるための手法に悩んでいる場合は、ぜひ参考にしてください。
アップセルとは、上位の商品を提案して顧客単価を上げるセールス手法
アップセルとは、顧客単価を上げるための営業手法のひとつです。本来顧客が買うはずだった商品やサービスよりも上位の商品・サービスを提案し、成約に結び付けることで売上アップを目指します。
例えば、1本100円の使い捨てボールペンを買おうとしている顧客に対し、インクの入れ替えができて書き心地に優れた500円のボールペンを提案して受け入れられれば、顧客単価が大幅にアップします。同時に、顧客にとってメリットの大きい商品を紹介することによる顧客満足度アップにもつなげられるでしょう。
クロスセルとアップセルの違い
クロスセルとアップセルはどちらも顧客単価を上げるための営業手法のひとつですが、単価を上げるための方法が違います。
クロスセルでは、顧客が元々購入しようとしていた商品と関連した商品を提案し、同時に購入してもらうことで顧客単価向上を狙います。「2つ買うと割引になる」「いっしょに使うと便利」など、同時購入にメリットがあると顧客に感じてもらうことがクロスセルのポイントです。
例えば、ボールペンと替え芯を割引価格でセット販売する、といったケースがクロスセルの例です。
クロスセルについて詳しくは、下記の記事をご参照ください。
LTVや顧客満足度につながる、アップセルを行う目的
アップセルを有効に活用するには、何のためにアップセルを行うのかを適切に理解していなければなりません。アップセルは、主に下記の3点を目的として行います。
売上とコストの効率化
アップセルを行う主な目的は、コストを抑えながら効率的に売上を向上させることです。
売上を伸ばす方法として代表的なのは新規顧客の獲得ですが、新規顧客を獲得するためには、まず見込み顧客を作り、商品の魅力をアピールし、初回購入に進んでもらうといったステップが必要です。事業継続のためには新規顧客の獲得は常に意識し続ける必要がありますが、コストがかかる上に、自社商品の認知が進めば顧客を開拓できる余地も少なくなっていきます。
一方、アップセルはすでに自社の商品やサービスを利用している顧客に対するアプローチです。まったく接点のない顧客に商品を買ってもらうよりも、元々自社の商品やサービスに好感を抱いている顧客の単価アップを狙ったほうが、アプローチするためのコストも削減でき、効率良く売上向上を目指せるでしょう。
LTVの向上
LTVの向上を目的として、アップセルの施策が行われるケースもあります。
LTVとは「顧客生涯価値」のことで、顧客一人あたりが生涯に生み出す利益の総額を示す指標です。LTVは「平均顧客単価×粗利率×平均購入頻度×平均継続期間」で算出するため、顧客単価が上がれば、その分LTVの向上も見込めます。
同時に、LTVの向上には、購入頻度や継続期間を増やすことも重要です。より満足度が高い上質な商品や、状況に応じて選べる多彩な商品があることが伝われば、顧客と長く良い関係を築きやすくなります。
顧客満足度の向上
アップセルの目的として、顧客満足度の向上も挙げられます。
例えば、ある悩みを持つ顧客がいて、その悩みを解決できる商品の中で一番安い商品を購入しようとしているケースを想定します。このような顧客に対して、悩みをより素早く解決できる上位商品や、別の悩みも併せて解決できる商品を提案することは、顧客にとって最適な商品を見つける手助けになるでしょう。
しかし、そのためには顧客の本当のニーズを踏まえた営業を行わなければなりません。顧客から「必要のない機能がついた高額商品を押し売りされた」と思われないように、注意が必要です。
高額でも買いたいと思う、アップセルを成功させるための方法
アップセルを成功させるためにはさまざまな方法があります。下記の5つの方法から、自社に適した方法を組み合わせて活用しましょう。
上位商品・サービスのお試し期間を設ける
上位の商品・サービスのお試し期間を設ければ、「商品やサービスが気になっているが、価格相応の価値があるかわからず手が出しにくい」という顧客にアピールすることが可能です。魅力を感じてもらえれば、お試し後の継続購入につながります。
割安で利用できるキャンペーンを実施する
期間限定で商品をお得に利用できるキャンペーンを実施すれば、普段よりもワンランク上の商品に手が届きやすくなります。「今買うと割引になるなら、高い商品を試してみよう」という顧客心理に訴えかけられる方法です。
上位商品・サービスで得られる具体的なメリットを提示する
上位の商品・サービスのメリットを十分に伝えられれば、顧客に「高いだけの価値がある」と感じてもらいやすくなるでしょう。メリットを提示する際は、具体的に伝えることが重要です。
商品に含まれる原材料にこだわっていたとしても、原材料名を羅列するだけでは、顧客に魅力は伝わりません。化粧品であれば具体的な効果や使用感、アパレル商品なら着心地の良さやスタイルの見え方など、顧客にとっての魅力を詳しく示してください。
上位商品・サービスの良い口コミを表示する
上位の商品・サービスに対する良い口コミをアピールすることで、購入を悩んでいる顧客を後押しできます。
特に、実物を見られないECサイトにおいて、実際に商品を利用している顧客の声は商品の購入をするかどうかを左右する重要なポイントです。ECモールであれば、主要なモールは口コミを表示させる機能を備えていますが、自社のECサイトでも口コミ表示機能の活用をおすすめします。
ロイヤルティの高い顧客にすすめる
アップセルを成功させるためには、ロイヤルティの高い顧客に優先的にすすめるという方法もあります。
ロイヤルティの高い顧客とは、自社への信頼や愛着の高い顧客のことです。アップセルでは、顧客の当初の想定よりも高額な商品やサービスをすすめることになるため、自社に対して好感を抱いている相手にアプローチしたほうが成功の確率は高まります。
「信頼しているブランドの商品だから、高い商品はその分、良いものなのだろう」と感じてくれる顧客に対して働きかけを行いましょう。
BiNDec導入サイトのアップセルの成功事例
対面で営業ができないECサイトでも、アップセルを実現しているケースがあります。EC構築・運用サービスの「BiNDec」を導入し、アップセルに成功している事例を2例紹介します。
john masters organics
オーガニックコスメブランドのjohn masters organicsでは、購入金額に応じた会員ランク制を導入し、より高額な商品購入を促すことに成功しています。
john masters organicsの会員ランクは、レギュラーからプラチナの5段階です。上位ランクになるほどポイント還元率が高くなり、シークレットイベントや先行販売といったメリットも得られます。
猿田彦珈琲
コーヒー豆などの通信販売を行っている猿田彦珈琲でも会員ランク制度は導入されていますが、より特徴的なのは、商品の購入ページで顧客の選択によってさまざまな価格のバリエーションを表示させて、アップセルにつなげるという手法です。
コーヒー豆の商品ページでは、グラム数や、単品購入・定期購入が選べる購入方法を選択すると価格が自動表示されます。同じ商品でも購入量が増えると割安で買えることから、多くの購入量を求める顧客により高額な商品を販売しやすくなる工夫が施されています。
猿田彦珈琲のEC施策について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
まとめ:アップセルを狙うなら、Shopifyを活用しよう
アップセルは、市場が成熟して新規顧客獲得が難しくなっている場合にも売上を伸ばしていける効果的な営業手法です。顧客にとってもメリットのあるワンランク上の商品やサービスを用意して、アップセルを目指しましょう。
ECサイトでのアップセルを狙う場合は、アップセルにつなげやすい機能を使えるプラットフォームを選ばなければなりません。ECプラットフォームのShopifyでは、豊富な機能拡張用アプリを利用して、レビュー表示や顧客分析といったアップセルに役立つ機能を簡単に導入できます。幅広いプランが用意されているので、規模感に応じたコストで始められる点も魅力です。
WEBLIFEでは、Shopifyを利用したECサイトの構築・運用を支援するサービスである、BiNDecを提供しています。豊富な実績から得た知見をもとに、事業者ごとに最適なECサイト運営の方法を提案できるため、お困りの場合はお気軽にご相談ください。
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