ECサイトの商品ページの説明テキスト作成や、見栄えのするビジュアルの用意、メールマガジンの作成など、ECサイトには日々の運営作業が欠かせません。しかも、トレンドや消費者の嗜好の変化に合わせた新商品の追加や季節ごとの商品の入れ替えも頻繁に発生します。
Shopifyの公式生成AI機能であるShopify MagicとSidekickは、まさにこのようなECサイト担当者の負担を軽減し、ビジネスを大きく飛躍させるために開発されたツールです。今回は、それらの活用法を深掘りします。
Shopify MagicとSidekick:その特徴と違い
まず、Shopify MagicとSidekickについて簡単におさらいしておきましょう。
ECサイトの構築や運営作業を代行するShopify Magic
Shopify Magicは、Shopifyの各種ツールやワークフローに統合された生成AIで、その多くの機能が追加料金なしで利用できます。たとえば、自動テキスト生成機能を使うと、商品説明、ブログ記事、メールの文章などのコンテンツを自動生成することが可能です。その際には、キーワードや簡単な指示を入力するだけで、適切なテキストを提案してくれます。
また、画像編集機能を使うと、商品画像の背景を削除したりAI生成画像に置き換えて、より見映えのするイメージに仕上げることが可能です。さらに、顧客へのサポート機能として、FAQ(よくある質問)への回答を自動生成し、迅速で的確な返答を可能にします。
EC事業者の良き相談相手となるSidekick
Sidekickは、Shopify Magicの一部として提供されるAIアシスタント機能です。担当者が、普通に会話するような自然言語によって質問や要求を行うと、内容に応じたデータ分析結果やビジネスアドバイスを提供します。
「ShopifyMagic」と「Sidekick」についてはこちらの記事でも紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
ChatGPTも利用して機能を補完
なお、Shopify MagicやSidekickでは、Shopifyで作成したECサイト以外の外部データの分析や、会議の議事録などはサポートされていませんが、ChatGPTなどの外部の生成AIサービスと組み合わせて利用することで互いの機能を補完し合うことが可能です。また、まだ日本語対応になっていないShopify Magicの機能を、外部の生成AIサービスで代替させることもできます。
ChatGPTとShopifyの組み合わせについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まさにマジックなShopify Magicの機能
ここでは、Shopify Magicの機能を実際のECサイトで発生する商品ページ制作の作業に落として解説していきます。
ECサイトの多様な場所で使えるテキスト生成
Shopify Magicのテキスト生成機能が使える場所は、星のようなアイコン(本記事では仮に「Magicアイコン」と呼ぶ)が表示されることでわかります。具体的には、商品説明やメール、ブログ記事、ストアページ内の文章などのテキストを入力するフィールドなどです。
商品説明テキスト生成
◼︎生成手順
- Shopify管理画面の当該ページでタイトル(商品名)を入力後に、説明を書くフィールド内のMagicアイコンをクリック
- 表示された入力フィールドに、商品の特徴やアピールポイントとなるキーワードを入力し、生成ボタンをクリック
- それらの情報に、タイトルの内容も加味した説明文が生成される
- 意図と異なっていたら、再生成ボタンで書き直しさせる
- 適切な説明文が生成されたら、保持ボタンをクリックして本来の入力フィールドにコピー
説明が不十分と思われるときは、商品の特徴やアピールポイントを追加して再生成させると良いでしょう。
また、生成される説明文は、ブランドイメージや商品の特性に合わせてトーン(語り口)を変えることができます。
トーンの種類は、「エキスパート」、「挑戦的」、「遊び心がある」、「洗練された」、「説得力のある」、「協力的な」のプリセットが用意され、自分で設定するカスタムトーンも作成できます。
気に入った説明文が生成されたら、保持ボタンをクリックして本来の入力フィールドにコピーしてください。コピー後のテキストはキーボードから変更することもできますので、必要に応じて調整を加えます。
メールテキスト生成
◼︎生成の準備
- Shopifyアプリストアから公式のShopifyメールをインストール
- メールの件名と本文のコンテンツに対してShopify Magicを適用
件名の場合には、メールの内容や目的をキーワードとして与えると、候補が3つ生成されます。もちろん、再生成も可能なので、納得のいく件名を選んでください。
続いて、プリセットされている写真付きバナーの「ストアに入荷した最新の商品をご覧ください。」という定型的な説明文を書き換えてみます。アピール文を入力し、トーンを選択して生成ボタンをクリックするという手順は共通です。
さらに、バナー内のイメージを生成結果に対応した商品のものに入れ替えて、この部分は完成です。
続いて、メールの本文に相当するテキストフィールドを追加して、内容をAI生成してみます。
これを同じく「遊び心がある」トーンで生成させてみると「季節感ジャンプ! 唇で季節を先取り! 唇が主役、ノリノリで出かけよう。新色で気分も新たに、ふっくら唇でキュートさ倍増。今すぐチェックして、毎日をポップに彩ろう!」のようになりました。
こうして、短時間で訴求力のあるメールを仕上げることができるのです。
Shopify Magicで日本語への対応がされていない箇所
顧客の興味ある話題を定期的に提供するブログ記事も、ECサイトのコンテンツマーケティングには欠かせない要素です。Shopify Magicには、記事のテーマ(トピック)を入力するだけで、まとまった分量の記事を生成してくれる機能も用意されています。
ただし残念なことに、現状は基本設定が日本語になっているECサイトのブログ機能はShopify Magicに未対応(入力フィールドにMagicアイコンが表示されない)です。ECサイトの基本設定を英語にすると、トピックを英語だけでなく日本語で入力することはできますが、生成される記事自体は英語になってしまいます。
表現がストレートな英語に対して日本語の微妙なニュアンスの再現が、まだ生成AIでは難しいのかもしれません。短めのコピーや説明文では問題がなくても、文字量の多い記事をそれなりに読ませる文章に仕上げるには、もう少し時間がかかるということではないかと思われます。
同じことは、ストアページの編集機能にもいえます。基本設定が英語のECサイトでは商品説明だけでなく、ページ内の他のテキスト生成にもShopify Magicを使えるのですが、日本語設定ではやはりMagicアイコンが表示されません。
しかし、英語モードで生成した内容を訳してみると生成結果自体は問題ないので、遠からず日本語設定のダッシュボードからも生成が可能になると考えて良いでしょう。
画像エディタと統合されたイメージ生成・調整機能
Shopify Magicには、テキスト生成だけでなくイメージ生成機能もあります。ただし、最近では自動車のコマーシャルなどでは本物そっくりのCGイメージが使われるケースが増えているものの、製品写真は実物を撮影したものがECサイトの信頼性にとっても望ましいため、イメージ生成機能はあくまでも背景用です。
◼︎生成手順
- メディアの編集モードに入る
- Shopify Magicが主題となる部分だけを自動判定して、背景の削除や置き換えができる
- “Describe the subject”に製品の種類などを入力
- ”Describe the background you want”にどのような背景にしたいかを入力
- オリジナルイメージに加えて4つの候補が生成されるので、その中から最適と思えるものを選択
- イメージにマッチするものがなければ、”Generate again”で再生成
※本記事のための架空の製品につき、別の生成AIを利用して作成
Shopifyアプリの選択に役立つアプリレビューサマリー
Shopifyでは、ECサイトの機能を拡張するShopifyアプリを利用できることも大きなメリットの1つですが、Shopifyアプリは公式発表で13,000種以上も存在しており、適切なものを選択するのに苦労することもあります。その選択の一助になるのがShopify Magicを使ったアプリレビューサマリーです。
基本的に100以上のレビューがあり、4.0以上の評価を受けたものにアプリレビューサマリーはつくため、サマリーを参照して、同一カテゴリーの中で特に目的に合うものを選択すれば良いといえます。
とはいえ、販売する商品も運用体制も様々ある中で自社のECに合うアプリを探し出すのは難しい部分もあるかと思います。その場合には、Shopify公認のパートナーの力を借りるのも手でしょう。Shopify PlusパートナーであるBiNDecも、アプリに関する適切なアドバイスが可能です。Shopifyパートナーの失敗しない選び方について詳しく解説した記事もありますので、併せてご覧ください。
顧客1人あたりの支払い金額予測(要プレミアムプラン以上)
プレミアムプラン以上のECサイト向けのサービスですが、Shopify Magicを使って顧客1人あたりの支払い金額の予測を行うことも可能です。これは、プレミアムプラン以上のECサイトが利用できる顧客コホート分析というレポート機能を使い、Shopify Magicが以下の項目を考慮して算出するもので、予測結果は「高(High)」「中(Medium)」「低(Low)」の3段階で分類されます。
利用される項目は、購入頻度、平均注文金額(全体平均との比較)、注文回数、最後の注文からの経過時間の4つで、ロイヤル顧客の特定やマーケティングキャンペーンの最適化、顧客獲得コストの予算設定などに活用することが可能です。
プライバシー保護も万全なShopify Magic
生成AIの利用にはプライバシーを懸念する声も聞かれますが、Shopify Magicは、その点についても万全の安全策をとっています。
具体的には、Shopify Magicは、過去のシステム運用の実績から世界中の企業から信頼されているShopifyの強力なセキュリティアーキテクチャとプライバシーポリシーに基づいて構築されており、ユーザーのストアデータ、商品情報、過去の注文履歴などの分析に関しても、それらに準拠した形でのみ扱われるのです。
また、Shopify MagicのAIが生成したコンテンツは、必ずユーザーの確認が求められ、承認されてから公開されます。データの取り扱いについて透明性が保たれており、ユーザーは、どのようなデータが使用され、どのように処理されるかについて情報を得ることが可能です。
さらにShopifyでは、プライバシーとセキュリティに関する機能を継続的に更新・改善しており、Shopify Magicは今後とも安心して利用できる生成AI機能であるといえます。Shopifyのセキュリティ対策について、こちらの記事で詳しく解説しています。
Sidekickは頼もしいECアシスタント
Shopify Magicのメイン機能が、ECサイトの構築や運営に関するルーチン作業を代行するような位置付けであるのに対し、その一部でありながら独立した名称を与えられたSidekickは、日々刻々と変わる状況に応じて臨機応変な対応を迫られるECサイトオーナーの良きアシスタントとなるAIツールです。現在は早期アクセス(※)中なので、すべてのECサイトで使えるわけではありませんが、Shopifyの公式ページの情報を元にご紹介します。
※早期アクセス:特定の機能を、選ばれたECサイトに対し動作テストを兼ねて開放すること。Sidekickの場合には、こちらのページの中程に、メールアドレスとShopifyで制作したECサイトのURLを入力して登録後、選ばれれば連絡がくるようになっている。
クーポン、配送の設定や在庫管理もお任せ
Sidekickは有能なアシスタントのように、言葉で基本的な指示を与えれば、詳細は意図を汲んで自動的に補って処理をしてくれます。たとえば、クーポンの作成も、期間や割引率を指定するだけで、特に指定がなければ全商品を対象にして発行できるように準備してくれるのです。もちろん、最終的な発行は、担当者の承認が得られてから行われ、必要があれば事前に変更を加えることができます。
同様に、商品の配送に関して、全国一律料金や地域別、重量別、購入金額別の設定をSidekickに依頼したり、商品ごとの在庫数であるとか店舗や倉庫ごとの在庫状況をSidekickに確認させることが可能になります。
ECサイトやブランドを引き立てるコンテンツ提案
先に、Shopify Magicがブログ記事のテキストを生成できることに触れましたが、Sidekickは記事テーマなどのコンテンツの企画アイデア自体のアドバイスをすることが可能です。
ブログ記事などのコンテンツの内容はShopify Magicのテキスト生成機能でカバーできますが、Sidekickはさらに一歩踏み込んで、コンテンツの企画アイデア自体を提案することができるのです。
専門家レベルのレポート作成
そして、Sidekickはレポート作成も得意です。現在の自社ECサイトでの売れ筋が何なのかは簡単に調べられます。
複数のECサイトを運営している場合でも、サイト名と期間、着目する項目を自然な言葉で指定するだけで、たとえばコンバージョン率の変化をグラフ化して分析するようなことが可能になります。
Shopifyで生成AIを活用するメリット
ここまでお伝えしたように、Shopifyで生成AIを活用することで得られるメリットは多くあります。改めてまとめると以下のようになります。
1.業務の効率化
生成AIによって商品説明の自動生成や在庫管理の最適化などの業務プロセスが自動化されることで、EC事業者はルーチン作業に時間を取られず、より重要な業務に集中できるようになります。また、大量のデータを迅速に分析してトレンドやパターンを見つけ出すことができるため、マーケティング戦略の立案や販売予測を効率的に行うことが可能です。
2.人為的なミスの低減
人間によるデータ入力や管理にはミスが付きものですが、生成AIを使うと、たとえば、配送や在庫管理に伴うヒューマンエラーを最小限に抑えられ、損失を減らすことが可能になります。そして、商品説明やメールにおいても内容に統一感を持たせやすくなり、ブランドに対する信頼度も向上させることができるのです。
3.商品開発など主要業務に注力できる
上述の通り、生成AIが日々の運営作業を担うことで、人間のスタッフは商品開発やマーケティング戦略の策定など、よりクリエイティブで価値の高い業務に時間を割くことができるようになります。加えて、市場の動向を迅速に分析して、顧客のニーズやトレンドの変化を迅速に把握できるようになるため、新商品の開発や既存商品の改善を素早く行え、競争力を高めることが可能です。
Shopifyで生成AIを活用する注意点
一方で、Shopify MagicやSidekickに限らず、現状の生成AIには注意すべき点があります。その中から代表的な3点について、以下に挙げておきましょう。
1.情報の正しさの確認
生成AIが提供する情報や推奨事項は、常に正確であるとは限りません。生成AIは過去のデータやトレンドを学習して回答しているため、誤った情報やバイアスが含まれる可能性があるからです。生成AIが生成したテキストなども、常にその正しさを確認し、必要に応じて修正や補完を行うことが重要です。
2.セキュリティ面でのリスク
Shopifyはセキュリティにも力を入れており、それは、Shopify MagicやSidekickにも当てはまります。しかし、生成AIは入力された情報を学習して他の機会に利用することもあるため、利用に際しては機密性の高い情報は入力しないようにしましょう。
3.余分なコストに注意
Shopify MagicやSidekickは基本的に追加費用なしで利用できますが、「顧客1人あたりの支払い金額予測」など、一部の機能はプレミアムプラン以上のECサイトでないと利用できないケースがあります。もし、その機能を利用したいという場合には、プレミアムプラン以上にかかる費用を上回るメリットが得られるかどうかを、冷静に判断することが必要です。
Shopifyの各種料金プランについては、こちらの記事で詳しく紹介していますので、併せてご覧ください。
ShopifyのAI機能を活用したEC運用支援ならBiNDec
Shopifyは、Shopify MagicとSidekickによってECサイトの構築や運営管理の自動化、効率化することでEC事業者の負担を軽減し、より多くの時間をビジネスのビジョンや戦略の策定に割けるようにしています。
とはいえ、日本語で使えるようになるまで、もう少し時間がかかりそうな機能もあり、サードパーティのAI対応Shopifyアプリや外部の生成AIサービスを併用して、自社のECサイトニーズに合った環境を整えることも大切です。
Shopify Plus Partnerとして豊富な経験と実績を持つBiNDecでは、Shopify MagicとSidekickの活用方法をはじめ、独自のノウハウを駆使し、最適なECサイトを構築するためのご相談を承ります。新規のECサイトはもちろん、既存ECサイトのリプレースも、BiNDecにおまかせください。
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