2026年9月29日、WEBLIFE、ヤプリ、Channel Corporationの3社主催で「Shopify AI Commerce SHIFT」を開催しました。
AI経由の購買が広がるなか、ECサイトが選ばれ続けるために何を設計すべきかをテーマに、Shopify Japanやアパレル大手のTSI、コスメ大手のアルビオンが登壇しています。
各セッションで語られた、これからのコマースにおけるAIに任せる領域と人が担う領域についてレポートします。
AI経由の購買はもう始まっている|Shopify Japan × WEBLIFE
オープニングセッションでは、Shopify Japanのパートナーサクセスマネージャー 石谷生剛氏とWEBLIFEの代表取締役 山岡義正が、AI時代のECサイトに求められる変化を解説しました。
AIが購買の入り口になりつつある今、運営を効率化するAI、AIに選ばれる仕組み、AIによる接客の3つの軸でECサイトを見直す必要があります。
AI経由の訪問は商品詳細ページに直行する
石谷氏は、AI経由のセッションの約50%が商品詳細ページに直行しているというデータを紹介しました。従来の検索と比べると、その頻度は約2.5倍です(*1)。
AI経由の訪問者は、トップページやカテゴリページを経由せず、すでに商品を理解して候補を絞った状態でECサイトを訪れています。AI経由の商品ページ訪問者は、オーガニック検索経由よりCVRが約50%高く、平均注文額も14%高いという初期データも示されました。

AI経由で購入されやすい商品には、次の3つの傾向があります。 1つ目は、ニッチな商品です。「1歳のフレンチブルドッグ用ハーネス」のように対象を絞った商品は、AIに具体的な条件を伝えるほど見つかりやすくなります。
2つ目は、条件を比較して選ぶ商品です。高品質な商品ほど、予算と特徴を並べて比較・検討されやすいそうです。
3つ目は、名前が分からない商品です。「SNSで話題になっているスパイク付きのヨガマットみたいなもの」のように、正しい商品名を知らなくても、特徴を伝えればAIが候補を示してくれます。
いずれも知名度ではなく、顧客の条件との相性で選ばれることが、AI経由の購買の特徴です。
*1=Shopify 2026年第2四半期決算
AIに見つけてもらう商品データの整え方
AI経由の訪問を増やすには、AIが商品情報を正しく読み取れる状態をつくる必要があります。石谷氏は、商品データの整備をAI対策の第一歩と位置づけました。
感覚的な表現も商品データに登録する
まず見直したいのは、顧客が購入前に調べる情報や、購入後に感じる使い心地が、商品データにどう登録されているかです。
「ふわっとしている」「さらさらしている」のような感覚的な言葉も商品説明に含めて整理しておくと、AIが顧客の曖昧な相談とも結びつけやすくなります。
社内の担当者に聞いても、商品の特徴の捉え方が人によって曖昧なケースは少なくありません。知名度の高い大手ばかりが薦められるわけではないため、取り組む価値は大きいと語られました。
また、山岡からは、FAQでよく使われるようなJavaScriptで折りたたまれた部分はAIが読み取りにくいため、商品ページにスタッフコメントや顧客の声で情報を整理し、表側の表示と、AIが読み取る裏側のデータの両方を整えておくことも重要だと挙げました。
メディアへの掲載やアワード受賞など、第三者の評価を載せるほど、AIは多角的に商品を薦めやすくなります。FAQの改善は売上だけでなく、カスタマーサポートの負荷軽減にも効果があるため、優先度の高い施策と言えます。
Google×Shopify開発のUniversal Commerce Protocol
Universal Commerce Protocol(UCP)は、ShopifyとGoogleが共同開発した、AIエージェントとEC事業者をつなぐオープン標準です。商品検索、購入、会員情報の連携、注文・配送状況の確認などを標準化します。Walmart、Target、Etsy、Visa、Mastercard、PayPalなども参加しています。
管理画面で商品を登録すると、TikTokやGoogleなどでも通用する世界共通のカテゴリが自動で選ばれます。Shopifyの標準に沿って登録するだけで、AIが探しやすい構造化されたデータが整う仕組みです。
構造化されたShopify Catalog
Shopify Catalogは、Shopifyの商品情報を、AIエージェントが読み取れる共通の形に整えた商品カタログです。AI検索経由のセッションは、スクレイピングや外部フィードのデータを使う場合と比べて、CVRが2倍になったと報告されています(*1)。AIが情報を正しく読めることが、成果の差につながっています。

AI活用の前提は社内データの整理
AIを活かすには、商品データだけでなく、社内のどこにどんな情報があるかを整理しておくことが前提になります。石谷氏は、データの一元化がAI活用で最も大切だと語りました。
社内の情報をAIが読める状態にする
石谷氏は、Shopifyが社内で使うAI「River」を例に挙げました。RiverはSlackに組み込まれたAIで、製品開発の状況など、社内の最新情報を調べるために使われています。
ここで重要なのは、新入社員にマニュアルや資料の保管場所を教えるのと同じように、AIにも、どの情報を参照すべきかを明確にする必要があります。また、情報が最新か分からない状態では、古い情報や不十分な情報に基づく回答につながるおそれがあります。
商品データに限らず、契約書などの社内資料も含めたデータの構造化が求められ、アクセス権限を守りながらAIが参照できる状態に整えることが大切です。山岡は、Shopifyの外にあるデータの整理と、セキュリティを保ったAI活用の支援に注力していると話しました。
AI時代のECを成功させる鍵は、パートナー選び
現在は、EC構築の専門知識がなくても、AIとの自然言語の対話でアプリを開発・実装したり、顧客データを読ませてマーケティング施策を打つことも可能になっています。そこで重要になるのが、AIにどこまで任せ、どう使うかのガードレールづくりです。
個人の判断でAIを使ってよいのか、顧客データが外部に出ないかといった懸念も出てきます。石谷氏は、AIで生成したコンテンツを誰がどうチェックして公開するかのルールやガイドラインが必要だと述べ、ベストプラクティスを持つパートナーの知見を借りることを勧めました。
山岡からは、従来の「課題整理、見積依頼、開発待ち、テスト・公開」という流れから、AIを前提とした進め方への転換を示しました。BiNDecが推進するのは、データを確認し、AIツールが提案・実装し、人が承認し、パートナーが品質管理を行う形です。
相談するAIから、自走するAIへ変えることで、EC運用の判断と実行を速められます。Shopifyパートナーの選び方について、詳しくは下記の資料をご覧ください。
共感で選ばれるブランド体験|TSI × ヤプリ
続くクロストークでは、株式会社TSI デジタルビジネス統括部 デジタルマーケティング部 副部長の中島淑子氏と、ヤプリの執行役員CCO 金子洋平氏が、TSIが実践する人・アプリ・コンテンツの融合について語りました。
TSIは、ShopifyへのECリプレースと、30以上のブランドが統合されたブランドモール型のECサイト「mix.tokyo」によって顧客データを軸にしたブランド横断のマーケティングに取り組んでいます。
統合から約1年半、中島氏はコスト削減は手段であり、本当の成果は一人のお客様を見る基盤が整ったことだと語りました。
スマホアプリプラットフォームの「Yappli」について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
ブランド単位から、一人のお客様単位へ
mix.tokyoへの統合前は、ブランドごとにECと店舗の顧客情報を管理しており、同じ顧客を横断して捉えにくい状態でした。現在は顧客IDを一つにまとめ、ECと店舗の行動をまたいで把握できます。

ゴルフやストリート、キャリア向けなど、着る場面も客層も異なるブランドの顧客を、一つの管理画面で見られるようになり、「どのブランドで買ったか」だけでなく、「この顧客がどう動いているか」を見る視点に変わっています。
たとえば、ゴルフブランドの顧客が、他ブランドの服も買っていることが分かり、感覚でしか把握できなかった動きを、データで確認できるようになっています。
会員情報を横断して見ることで、店舗の顧客をECへ誘導する施策や、OMO施策が立てやすくなったといいます。百貨店のようにフロアが分かれた店舗同士を紹介する施策も、検討が進んでいると語られました。
また、社内では、ブランド単位ではなくmix.tokyoのメンバーズとして顧客をつくるという意識が共通言語になり、施策の相談や結果の確認を持ちかける先も明確になったそうです。
リアルイベントから会員の新規獲得、購買へ
TSIでは、デジタル上で会員登録を促すだけでなく、リアルの場を会員獲得の入り口にする試みもされています。
自社のターゲット層との親和性のある、ダンスやアートなど若いクリエイターが集結するイベントにて、参加条件をmix.tokyo会員登録にしたところ、多くの新規会員を獲得できました。
イベント後の再訪率は52%で、半数の人がmix.tokyoに戻ってきました。一方で、30日以内に購入した割合は0.2%にとどまったため、会員登録から1〜7日の再訪を促し、商品やコーディネートを見せ、90日後の購買につなげる流れを設計しています。
金子氏は、デジタル施策はすぐにCVや購入額で語られがちだと指摘しました。ただ、洋服やカルチャーの買い物は、ファッション誌で新しいブランドを知って、だんだん好きになって買う流れに近く、知ってすぐ買うのではなく、まずきっかけをつくることが大切だと話しています。
中島氏も、リアルで直接コミュニケーションできる接点は、フックになりやすいと実感を語りました。こうした取り組みを重ねることで、社内の反応も少しずつ変化が起きているそうです。

スマホアプリ施策から学んだ、参加したくなる体験設計
TSIは、リアルの接点とスマホアプリを組み合わせた施策にも取り組んでいます。結果から見えてきたのは、機能だけでなく体験設計が重要ということでした。
百貨店とタッグを組んだイベントでは、スマホアプリのチェックイン機能にQRコードのスキャンを組み込み、チェックインした人に割引クーポンを配布しました。アクションした人の半数が新規会員になっています。
一方で、アプリをダウンロードする手間が壁になって、会員獲得につながりにくい結果になりました。そこから、「参加したい」「簡単に参加できる」「自然に参加できる」という3つの条件が必要だと分かったそうです。
チェックイン時にユーザータグを付与しておけば、その顧客だけにプッシュ通知などでアプローチすることもできます。
ログインボーナス施策では、スマホアプリをダウンロード済みの既存顧客に、毎日ログインすると100ポイントがもらえる期間限定の特典を用意しました。店頭の客数が増えるシルバーウィークに合わせた施策で、天候が悪い中でも、施策前後6日間の比較でログイン数・新規ダウンロード数が+60ポイント上がりました。
課題は、商品を見ずに離脱する、ポイント目当てのライトな層も一定数いることです。中島氏は、第1歩の会員証提示で終わらせず、第2歩として商品を見たくなる仕掛けづくりを続けると話しました。
AIで効率化できた時間を体験づくりへ
TSIでは、コンテンツをつくる際の切り口の選定や、LPのコーディングなどにAIを使い、効率化で空いた時間を、タッチポイントの設計に充てています。
また、以前は分析レポートや会議資料の作成に時間がかかっていたところ、今は結果を踏まえて何をするかの議論が増えたそうです。金子氏は、顧客にどう楽しんでもらい、どう好きになってもらうかに時間を割けることにAIによる効率化の価値があると語りました。
一方で、AIがすべてを考えるわけではありません。ブランドの考えを踏まえた施策は人が考え、ブランドの担当者から実際の顧客の反応を聞きながら、次の施策を決めていきたいといいます。
ブランドトップのほか、SNSのリール画像やスタッフのコンテンツなど、顧客との接点をどう楽しめるものにして広げるかの設計も、人の仕事です。
AIでつくったものは、仕上がりからAIらしさが分かる場合もあります。最後に顧客に戻ってきてもらうのは、人間らしさや、ブランド・店らしさだと、中島氏はまとめました。
購入前の相談を増やすCS設計|アルビオン × Channel Corporation
続くセッションでは、株式会社アルビオン 国際ブランド推進室 参事の榊原隆之氏と、株式会社Channel Corporation 執行役員 VP of GTMの山本凌嗣氏が、アルビオンが展開するコスメブランドPAUL & JOEの事例をもとに、顧客の声をCVRや売上につなげる実践を語りました。
AIが購買の入り口になりつつある今、PAUL & JOEでは購入後の問い合わせではなく、購入前の相談を増やすことに取り組んでいます。
顧客理解のためのAIエージェント「チャネルトーク」について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
買い物の楽しさは迷っているとき。購買の起点は、注目から相談へ
榊原氏はまず、購買行動モデルの変化を紹介しました。インターネット時代のモデルが、広告などで注目(Attention)を集めることを起点にしていたのに対し、2026年に入って発表された新しいモデルは、AIへの相談を起点にしています。
日経クロストレンドが同年4月に発表したAICASは、Ask(相談・質問)、Interest(興味)、Confirm(確認)、Action(購買)、Share(共有)の5段階です。電通グループが同年9月に発表したAIJESも、AIとのやり取りを通じて判断する流れを描いています。両者に共通するのは、AIに相談してから買うというニュースタンダードです。
お買い物曲線で見る、楽しさのつくり方
そこで榊原氏が重視しているのが、お買い物曲線という考え方です。広告に出会ったとき、相談するとき、決済のときなど、買い物の途中で気分が上がったり下がったりするタイミングは、人や場面によって異なり、その上下を捉えたうえで、顧客とのコミュニケーションを設計する必要があります。
昨年実施したアンケートで、お買い物で一番気分が上がる瞬間を聞いたところ、支払いのときと答えた人は少数でした。多かったのは、迷ったり相談したりしているときです。販売員が笑顔で聞きやすい雰囲気をつくることは、店舗だけでなくECにも通じる課題だと語られました。
問い合わせではなく、相談を増やす導線
ECでは、顧客からの連絡をまとめて「問い合わせ」と呼びがちです。山本氏と榊原氏は、購入後の「問い合わせ」と、購入前の商品についての「相談」は別物だと整理しました。榊原氏は、問い合わせはゼロにしたい一方で、「この商品は自分に合うのか」といった相談は、ぜひしてほしいと話します。

チャネルトークを導入しているPAUL & JOEのECサイトでは、「問い合わせ」と書いていたボタンをやめ、猫のイラストを使った「スタッフがお答えします」というかわいいアイコンに変えました。画面の右下のボタンを押すとチャットが立ち上がり、AIやスタッフに相談できます。
このアイコンはSNSでも取り上げられ、投稿は102万回表示されるほど話題になりました。その日はサイトのセッション数も急増し、相談しやすいことが集客にもつながると分かったそうです。
チャネルトークの導入後は、購入後の問い合わせが減り、購入前の相談が増えました。山本氏は、売上やCVRを改善したいと話す企業ほど、問い合わせの導線が奥まった場所にあるケースが多いと指摘します。
店舗では、買い物を楽しんだり、最後に背中を押してもらったりできます。オンラインでも、同じように気軽に相談できる入り口が必要です。
AI接客の導入で、相談数とCVRが向上
PAUL & JOEのECサイトにチャネルトークを導入したのはAIが台頭し始めた2024年とのことですが、相談数とCVRを伸ばした一方で、有人チャットとの違いも見えてきたと、榊原氏は語りました。
顧客が相談したくなる時間と、スタッフが対応できる時間にはズレがあります。榊原氏は、お風呂の中や夕食後のリラックスしているときなど、営業時間外にも相談したい気持ちは生まれると指摘しました。金曜日の19時に相談した顧客に返信できるのは、土日を挟んだ月曜日の10時ごろになり、受け取る側も何の相談だったか分からなくなってしまいます。
AIチャットの導入後、PAUL & JOEの顧客からの質問数は、有人チャットのみの時の190件から968件に急増しました。榊原氏は、AIには相談への心理的なハードルを下げる効果があるのではないかと考えています。
CVRも上がっており、商品ページに直接訪れる顧客が増える中、もう少し知りたいというニーズにAIが答えられていることが、成果につながっています。
購入単価は、有人チャットのほうが高い
一方で、購入単価には違いが出ました。AIに相談しても購入単価はあまり変わりませんが、有人チャットで相談した後は、スタッフがクロスセルで商品を提案するため、購入単価が上がりやすい傾向にあります。榊原氏は、現時点では、AIのレコメンドの精度が人に及ばないためで、精度が人間に近づけば単価も上がっていくと見ています。
VoCを資産に変えるAI CoS
AIで相談が増えるほど、顧客の声(VoC)も蓄積されます。山本氏は、その声を資産にできているかという視点で、チャネルトークの新機能「AI CoS」を紹介しました。
分析から施策の実行まで担うAI CoS
データはたまっても分析しきれないという悩みは、多くの企業に共通すると山本氏は指摘します。AI CoS(Chief of Staff)は、チャネルトークにたまった接客・相談データと外部のデータを統合し、自然言語で聞くだけで、気づきや施策の提案を返し、実行まで任せられます。
たとえば、プライマーやファンデーションの色選びの相談が多いと分かれば、商品詳細ページにポップアップを出す提案をしたり、「CVRが下がっている」と聞くと、決済失敗の問い合わせが平常時の8倍に急増していることを示し、決済システム障害の可能性を指摘したりします。

ECモールとShopifyデータにも連携
VoCのレポートは、月に1回しか出ないと、受け取る側が他人事になりがちです。AI CoSなら、顧客の声から自動でつくられたレポートを毎日届けられるため、自分事として使いやすくなります。
今後は、楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazonなど、ECモール経由の問い合わせも、チャネルトークの1つの管理画面で対応できるようになります。モールの声も含めた分析が可能になる点は、EC担当者にとって大きな変化です。
さらに、Shopifyの売上・注文データとVoCを掛け合わせるアップデートも予定されています。売れている商品と問い合わせの相関や、VIP顧客と新規顧客の問い合わせの違いを分析し、打ち手につなげる想定です。
AIに任せること、人が担うこと|パネルディスカッション
最後のパネルディスカッションでは、WEBLIFEの山岡、ヤプリの金子氏、Channel Corporationの山本氏が、来場者を交えて「AIエージェント時代における顧客接点の再設計」を議論しました。
AIは条件に合うことを選び、人は自分に合うことを決めるという整理をもとに、ECサイトの役割や、AIと人の役割分担を考えました。
買い方の変化とECサイトの役割
パネルの冒頭では、来場者に「ECでAIを何に使っているか」を尋ねました。小売経営層の生成AIの活用は、商品説明の生成・改善などつくるAIが中心で、上位3項目がいずれも4割台といわれています。(*2)
そのうえで、AIが商品を選ぶようになったとき、ECサイトの役割はどう変わるのかが議論されました。
*2=Adobe, 2025 AI and Digital Trends for Retail(小売経営層775人)
AI活用は、すでに日常業務の中にある
山岡は、提案書の作成や競合分析にAIを使っていると話しました。BiNDecのAI活用支援では、商品データのアップロードの自動化や受注の監視を、Shopifyの裏側にClaudeやChatGPTをつなぐ形で提供しています。人がエクセルで細かく編集していた作業は、AIに任せれば終わるものに変わりつつあります。
しかし、Claude Code等で自社でAI活用を進めたいと相談を受けても、セキュリティの問題で保留になるケースが多いといいます。AIの活用には、制御の仕組みが欠かせません。

質問が具体的になり、商品詳細ページに直行する
山本氏は、モノの買い方の変化を顧客の質問から感じていると話しました。AI経由で商品詳細ページにいきなり入ってくる顧客は、持っている情報の量が多く、自分に合うかをピンポイントで尋ねるようになっています。
チャネルトークでは、商品詳細ページでの滞在秒数や行動をきっかけに、ポップアップを出す設計ができます。店舗で声をかける接客に近く、AIから訪れた顧客のもうひと押しに使えるそうです。
自社ECサイトの役割は、ブランドらしさを伝えること
金子氏は、ブランド指名で買う場合は、そもそもAI検索を通らないと話しました。一方で、トレイルランニングシューズのように、どのブランドがよいかを探す場合は、AIの提案がきっかけになります。用途によって、顧客の入り口は変わります。
また、高額な商品ほど、保証やポイントなどの安心感を求めて公式サイトで買いたい傾向があり、価格が多少高くても公式サイトを選ぶケースが増えているとの指摘もありました。
また、金子氏は、買い物は効率化だけでなく、探す楽しみや悩む楽しみがあるものだと話しました。AIにはない人間らしさに訴え、ファンになる、好きになるという体験が差別化になったり、おしゃれなスタッフから買いたいという欲求もあります。
山岡は、機能性はAIを通じて把握した状態で訪れる顧客が増えるため、雰囲気やコンセプトなど、ブランドらしさを伝えることがECサイトの価値になると述べました。今後は、ブランドの世界観や企業の姿勢を伝えるページの重要性が高まるとみています。
AIシフトの始め方と、人との役割分担
次に、AIが業務に入ってくる中で人にしかできないことは何かが議論されました。
例えば、購入後のキャンセルや返品手続きの方法はAIが簡単に答えられますが、返品したいと言われたときに、人があえて「こちらのほうが合うのではないか」と提案すれば、返品で終わらせず、次の購入につなげる余地があります。
聞かれたことに対して事実だけを返すものはAIで十分で、自分に合うかといった顧客の判断に関わる相談は、人が対応するほうが好ましいという整理が示されました。

金子氏は、分析やデータの扱い、効率化はAIに任せ、表現の部分は人が味付けすることが大切だと述べました。とくにファッションやカルチャーは、AIだけでは表現しづらく、らしさは人がつくるべきだといいます。
山本氏は、AIはあくまで手段だと強調しました。シフトの前に、顧客がどこで困っているかを整理し、チャットかAIかなど、どんな接点を持つかを考えることが重要です。AIで多くのことができる時代だからこそ、人がどこまで対応するかを判断することに集中すべきだと話しました。
山岡は締めくくりとして、AIシフトを始めるには、まず会社のデータの整理が、今日からできる一歩だと述べました。最新の情報、価格、在庫はもちろん、商品説明文だけでなく契約書の保管場所まで含め、どこに何があるか分かる状態にしておくことが大切です。
そのうえで、商品データのアップロードの自動化や、セキュリティを担保した受注の監視、個人情報が抜けないAIなど、セキュリティとAIの両面を考えたサービスを提供していく必要があると語りました。
まとめ|AI時代に選ばれるECサイトへの第一歩
Shopify AI Commerce SHIFTでは、AI経由の購買がすでに始まっていることと、AIに任せる領域と人が担う領域を分けて設計することの重要性が、各セッションに共通して語られました。TSIは顧客データの統合とリアルの接点づくり、アルビオンは購入前の相談の設計とVoC活用で、その実践を進めています。
AIシフトの出発点は、商品データや社内データの整理と、顧客がどこで困っているかの把握です。そのうえで、AIによる運用の効率化と、人が担うブランドらしい体験づくりを両立させることが、選ばれ続けるECサイトにつながります。
WEBLIFEは、Shopify Platinumパートナーとして、要件整理から構築、ローンチ後のグロース支援までを一気通貫で支援するBiNDecを提供しています。AIやワークフロー自動化ツールを活用した運用の効率化も含め、自社のECサイトをどこから見直すべきか迷われている場合は、お気軽にご相談ください。



