Shopify Flowで作業時間を大幅カット。リピート促進からリスクヘッジまで豊富な活用術を解説

Shopify Flowで作業時間を大幅カット。リピート促進からリスクヘッジまで豊富な活用術を解説

ECプラットフォームのShopifyは豊富な機能を備えますが、その中でも、手軽に非常に高度な処理が行える機能しているShopify Flowという機能があります。本記事では、Shopify Flowの基本から利用例まで紹介していきます。

Shopify Flowとは

Shopify Flowとは、ShopifyのEC業務の自動化を可能にする機能です。利用するにはShopify純正アプリを無料でインストールする必要があります。
以前は、最上位プランのShopify Plusでのみ提供されていましたが、現在は、ベーシック、スタンダード、プレミアムのすべてのプランで利用可能になっています。

Shopify Flowが動くしくみ

Webマーケティングの自動化というと、MAツールが思い浮かぶと思いますが、Shopify FlowはMAツールをもう少し簡易化し、プログラミングに精通していなくても自動処理ができるツールです。スマホやIoTの自動処理を行うスクリプトを使ったことがあれば、そのイメージに近いでしょう。

Shopify Flowには3つのコンポーネントがあります。それが、下の図のとおり❶トリガー、❷条件、❸アクションとなっています。
Shopify Flowが動くしくみ

❶トリガーとは、処理を起動する際のきっかけとなるイベントです。例えば、「ショップ会員が、商品を購入した」といったようなできごと(イベント)を指定できます。

❷の条件とは、どのような自動処理を行うかの条件決めです。状況がAならばアクションAを行う、状況がBならアクションBを行うといった感じです。例えば、「先月ジャケットを購入した顧客」や、「前回購入日から○か月以上経過した」です。

❸ ❷の条件に基づいて、Shopify上やShopifyと連携しているアプリで実行するアクション(自動操作)の内容を定義します。例えば、「❷の条件の人に特定のキーワードでタグを付ける」「メールでオファーを送信する」などのような具体的な処理です。

Flowの処理セットは、トリガーが必ず1つ、1つ以上の条件、1つ以上のアクションのセットで構成されます。条件やアクションは複数指定できます。簡単な例を見てみましょう。
Shopify Flowのアクションの流れ
上の例では、あるお客さんが商品を購入したこと(例えば購入ボタンが押した等)をトリガーとしてShopify Flowが作動し、そのお客さんの購入金額に合わせて会員ランクを判別して顧客情報にタグ付けを行います。会員ランクが複数ある場合は、以下のような考え方でランク付けができます。

Shopify Flow 複数条件
図のように、1つめの条件に合わないものは次の条件を検討し、その条件に合うものには別のアクションを適用しています。このようにして、ある1つのイベントがあったときに、さまざまな条件設定をして、最適な自動処理を行わせることができます。

Shopify Flowはテンプレートが豊富

Shopify Flowには、すぐに活用できる150種類以上の自動化テンプレートを利用することができます。上記のような顧客に対する処理の他にも、連携アプリの操作やリスク回避など、様々なタイプのテンプレートがあります。自社のECサイトの運用ルールに合うように部分的に条件を書き換えるなどすれば、すぐに利用できるようになっています。
ただし、テンプレートの解説文はすべて英語で書かれているので、自動翻訳などを使って内容を確認するのが楽でしょう。テンプレートの活用については、後述します。

Shopify Flowで売上を増やす5つの活用術

ECの規模が大きくなってくると顧客管理や在庫管理など、日々の作業工数が膨れ上がり、なかなか意欲的なマーケティング施策が打てなくなったり、力を入れたいクリエイティブな作業まで手が回らなくなっていることがあるでしょう。
Shopify Flowでそういったルーティンワークを自動化し、人間が手を動かす時間や手間を削減できるため、試行錯誤を必要とするマーケティングやクリエイティブな作業に時間をかけることができます。

ここからは、Shopify Flowを活用してECや顧客の管理を自動化しつつ、売上を上昇させる代表的な5つの活用術を紹介します。

  1. リピートユーザーへギフトカードや割引コードを自動で送信したい
  2. リスクの高い不正注文を防止したい
  3. 低評価レビューに速やかで適切な対処をしたい
  4. 在庫状況を自動で通知して販売損失を事前に防止したい
  5. 休眠顧客や既存顧客をECにリピートさせたい

では順番に解説していきましょう。

1.リピートユーザーへのギフトカードや割引コードを自動で送信する

ECでは、顧客のLTVを上げる代表的なリピート施策として、購買回数に応じてディスカウントをしたり、特典を進呈する施策があります。ただし、手動だと購買がある度に顧客の情報を確認し、特典をその都度発行していたのでは、手間がかかります。
Shopify Flowでは2回目、3回目の注文をしたユーザーに対して自動でギフトカードをメールで送信したり、割引コードをテキストメッセージで送信するワークフローを作成することができます。
このように自動化してしまえば、顧客サービスももれなくスピーディに行え、リピート購入を促すことにつながります。

また、ユーザーの購入履歴に基づいてパーソナライズされたテキストメッセージを自動送信することも可能です。カートに商品を入れたまま購入ボタンを押さずにECを離れたユーザーへのリマインドメッセージを送信し、ECへの呼び戻しを自動的に行うこともでき、購買後でなく、カゴ落ち防止対策も簡単に行えます。

2.リスクの高い不正注文を防止する

EC運用において、担当者にとっても購入者にとっても頭の痛い問題がクレジットカードの不正利用による購入です。
担当者にとっては、不正な購買があっても商品を発送してしまうと取り戻すことは難しいですし、顧客にとってはしょっちゅう購入がキャンセルされたりセキュリティ手段が的確でないECサイトは使いづらいからです。ECサイトが成長するほど不正注文のリスク・件数は上がるため、なるべく事前に対処したいものです。

Shopifyは非常にセキュリティに優れたECプラットフォームですが、加えて、不正注文を防止するワークフローも利用できます。例えば、一定以上の個数の大量注文や、過去に返品を何度もしたことがあるといった条件で、注文を自動キャンセルするフローを作成できます。
また、不正の可能性のある注文を保留にして注文が完了する前に事前に通知させることもできます。
このようなフローをECに導入することで、知らないうちに不正注文が処理されてしまうことを未然に防ぎ、不正による損失を大幅に減らすことが可能です。
Shopifyのセキュリティ対策について、詳しくは下記の記事も併せてご覧ください。

3.低評価レビューに速やかで適切な対処をする

ECにレビューを入れている場合、良いレビューは売上を助長しますが、悪いレビューは商品の売上もECの評判も下げてしまいます。定期的にレビューを確認して必要があれば返信を記載する、サポートを提供するなど早めのケアを行うこともサイト管理業務の一つですが、サイトが大きくなるほど、巡回作業も負担が増していきます。

Shopify Flowでは、評価の低いネガティブなレビューに対してサポートチケットを自動作成することができます。また、ネガティブなレビューを受け取ったときのメールでの通知や、書き込んだユーザーにメールを送信するワークフローの作成が可能です。
これらのレビューはスプレッドシートにインポートしてその商品や傾向を追跡することで改善を測ることが可能です。

4.在庫状況を自動で通知して販売損失を事前に防止する

商品の仕入れや入荷の作業が疎かになってしまうと、在庫切れによる購入の機会損失につながります。取り扱う商品やコレクションが拡大するにつれ、目視での商品管理は限界がくるでしょう。

Shopify Flowによって、商品在庫が少なくなったときの通知や、在庫数に基づいて商品ページをECで非表示にするワークフローの自動化を行うことができます。
また、在庫数が少ない商品の卸業者への発注の自動化や在庫数に基づいて、商品の検索結果の表示順位の自動入れ替えなどを行い、在庫切れによる購入の機会損失を事前に防止することが可能です。

5.休眠顧客や既存顧客をECにリピートさせる

一般的に新規顧客の獲得は、既存顧客の維持よりも5倍のコストが掛かると言われています。そのため既存顧客のリピートや休眠顧客の呼び戻す施策は重要です。リピート施策は、顧客一人一人に訴えかけるようなパーソナルなメッセージが響きますが、実際に手作業で一人一人にアプローチすることは不可能でしょう。

Shopify Flowでは、一定期間購入を行っていない休眠顧客や特定ジャンルの購買を行った既存顧客に絞ってサービス提供をするようなワークフローを作成できます。例えば、購入歴のあるユーザーの誕生日にギフトカードを発行して休眠顧客のECへのリピートを測ることや、特定の金額以上の購入をしたユーザーへ無料ギフトを自動で追加など顧客ロイヤルティの提供の自動化を行う、特定のジャンルの商品を買った顧客に関連製品や新製品発売の先行予約をお知らせするなどが考えられます。
また、初回購入より30日後にユーザーにクーポンコードを自動送信してリピートを促進するようなフローの作成も可能です。
これらのロイヤルティの提供によりリピーターの獲得やUXの向上、商品を追加購入による売上向上を仕掛けることができるのです。

リピート施策の具体例については下記の記事も併せてご覧ください。

Shopify Flowの設定手順

Shopify Flowは、ShopifyのECならベーシックプランからでも利用できます。以下に、利用方法を解説します。最初にテンプレートを利用する方法、続いてワークフローを自作する方法の概要を紹介します。

アプリをインストールする

まず、事前にShopify FlowアプリをShopify App Storeからインストールします。
管理画面のサイドメニューで下のほうの「アプリ」欄に「Flow」が表示されるのでクリックすると、設定画面が表示されます。
ShopifyFlowをインストールした管理画面

テンプレートを活用する

テンプレートを利用する場合は「Flow」アプリの画面で右上の「テンプレートを閲覧」をクリックします。テンプレートの一覧から「顧客」「在庫と商品」など目的別に絞り込み検索ができます。それぞれのテンプレートの概要は、ヘルプセンターの「ワークフローの例」も参考になります。

「カテゴリー」を「お客様」に絞り込みむことで顧客管理関連のフローが表示されます。下図では、左上の「Organize customers by ligetime spend tiers」(LTVで顧客を分類)があるので、クリックします。

フローテンプレート選択

すると、ワークフローのテンプレートが開きます。左から右へ、指示内容が繋がっていいます。1列目はトリガー、2列目が3つの条件、3列目、4列目はそれぞれアクションです。画面右上の「インストール」をクリックすると、編集可能になります。

「インストール」をクリックすると、編集可能

カードをクリックすると条件などが編集できるので、数値など必要な箇所だけ変更します。最後に「ワークフローをオン」にすると、EC上で自動化がスタートします。

「ワークフローをオン」にすると、EC上で自動化がスタート

ワークフローを作成する

ワークフローを作成する場合は、「Flow」アプリの画面で右上の「ワークフローを作成」をクリックします。次の画面で「トリガーを選択」を選択すると、まっさらなワークフロー画面が開いて、トリガーを選択するところから自分でフローの作成が可能です。こちらも選択画面は英語になってしまうのですが、テンプレートと同様に、カテゴリーで絞り込むことで作業をしやすくできるでしょう。

トリガーが作成できたら、「Then」の箇所をクリックします。「条件」「アクション」が表示されるので、どちらかをクリックして、条件もしくはアクションを作成し、また作成した中で、詳細を設定していきます。
条件には変数を作成して設定する必要があります。アクションは、またリストから実行したいアクションを選択して、詳細を設定します。

「ワークフローをオン」にすることで実行可能

こちらも最後までフローを書き終わったら、「ワークフローをオン」にすることで実行可能にできます。

Shopify Flowのメリット

Shopify Flowはプログラムの中ではかなり簡易なもので、テンプレートを利用しながら気軽に使ってみることができます。あらためて、Shopify Flowのメリットを紹介します。

業務を効率化できる

一番のメリットは、やはり日常業務の効率化です。慣れた業務を手作業で行うこと自体は、優秀なスタップならば問題なく行えるため、気付かないうちに業務が増えていってしまうことがあります。
単純な作業はなるべく効率化してしまい、新規企画や施策など人の思考を必要とする作業に時間を割くようにしましょう。そのためには、Shopify Flowは役に立つことが多いでしょう。

無料で利用できる

Shopify Flowは、先ほど紹介したように無料です。しかも最も安価なベーシックプランから利用できるようになったので、基本料金を多く払う必要もありません。簡単な作業を自動化するだけなら高額なMAツールを導入する必要もないので、コストを抑えてEC運用を効率化できます。

外部アプリとも連携ができる

Shopify Flowは、別途追加したShopifyアプリとの連携も可能です。例えばSlackやスプレッドシートでアクションを実行することができますし、ポイントシステムを導入できる「ポインポン」やサブスクリプション販売ができる「定期購買」のようなアプリもShopify Flowに対応しています。
様々なアクションを実行できるので、思った以上に効率化が可能になるケースもあるでしょう。

Shopify Flowのデメリット

一方で、Shopify Flowを使う際のデメリットも挙げておきます。自社のEC担当者クリアできるか確認しておきましょう。

テンプレートが英語

テンプレートがあることは非常に便利なのですが、テンプレートの説明は英語のみです。テンプレートからフローを作成する際は、ブラウザの自動翻訳機能など、ひと手間かける必要があるでしょう。

導入にハードルがある

一番のデメリットは、導入の際のハードルがあることでしょう。初めてShopify Flowを使う場合に、ワークフローを間違って挿入したことでトラブルに繋がるリスクがあります。導入前には、テストサイトなどで動作をしっかり確認しておきましょう。
もし不安があるようなら、パートナーや専門スキルを持ったエキスパートに作業を委託することもおすすめです。

ワークフローの設定が難しい

Shopify FlowはUIで処理内容が想像しやすいので、気軽に取り組めるプログラムツールだと言えますが、簡易といってもプログラムなので使い方がよくわからないという場合もあるでしょう。加えて、プログラムの要領がわかっている人でも、Shopifyの機能がよくわからないと設定がしづらいという面もあります。
小規模な個人サイトならまだしも、中〜大規模ECサイトになってくると、見よう見まねでFlowを使うわけにもいきません。導入の際は、Shopifyにも精通したアドバイザーがいると安心です。

Shopifyの構築、運用を手助けしてくれるパートナーの選び方について、詳しくは下記の記事をご覧ください。

Shopify Plusパートナー認定の構築サービスBiNDec

Shopify Flowを使いたいけれど、自社だけだと不安だなという場合、Shopifyの運用・構築に精通したエキスパートに相談してみることをお勧めします。

株式会社ウェブライフでは、Shopifyを利用したECサイト構築から運用までフォローする「BiNDec」を提供しています。Shopify Plusパートナーの認定業者として、最適な運用戦略の提案も可能です。
ShopifyでのEC構築や運用に関してお悩みの方は、気軽にお問合せください。
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POINT

  • Shopify Flowは、ShopifyでのEC業務を自動化できるアプリ
  • Shopify Flowはすべてのプランで無料で利用できる
  • Shopify Flow導入時は、プログラムの動作などをしっかり確認できる環境で行う