Shopify Enterprise Partner Summit 2023のレポート第3弾は、Shopifyが推進するリテール戦略と、それに関係した製品開発について、初日のキーノートセッションと2日目の個別セッションの内容を整理してご紹介します。
初日のキーノートセッションの様子と、2日目にWEBLIFE代表の山岡がアジア・パシフィック地域のパートナーたちと登壇したセッションレポートはこちらをご覧ください。
キーノートセッションでも触れられたように、Shopifyは、新型コロナウイルス禍が落ち着いて客足が戻ってきたリアルな小売店舗とECサイトとの連携を、重点的に進めていこうとしています。そのために、POS端末を公式ハードウェアとして開発し、Shop Payの利用拡大も進めています。
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リテールを強力に支えるShopify独自のPOS
Shopifyのリテール戦略に関するセッションを担当したのは、シニア・プロダクト・マネージャーのSaara Hafeez Malik氏、ソリューション・エンジニアのZameer Masjedee氏、シニア・セールス・リードのJamie Armstrong氏の3名です。
最初に、Shopifyのリテール戦略に欠かせない純正POS(Point Of Purchase:販売時点管理を行うためのハードウェア)の4つの特徴についての説明がありました。POS自体はレジのような物理的なデバイスですが、Shopifyならではのシステムやサービスと統合化されています。
Shopify POSの4つのメリット
1つ目は、リアル店舗とECサイトの業務を一元管理できるバックエンドシステムです。これが整備されているおかげで、ShopifyのPOSは両者を統一的に扱うことができ、それらの連携によってビジネスをさらに拡大しやすくなるのです。
2つ目は、Shopifyの管理画面で設定を行った後に、スマートフォンにインストールして利用するPOSアプリです。リアル店舗とECサイトにおける販売、在庫、顧客情報などをシームレスに扱えるようになります。
3つ目は、POSのハードウェア自体の優秀性です。タッチパネル操作できるほか、POSアプリがインストールされたデバイスとスムーズに連携し、その操作結果もすぐに反映されます。また、最新のモバイル用のPOSアプリ(POS Go)をインストールしたスマートフォンをドッキングしてレジカウンター上で利用するためのドッキングユニットも8月から出荷が始まっており、これらの自由な組み合わせでお店に合ったPOS環境を構築できるのです。
4つ目は、POSに組み込まれた安全なペイメントサービスです。迅速でセキュアな決済処理を可能にします。
Shopify POSで成果を上げているOMOの事例
ShopifyのPOSは、すでに様々な小売店舗に導入されていますが、セッションでは、まずその中から美容製品を販売するGlossierが例として取り上げられました。
同社は2022年にShopifyを利用するようになったばかりですが、ECサイトと実店舗におけるブランド体験がシームレスに結びついている例として、Vogue誌の記事でも扱われたとのことです。同社のデジタル部門の副社長であるSandy Jeong氏は、Shopify POSを以下のように評価しています。
Shopify POSは、顧客のECサイトの履歴を小売店舗でシームレスに表示できるなど、優れたオムニチャネル体験を提供してくれました。
また、POSは信頼性が高くユーザーフレンドリーなので、厄介な技術サポートに費やす時間が減り、私たちのビジネス本来の差別化を行う作業に、より多くの時間を費やすことができています。
また、以前からShopifyを利用している事業者も、POSを導入したことで、ここ1、2年の間にブランド体験を大きく向上させています。ジム用のトレーニングウェアを販売するGymsharkもその1つで、ECサイトでは得られない顧客体験を実店舗で補完することによって、両者のギャップを埋めることに成功しました。
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小売業が直面する複雑な処理もトータルケア
Shopifyのリテール関連技術の開発やリリースのスピードは、過去2年の間に加速してきました。重視されているのは、次の4つのポイントです。
事業者の現場目線のワークフローに着目
まず、小売業者の関心事項に寄り添い、必要とされている機能やワークフローをカバーすること。Shopify自身が成長する中で、優れたコマース環境を実現するためにサポートすべき要素を数多く学んできたため、それをECサイトと実店舗の双方に適合させるために多大な投資を行ってきたといいます。
管理者、EC担当者にとっても有用な1つのシステム
次に、POSが実店舗の店員だけでなく、管理者やECサイトのスタッフにとっても有用なシステムとして機能するようになっていること。つまり、優れた技術がバラバラに存在するのではなく、1つのシステムとして働くように作られているのです。
そして、実店舗を訪れた顧客のECサイトでの注文履歴やアトリビューション(属性)を、POSによって店員が把握できるため、嗜好に沿った商品を薦めるなどして売上向上の機会を増やせることもメリットになっています。
販売チャンスを逃さないOMO施策
さらに、POSの処理は迅速に行われ、POSアプリとの組み合わせによって店内やポップアップストアなどでも利用できるため、販売のチャンスを逃すことがありません。
このほかにも、実店舗における売上を拡大するための様々な機能が、すでに実現されているか、2024年にかけて組み込まれていく予定です。たとえば、POSを導入すると、店舗に在庫がない商品でもその場で受注して後から配送するインストア・フルフィルメント(店舗内での完全注文処理)や、スペースの限られた店舗でも画面上ですべての商品を閲覧して注文できるエンドレスアイル(無限の商品通路)環境も利用できます。
加えて、Shop Payを利用した後払いもできることから、販売機会を逃すことがなくなり、逆に1回あたりの購入金額がECサイトよりも3倍に増えたという調査結果もあり、POS効果は着実に上がっているとのことでした。
変則的な販売ルールにもフレキシブルに対応
さらに、まとめ買いの際の割引設定や商品の返品・交換の処理といった小売店の細かな要望にも応えることができ、全国統一の価格で販売しているとは限らないチェーン店のために、地域ごとに異なる価格設定まで行えるなど、痒いところに手が届く仕様になっている点も大いにアピールされていました。
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売上に貢献する迅速でアクセシブルな技術
最後に、Shopifyの最新のPOS環境は、単に高機能なだけでなく、処理速度が速くて操作が習得しやすいことも特徴であるとの説明もありました。
たとえば、速さについては改良前と比べて平均10倍も高速化されており、実際に新旧2つの画面を並べて、同じ処理にどのくらいの差が出るかを見せるデモも行われました。
一方、習得のしやすさについては、Shopify POSはモバイル用のPOS Goアプリと同じ感覚で利用できるため、どちらかを使っていれば、新たな操作を覚える必要がなく、それはサードパーティのPOS互換アプリでも同様であるとのことです。
その理由は、ShopifyがUIエクステンションという仕組みを作ってサードパーティに公開しているからで、これを利用すると、サードパーティアプリでも、すでに慣れ親しんだインターフェースがそのまま使えるようになります。そのため、スタッフはアプリの習得に時間をかけずに済み、本来のセールスの仕事に集中できるというわけです。このようにアクセスの良いテクノロジーは、競合他社にはないShopifyだけの特徴となっています。
このようにShopifyは、POSを通じてECサイトの機能を拡張し、実店舗での顧客アプローチに新しい道を開いて、売上向上につながる技術開発を続けています。そして、「リテールビジネスにとっては、環境が整った今がPOSの利用を始める絶好のタイミングである」ということが、最も参加者に伝えたいメッセージなのでした。
日本での普及にも期待されるShopify POS
Shopify POSは、日本では現状、クレジットカードや電子決済などの対応端末と連携できないため、ECサイトと実店舗で購入履歴といった顧客情報を紐づけるには、Shopify POSと決済端末と併用しなければなりません。
ShopifyPOSを日本で利用するための詳しい手順は以下の記事をご覧ください。
しかし、今回のセッションで発表されたように、ShopifyはPOSの機能強化を重要視しているため、今後日本国内でも機能改修が進み、導入店舗が増加していくことが期待されます。
株式会社ウェブライフでは、Shopifyを利用したECサイト構築から運用までサポートする「BiNDec」を提供しており、POS連携のほかにも、出荷、受発注のシステムとの連携やポイント施策による顧客データ連携などのOMO施策もトータルで支援しています。
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