これまでスタートアップや中小企業に対し、ECサイトの開設と成長のためのプラットフォームとなることでビジネスを拡大してきたShopifyは、そのサービスの対象をエンタープライズへと広げつつあります。煩雑で常に変化し、国ごとの違いも無視できないペイメントやチェックアウトに関わる処理を、Shopifyが担うことで企業側の負担が大きく減り、コンバージョン率も高められるというメッセージは、Shopify Enterprise Partner Summit 2023の随所で感じられました。
今回は、Shopifyが進めるエンタープライズ対応の戦略を、初日の概要セッションと2日目の個別セッションの内容から抜粋してお届けします。
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エンタープライズに最高のチェックアウトをもたらす
Shopifyでは、エンタープライズ向けのプランとして通常の3つのプランのさらに上位に位置する「Shopify Plus」というプランを用意しています。Shopify Plusの概要や事例は以下の記事をご覧ください。
エンタープライズ関連のセッションを担当したのは、チェックアウトに関する上級開発マネージャのJohn Arthorne氏と製品ディレクターのMani Fazeli氏に加えて、テクニカルリーダーのDavid Pettersson氏です。
グローバル展開で課題となるペイメントやチェックアウト
Shopifyは、スタートアップや中小企業を対象に、最高のEコマース体験を提供することで成長してきました。このポリシーは、対象がエンタープライズ(大企業)になっても変わりません。ただし、大規模、あるいは国際的なECサイトを展開する大きな企業は、ペイメントやチェックアウトの課題に直面しがちなので、Shopifyとしても、そこに訴求するソリューションに力を入れています。
ペイメントやチェックアウトは、Eコマースに不可欠な処理である一方、それに伴う技術やサービスが煩雑で常に変化し、国ごとの法規や税制とも関係する厄介な存在ともなっています。そこで、大企業が自前で逐次対応するよりも、そのすべてを把握しているShopifyに任せるほうが安心かつ迅速に行え、コンバージョン率も高くなるというのがShopifyの主張です。
商品ページ訪問から購入までのフロー
ここで改めてオンラインショッピングの流れを確認してみると、以下のようになります。
- 商品ページにランディングする
- 目的の商品を見つけてカートに入れる
- ショッピングカートのページに移動して商品を確認する
- 請求先や配送先の情報を入力する
- 支払いを行う
- メールなどで注文確認を受け取る
Shopifyでは、特に、ショッピングカートの次のページから注文の完了までをチェックアウトとして扱っています。
これらのどこか1つでもスムーズにいかない部分があれば、買い物客はそこで離脱したり、他のECサイトに移動してしまうかもしれません。
そこで、Shopifyとしては、ストレスのないチェックアウトを実現し、Shopifyを使えば自前のECサイトよりも効率の良いオンラインセールスが実現できる点を認識してもらうことで、潜在的なエンタープライズユーザーを取り込む策に出ているのです。
1ページで完結する画期的なチェックアウト
これまでチェックアウト処理は、3ページにまたがって行われることが一般的でしたが、Shopifyでは、これを1箇所で済ませられる1ページチェックアウトに移行しました。1ページチェックアウトにすることで、顧客は操作に迷うことなく、よりスピーディにチェックアウトを済ませることができ、事業者にとってはカート落ちを防いでコンバージョン率を上げられるメリットがあるためです。
※Shopify Plusのユーザーは、従来の3ページチェックアウトも選択できますが、デフォルトでは1ページチェックアウトです。
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会員登録の手間を省くShop Pay
チェックアウトに関する別の問題としては、実際にECサイトへのアクセス数が多いモバイルユーザーが、会員登録などをせずに買い物をするゲストチェックアウトを利用しがちだということも挙げられます。モバイルユーザーが会員登録をするためには、スマートフォンの小さな画面で必要な情報を細々と打ち込まなくてはならないため、どうしても敬遠されがちになることは理解できます。
しかし、ゲストチェックアウトでは個々のユーザーの購買履歴を把握できず、購入者の満足度アップのためのサイト改善やリピーターの増加、ひいてはコンバージョン率の向上を実現することが難しくなるのです。ところが、Shopifyのサービスを利用すれば、ShopアプリやShop Payへの登録を通じて、すでに顧客のアイデンティティが把握されているので、きちんとトラッキングを行なって顧客体験の改善などに活かすことができます。
ShopアプリやShop Payの機能については以下の記事をご覧ください。
自由度の高いカスタマイズで他社と差別化
また、ブランドイメージを重視するエンタープライズ側が懸念するのは、Shopifyのようなサービスを使うと、サイトデザインやインターフェースが標準化されて、競合他社との差別化が難しくなりかねないという点です。これに対しても、Shopifyは、ECサイトをカスタマイズするための拡張機能を8000種類以上のShopifyアプリとして用意しており、ブランドとして満足できるECサイトの構築が可能であることを強調しました。
ECプラットフォームでトップクラスのコンバージョン率
さらに、世界最高のコンバージョン率については、サミット全体を通じて様々なセッション内でも触れられた事実ですが、第三者機関の調査によって、Shopifyのチェックアウトのコンバージョン率は競合他社よりも平均して15%も高いことがわかっています。
ECサイトのシステムを、自前もしくはShopify以外のサービスから変更することで、手間なく世界各地のペイメントが利用できるうえに、コンバージョン率が15%も向上するのであれば、乗り換えない手はないというメッセージは、とても説得力のあるものに感じられました。
※Big Three management consulting firmの2023年4月の調査結果より
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大企業のニーズに細かく応えるShopifyのサービス
大規模なチェーン店を展開していたり、非常に多くの扱い品目がある大企業には、特有のニーズがあります。
個別のディスカウント設定も自動調整
たとえば、外食産業のチェーンでは、個々のメニューアイテムに加えて、それらを組み合わせて定食のようにしたセットメニューやミールメニューというものがあります。セットやミールのメニューは、同じ内容でも個々に注文するよりは安価に設定されているので、もし、個別の注文がセット内容と同じになった場合にはセット価格を適用したり、逆に、何かを省いてセット内容と異なった際に個別アイテムの合計金額に戻すことが必要です。同様の価格の調整は、アパレル業界の服の上下セットや3点セットなどでも見られるでしょう。
Shopifyのチェックアウトは、事業者側の設定に基づいて、このような調整を自動で行うことができ、AOV(Average Order Value=平均客単価)を向上させやすくなっているのです。
お届け時期の異なる商品もまとめてチェックアウト
また、扱い品目が多くなるにつれて、一時的に品切れのアイテムが出たり、納期の遅れが発生する頻度も高くなりがちです。しかし、ビジネスチャンスを逃さないためには、顧客が注文したアイテムの中に欠品していたり納期が異なる商品が含まれていても、チェックアウトを済ませられる仕組みが必要です。Shopifyでは、2024年の前半には、このような場合の分割配送のオプションが利用できるようになり、より売上の確保に貢献することが可能となる予定です。
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顧客の購買行動をセキュアに追跡できるPixel技術
エンタープライズ関連セッションの締めくくりとしては、ShopifyのECサイト上での顧客の購買行動を追跡するためのPixel技術への言及もありました。この技術をサポートしたShopifyアプリ、もしくは、ECサイトに直接組み込んで利用できるPixelは、オンラインショッピング中の顧客イベントを追跡するための中核的な技術であり、顧客のエンゲージメントの高さを把握するうえで欠かせないものです。
Pixel技術はセキュリティにも配慮されていて、クローズドなサンドボックス環境で動作し、購買行動の追跡に必要なデータ以外にはアクセスできないようになっています。
Pixelを利用すると、収集された顧客行動データを使ってマーケティングキャンペーンなどの分析や最適化を行えるため、その意味でもShopifyのサービスを使うメリットは大きいといえるでしょう。
結論としては、Shopifyのチェックアウトはエンタープライズのビジネスにもフィットするようになっており、共にEコマースの未来を作り上げていくための強い味方になるということでした。
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