近年、企業間取引(卸売)を効率化するBtoB EC市場が急速に拡大しています。元々、BtoB自体の商取引高はBtoCよりもはるかに大きなものでしたが、働き方改革やDX推進の流れを受けて、多くの企業がリアルな商談からECへの移行を進めた結果、BtoB EC市場はこれまでにない活況を呈しているのです。
そこで今回は、ECプラットフォームのShopifyで実現するBtoB ECサイト構築&リプレースについて、具体的な事例を交えながら解説していくことにしましょう。
BtoB ECの市場規模
まず、BtoB EC市場の規模ですが、2023年には市場規模が4兆6,523億円に達し、EC化率も40.0%に到達しました。
経産省が公開している「BtoB EC市場規模の推移」のグラフを見ていただくと、BtoB ECの市場は、それ以前の2019年から2023年までの5年の間にも一貫して拡大基調だったことがわかります。
同時に、BtoB取引におけるEC化率も、2019年の31.7%から2023年の40.0%へと着実に上昇し続けています。この数字の変化は、企業が従来の対面取引や電話・FAXによる商談から、オンライン取引へと移行していることの何よりの証です。
特にコロナ禍の影響を受けた2020年以降、リモートワークや非接触型取引の拡大によりBtoB取引のデジタル化が進み、企業のEC利用が加速したことが伺えます。
こうした動きは、企業の業務効率化やコスト削減の一環として、ECが不可欠な手段となっていることを示唆しており、今後も成長率が見込まれると思って良いでしょう。
BtoB ECサイトはなぜ急成長しているのか?
前のセクションで触れたように、BtoB ECサイトが急成長した背景には、コロナ禍による企業の業務の見直しがあったことは間違いありません。そして、他の要因と合わせて、次の4つの理由に集約されるといえます。
DX化などによる業務効率化のニーズ
従来の電話やFAX、電子メールを用いたBtoB業務は時間と労力を要し、人的ミスのリスクも少なからずありました。しかし、こうしたプロセスをオンラインで一元管理できるECを活用すると、業務負担の大幅な軽減が可能です。
さらに、ECプラットフォームでは取引に関わるデータ分析もできるため、企業は需要予測やサプライチェーンのマネジメントにおける迅速な意思決定を行えるメリットもあります。
越境ECなどによるグローバル化などの環境変化
BtoBのグローバル化の進展は、日本企業が海外の取引先とも効率的に取引を行う必要性を高めました。ECプラットフォームは言語や通貨、規制の違いを超えてスムーズな取引を実現できるため、国際的な競争力を高めるツールとしても注目されたのです。
越境ECによる海外販売について、詳しくは下記の資料をご覧ください。
中小企業でも導入しやすいインフラの進歩
以前は、導入コストや専門知識を要する運用面から大企業に限られていたBtoB ECの導入ですが、近年では中小企業にも広がりを見せています。その背景には、インフラや技術の進歩があり、低コストで使いやすいクラウド型ECプラットフォームが登場したことで、企業の規模にかかわらず自社の独自ECを始められるようになりました。
特に、Shopifyのようなサブスクリプション型の料金モデルは、初期投資を抑えつつ事業の拡大とともに大規模なビジネスを実現できる上位プランにアップグレードできるため、中小企業も導入しやすいといえます。
日本固有の商習慣への対応
日本特有の商習慣への柔軟な対応も、BtoB EC市場の成長を後押しする要因となっています。たとえば、複雑な決済条件や請求書の発行、細かい受注管理など日本独自のビジネス慣行を考慮したアプリやコンサルティングのノウハウを駆使することで、日本のBtoB市場特有のニーズに応える形でのEC導入が進んでいます。
BtoBのEC成功事例
では、ここでBtoB ECで成功している意外な企業として、ダイソーとカンロの事例を紹介しておきましょう。
BtoCとBtoBの二刀流で売上高400%アップのダイソー
100円ショップの元祖的存在であるダイソーは、BtoC企業としてのイメージが強いですが、大口需要の拡大に伴い、BtoCサイト「ネットストア」に加えてBtoBサイト「オンラインストア」を開設しました。
そして、 BtoBサイトをさらに拡充するにあたり、移行期間内に実現可能なプラットフォームとしてShopify Plusへリプレースしたのです。
その結果、売上高400%、トラフィック249%アップという大きな成果を達成しています。このダイソーの成功要因は、Shopify PlusのBtoB機能を活用してBtoCとBtoBの両方の顧客に対するECサイトを構築したことにありました。
従業員向け販売にBtoB機能を活用したカンロ
菓子メーカーのカンロは、ブランドサイトにEC機能を統合した「Kanro POCKeT」というサイトをShopify Plusで運営しています。さらに、Shopify PlusのBtoB機能を、主に従業員向けの製品販売に活用しているのです。
具体的には、BtoB機能を、従業員に対して専用の割引率を適用したり、一部送料を会社負担したりするなどのサービスに応用しており、同社は同じシステムを株主向けの商品販売に応用することも計画しています。
この事例は、Shopify PlusのBtoB機能が、企業間取引だけでなく社内販売にも有効であることを示しているといえるでしょう。
BtoB ECサイトに求められる規模・拡張性・セキュリティ
BtoB ECサイトには、企業間取引特有のニーズへの対応が求められます。具体的には、規模・拡張性・セキュリティと、ルーチン的な業務の自動化です。
規模:大口取引や多数の取引先への対応
BtoB ECサイトでは、BtoCと比較して大口取引が発生することに加えて、多数の取引先を管理する必要があるため、以下のような負荷に強い処理能力が重要になります。
大口注文への対応 | 1商品あたりの注文上限数の設定や、大量の注文を滞りなく処理できるか |
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取引先ごとの管理 | 顧客ごとに異なる価格や掛率を設定したり、販売可能な商品ラインナップを変えたりするための柔軟な顧客管理機能を備えているか |
多様な決済方法 | 掛売など、BtoB取引特有の決済方法に対応できるシステムになっているか |
拡張性:変化するビジネスニーズへの対応
ビジネス環境や企業顧客のニーズは常に変化するため、BtoB ECサイトには将来に渡って以下のような拡張性が求められます。
機能追加 | 新しい販売方法やサービスに対応するために、機能を柔軟に追加できるシステムであるか |
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外部システム連携 | 基幹システムやEDI(※)、物流システムなどとの連携により、業務効率化やデータの一元管理を実現できるか |
トラフィック増加への対応 | 事業拡大に伴いアクセス数が急増した場合でも、安定してサイトを運用できるか |
※Electronic Data Interchange=電子データ交換。ECサービスの誕生以前からBtoB企業で使われてきた、コンピュータネットワークを用いて、受発注・決済などの業務用文書をやりとりする仕組み
セキュリティ:機密情報の保護
BtoB ECサイトでは、企業情報や取引情報など、重要な機密情報を扱います。そのため、以下のような強固なセキュリティ対策も万全であることが必要です。
情報漏洩対策 | 個人情報や取引データの漏洩を防ぐために、アクセス制御や暗号化などのセキュリティ対策がなされているか |
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不正アクセス対策 | サイバー攻撃からサイトを守るために、ファイアウォールやセキュリティソフトの導入、脆弱性診断の実施などが行われているか |
法令遵守 | 個人情報保護法や電子帳簿保存法など、関連法令を遵守しているか |
BtoB ECサイトでは必須の「自動化ロジック」
BtoB ECサイトが業務効率化や顧客満足度向上、そして売上増加を目指すために不可欠な、もう1つの要素が「自動化ロジック」です。
Shopifyには、ノーコードで「トリガー」、「条件」、「アクション」を組み合わせて受注処理、在庫管理、請求業務などを人の手を煩わせずに行える自動化ロジックの「Shopify Flow」があり、次のような具体例とメリットがあります。
受注処理の自動化 | 顧客からの注文を自動的に受注処理システムに受け渡すことで、受注に関する人為的ミスの削減、業務時間の短縮、迅速な注文処理による顧客満足度向上につながる |
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在庫管理の自動化 | 在庫状況をリアルタイムに把握し、在庫切れや過剰在庫を防げるため、在庫管理コストの削減、機会損失の防止、適正在庫による効率的な倉庫運用が可能となる |
請求業務の自動化 | 請求書の作成、発行、送付の自動化によって、請求業務の効率化と正確性が向上し、請求書の発行ミス削減、請求業務時間の短縮、迅速な請求処理によるキャッシュフロー改善が期待できる |
配送処理の自動化 | 配送業者への出荷指示を自動化し、配送ミスや遅延を防ぐことにより、誤配送の防止、配送時間の短縮、配送状況の可視化による顧客への安心感提供につながる |
顧客管理の自動化 | 顧客情報の一元管理、顧客セグメントに応じた情報配信など、顧客との関係構築を強化できるため、顧客理解の深化、的確なマーケティング施策の実施、顧客ロイヤリティ向上が可能となる |
また、よく利用される自動化ロジックには以下のようなテンプレートが用意され、必要な箇所を埋めていくことで処理を実現できるようになっています。
- 会社のアカウントリクエストによって作成された会社の通知を受け取り、会社を設定する
- B2Bの注文にタグを付ける
- B2Bの注文が行われたときに内部メールを送信する
- B2Bの注文の請求書を複数のメールアドレスに送信する
- 承認されたお客様にB2Bアクセスメールを送する
- 会社アカウントのリクエストで作成された会社に対する注文を許可する
- 3日以内に会社に追加されなかった場合はD2Cのお客様を削除する
こうした自動化により、従業員はより付加価値の高い業務に集中でき、顧客に対しては、迅速で正確なサービスを提供できます。それは最終的に企業の競争力強化にも繋がるのです。
Shopify Flowについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
ShopifyがBtoBのECに強い理由
ShopifyがBtoBのECに強いのは、BtoB ECに必要な機能が豊富に揃っているためです。また、基本機能でサポートされていない場合でも、13,000種以上が揃っている純正またはサードパーティ製のShopifyアプリを利用して様々な機能を追加・拡張することができます。
ShopifyアプリでBtoB ECの機能を補完
基本機能にはなくても、Shopifyアプリで実現することができる機能の例としては、以下のようなものがあります。
高度な在庫管理 | 特定の顧客に対する在庫の表示・非表示設定、複数倉庫の在庫管理、入荷予定日の表示など、標準機能よりも詳細な在庫管理が可能になる |
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柔軟な価格設定 | 顧客グループごとの価格設定、数量割引、期間限定セールなど、多様な価格設定ルールを設定できる |
受注・配送業務の効率化 | 自動出荷処理、配送伝票の発行、配送状況の追跡など、受注から配送までのプロセスを自動化できる |
顧客関係管理(CRM) | 顧客情報を一元管理し、購買履歴や行動分析に基づいたマーケティング施策の実施を支援する |
多様な決済方法の導入 | コンビニ決済、銀行振込、後払い決済など、Shopify標準では対応していない決済方法を導入できる |
外部システムとの連携 | 基幹システムやEDI、会計ソフトなど、外部システムとの連携により、業務効率化やデータの一元管理を実現できる |
マーケティング機能の強化 | クーポン発行、ポイントプログラム、メールマガジン配信など、マーケティング施策を強化する機能を追加できる |
サイトデザインのカスタマイズ | 標準のテーマでは実現できない、より自由度の高いサイトデザインのカスタマイズが可能になる |
なお、Shopifyアプリを選ぶ際には、以下のような点に注意してください。
- 費用:アプリは無料のものから有料のものまで様々なので、必要な機能と予算に合わせて適切なアプリを選ぶことが必要となる
- 機能:同じカテゴリーのアプリでも提供される機能の詳細は異なるため、自社のニーズに合った機能を持つアプリの選択が重要である
- 使いやすさ: 管理画面の操作性や設定の容易さなども大切な要素なので、個々のアプリ説明ページの動画や、YouTubeに該当アプリの解説動画などがあればそれも確認する
- サポート体制: 万が一、アプリに由来するトラブルが発生した場合のサポート体制を調べておく
- レビュー: 他のユーザーのレビューを参考に、アプリの評判や信頼性も確認する
様々なBtoBニーズに応えるShopifyアプリ
Shopifyアプリは業種を問わず利用できる汎用性を備えているものや、BtoB企業が必要とする後払いや卸売、注文割引などの機能に特化したものもあります。
しかし、Shopifyアプリの選定や導入、設定、カスタマイズには専門知識が必要となる場合も少なくありません。自社での対応が難しい場合は、Shopifyの導入や運用を支援するBiNDecのようなShopifyパートナーに相談することをおすすめします。適切なパートナーを選ぶことで、Shopifyをより効果的に活用できるようになるからです。
Shopifyパートナーについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
ShopifyのBtoB EC向け基本機能と拡張機能
ここで、ShopifyのBtoB EC向けの基本機能と拡張機能について、もう少し詳しく説明しておきましょう。まず、基本機能としては、以下のようなものがあります。
会社プロファイル
会社プロファイルは、B2B顧客の管理を効率化する重要な機能です。
主な特徴としては、「企業顧客ごとの固有のプロファイルの作成」、「複数の配送先住所の管理」、「カスタム価格や支払い条件の設定」、「企業階層(親会社と子会社の関係など)の設定」を行うことができ、顧客管理の効率化や個別の契約に対応した販売、そして複雑な企業構造にも対応可能になるといったメリットがあります。
価格リスト
価格リストは、B2B取引において柔軟な価格設定を可能にする機能です。
主な特徴としては、「顧客グループごとに異なる価格の設定」、「数量割引の適用」、「特定の製品やコレクションに対する価格設定」、「通貨別の価格設定」を行うことができ、柔軟な価格戦略の実施や顧客ロイヤルティの向上、競争力のある価格設定が可能になるなどのメリットがあります。
数量ルール設定
数量ルール設定は、大量注文や最小注文数の管理に役立つ機能です。
主な特徴としては、「最小注文数量の設定」、「数量に基づく割引の自動適用」、「製品ごとの注文単位の設定」を行うことができ、在庫管理の効率化や大口顧客へのインセンティブ提供、注文処理の簡素化などのメリットがあります。
下書き注文
下書き注文機能は、複雑なB2B注文プロセスを支援する機能です。
主な特徴としては、「注文の一時保存」、「複数人での注文内容の確認と編集」、「承認プロセスの組み込み」を行うことができ、注文ミスの減少や複雑な承認フローへの対応、そして顧客の利便性向上するメリットがあります。
簡単な再オーダー
再オーダー機能は、定期的な注文を行うB2B顧客に対して特に有用な機能です。
主な特徴としては、「過去の注文履歴からの簡単な再注文」、「注文内容の修正オプション」、「定期的な注文の自動化」を行うことができ、注文プロセスの迅速化や顧客の時間節約になるメリットがあります。
バックエンドロジックのカスタマイズによる高度なBtoB機能
先に触れた自動化ロジックのShopify Flowは、ノーコードで目に見える業務の自動化をサポートする仕組みでしたが、ストア処理の目に見えない部分で機能しているバックエンドロジックをカスタマイズできるShopify Functionsという仕組みを使うと、さらに高度なBtoB向けの機能を実現することが可能です。
これを利用すると、特別な割引ルールやチェックアウトプロセスを作り出すことができますが、プログラムコードを書くことのできる専門知識が必要です。そのため、Shopify Functionsの活用も、Shopifyパートナーに相談することをおすすめします。
BtoB ECにも活用できるBiNDecの独自アプリ
BiNDecでは、様々な顧客のニーズに応えるために独自のShopifyアプリを開発・提供しており、日本の商習慣に合わせたBtoB ECの構築が可能です。
BtoB ECにも活用できるBiNDecの独自アプリは以下のようなものがあります。
帳票出力
BiNDecの帳票出力アプリは、注文データと連携し、領収書、納品書、請求書、見積書などの各種帳票をPDFで作成します。住所、支払い情報、商品情報など掲載したい項目をチェックボックスで選択でき、ロゴ・印影の配置やレイアウトも調整できます。
下書き注文(ドラフトオーダー)の状態でも発行できるため、商談用の見積書を作ることもできます。
購入制限
BiNDecの購入制限アプリは、1回あたりの注文個数や金額、また決まった条件の顧客に対する制限ルールを細かく設定できます。1回の注文あたりの購入金額の下限・上限を設けることで、運用コストに満たない注文や誤購入によるロスの防止に役立ちます。
購入制限アプリについて、詳しくは下記のページをご覧下さい。
ペイメント表示
BiNDecのペイメント表示アプリは、特定の商品や顧客のみに決済手段の制限をかけることができます。対応していない決済方法の非表示、使われやすい決済方法を優先した並べ替えができ、決済方法の表示名称も変更できるため顧客側にとってもわかりやすい注文フローを設計することができます。
これらの機能を効果的に活用することで、顧客満足度の向上や売上増加が期待でき、ECサイトの運営効率を高めて持続的な成長を目指せるのです。
ShopifyでのBtoB ECサイトの構築ならBiNDecへ
WEBLIFEでは、Shopifyを利用したECサイト構築から運用までサポートする「BiNDec」を提供しています。
豊富な導入実績とハイレベルな技術力・知識量を認められたShopify Plusパートナーとして、BtoB ECの構築や運用戦略の提案も可能です。
BtoB ECの構築やリプレースをご検討の際はぜひお気軽にお問合せください。