ECプラットフォーム「Shopify」の新機能発表イベントShopify Editions 25 冬がリリースされました。
今回は、150項目以上のアップデートがラインナップされ、クラシックな左フレームで新機能がリストアップされたシンプル (Boring)版とブラウン管テレビに歌と映像で新機能を紹介していく動画が流れるリッチ (Not boring)版の2つの形式で、Y2K風のユニークなビジュアルが印象的でした。
Shopify Editions2025冬で発表された新機能から、ECビジネスにShopifyがどのような変革を起こそうとしているのか、WEBLIFEの視点を交えつつご紹介していきます。
注目すべきキーワードはユニファイドとパーソナライズ
Shopifyを含めてコマース業界でも以前からトレンドとなっていた”コマースに関わる要素を融合・最適化するユニファイド”や”一人ひとりに最適な購入体験を作るパーソナライズ”です。
今回のアップデートでも、その2つに準じた内容が多く搭載されていました。本記事でも、それらを中心にEC業界人なら知っておきたい注目アップデートをピックアップして紹介していきます。
ユニファイドコマースについて、詳しくは下記の記事をご覧ください
新しいストア分析でマーケティングを強化
Shopifyには売上の動向や顧客の購買履歴など、様々なデータ分析ができる「ストア分析」が標準機能として搭載されています。
より高度なパーソナライズを実現する、新しいストア分析の機能の早期アクセスが始まっています。
Shopifyのストア分析機能のメリット
Shopifyのストア分析では、売上、顧客、人気商品などのデータを可視化し、ECサイトのパフォーマンスの把握と改善施策を立てることができます。また、カスタマイズ可能なレポートやリアルタイムデータで、戦略的な意思決定をサポートしてくれます。詳細な顧客データを活用するパーソナライズ戦略には欠かせない機能です。
Shopifyのストア分析の使い方について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
RFM分析で顧客データを深掘り
RFM分析は、顧客を「Recency(最終購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(購入金額)」の3指標で分類する手法です。
顧客ロイヤルティを可視化し、ターゲット層の絞り込みや効果的なマーケティング施策の立案に役立ちます。
ShopifyのRFM分析では、以下の11のRFMグループに顧客を分類し、各グループに何人の顧客数が属しているかも把握できます。これによって、誰にどんな施策を打つべきかを想定できます。
RFMグループ | 状態 | 施策例 |
---|---|---|
見込み客 | まだ注文がない | 初回客向けオファーを含む挨拶メールを送信する |
休止 | 最近の注文がなく、注文がまれで、支出が少ない | ブランド価値を強調した接触キャンペーンで関心を復活させる |
リスクがある | 最近の購入がないものの、過去の注文と支出が多い | 見逃せないお得なオファーを送信する |
以前はロイヤル | 最近の購入がないものの、過去の注文と支出が非常に多い | 新商品や先行販売品を紹介する |
注意が必要 | 最近の購入があり、注文数が一定程度で、支出が中程度 | 購入行動に基づいて期間限定のオファーを行う |
ほぼ離脱 | 最近の購入がなく、注文数が少なく、支出が少ない | 人気商品の特別ディスカウントを提供する |
ロイヤル | 最近の購入があり、注文数が多く、支出が非常に多い | 高価値商品をアップセルする |
有望 | 最近の購入があり、注文数が少なく、支出が少ない | ブランドについてより多くを共有し、商品について知識を提供 |
アクティブ | 最近の購入があり、注文数が一定程度で、支出が中程度 | メンバーシップまたはロイヤリティプログラムを提供 |
新規 | ごく最近の購入があり、注文数が少なく、支出が少ない | ニュースレターなどでつながり、関係を構築する |
チャンピオン | ごく最近の購入があり、注文数が多く、支出が非常に多い | 限定品や新商品の早期購入を提供 |
さらに高度な分析は専門のMAツールもおすすめ
パーソナライズの効果や効率をより追求するなら、Shopifyと連携できる専門のMAツールの導入がおすすめです。
イギリス発のdotdigitalは、上記のRFMのスコアにエンゲージメントのスコアを組み合わたeRFMという顧客分析手法を採用しており、購入履歴だけでなく、メールの開封・クリック・ページの閲覧時間などの購入前の行動データも考慮した、より高度なセグメンテーションが可能となります。
チェックアウト時の顧客体験がパワーアップ
チェックアウトのCV率において、Shopifyは競合他社のECプラットフォームよりも最大36%優れているという評価を得ています。(※1)
今回のアップデートでは、チェックアウトやカート画面の処理スピードやUIの更なる改善が行われています。チェックアウトは売上に最も直結する部分なので、これからも強化され続けることが予想されます。
※1=世界3大グローバル経営コンサルティング会社の1社と提携してShopifyが実施した調査に基づく
Shopifyのチェックアウトについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
購入完了までのスピードがさらに向上
ECサイトで決済まで完了してもらうには、商品をカート画面に入れて購入ボタンをクリックし、決済情報や送付先を設定して購入完了というフローが一般的です。そのうち約7割が購入完了前に何らかの理由で購買意欲を失い、ECサイトから離脱する「カゴ落ち」状態になります。
決済手段や配送などカゴ落ち防止に効果的な施策はいくつもありますが、各画面の表示スピードもそのうちの重要な一つです。Shopifyはインフラを改善することで、購入手続きの最初のステップであるカートの読み込み速度を最大50%高速化しています。
さらに、商品ページからカートをスキップしてそのままチェックアウトページに遷移するボタンの読み込みスピードが最大58.8%アップしました。こちらはShopify Functionsとバンドルにも対応したため通常の購入フローと同一のディスカウントが可能です。
チャットアプリの登場で離脱を防ぐ
チェックアウト画面をカスタマイズできるアプリも、新しいものが続々と登場しています。チェックアウトページやサンクスページに搭載できるチャットウィジェットアプリがいくつか紹介されていました。
SNSや広告から気になる商品を見つけて直接チェックアウトページに遷移するパターンでも、購買に関する疑問や不安をその場で解消できるため、ページ遷移による購買意欲の低下を防ぐことができます。
Amazon Payの代替となるか?Shop Payの特徴と新機能
Amazon.jpのアカウントを持っていれば決済情報や送付先の情報を入力せずに購入できるAmazon Payは、2025年1月6日で提供終了となります。そのため、同じように初めて利用するECサイトでも決済情報や送付先の情報を入力せずに購入できるShop Payに注目が集まっています。
Shop PayはShopifyが提供する公式の決済サービスで、国内での知名度はまだこれからですが、グローバルではShopifyによるECの顧客の43%がShop Payによる決済を利用しています。
今回のアップデートでShop Payに分割払いが搭載されたため、これからもさらに機能が充実していくことが予想されます。
実店舗とECがさらに近くなるShopify POS
Shopify POSの決済端末が利用できる地域は、北米・オーストラリア・EU・イギリス・シンガポールです。
これまでのShopify EditionsでもShopify POSの機能アップデートは必ずラインナップされており、実店舗とECサイトのシームレス化がShopifyの注力ポイントであることが伺えます。今回も、実店舗とECサイトの両側の視点から、よりユニファイドコマースの理想像に近づく新機能が実装されています。
Shopify POSの機能について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
シェアを拡大するShopify POS
Shopify POSで今回追加された販売に関する主な機能は以下の4つです。
- バンドル販売
- ロケーションの小売顧客セグメント
- 顧客メタフィールド
- ギフトカードでの返品対応
ECサイトでは既にシステム化できていても、実店舗では未だアナログなオペレーションで対応していたこともあるのではないでしょうか?顧客メタフィールドを追加・編集できるようになったため、実店舗での接客を通じて得た好みや特別な日などのパーソナルな情報を、マーケティング施策へ活用できる幅が広がります。
スマホがそのままレジになるTap to Pay
iPhoneにクレジットカードやモバイルウォレットをかざすだけで決済が完了するTap to Pay(=タッチ決済)が、Andoid端末でも利用できるようになり、iPhoneでの利用可能地域もさらに拡大するようです。
タッチ決済は、迅速性やセキュリティの面からニーズが高まっており、スマホでタッチ決済に対応できる面は事業者側にとっても手軽に実店舗を運用できるメリットがあります。
これによって、買いたいものが決まったら、POSレジが設置されたカウンターに並んで会計をする、といった実店舗の典型スタイルから、スタッフが決済端末を所持し店内のどこで接客していてもそのまま決済できるスタイルへシフトしていくかもしれません。
※現時点で、日本ではiPhone、AndoidともにTap to Payはまだ提供されていません。
「越境EC」という概念を超える?Marketsならグローバル市場が当たり前に
D2C、越境EC、B2B、実店舗の全てのデータが1つの管理画面に集約できるMarketが、今後数か月以内にすべてのマーチャントに提供されるとのことです。
異なるチャネルでも在庫や売上をシームレスに管理できるほか、国ごとにデザインや商品展開を最適化することも可能なため、グローバルに販路を持つことが、より容易になりそうです。
Martketsのような機能で国内・国外の垣根をなくし、国内も含むグローバルな市場の中で、それぞれの国に対してどう売っていくか、というのが新しいコマースの考え方となりそうです。
販売領域が大きく広がるBtoB向け機能の強化ポイント
取引規模が大きく販売ルールが複雑なBtoB(卸売)向けの機能強化も、Shopifyが以前から力をいれています。今までBtoBのECは専用のプラットフォームが主流でしたが、ShopifyのようにDtoCのECと統合管理できるようになれば業務効率化が大きく向上するでしょう。
下書き注文の決済がもっと柔軟に
営業担当者が顧客に代わって管理画面側で注文データを作成できる、下書き注文(ドラフトオーダー)のシーンにおいて、利便性が高まるアップデートをご紹介します。
Shopify Functionsとチェックアウトカスタマイズのアプリに対応
下書き注文に、バックエンドのチェックアウトロジックをカスタマイズできるShopify Functionsと、チェックアウトのカスタマイズアプリが使えるようになります。
Shopify Functionsは、注文作成時に動的なルールを適用できる機能です。例えば、地域に応じた配送オプションの表示や、最小注文金額の設定、特定の決済方法の非表示など、柔軟な注文管理が可能です。
チェックアウトのカスタマイズはShopify Plusプラン限定ですが、アプリ数は1500以上がリリースされています。配送日時指定やe-gift、レビュー、バナー表示などのカスタム機能が、下書き注文のチェックアウトにも適用できるようになります。
BiNDecのチェックアウトカスタマイズアプリについて、詳しくは下記のページをご覧ください。
請求・支払いの手間をスムーズに
下書き注文に、前払金(デポジット)を設定しておくことで、そちらから商品代金を回収できます。オーダーメイド製品などで事前に代金を確保したい時にも、手書き伝票での代金回収の必要なく、オンラインで完結できます。
また、支払い用のクレジットカード情報を保存しておき、そちらに請求することで下書き注文を本番の注文に自動変換できます。顧客にとっても、支払い処理時に詳細を再確認する手間が省けます。
特別な価格設定を下書き注文にも反映
商品価格を固定するオプションで、通常の商品価格が変動した際も見積価格に影響しないように設定できます。一時的なセール中にもプロモーション価格を維持したり、顧客に提示した商品の見積価格をそのまま適用することが可能です。
顧客に請求書やチェックアウトリンクを送信する際は、下書き注文の商品価格すべてを固定するか、自動的に解除するかを選択できるため、請求ミス防止にもつながります。
BtoBの顧客マイページがカスタマイズ可能に
BtoB向けに用意されている顧客マイページ(新しいお客様アカウント)は、コード編集等でカスタマイズすることはできませんが、「Customer account UI extensions」にて、アプリでのカスタマイズが可能になりました。
例えば帳票出力系のアプリなら、顧客マイページから見積り書や請求書の発行をセルフで完結できるため、今まで営業担当者を介してやりとりをしていた事務作業を自動化できます。
その他のBtoB向け機能について、詳しくは下記の資料をご覧ください。
Shopifyで最適なEC構築・運用を支援するBiNDec
今回のShopifyのアップデートの中から、トレンドキーワードであるユニファイドコマースとパーソナライズに大きく関わるトピックをご紹介しました。これらによって、Shopifyが実現しようとしているマルチチャネルで展開していくコマース環境がより明確化しつつあるのではないでしょうか?
株式会社ウェブライフでは、Shopifyを利用したECサイト構築から運用までサポートする「BiNDec」を提供しています。
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