ECサイトの構築方法に、オープンソースのプログラムを利用する方法があります。
オープンソースであれば、ほかのECプラットフォームよりも安価で自由度の高い設計が可能です。ですが、基本的にはすべて自社でカスタマイズをしなければなりませんし、セキュリティなどの管理も行う必要があります。したがって、メリットばかりではないのが現実です。
本記事では、ECサイトの構築にオープンソースを使うメリットやデメリット、ほかのECプラットフォームとの比較などをご紹介します。
ECサイト構築のオープンソースとは
ECサイトは、オープンソースのプログラムを利用して構築が可能です。オープンソースとは、ソフトウェアのソースコードを誰でも利用できるように、無料で公開している仕組みを指します。
ソースコードが公開されているので、プログラミングの知識などがあれば、自由にカスタマイズできるのが特徴です。
用意したサーバーにプログラムをインストールすれば低コストでECサイトの構築が可能になります。とはいえ、低コストで構築できるぶん技術的なスキルが必要になるので、導入するのであればオープンソースの特徴を理解して、構築や運営に問題がないか確認してからスタートしましょう。
ECサイト構築にオープンソースを選ぶメリットとは?
ECサイト構築にオープンソースを検討している運営者が一番気になるのが、オープンソースを利用するメリットでしょう。ここでは、ECサイト構築にオープンソースを選ぶ主なメリットをご紹介します。
デザインの自由度が高い
デザインの自由度が高いのが、ECサイト構築にオープンソースを選ぶメリットのひとつです。オープンソースを利用してECサイトを構築する場合、ソースコードが公開されているため、デザインのカスタマイズが自由に行えます。
ほかのECプラットフォームのように既存のテーマをベースに細部を修正する必要はなく、完全オリジナルのデザインを作成可能なので、自社ブランドの独自性を最大限にアピールできるECサイトを構築できます。
また、オリジナルデザインでなくても良いのであれば、多彩なテーマやデザインプラグインを活用する方法もあります。いずれにせよ、自社に最適なデザインを作ることができるのがポイントです。
導入コスト面での優位性
オープンソースを利用する最大のメリットともいえるのが無料であることです。他の商用ECプラットフォームのように初期導入費用は必要ないため、小規模事業者のスタートアップにも最適です。ですが、サーバー費用やカスタマイズにかかるコストなどは別途発生する場合もあるので、完全に無料というわけではありませんので、ご注意ください。
ECの構築コストについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
拡張性が高い
オープンソースは、プラグインやモジュールを追加することで機能を拡張できるのがメリットです。これにより、ECサイトの成長や新しいニーズに合わせて柔軟に対応可能です。例えば、決済方法の追加やSEO対策ツールの導入、マーケティング支援機能など、自社のECサイトに必要な機能を選んで実装していくといいでしょう。
また、新しいプラグインが続々と提供される点もオープンソースの強みですので、長期的な運用をしていても、最新の技術に取り残されることは少ないでしょう。
ECサイト構築にオープンソースを選ぶデメリットとリスク
メリットと同様にECサイト運営者が注意すべきなのが、ECサイト構築にオープンソースを選ぶデメリットです。場合によっては、デメリットだけでなくリスクも背負うことになりますので、自社でクリアできる内容かどうかをきちんと確認してください。
初期設定や管理におけるハードル
オープンソースでECサイト構築する場合、導入時に専門知識が必要となる点がデメリットです。サーバーの選定やソフトウェアのインストール、初期設定など全て自社で行う必要がありますので、知見のあるスタッフがいない場合にはハードルが高いでしょう。
また、ECサイトのデザインや機能のカスタマイズにはプログラミングスキルが求められるケースもあります。専門の開発会社へ依頼することもできますが、外注コストがかかります。
セキュリティ対策のハードル
セキュリティ対策を導入するハードルの高さも、オープンソースのデメリットです。オープンソースに限らず、ECサイトの運営をするのであればセキュリティ対策を行うのは当然です。ですが、オープンソースの場合、誰でもソースコードがわかるので、脆弱性を狙った攻撃リスクが高まります。特に、アップデートを怠ると、既知のセキュリティホールを悪用される危険性がありますので注意が必要です。
ECサイトは顧客の個人情報や決済データを扱いますので、セキュリティ対策には特に注力すべきでしょう。ですが、ファイアウォールの導入やSSL/TLS証明書の取得、脆弱性スキャンなど、運営者が多角的な対策を行うためのハードルは高いといえます。
ECサイトに求められるセキュリティ対策について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
メンテナンスとアップデートの負担
オープンソースでECサイトを構築した場合、システムはもちろん、サーバーやプラグインなど全てのメンテナンスを運営者が行うデメリットがあります。もし、システムの更新を怠ると攻撃リスクが高まりますし、システム全体が正常に機能しなくなる可能性もあるでしょう。
また、新しいプラグインを導入する際に、既存システムとの互換性を検証したり、問題があれば修正作業が発生したりするなど、アップデートの負担が増えるのも将来的なリスクです。
サポートを受けることができない
オープンソースのデメリットに、公式なサポート体制が基本的にないことが上げられます。ですから、問題が発生した際には自力で解決する必要があるのです。もちろん、質問ができるコミュニティはありますが、即時対応ができるわけではありません。
つまり、業務中にトラブルが発生すれば業務が滞りますし、最悪の場合顧客に迷惑をかけるリスクがあるのです。もし、迅速なサポートが必要な場合には、外部の専門業者や開発者を雇うなどの対策も検討する必要があるでしょう。
オープンソースとASPのECプラットフォームの比較
オープンソースのメリットとデメリットを比べると、思ったよりもデメリットやリスクがあり、自社の技術力などを考えると「ほかのECプラットフォームのほうが安心なのでは?」と思えるケースもあるでしょう。ここでは、オープンソースと真逆とも言えるASPカートを例に比較をしてみました。比較するASPカートには、近年注目度の高いShopifyを選んでいます。
その他のECプラットフォームとの比較については下記の記事をご覧ください。
機能拡張性
オープンソースは、自由にプラグインを追加したり独自開発したりできるので、どのような機能でも拡張可能です。ただし、開発には専門的な開発スキルや期間が必要です。
Shopifyは、アプリストアに13,000を超えるアプリが用意されているので、必要に応じてインストールするだけで、スキルがない運営者でもスピーディに機能を追加できます。
要望する機能がShopifyアプリで搭載できるか、代替できるものはあるのかなど、目的や効果の面から検討してみると良いでしょう。
セキュリティ対策・システムメンテナンスの負担
オープンソースは、基本的にシステムやプラグインなどのアップデートやセキュリティ対策を運営者が直接管理するか、別途インフラ構築の専門サービスに委託して管理してもらう方法があります。
Shopifyの場合は、セキュリティ対策は標準で用意されていますし、メンテナンスもすべてベンダー側で行います。
セキュリティ対策やシステムメンテナンスが自社で対応できない場合、専門サービスに委託するか、ベンダー側に任せられるShopifyにするか、コストも比較しながら選びましょう。
スケーラビリティ(拡張性)
オープンソースは、サーバーやインフラを拡張することで自由に規模を拡大できますが、コストや技術的なリソースが増加します。
Shopifyは、プランをアップグレードするだけで、ECサイトのスケールアップが可能です。大量のトラフィックや商品数の増加にもスムーズに対応できるため、ECサイトが急成長した場合でも安心です。
コストやスケジュールの面から、ECの成長計画にマッチした方を選ぶと良いでしょう。
コスト構造
オープンソースは、ソフトウェアのライセンス料が無料です。しかし、サーバー代やカスタマイズ、セキュリティ対策などのコストは必要です。
Shopifyは月額利用料がかかりますが、サーバー費用やセキュリティ管理費用が含まれます。そのため、コスト管理が容易です。
実際の構築要件によってかかるコストは大きく変動するため、イニシャルコストとランニングコストを試算して比較することをおすすめします。
導入速度
オープンソースは設定や開発に時間がかかるため、要件の難易度が高い場合は導入までに1年〜1年半ほどの期間が必要になるケースが一般的といわれています。
Shopifyは多数のテンプレートが用意されており、直感的な管理画面で様々な設定が可能なので、中〜大規模のECサイトを2〜3ヶ月で立ち上げることもできます。
短期で導入できれば構築費用を抑えられる上にトレンドにも合わせやすいため、導入速度も比較する上で大事な要素です。
オープンソースで使える人気のECプラットフォーム
オープンソースでECサイトを構築するといっても、使用するECプラットフォームによって得意不得意があります。ここでは、オープンソースで使える人気のECプラットフォームを簡単に紹介します。自社に最適なECプラットフォームはどれかの参考にしてください。
EC-CUBE
EC-CUBEは日本発のオープンソースです。SNS連携など日本市場特有のニーズに応える機能が豊富に搭載されており、テンプレートやプラグインを活用しながら、細かいカスタマイズが可能です。日本語でのサポートも充実しているため、国内企業のECサイト構築に人気です。
Magento(Adobe Commerce)
Magentoは、世界中で利用されている高機能なオープンソースです。柔軟なカスタマイズ性と多言語・多通貨対応が特徴で、越境ECサイトに適しています。また、豊富な拡張機能やマーケティングツールがあるので、大企業や国際市場向けのECサイトにも対応できます。
WooCommerce
WooCommerceは、オープンソースであるWordPress用のプラグインとして提供されているECプラットフォームです。WordPressの管理画面を利用できるため、直感的な操作で利用できます。豊富なテーマやプラグインを活用することで、デザインや機能を柔軟に拡張可能です。初心者向け導入しやすいため、小規模から中規模のECサイト構築に多く選ばれています。
PrestaShop
PrestaShopは、必要なモジュールを選んでECサイトサイトを構築するオープンソースです。600以上の機能と5,000を超えるモジュールがあるので、必要に応じたカスタマイズが可能です。ですが、これらの機能拡張は有料です。また、多言語・多通貨に対応していますので、グローバル市場をターゲットにした中規模のECサイトにも適しています。
OpenCart
OpenCartは世界40万以上のサイトで使用されているオープンソースです。特に管理者用ダッシュボードが使いやすので、初心者にも人気です。基本機能実務に困らないくらいには充実していますし、追加の機能拡張も可能です。ただし、カスタマーサポートがないので、自社で管理が可能なスタッフのいるか、でしょう。
オープンソースを選ぶべき企業の特徴
オープンソースで構築したECサイトは独自性の高いデザインや機能を実装できます。自由にカスタマイズが可能ですから、独自のブランドイメージやビジネスモデルをサイトに反映しやすくなります。これは、ほかのECプラットフォームにはない魅力です。
ですが、カスタマイズや管理には知識や技術も必要です。また、セキュリティ対策や定期的なメンテナンスを行う必要もあります。
そのため、システム開発や保守のできるエンジニアチームが社内にいるか、専門業者へ外注するコストをかけられる企業が向いています。
機能性や管理コストの面からECプラットフォームを検討しよう
ご紹介したように、オープンソースの大きな魅力としては、初期導入コストの低さとカスタマイズの自由度があります。オーダー通りの機能を搭載した独自性のあるECサイトを構築したいなら、オープンソースかフルスクラッチなら実現できるでしょう。
ですが、オープンソースの場合、保守やセキュリティ対策など自社で管理すべき点も多いです。そのため、ECサイトの運営以前にシステムの管理知識などが求められます。
一方で、ASPカートやECモールなど、手軽にECサイト運営を始められるECプラットフォームもあります。自社が理想とするECサイトの構築には何が最適なのか、オープンソース以外にもECプラットフォームを検討してはいかがでしょうか。
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