ECサイトの成功のためには、SNSと連携したマーケティングが必須です。中でも膨大なユーザー数を誇るLINEとの連携は、ぜひとも実施したいところ。
そこで本記事では、ECプラットフォームのShopifyで、ECサイトとLINEを連携させる目的や方法、そのために必要なLINE公式アカウントや設定方法、さらにLINEをより活用するための連携アプリなどについて紹介します。
33万の事業者が活用中!ECにLINEを連携させるメリットは?
マーケティングの基本的な課題である集客・コミュニケーションにおいて、SNSの利用は当たり前になりました。とりわけ、企業や事業者の活用が増えているのがLINEです。
既に飲食やアパレル、不動産、教育など、多岐にわたる業界で活用されており、LINEを事業活動に活用するための「LINE公式アカウント」は2021年10月時点で約33万アカウントにも達しています。前年比132%ということもあり、その数はさらに増加しているといえるでしょう。
当然ながら、ECサイトにとってもメリットがあるのは間違いありません。とりわけShopifyで構築したECならアプリを活用することでスムーズな連携がかないます。たとえば、ECとLINEを連携させることで次のようなメリットがあると考えられます。
圧倒的な人口カバー率で老若男女にリーチ
ECサイトにとって最も重要なのは、集客とリピーターの確保です。LINEは9700万人(2024年9月現在)ものユーザー数を誇り、日本の人口の約7割に相当するカバー率です。20代から40代が中心とはいえ、他のSNSと比べると10代から70代以上まで幅広く利用されています。
男女比も均等で、特定の地域のみでなく全国的に利用されているのが大きな特徴です。リーチできる人数はもちろん、これらの属性情報を活用しながら、ターゲットに合わせたマーケティング戦略を立てられるのは大きなメリットと言えるでしょう。
スマホでダイレクトな双方向コミュニケーション
2022年のLINEの実施した調査では、15~79歳がインターネットを利用する際に96%がスマホを使い、その中で“スマホのみ”という人は過去最多の54%に達しています。(*1)
スマホがパーソナルなツールであることから、広告などのプロモーションやキャンペーンなどを実施すれば、ダイレクトな反応が得られやすく、「友だち」となった顧客へのメッセージはメルマガやDMなどに比べて開封率が高いと言われています。またチャットを活用すれば1対1での双方向でやり取りでき、迅速な対応や個別サポートによって顧客ロイヤリティを高めることができます。
*1=出典:【LINEヤフー】〈調査報告〉インターネットの利用環境 定点調査(2023年下期)
多彩なメッセージ&販促ツールでリッチな訴求が可能
LINEのメッセージでは、テキストはもちろん、画像や動画、音声メッセージやスタンプ、クーポンなどのファイルなどを送ることができます。ECサイトのリンクや実店舗の位置情報を送ることもでき、きめ細やかな情報提供がかないます。
また、特定のタイミングでメッセージを送る「ステップ配信」や情報をまとめた「リッチメニュー」、顧客からのフィードバックを受ける「アンケート機能」など販促ツールも充実しており、リッチな訴求が可能です。
特におすすめなのは、短い動画を配信する「LINE VOOM」です。掲載すると「おすすめタブ」に配信されて、「友だち追加」をしていなくても閲覧できるため、無料で広告と同等の効果を得ることができます。
顧客の多様なデータが取得でき、簡単に分析・活用が可能
LINEと連携したECサイトでは、紐づいたデータを取得でき、それらを活用してより効果的なマーケティングが可能です。
「友だち追加」をした人の情報を活用して、クーポンやキャンペーンなどの情報提供を行えるのはもちろん、有料広告では個人を明らかにせずに属性などでのターゲット設定ができるので、個人情報の管理を意識することなく、効果的なプロモーションを実施することができます。
購入プロセスの簡略化や顧客管理などでECサイト運営を効率化
ECとLINEを連携させれば、LINEを通じて商品情報を提供し、そのまま購入手続きを行えるため、顧客の利便性が向上します。
他にもLINE上でポイントカードの発行管理ができ、利用データも分析できる「ショップカード機能」や、キーワードや条件に応じた自動応答を設定することで、24時間365日の効率的なカスタマーサポートを実現する「AIチャット」、トーク画面下部に固定でクーポンやポイントカード、サイトへの外部リンクなどを設定できる「リッチメニュー」などで、ECサイト運営の負担を軽減します。
ECと連携させるには「LINE公式アカウント」の取得が必要
Shopifyで構築したECサイトとLINEを連携させるためには、「LINE公式アカウント」を取得する必要があります。
LINE公式アカウントとは、企業や組織がLINE上で公式に運営するアカウントのこと。顧客がその公式アカウントを「友だち追加」することで、ダイレクトな情報発信や顧客サポートなどが可能になり、コミュニケーションを強化することができます。その結果、ブランドの認知度を高め、ECサイトへの誘導や売上アップ、運用の効率化にも貢献します。
さらにShopifyのLINE連携機能やアプリを活用することで、発注管理など様々な機能が追加・活用できるようになります。後ほどShopifyでLINEを活用するためのおすすめ機能&アプリとして紹介します。
LINE公式アカウントの種類
LINE公式アカウントには、「認証済みアカウント」と「未承認アカウント」があります。アカウントの事業内容に応じて審査が必要になる場合があり、未認証アカウントでは拡張機能が一部制限されることもあるため、アカウント取得の際に審査を申請(無料)をしておくことがおすすめです。
未認証アカウント | 個人・法人の誰でも取得でき、グレーのアカウントバッジが付与される。 |
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認証アカウント | LINE社の審査に通過すると紺色のアカウントバッジが付与され、LINEアプリ内の検索結果にも出るようになる。 |
プレミアムアカウント | 認証アカウントのうち、特に優良と思われる場合、自動的に審査を経て緑色のアカウントバッチが付与される。認証基準は非公開。 |
アカウントを取得すると付与される「ベーシックID」から、年間費1,200円でブランドや店舗名などの文字列にできる「プレミアムID」に変更すると、LINEで検索されやすくなります。
「プレミアムID」は非認証アカウントでも購入可能ですが、認証アカウントにしておけば、さらにブランド力や信頼性が高まります。
LINE公式アカウントの料金プラン
LINE公式アカウントには、無料の「コミュニケーションプラン」と有料の「ライトプラン」「スタンダードプラン」が用意されています。
プランの一番の違いは、月ごとに配信できるメッセージ数です。無料の「コミュニケーションプラン」では月に200通メッセージですが、LINEチャットの送受信や応答メッセージ、AI応答メッセージ、あいさつメッセージ、Messaging APIの「Reply API」は数に含まれないため、小規模な運営やテスト程度なら十分対応が可能です。
アカウントの作成は無料なので、まずは無料の「コミュケーションプラン」で運用してから、必要に応じて有料プランに切り替えるとよいでしょう。
プラン名 | 月額固定費 | 無料メッセージ通数 | 追加メッセージ料金 |
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コミュニケーションプラン | 無料 | 200通/月 | 不可 |
ライトプラン | 5000円 | 5000通/月 | 不可 |
スタンダードプラン | 15,000円 | 30,000通/月 | 〜3円/通 |
LINE公式アカウントの機能・活用方法
ECサイトとLINEを連携させることで、次のような機能が使えます。
LINEリッチメニュー | トーク画面の下部に様々なアイコンを置いて、ECサイトへのリンクはもちろん、クーポンやショップカードなどへのリンクを貼ることができる。 |
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メッセージ | 顧客へのメッセージを自動的に配信できる。購買後のサンクスメッセージやプロモーション情報など、状況に合わせたものを用意する。 |
チャット | トーク画面でメッセージを掲載するだけでなく、顧客と1対1でのやり取りが可能。 |
AIチャット | 質問と回答の設定を行うことで、トーク画面で24時間365日自動対応が可能。ショップ運営を効率化できる。 |
ステップ配信 | 特定のタイミングでメッセージを自動的に送信する。顧客の行動に応じた情報提供で効果的なマーケティングが可能。 |
クーポン | LINE上でクーポンを作成し、メッセージで顧客に配布する。ECサイトへの誘導を図り、顧客の購買意欲を高めることができる |
ショップカード | LINE上で利用ごとにスタンプを集められる。ECサイトのショップカードとも連携できる。 |
アンケート | 顧客からのフィードバックを収集するためのアンケートを実施する。LINEのダッシュボード上で収集・分析も可能。 |
LINE VOOM | ショート動画を中心とした動画プラットフォーム。動画を投稿すると「友だち登録」した顧客のトーク画面だけでなく、「おすすめ画面」にも配信される。 |
ShopifyでのECにLINEを連携させた活用事例を紹介
冒頭でも紹介したように、LINEは圧倒的な人口カバー率で老若男女にリーチできるため、あらゆる業種業態に向いていると思われます。スマホとの相性が抜群なので、ECサイトを開設している事業者なら、必ずメリットがあると言っても過言ではないでしょう。
実際にShopifyで構築したECサイトとLINEを連携させている事例を紹介します。
ジョンマスターオーガニック
オーガニック化粧品ブランドであるジョンマスターオーガニックでは、新商品や季節限定商品の発売情報、プレゼントキャンペーンやアウトレットなどのお得な情報などもLINE経由のメッセージで発信しています。ブランドイメージを訴求する動画も投稿されており、LINE経由での集客にも一役買っています。
顧客が「友だち登録」をしてECサイトのIDと連携させると、LINE IDのみでECサイトにもログインできるようになり、商品の購入や定期便の申込みなどができ、会員プログラムの情報も引き継がれます。
他にも、AIによるチャットサービスや会員証などの機能を活用し、「リッチメニュー」にはリアル店舗や商品の検索へのリンクも貼られており、LINEからECサイトへの誘導、およびECサイトの利便性向上に貢献しています。
ミキハウス
子ども服ブランドのミキハウスでは、公式アカウントを「友だち登録」すると、新商品や季節限定商品、キャンペーンやイベント、セールなどの情報がLINE経由で受け取れるようになっています。
友だち登録時に、子どもの性別や誕生日、よく利用するリアル店舗などを入力することで、ニーズに合った情報を配信し、効率的なメッセージ配信を実施しています。
その他、「リッチメニュー」には出産祝いギフトやランキングなどのリンクが設けられ、ECサイトへのシームレスな誘導を図っています。
東京ラスク
ラスク専門店「東京ラスク」の公式アカウントでは、新製品や新店舗などの情報提供のほか、ショップカードの発行・利用もできるようになっています。
なおトーク画面では自動メッセージを配信するだけでなく、顧客からの質問などへの個別対応も行なっており、きめ細やかなコミュニケーションを実施しています。
ShopifyでLINEを連携・活用するためのステップ
ShopifyでLINEを活用するには、次のような手順で行います。
1)LINE公式アカウントを作成する
パソコンでは、LINE for BusinessのサイトからLINE Business IDを作成し、ログインして必要な情報を入力します。スマホではLINEアプリの「VOOM」タブから作成できます。
2)基本情報を入力
アカウントや商品紹介など基本情報を入力します。また、リッチメニューにECサイトへのリンクを貼るなど、LINE画面でも適切な情報提供ができるように用意しましょう。
3)メッセージのカスタマイズ
お客様に送るメッセージ内容をカスタマイズします。購買後の感謝メッセージやプロモーション情報など、ビジネスに合わせた設定が可能です。
4)Shopifyの機能やアプリなどを設定
目的や用途に応じて、Shopifyの機能やアプリを活用しましょう。アプリについてはShopifyアプリストアで検索し、ダウンロード&インストールが必要です。
5)テストと調整
LINEの機能が正しく動作するかをテストし、必要に応じて調整します。実際に運用を始めたら、定期的に分析を行い、改善の方向を定めることが重要です。
ShopifyでLINEを活用するためのおすすめ機能&アプリ
ShopifyにはLINEと連携・活用できる機能があらかじめ搭載されています。また、LINEを連携・活用するためのアプリも用意されており、目的や用途に応じて使い分けるとよいでしょう。
BuyButton(購入ボタン)
Shopifyの標準機能である「BuyButton」を利用するとShopify以外のサイトに商品を追加して、直接販売できるようになります。たとえば、BuyButtonで生成した埋め込み用コードをコピーして、LINEメッセージに埋め込むだけで、顧客はLINEメッセージから商品をカートに追加できるようになります。
ボタンのデザインや動作をカスタマイズしたり、商品の画像、説明、価格などを表示できます。無料なので、コストをかけずにLINE連携を試してみたい方におすすめです。
Dotdigital
マーケティングオートメーションと顧客エンゲージメントを支援するためのオールインワンプラットフォームであり、メール、SMS、広告、ウェブ、SNSなど、さまざまなチャネルに対応しています。
LINEもその1つとして連携でき、顧客データを統合してカスタマージャーニーの自動化やトリガーキャンペーンなど、個別最適化された施策を実施できます。また、それらの活動効果を分析し、施策に役立てることが可能です。
Dotdigitalの機能について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
チャネルトーク
ECサイトを中心に50,000社以上の導入実績を誇る、チャットベースでの顧客コミュニケーションツールです。よくある質問に対して自動的に回答し、人力でのカスタマーサポートに辿り着く前に顧客の課題を解決できるシナリオ型のチャットボット機能「サポートbot」がなどが活用できます。
LINEと連携することで、チャネルトークとLINE公式アカウントからの問い合わせを一元管理し、顧客コミュニケーションの効率化が図れます。
チャネルトークの機能について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
Shopify Flow
コーディング不要でさまざまなルーティン業務を簡単に自動化できるツールです。100種類以上のテンプレートが用意されており、トリガーや条件、アクションの設定により、注文管理、在庫管理、顧客管理などの業務に対応します。
Shopify Flowは、LINEと連携させることで効率的なメッセージ送信が可能になります。たとえば、購入完了通知やクーポンの自動配信、特定の期間に購入のない顧客に対してリピート購入を促すメッセージを送信したり、特定の商品を購入した顧客に自動的に「使い方」などの情報を送ったりすることもできます。
Shopify Flowの機能について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
Lipify
Lipifyは、LINE ID連携兼OMOツールとして活用できるアプリです。LINEと連携し、ECサイトの購買履歴や行動、登録情報などに応じて、購入完了通知や発送完了通知、プロモーションメッセージなどをLINEメッセージで自動的に配信できます。
また、Shopify POSとの連携機能で、店頭でQRコードを読み取ってShopifyアカウントを登録、LINE上で会員バーコードを発行し、Shopify POSアプリで読み取ってLINEメッセージ配信といったように、スムーズな連携が可能です。
LINEで配布したクーポンや溜めたポイントを店舗やECサイトで使うこともできます。
おみせコネクト
おみせコネクトでは、ECサイトとLINEを連携し、ECサイトの顧客データを活用して、購買履歴や行動、登録情報などに応じて、購入完了通知や発送完了通知、プロモーションメッセージなどをLINEメッセージで自動的に配信できます。
カゴ落ちリマインドや閲覧商品リマインド配信、再入荷通知メッセージなども可能で、LINE友だち追加ポップアップバナー、LINE連携ボタンの表示なども行えます。
CRM PLUS on LINE
CRM PLUS on LINEでは、ECサイトの顧客データを活用してLINEのID連携者にメッセージを出し分けたり、カゴ落ちリマインドや閲覧商品リマインドなどを配信したりすることができます。
その他、「Shopify Flow」と組み合わせてLINEでのステップ配信を実施したり、「Back in Stock」と連携して再入荷通知メッセージを送ったりすることも可能。LINEに複数のリッチメニューを設置し、お客様側で切り替えて利用することもできます。
ShopifyとLINE公式アカウントを連携するときの注意点
ECサイトとLINEの連携はメリットだけではなく、注意点もあります。一番の懸念点は、顧客データの取扱いです。
LINEではECサイト側のデータを連携させてメッセージを送ることができますが、あくまで顧客の許可が必要です。顧客データ取得の際に意識して、LINEとの連携について説明しておく必要があります。
特にECサイトで登録した顧客はLINE連携について無意識である可能性が高く、友だち登録をしていても「ブロック」されてしまうことがあります。そうするとせっかくのメッセージも届かず、効果的なマーケティングができなくなります。
「友だちブロック」を回避するためには
「友だちブロック」は、頻繁にメッセージを送りすぎたり、自分に合った内容でないと判断されたりした時に生じやすくなります。
これを回避するためには、メッセージの内容および配信頻度の最適化を図り、性別や年齢、居住地域などの属性に応じたセグメント配信を活用して有用な情報提供を実施することが大切です。
ついつい多めに配信してしまいがちですが、必要最低限と考えたほうがベターです。また、最初のあいさつメッセージなどで、「通知オフ」ができることをお知らせしておくとよいでしょう。
LINE連携は経験・知見の多いパートナーを賢く活用しよう
LINE公式アカウントは無料で始められ、設定なども比較的簡単にできますが、効果が上がって月の配信数が一定数を超えると費用が発生するようになります。
また、ECサイトとの連携にShopifyアプリや外部サービスを利用する場合には、その月額利用料なども発生します。コストを押さえつつ、顧客に快適な購買体験を提供し、効果的なプロモーションを実施するためには、マーケティング戦略に基づく「メッセージの最適化」などの知見が必要になってきます。
そこでぜひ活用したいのが、豊富な経験・知見を持つShopifyパートナーです。株式会社ウェブライフではShopifyを利用したECサイト構築・運用をサポートする「BiNDec」を提供しています。
事例でご紹介したミキハウスやジョンマスターオーガニックなども含め、LINE連携についても豊富な経験をもっています。ぜひお気軽にご相談ください。