ECサイトを開始する際、最初から大規模なECサイトを計画していないのであれば、ASPカートを利用した自社ECサイトかECモールへの出店が選択肢となりやすいでしょう。
本記事では、ASPカートのShopifyとECモールの楽天市場を取り上げ、運営コストやマーケティング機能など、EC運用に必要な機能やサービスを比較して紹介します。自社に最適なEC運営スタイルを見つける参考にしてください。
【項目別】Shopifyと楽天市場の機能・サービス比較
ECサイトを成功させるためには、プラットフォームの選択が重要です。ですが、ShopifyのようなASPカートと楽天市場のようなECモール出店では、機能やサービスの内容が大きく異なります。
まずは、Shopifyと楽天市場に出店する場合のコストやマーケティング、カスタマーサポート、決済方法、カスタマイズ性などを項目ごとに比較し、それぞれの強みと注意点を解説します。
イニシャルコストとランニングコスト
ECサイトを運営する場合、絶対に欠かせないのがコスト管理です。Shopify(ASPカート)と楽天市場(モール出店)では、初期費用・月額利用料・決済手数料・取引手数料などが大きく異なりますので、それぞれの費用を比較し、運営に問題が生じないかを確認してください。
初期費用と月額利用料
まずは、ECを始める時に必ずかかる初期費用と月額利用料を比較します。初期費用は一度だけですが、月額利用料は固定費として毎月かかってくるので、注意したいところです。
Shopifyの場合、初期費用が無料です。また、月額利用料は利用するプランによって変わってきます。プランは以下のとおりです。必要な機能やビジネス規模に応じてプランを選べるので、自社ECサイトの成長に合わせて選択できます。
<Shopifyのプラン別利用料金(*1)>
- Basic:月額3,650円
- Shopify:月額10,100円
- Advanced:月額44,000円
- Plus:月額2,300USD〜
*1=年払いの場合のひと月あたりの利用料金。Plusプランのみ、3年契約の場合のひと月あたりの利用料金
楽天市場の場合、初期費用として60,000円(税別)の新規出店登録料が発生します。また、月額利用料もShopifyと同様にプランによって変わってきます。プランは以下のとおりですが、最低でも月額25,000円からと高額です。ですが、楽天市場はモール自体に集客力があるため、この費用を広告費と捉えることもできるでしょう。
<楽天市場のプラン別利用料金>
- がんばれ!プラン:月額25,000円(税別)
- スタンダードプラン:月額65,000円(税別)
- メガショッププラン:月額130,000円(税別)
決済手数料、取引手数料
次に商品が売れた場合の決済手数料や取引手数料を比較します。こちらも、利益率などに大きく影響してくる要素ですので注意が必要です。
Shopifyは、独自の決済サービス「Shopify Payments」を利用すると、取引手数料は不要です。
もし外部決済を利用する場合は、利用しているプランごとに0.5%〜2.0%の取引手数料が追加で発生します。決済手数料(クレジットカード決済)は2.9%〜3.9%程度と、比較的低コストで運用できます。
Shopify Paymentsについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
楽天市場では、決済手数料(楽天ペイ)として2.5%~3.5%が発生し、加えて「モールにおける取引の安全性・利便性向上のためのシステム利用料」として月間売上高の0.1%、アフィリエイト経由の場合売上げの2.6~5.2%がかかります。
さらに楽天ポイントの負担分として購入代金(税抜)×付与率(通常1.0%)の負担も必要です。
取引手数料(楽天ではシステム利用料という名称)はプランや利用されたデバイスごとに価格が異なりますが、2.0%〜7.0%が必要です。モール利用の場合は、売上が増えるほど、手数料の負担が大きくなるといえるでしょう。
マーケティング機能
製品やサービスを顧客に適切に伝え、販売を促進するマーケティング機能は、売上を伸ばす重要なポイントです。それぞれの特徴を比較し、どちらが自社のビジネスに適しているのかを見ていきましょう。
新規層の集客方法
新規層に向けてECへ集客する方法は、Shopifyなら、SEO対策をしてGoogleなどの検索結果で上位表示を狙ったり、SNSや外部広告などを活用したりして集客を行います。
楽天市場は、すでに楽天内に多くのユーザーがいるので、自社で集客しなくても一定のアクセスが見込めます。ですが、楽天市場内で商品ページの最適化したり、キーワードを工夫したりするほか、楽天の広告サービスを活用しないと、他社の類似商品に埋もれてしまう可能性があります。
リピートを促し、顧客育成する方法
顧客向けのマーケティング機能としては、顧客の購買データの分析や、その結果に基づくメルマガ配信が代表的です。
Shopifyは、マーケティングツールやアプリなどと連携し、顧客の購買履歴や行動データを分析できます。顧客リストからセグメント別にターゲティングしたメールを配信することができるので、リピート率の向上も期待できます。
ほかにも、クーポンやポイント、サブスクリプションなど、自社の販売戦略に合わせて機能を拡張できます。
楽天市場の場合、楽天独自の分析ツールは利用できますが、店舗が管理できる顧客データは制限されており、店舗独自のマーケティング施策は難しく、楽天が提供する有料のメルマガサービスを利用するしかありません。
また、リピーター獲得方法としては、自社で独自の施策はできませんが、楽天会員向けのポイントサービスや、楽天の公式キャンペーンを利用できます。
カスタマーサポート
サポート体制も重要な検討要素です。特にこれからECサイトを始めるのであれば、困った時に頼れるカスタマーサポートの充実度は、スムーズなローンチや運営には必須だといえます。
Shopifyはカナダ発のサービスですが、24時間365日対応の日本語によるメールサポートがあるので安心です。また、日本語のヘルプセンターや、運営者向けのオンラインコミュニティやFAQページが充実しており、特有のトラブル発生時にも自己解決しやすい仕組みが多いのも特徴です。
Shopifyのサポートについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
また、Shopifyには、EC構築・運用を支援するBiNDecのような公式のパートナー企業もあります。パートナーが付いていれば、運用面でのアドバイスやトラブルが発生した時も解決しやすいでしょう。
Shopifyパートナーについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
楽天市場では、運営者専用のサポート窓口が設置されており、電話やメールで相談が可能です。ですが、対応時間が営業日・営業時間内に限られるため、即時対応が必要な場合には不便なケースもあります。
ですが、楽天市場出店ECセミナーを無料で開催しているので、事前に不明点を確認するチャンスなどもあるでしょう。
決済方法
決済手段の選択肢は、ECサイト運営を左右する重要な要素です。そのため、顧客が望む決済手段にできるだけ対応しておくのが得策といえます。
Shopifyは、「Shopify Payments」という決済サービス利用することで、クレジットカード決済、Apple Pay、Google Payでの支払いに標準対応しています。また、PaidyやSBペイメントサービスといった外部の決済サービスを導入すれば、コンビニ決済、銀行振込、QRコード決済、後払い決済にも対応可能です。
加えて、KOMOJUやPayPalなど地域ごとのローカル決済に対応できるサービスも利用できるため、越境EC向けの支払い方法も選択できます。
楽天市場では、「楽天ペイ」を通じた支払いをします。楽天ペイを利用すれば、クレジットカード、楽天ポイント、コンビニ決済、銀行振込、後払い決済などが利用可能です。ですが、楽天市場内で決済が完結するため、外部のQRコード決済やPayPalなどの海外向け決済サービスが利用できないので注意が必要です。
デザインのカスタマイズ性
ECサイトにおけるデザイン性の高さは、ブランドの独自性を表現する重要な要素となります。そのため、デザインを第一に考えるのであれば、自由にデザインを構築できるECプラットフォームが最適です。
スピーディにECサイトを運営するのであれば、ASPカートやモールに用意されたテンプレートの中で必要な部分のみカスタマイズするほうが良いでしょう。
Shopifyでは、無料・有料あわせて240種類以上の豊富なテンプレート(テーマ)があります。
また、このテンプレートのHTMLやCSSを編集したり、Shopify独自のLiquidというテンプレート言語を編集したりすることで、ブランドイメージに合わせたり、訴求したい商品が目立つデザインにカスタマイズことも可能です。カスタマイズの専門知識がない場合でも、公式のパートナー企業に外注することで、クオリティの高いECサイトを構築できます。
Shopifyのパートナー企業について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
楽天市場では、基本的にモール内の統一レイアウトが適用されます。自由なデザイン変更には限界があります。ただし、楽天GOLDというオプションを無料で登録すれば、PCサイト用のトップページに限り、ある程度カスタマイズしたECサイトを作ることができます。
機能のカスタマイズ性
標準で提供されている機能を追加・拡張したい場合、Shopifyでは、「Shopifyアプリストア」に数千種類のアプリが用意されており、決済手段、ポイント、レビュー、ウィッシュリストなどを簡単に追加できます。また、APIを活用することで、MAやERPなどの外部システムとの連携も可能です。
楽天市場では、楽天が提供する標準機能の範囲内での運用が基本となります。

数多くのアプリがラインナップされているShopifyアプリストア
Shopifyと楽天市場のメリット・デメリット
前項では、Shopifyと楽天市場の機能・サービスを比較してきました。ですが、どちらにも魅力的なポイントがあるため、自社に適したECプラットフォームがどちらなのか、決めきれない場合もあるでしょう。
ここでは、先の項目に加えShopifyと楽天市場のメリット・デメリットを箇条書きでご紹介しますので、全体的に判断するのに役立ててください。
Shopifyのメリット・デメリット
Shopifyは、ランニングコストが抑えられ、機能やデザインの拡張性が高いので、ブランドの顧客を育てて売上成長しやすいことがメリットです。しかし、豊富な機能を活用するためには専門知識が必要となるケースもあるため、外部のパートナー企業への依頼することも検討しましょう。
<Shopifyのメリット>
ランニングコストが比較的低い | モールに比べて月々の利用料が安いので、運用コストを抑え、売上を伸ばしやすい |
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マーケティング施策が自由 | Google広告やSEO対策など多様な集客手段を活用できる |
顧客データを自由に活用できる | メルマガやクーポン発行などでリピーター獲得も可能 |
決済方法の選択肢が豊富 | Shopify Payments、PayPal、コンビニ決済、QR決済などを導入可能 |
グローバル展開が容易 | 多言語・多通貨対応、海外向けの決済などが利用可能 |
デザインの自由度が高い | テンプレートを編集し、ブランド独自のデザインを表現できる |
アプリで機能拡張を追加 | Shopify App Storeから数千種類のアプリを追加できる |
<Shopifyのデメリット>
自社で集客が必要 | プラットフォーム自体の集客力がないため、SEOや広告戦略などの集客が必要となる |
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運営の手間がかかる | デザイン、機能設定、マーケティング施策をすべて独自で行う必要がある |
初期設定がやや複雑 | カスタマイズ性が高いため、初めてのEC運営では設定に時間がかかることもある |
楽天市場のメリット・デメリット
楽天市場は、広告にコストをかけずに集客でき、ポイントやキャンペーンといった機能面でも専門知識は必要なく、誰でも簡単にEC運用ができます。
ただし、デザインやマーケティングは制限されているため、ブランドファンを増やして売上を成長したい、という場合はモール以外のチャネルも必要になってくるでしょう。
<楽天市場のメリット>
プラットフォームの集客力が強い | 楽天市場自体に多くの訪問者がいるため、新規顧客獲得がしやすい |
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楽天ポイントを活用できる | 楽天ポイントでの購買意欲が高く、リピーター獲得に有利 |
楽天市場の販促イベントに参加できる | 楽天スーパーSALE、お買い物マラソンなどの販促イベントに参加できる |
運営サポートが充実 | 楽天市場の担当者によるアドバイスを受けられる |
決済がシンプル | 楽天ペイに統一されているため、決済手段の設定に迷わない |
信頼性が高い | 楽天ブランドがあるため、ユーザーからの安心感を得られる |
<楽天市場のデメリット>
複数のランニングコストがかかる | 月額のシステム利用料に加えて、決済・取引手数料、ポイント負担などもあるので、粗利率が伸びにくい傾向にある |
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顧客データを自由に活用できない | 楽天市場のルールで顧客リストを自由に管理・活用できない |
価格競争が激しい | 個別の店舗が目立ちにくいため、同じ商品を扱う競合店舗との価格競争に巻き込まれやすい |
ブランディングが難しい | 楽天市場のテンプレートに従う必要があり、サイトのデザインなどで独自ブランドの表現が難しい |
Shopifyと楽天市場を併用してEC運用する方法
ご紹介したように、Shopifyと楽天市場には、それぞれ異なる強みがあります。そこで、双方の強みを活かしたShopifyと楽天市場の併用運用を視野に入れることもできるでしょう。
併用すれば、独自のECサイトだけを運用するリスクを抑えるだけでなく、販売チャネルを増やす利点もあります。ここでは、Shopifyと楽天市場を併用して運用する方法をご紹介します。
Shopifyの無料アプリで楽天を管理する方法
Shopifyと楽天市場を併用しても、2倍の労力がかかってしまうようでは現実的ではないでしょう。
そこで、Shopifyのアプリの「楽天市場販売チャネル」によって、Shopifyの管理画面上から「楽天市場」の商品登録や在庫管理、受注管理などをできるようにしましょう。
これにより、在庫管理などのミスも発生しませんし、チャネルごとに人気商品が何かを分析することもできます。
この連携は、あくまでデータを連携できるだけですから、Shopifyと楽天市場に出店する料金は必要です。また、Shopifyのアプリは無料ですが、別途「楽天市場」のシステム利用料がかかるほか、RMS商品一括編集機能というオプションサービスに月額10,000円(税別)がかかります。
外部システムでShopifyと楽天を連携する方法
Shopifyのアプリ以外に、外部システムを利用することで、Shopifyと楽天を連携する方法があります。外部システムは受注管理を行うOMS(Order Management System)と、倉庫業務を管理できるWMS(Warehouse Management System)があります。これらのシステムを利用し、Shopifyと楽天のデータを連携するのです。
連携可能な外部システムとしては「ロジレス」「ロジザードZERO」「ロジクラ」「ネクストエンジン」といったものがあります。アプリと違ってコストはかかりますが、物流業務のリソースを減らすことでECサイト運営を効率化するメリットも視野に入れて選択するといいでしょう。
物流業務の効率化について、詳しくは下記の資料をご覧ください。
Shopifyから楽天へ商品データを移行する方法
楽天市場最大の強みとも言えるのが、圧倒的なユーザー数からくる「集客」と「信用」です。ですが、運営者視点でいえば、高額なシステム利用料の負担は利益率などに大きく影響してしまいます。
そこで、ECサイト運営が軌道にのるまでは楽天市場で認知度を高め、その後、ShopifyなどのASPカートへと移行したいと考えるケースもあるでしょう。
Shopifyで自社ECを持つ際は、楽天市場から商品データを移行することができ、方法は大きく分けて2つです。1つめは楽天市場の商品データをShopifyのサンプルCSVファイルにコピーする方法です。コピーが完了すれば、あとはShopifyにアップロードするだけです。もちろん、費用はかかりませんが、商品数によってはかなりの作業量となります。
2つめは、Shopifyアプリを利用する方法です。こちらは一部有料となる「Matrixify」というアプリを使い、楽天市場の商品データを一括でShopifyにインポート可能です。
Shopifyと楽天市場で効率的に売上を伸ばすならBiNDecへ
ECサイトの運営で絶対に注意しなければいけないのが運営コストです。無駄な支出はないか、効果のでない施策にコストを支払っていないかなど、きちんと管理していかなければ売り上げに見合わないコストになりかねません。
ですが、コスト管理に躍起になって、ECサイト自体の成長がなければ本末転倒です。そこで、今回紹介したような、Shopifyと楽天市場を併用することで、両者の強み得つつ、弱みを補填する方法を使い、まずはECビジネスを成功させるのも選択肢のひとつではないでしょうか。
もちろん、併用する場合、コストだけでなくスタッフのリソースや、在庫や出荷業務の煩雑化も危惧されます。
そこで、効率的なECサイトの運用構築をするのであれば、一度Shopify PremiereパートナーであるBiNDecにご相談ください。ShopifyのECサイト構築、楽天ECとの連携やWMSの導入、運用プランニングなど、知識と経験で最適なアドバイスで売上成長を支援しています。