売上を伸ばすECサイト改善術|Shopifyを中心に考える分析データの繋ぎ方

売上を伸ばすECサイト改善術|Shopifyを中心に考える分析データの繋ぎ方

ECサイトの売上は、ちょっとした購入体験の違いで成果が大きく変わります。だからこそ、数字の分析をもとに改善を続けることが欠かせません。
世界175以上の国や地域で多くの企業に選ばれているShopify(ショッピファイ)は、商品管理や受注、顧客データの機能はもちろん、アプリや外部サービスとの連携で販売チャネルや機能を柔軟に拡張できるECプラットフォームです。Shopifyは基本機能だけでも売上や顧客の行動データを活かしやすい設計になっているため、「改善し続けるEC運営」と相性の良い仕組みが整っています。
本記事では、ShopifyでECサイトで成果を上げるためにどのように分析・改善をしていくべきかを解説していきます。

ECサイト改善が止まる3つの壁

Shopifyを運用していると、数字は見えているのに思うように成果につながらないことがあります。管理画面には売上、在庫、受注など多くの数値が並びますが、どこに注目し、どう判断すればいいのか分からなくなります。「見えているのに動けない」状態が、改善を止めてしまうことがあるのです。
ここでは、その背景にある三つの壁を整理します。

 1. 分析で止まる

売上やCVRなどの数字は追えるのに、その変化の理由まではたどりつけないといった状況に陥ることが多々あります。Shopifyでは、広告・アプリ・CRM・在庫などがそれぞれ別の画面で管理されるため、情報が分断されやすくなります。
数字を集めることが目的化し、全体像を読み解く前に時間が尽きてしまう「見るだけで終わる分析」が最初の壁です。

2. 施策化で止まる

課題が分かっても、次に何をすればよいかが具体化できず、数値の報告はできても改善案として形にするところで止まってしまうパターンです。分析をする人とサイトを更新する人が別の場合や、社内で手を動かせる環境が限られていたりすると、施策実行までに距離ができてしまいます。
「分かったけれど動けない」状態が続くと、レポートが積み上がるだけで成果は変わりません。これが2つ目の壁です。

3. 継続で止まる

一度の改善で成果が出ても、それが定着しない場合もよくあります。成果を別の施策に引き継がないまま、1度の施策で止まってしまう状況になります。
ECサイトの運用は日々の更新が多く、過去の改善内容がすぐに流れてしまいます。数字を見直す時間が取れず、「前回何を変えたか」が分からなくなり、そのままになってしまいます。改善の流れを支える仕組みがないまま、「短期的な施策の繰り返し」になってしまうのが、3つ目の壁です。

ECサイト改善を難しくする3つの構造的な要因

改善が止まってしまう背景には、ツールやスキルだけでは説明できない「仕組みの問題」があります。ここでは、特に影響の大きい3つのポイントを整理します。

ECサイト改善を難しくする3つの構造的な要因

データの分断

ShopifyでEC運用していても、売上、広告、CRM、アクセス解析といったデータはそれぞれ別のツールで管理されていることが多く、全体を一度に見渡すことができません。たとえば、GA4で流入を確認し、Shopifyで売上を見て、広告管理画面で費用を照らし合わせるという作業を手作業で行っている間に、意思決定のスピードが落ちてしまいます。
ツールが増えるほど、数字は増えても全体像は見えにくくなります。この状態を解消するには、データを統合し、共通の指標で評価できる環境を整えることが求められます。

役割の分離

アクセス解析や広告運用、サイト更新などの担当領域が分かれていると、それぞれが異なる指標で成果を追うことになり、改善の方向性が一致しないことがあります。特に外部の制作会社や広告代理店と連携している場合、目的の共有が不十分なまま数字だけが報告されることもあります。
情報を持つ人と行動する人が分かれていると、意図が伝わりにくくなります。理想は、分析から施策実行までを一つの流れとして扱える体制です。担当領域を越えて会話ができる環境を整えることで、数字の意味が現場の行動につながります。

目的の不一致

数字を追うことが目的化し、なぜその施策を行うのかが曖昧になるケースは少なくありません。担当者ごとに判断軸が異なれば、同じデータを見ても結論が違ってしまいます。このズレが積み重なると、改善の方向がぶれてしまいます。
改善の目的は、常にユーザー体験を良くすることにあります。その視点を共有したうえでKPIや目標を設定し、どんな状態を目指すのかをチームで言語化し、基準を定期的に見直すことが、改善し続ける前提になります。

Shopifyを中心に、改善を止めない仕組みをつくる

Shopifyは、ECサイトの運営に必要なあらゆる情報をレポートとして整理できるのが大きな強みですが、他のツールとつなげるための仕組みが整っているのも特徴です。
GA4やBIツール、メールマーケティング、広告管理などと連携すれば、施策と結果をひと続きの流れで見られるようになります。つまり、Shopifyを中心にデータを整理すれば、「どこを変えれば効果が出るか」が見えるようになるのです。ここでは、その仕組みを日々の運用で活かすための4つのポイントを紹介します。

Shopifyを中心に、改善を止めない仕組みをつくる

1. データをつなげて「改善の流れ」をつくる

Shopifyの強みは、「必要な情報を必要な場所につなげられること」です。注文や顧客の情報を、自動でほかのツールと連携させることができます。
たとえば、以下のような連携のシーンが考えられます。

  • 新しい顧客が登録されたら、CRMに自動で追加される
  • 売れた商品に応じて、広告の配信を調整する
  • 在庫が減ったら、Slackに通知してすぐ対応できる

こうした連携ができるのは、Shopifyが外部サービスとデータをやり取りできる仕組みを持っているからです(APIや自動化ツール)。調整には開発の知識が必要な場合もありますが、一度流れをつくれば、日々の運用と改善を自動でつなぐことができます。

2. チームで同じ数字を見る

アプリや広告の担当がそれぞれ別の数字を見ていると、改善の方向がずれてしまいます。Shopifyのレポートやダッシュボードを使って、売上と顧客の動きを共有できるように整えることが重要です。
Shopifyのレポートは必要な指標を選んでカスタマイズできるため、チームや施策にあわせて見たい数字に整えることができます。たとえば、以下のような指標が見えるレポートを整えておくと改善に役立てることができます。

  • LTV(顧客生涯価値)→ どんな顧客が長く買ってくれているのか
  • リピート率 → 施策が顧客維持に効いているのか
  • カート追加率 → 商品ページの改善余地があるのか

チーム全体で同じ視点を持てると、「何を優先するのか」が揃いやすくなり、判断が速くなります。指標の決め方について、詳しくは下記の資料もご覧ください。

3. 施策を検証できる形で残す

施策を行ったあと、「なぜそれをやったのか」「結果どうだったのか」を残しておくと、次の改善につながります。
Shopifyでは、「メタフィールド」や 「タグ」といった機能を使って商品やページにメモのような情報を付けて管理できます。たとえば、以下のような取り組みを記録しておけば、後から「どの施策が売上に効いたか」を振り返りやすくなります。

  • 「LPのファーストビューを変更」
  • 「バナー訴求A/Bテスト」
  • 「定期便ページの改善」

改善の履歴を商品データと一緒に残せるのは、Shopifyならではの強みです。

4. 経緯や結果の情報をチームで共有する

施策の経緯や結果は、Shopify内だけにとどめず、SlackやNotion、スプレッドシートで共有できると理想的です。Zapierなどの自動連携ツールを使えば、特定の売上変動やキャンペーン結果を自動でチームに通知することもできます。属人化を防ぎ、誰でも同じ基準で改善を進められる環境を整えましょう。

データを立体的に見るためのツール活用

Shopifyの管理画面では売上や商品別の傾向を追えますが、「行動の背景」や「市場全体の動き」までは見えにくいものです。そこで活きるのが、GA4をはじめとした外部ツールとの連携です。

ECサイトを運営していると、数字だけでは見えない部分にこそ改善のヒントが隠れているもの。だからこそ、Shopifyを中心に据えつつも、ほかのツールと組み合わせて見えない部分を補う視点が必要になります。

データを立体的に見るためのツール活用

GA4で「全体の流れ」をつかむ

Shopifyの管理画面では売上や商品別の数値が中心になりますが、ユーザーがどの経路で来て、どのページでどんな行動をしたのかまでは見えにくい部分があります。GA4を活用することで、流入経路や閲覧の深さ、離脱のポイントなどを横断的に把握できます。

たとえば、広告から訪れたユーザーが商品ページで離脱している場合、GA4のイベントデータを見れば「どのボタンまで到達したか」「スクロールが止まった位置」まで追うことができます。これにより、「どんな人が、どんな経路で、どの段階で迷っているか」を俯瞰的に見られるようになります。このGA4の視点をベースに、ほかのツールを組み合わせて深掘りしていくのが理想です。

活用ツール

GA4 Googleアナリティクス4プロパティ。Googleが提供するサイト解析ツール。流入→行動→離脱まで、顧客行動を横断的に可視化

GA4とShopifyの連携方法については下記の記事をご覧ください。

外部データ分析ツールで「市場の動き」を見る

サイト内のデータだけを見ていると、どうしても視野が狭くなります。そんなときに役立つのが、外部データをもとに市場全体の傾向を分析できるツールです。Shopify上で特定の商品が伸び悩んでいるときでも、こうした外部データを合わせて見ることで、「市場全体が落ちているのか」「自社だけが取りこぼしているのか」を判断できます。GA4では拾えない「外の動き」を知ることが、正しい打ち手を選ぶ近道になります。

活用ツール例

Dockpit 検索や購買データをもとに自社と競合の数字を比較
SimilarWeb URLを入れるだけでそのサイトのアクセス状況がわかる
Google トレンド キーワードの検索回数やトレンドを分析・調査できる

ヒートマップや録画ツールで「行動の迷い」を見る

次に補いたいのは、数字の裏にある「行動の質」です。ヒートマップツールや録画ツールを使うと、ページの中でユーザーがどこで立ち止まり、どこで離脱しているのかを可視化できます。
たとえば、カートに入れたあとに戻る人が多いページを録画データで確認すると、ボタンの位置やラベル、配送条件の説明など、意外なポイントに課題が見つかることもあります。この「行動の見える化」をGA4と組み合わせることで、数字の意味が立体的になります。

活用ツール例

Microsoft Clarity 無料&軽い。クリック・スクロールの癖をつかむのに十分
Mouseflow ヒートマップ+録画。フォーム離脱の分析がしやすい
UserHeat 日本語UIで導入障壁が低い。無料では基本機能に限定されるが、最初の一歩に

BIツールで「結果と背景」をつなぐ

もう一つ大きなポイントは、データを「見る場所」を統一することです。
GA4やShopify、外部データツールなど複数のサービスを行き来していると、どうしても判断が部分的になります。BIツールを使えば、これらのデータを一つのダッシュボードで可視化し、全体の関係性を俯瞰できます。結果と背景を同じテーブルで見られる環境を整えることが、改善を早める第一歩です。

Looker Studio Google提供の無料ツール。Google広告やGA4との連携が簡単
Tableau 複数データを扱う深掘り分析に強い。可視化表現の自由度が高い
Power BI 社内データベースやMicrosoft 365との統合がしやすい

AI × Web解析 — 人の思考を拡張する新しい流れ

データ分析の現場にも、AIの活用が少しずつ広がっています。とはいえ、「AIが全部やってくれる」という話ではありません。AIの役割は、分析を自動化することではなく、人が考える時間を生み出すことにあります。

数字を集め、グラフを作り、傾向を読む、ということの繰り返しに多くの時間を取られていると、本来注ぐべき「なぜこの結果になったのか」「次にどう動くか」という思考の部分が後回しになってしまいます。AIがこの「前段の整理」を担うことで、人間の「考える余裕」が生まれます。

AIが読み解きをサポートする時代へ

最近では、データの読み取りやレポート作成をAIが補助する仕組みが増えています。たとえば、MCPサーバーを使えば、GA4やLooker StudioなどのデータをAIが参照し、自然言語で質問や要約ができる環境をつくれます。「この月の売上減少は何が原因?」「新規顧客の流入はどこから多い?」といった問いをそのまま投げかけ、グラフや文章で返してくれるイメージです。

MCPサーバーは企業向けのAI分析基盤で、データ接続や仕組み化には開発知識が必要なため、パートナー支援が前提となりますが、人が手動でデータを探す時間を減らすことで、仮説を立てたり施策を考えたりする工程に集中できるようになります。

誰でも試せるAI活用の広がり

こうした対話型AI環境を自前で構築しなくても、GensparkChatGPTなど、一般向けのAIでも十分に実用段階にあります。

たとえば、GA4のエクスポートデータやBIツールのCSVを読み込ませて、「上位ページの滞在時間が短い理由を考えて」と質問するだけで、傾向の整理や仮説のヒントが得られます。数字の意味をAIと一緒に考える感覚です。AIを「指示に従うツール」としてではなく、「議論の相手」として使うと、自分だけでは出てこなかった視点が見えてくることがあります。

ShopifyはECビジネスに特化したAIアシスタント「Sidekick」を搭載

Shopifyは、日々のEC業務をサポートするために、AIアシスタント「Sidekick(サイドキック)」が搭載されています。Sidekickは、一般的なAIツールとは異なり、EC内部のデータに直接アクセスして分析や施策を実行できる点が特徴です。
単なるデータ分析の補助だけでなく、「今週の売上を前週と比較してグラフ化して」「商品Aの在庫が残り少なくなったら通知して」といった日常的な指示やタスクを自然言語で実行できます。これにより、レポートの確認、基本的な設定変更、データに基づいた提案の取得にかかる時間を大幅に削減し、人は「考える時間」や「顧客と向き合う時間」を増やすことができます。
Sidekickの活用方法は主に以下の様なものがあります。

  • 必要なKPIやレポートを、管理画面の奥深くを探すことなく、すぐに会話ベースで引き出せる。
  • サイトの設定変更やクーポンコードの発行など、定型的な業務をAIに代行させる。
  • サイトのパフォーマンスに関する洞察(例:コンバージョン率の変化の理由)を自動で要約・提供してもらう。

Sidekickの実践的なテクニックについては下記の記事をご覧ください。

小さく試しながら精度を上げていく

AIを分析に使うときのポイントは、「いきなり正解を求めない」ことです。
最初はざっくりした仮説づくりや、レポートのたたき台として使い、そこに人が自分の経験や知識を加えて磨いていく。この往復を続けるうちに、AIが出す分析の精度も、使う側の思考の深さも少しずつ上がっていきます。AIを導入することが目的ではなく、「考える時間を取り戻すこと」がゴールです。

Shopifyでの改善を続けるために、構築パートナーを活用しよう

ここまで見てきたように、ECサイトの改善を続けるには、データを見るだけでなく、仕組みとして回すことが欠かせません。
GA4で行動を把握し、Shopifyで売上と顧客を管理し、外部データやAIで判断の精度を上げ、それらを実装まで結びつける「構築力」が成果を分けます。

BiNDecは、国内でも数社しか認定されていないShopify Platinum パートナーとして、分析と改善の両面から企業の成長を支える構築パートナーです。中小規模から大規模のビジネスまで、フェーズに合わせて最適な運用戦略をご提案します。
ShopifyでのEC構築や運用に関してお悩みの方は、気軽にお問合せください。

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POINT

  • EC運用の改善が止まる理由は「分析・施策化・継続」の3つの壁にある
  • Shopifyを核に、他ツールとデータを自動連携させ、分析・施策実行のサイクルを確立する
  • GA4やAIを組み合わせ、数字の裏にある顧客行動を立体的に把握し深掘りする

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