ロイヤルカスタマーは、EC事業を支える重要な顧客です。ロイヤルカスタマーがどのような顧客を指すのか、また、ロイヤルカスタマーをどのように育成していけば良いのかを知ることで、事業の安定を図れるでしょう。
本記事では、ロイヤルカスタマーの意味や、優良顧客やリピーターといった類似の言葉との違い、重視されるようになった背景などのほか、ロイヤルカスタマーを育成するメリット、戦略を解説します。多くのロイヤルカスタマーを獲得し、EC事業を安定・拡大させるための参考にしてください。
→ECの顧客分析施策もサポート。BiNDecがご相談を承ります。
ロイヤルカスタマーとは、売上貢献度と企業・ブランド・商品に愛着が高い顧客
ロイヤルカスタマーとは、心理的ロイヤルティと行動的ロイヤルティの両方が高い顧客のことです。
心理的ロイヤルティとは、企業やブランド、商品に対して好感や愛着、信頼などを覚えている状態を指します。また、行動的ロイヤルティとは、例えば継続的に高額商品をリピート購入している場合など、売上に貢献する行動を行っている状態です。
単純に売上額が高いだけではなく、自社ブランドや商品を愛してくれているロイヤルカスタマーは、EC事業の収益アップに欠かせない存在です。
EC事業の中でも特に、メーカーが自社ECサイトで直接商品を販売するD2C事業では、顧客との接点が多く作れる上にデータも蓄積しやすいことから、ロイヤルカスタマーの育成が行いやすいといえます。
D2C事業について詳しくは、下記の記事をご参照ください。
→ECの顧客分析施策もサポート。BiNDecがご相談を承ります。
優良顧客やリピーター、ロイヤルカスタマーと似た言葉との違いは何?
ロイヤルカスタマーと似た言葉に、優良顧客や売上上位顧客、リピーターなどがあります。どの言葉も売上に貢献をしている顧客を指しますが、ロイヤルカスタマーとは異なる意味を持ち、その違いとしては下記のような点が挙げられます。
優良顧客・売上上位顧客との違い
ロイヤルカスタマーと優良顧客や売上上位顧客との違いは、心理的ロイヤルティの有無です。
優良顧客や売上上位顧客は、自社のECサイトで多くの売上に貢献している顧客ですが、その理由は問いません。
例えば、単に「ほかのECサイトよりも安いから」という理由で選んでいる場合も、優良顧客や売上上位顧客に該当します。しかし、このような顧客は、競合サイトが値下げをすれば購入先を変える可能性があります。
これに対して、ロイヤルカスタマーは、自社や自社のブランドに対して愛着を持ってくれている「ファン」です。単純に価格だけで自社を選んでいる顧客は該当しません。
なお、優良顧客と売上上位顧客も、厳密には意味が違います。
優良顧客は、自社のECサイトを継続的に利用していて、一定以上の売上に貢献している顧客です。一方、売上上位顧客は、単純に購入した商品の金額だけで判別します。そのため、高額商品を一度買っただけでリピート実績のない顧客も売上上位顧客に該当するのです。
売上上位顧客と異なり、繰り返し自社ECサイトを利用している優良顧客は、ある程度自社に好印象を抱いてくれている可能性が高いといえます。優良顧客に対しては、さらなるリピートを促すだけでなく、愛着をもってもらえるような施策を行って、ロイヤルカスタマーへ育成していくことが大切です。
リピーターとの違い
ロイヤルカスタマーとリピーターでは、ロイヤルティの有無が異なります。ロイヤルカスタマーは心理的ロイヤルティと行動的ロイヤルティの両方が高い状態であるのに対し、リピーターはどちらも低い可能性があります。
そもそもリピーターとは、繰り返し商品の購入を行っている顧客を指す言葉です。繰り返し継続的に商品を購入していれば、購入額や購入理由は問いません。単純に乗り換えが面倒で自社を利用しているような心理的ロイヤルティが低い顧客や、購入額が低額で行動的ロイヤルティが低い顧客も含まれます。
リピーターの中から、購入金額が高い優良顧客に的を絞ってロイヤルカスタマーへの育成を目指したり、アップセルやクロスセルによる購入金額の向上を図ったりすることが重要です。
アップセルやクロスセルについて詳しくは、下記の記事をご参照ください。
→ECの顧客分析施策もサポート。BiNDecがご相談を承ります。
ロイヤルカスタマーが重要視される背景にあるのは時代と顧客のニーズ
ロイヤルカスタマーが重要視されるようになった背景には、時代の移り変わりがあります。現代の顧客のニーズに応え、今後も安定した売上を維持していくためには、ロイヤルカスタマーの獲得が必須だといえるでしょう。
ここからは、ロイヤルカスタマーが重要視される3つの理由を紹介します。
新規顧客の獲得が難しくなっているため
少子高齢化と人口減少が進む日本では、年々市場が減少していき新規顧客の獲得が難しくなると考えられるため、ロイヤルカスタマーの獲得が重要になっています。
日本の総人口は2011年以降減少が続いており、総務省の「人口推計 2023年(令和5年)11月報」によると、2023年11月時点の概算値で1億2,431万人です。2008年のピーク時の1億2,808万人からは377万人も減少しており、少子高齢化が同時に進んでいることから、今後も人口が増える可能性は少ないと考えられます。
EC事業において、人口全体の減少が進んでいく中で、今後、日本の市場で新規顧客を獲得することはますます困難になることが予想されます。このような状況下で長期的に売上を安定させるには、既存顧客向けの施策を増やしてリピートを促すとともに、心理的ロイヤルティが高く離脱の起こりにくいロイヤルカスタマーを育てていくことが重要です。
また、新規顧客を獲得して一定の売上を上げるのにかかるコストは、同じ売上を既存顧客から獲得するコストの5倍ともいわれています。これを「1:5の法則」と呼びますが、新規顧客を獲得して売上を伸ばす戦略に対し、既存顧客を育てる戦略はコスト的にもメリットがあるといえるでしょう。
顧客中心主義が求められているため
商品やサービスが多様化する中、顧客のニーズを中心に据えた事業展開を行う「顧客中心主義」が重要になっています。
さまざまな商品やサービスの中から、顧客は「自分の課題を解決できる価値を持った商品」をピンポイントで求めるようになったため、顧客から選ばれ続けるためには、細分化する顧客ニーズに合致した商品展開やサービス展開を行わなければならなくなったのです。
顧客中心主義は、顧客からの信頼や愛着を勝ち取り、ロイヤルカスタマーを育成することにもつながります。顧客のニーズに寄り添い、顧客が満足できる商品やサービスを提供し続けられれば、ロイヤルカスタマーを増やしていくことが可能です。
Cookie情報の活用が難しくなってきているため
Cookie情報の活用が制限されるようになってきていることから、Cookieに頼ったマーケティング施策が実施しづらくなっているため、ロイヤルカスタマーの重要性が増しています。
Cookieとは、ウェブサイトを訪れた人の閲覧履歴に関するデータです。これまで、ECサイトではCookieを利用したマーケティングが多数行われてきました。しかし個人情報保護の観点から、Cookieの利用を規制する動きが出てきています。
日本では、2022年4月からCookie情報の利用に訪問者の同意が必要になりました。また、Google™が提供するインターネットブラウザ「Google Chrome™」では、2024年半ばから段階的にサードパーティーCookieの廃止が進められる予定です。
サードパーティーCookieとは、訪問したウェブサイト以外の第三者が発行したCookieで、「自社のECサイトを訪問した顧客が別のウェブサイトを訪問した際に、自社ECサイトで閲覧した商品の広告を表示して再訪を促す」といったマーケティングを可能にします。
Cookieの利用が制限されることで、このようなウェブ広告や、ECサイトを訪問した顧客の行動履歴の収集などが難しくなっていきます。
今後は、Cookie情報に頼らずに売上を向上させる方法を検討しなければなりません。そこで、自社が持つ顧客情報を活かしてロイヤルカスタマーを育成する方法が注目されているのです。
→ECの顧客分析施策もサポート。BiNDecがご相談を承ります。
LTVや信頼がUPする、ロイヤルカスタマーを育成するメリット
ロイヤルカスタマーの育成には、さまざまなメリットがあります。ロイヤルカスタマーの育成がEC事業者にもたらす代表的なメリットは、下記のとおりです。
LTVが向上し売上が安定する
ロイヤルカスタマーを育成するメリットは、LTVの向上を見込めることです。
LTV(Life Time Value)とは、顧客生涯価値を指します。顧客生涯価値とは、「一人の顧客が最初に取引をしてから最後に取引をするまでに生み出す利益」のことで、一般的には「平均顧客単価×収益率×平均購買頻度×平均継続期間」で算出します。
ロイヤルカスタマーは、単価、購買頻度、継続期間がすべて一定以上の顧客であるため、ロイヤルカスタマーを増やせば、LTVも向上させることが可能です。LTVが高くなれば多くの売上を安定的に見込めるようになるため、ロイヤルカスタマーを増やすことは事業の安定成長につながります。
LTVについて詳しくは、下記の記事をご参照ください。
新規顧客獲得に役立つ情報発信をしてもらえる
新規顧客獲得に役立つ情報発信をしてもらえるという点も、ロイヤルカスタマー育成のメリットです。
ロイヤルカスタマーは、企業やブランド、商品に対して心理的ロイヤルティが高い顧客です。企業やブランド、商品に関するポジティブな発信や、周囲の人々への共有をしてくれる可能性も高いといえます。
実際に商品やサービスを利用しているユーザーの声は、「販売する企業側からの宣伝よりも信頼できる」と思われる傾向にあり、特に実生活やSNSなどで関わりを持つ友人や知り合いからの情報は、信頼性の高い情報として受け止めてもらいやすくなります。
ロイヤルカスタマーを育成すれば、コストをかけて宣伝を行わなくてもロイヤルカスタマーが自発的に行った発信によって自然と新規顧客を増やしていける可能性があるため、事業者にとっては効果的なマーケティングになるといえるでしょう。
ロイヤルカスタマーとの関係性を深め、商品やブランドの良さを人に伝えたいと思ってもらえれば、ロイヤルカスタマー自身からの利益だけでなく、新規顧客からの売上の向上も見込めます。
建設的なフィードバックをもらえる
ロイヤルカスタマーを育成すると、建設的なフィードバックをもらえる点もメリットです。
自社の商品やブランドに愛着を持っているロイヤルカスタマーは、フィードバックも積極的に行ってくれる可能性が高い顧客層です。長期間、自社の商品を使用し、ブランディングを見てきた経験をもとにした意見は、商品開発やマーケティング方法などを検討する際の参考になります。
ネガティブなフィードバックを受けることもあるかもしれませんが、自社商品の改善点がわかるファンの声は、企画開発においては貴重です。どこに魅力を感じ、どこに難点を感じているのかをロイヤルカスタマーから聞き取り、さらに愛着を持ってもらえる商品やマーケティング施策、サービスの在り方を検討していきましょう。
→ECの顧客分析施策もサポート。BiNDecがご相談を承ります。
具体的な戦略3ステップ!ロイヤルカスタマーを育成しよう
ロイヤルカスタマーを育成するためには、ロイヤルカスタマーといえないまでも心理的ロイヤルティや行動的ロイヤルティがすでに高い顧客をターゲットに、さらにロイヤルティを上げるための施策を行う必要があります。
下記の3ステップで、ロイヤルカスタマーの育成を行ってください。
1.顧客ロイヤルティの把握
最初のステップは、顧客の現状のロイヤルティの把握です。心理的ロイヤルティは、顧客満足度調査やNPS®(Net Promoter Score)調査を行うことで把握できます。
顧客満足度調査とは、さまざまな指標について顧客がどの程度自社の商品やサービスに満足しているかをアンケートによって調べる調査です。具体的な質問項目は、自社のサービス内容などに応じて選定します。顧客満足度調査によって、心理的ロイヤルティの高い顧客や、心理的ロイヤルティの高い顧客が特に何を魅力的だと感じているのか、自社の強みと弱みはどこにあるのか、といったことがわかります。
一方、NPS調査は、顧客が自社の商品などをどの程度親しい人にすすめたいと思っているかをアンケートで調べる調査です。この結果が高いほど、心理的ロイヤルティが高いといえます。
行動的ロイヤルティの調査は、デシル分析やRFM分析などによる購買データの分析で可能です。デシル分析は、顧客を売上額などによって10段階に分ける分析手法で、RFM分析は、顧客を「購入金額」「購入頻度」「最終購入日」をもとに評価して優良顧客を見つける分析手法です。
2.育成の対象となる顧客層の選定
顧客のロイヤルティを把握したら、その調査結果をもとに顧客を分類し、どの層にアプローチを行うかを決定します。すでにロイヤルカスタマーとして貢献している顧客に対して継続的な支援を促す施策と、ロイヤルカスタマーには届かない顧客に対する施策を行いましょう。
最初のステップで心理的ロイヤルティと行動的ロイヤルティの両方を調べているため、ロイヤルカスタマーを育成する上で、対象としたグループにどちらのロイヤルティを向上する施策が必要なのかも自然と判明しているはずです。
3.顧客の視点に立った施策を検討
顧客層の選定を行ったら、それぞれの顧客の状況に合わせて、必要な施策を実施します。顧客との接触頻度や接触方法を見直して、CX(顧客体験)を高める手段を検討してください。心理的ロイヤルティが不足している顧客に対してはサービスの手厚さや自社の魅力を伝え、行動的ロイヤルティが不足している顧客には顧客単価向上のための施策を行います。
例えば、心理的ロイヤルティを高めるには、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を活用したり、すでに心理的ロイヤルティの高いアンバサダーを起用したりして、自社の魅力を伝える方法があります。また、SNSやメールを通してコミュニケーションを取ったり、限定クーポンを配布したりしてロイヤルティを高める方法なども効果的です。
クーポンの配布は「サービスが良い」と感じてもらうためにも有効ですが、行動的ロイヤルティの低い顧客の購買行動を促すことにも役立つでしょう。ロイヤルカスタマー限定クーポンを用意して、ロイヤルカスタマーへの感謝を示し、離脱を防ぐといった使い方もできます。
UGCについて詳しくは、下記の記事をご参照ください。
ロイヤルカスタマーを育成して、顧客から選ばれる企業を目指そう
ロイヤルカスタマーは、EC事業の安定的な成長に不可欠です。売上の安定や向上だけでなく、新規顧客の獲得や企画開発にも役立つため、積極的に育成施策を行いましょう。
ただし、ロイヤルカスタマーを育成するためには顧客の分析や分類が必要になります。顧客の情報の蓄積や分析ができるECプラットフォームを活用してください。
ECプラットフォームのひとつであるShopifyには、顧客の行動履歴にもとづいた分析機能や、タグ付けなどによる顧客分類機能など、ロイヤルカスタマー育成に役立つ機能が搭載されています。SNSやメールによるコミュニケーション、限定クーポンの配布といった顧客視点の施策を実現しやすいという特徴があります。
さらに、サードパーティーが開発する豊富な機能拡張用アプリを利用すれば、多種多様な顧客分析機能や顧客管理機能も利用可能です。
ShopifyでのECサイト構築や、他サービスからのリプレース、機能に関する疑問・不安などがある場合は、ShopifyのECサイト構築・運用支援サービスBiNDecを提供しているWEBLIFEまでお気軽にお問い合わせください。豊富な実績と知見をもとに、最適な方法をご提案いたします。