世界のEC市場の中でも特に規模が大きい国はアメリカと中国です。WEBLIFEの代表取締役である山岡 義正が参加したNRF Retail’s Big Show 2025のセッションでは、2つのEC市場の特徴やトレンドの違いがいくつか挙げられていました。
アメリカと中国は日本製品の輸出割合が最も多い国でもあり、越境ECでビジネスを成長するために狙いやすい市場です。NRF Retail’s Big Show 2025で挙げられたトピックから、越境ECを成功させるためのヒントを探ってみましょう。
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アメリカと中国のEC市場規模
DtoCのEC市場の割合を国別でみると第一位は中国で51.3%、アメリカが19.5%となり、その後にイギリスや日本が続きます。中国とアメリカで市場の約7割を占め、世界のEC市場において中心的な役割を果たしています。
日本から越境ECを展開するなら、市場規模が大きい国は売上を伸ばしやすい環境ではありますが、EC市場が発展している国同士でも消費行動や商習慣は全く異なるそうです。
それぞれのショッピングトレンドの違いやメリットについて、越境ECに最適なプラットフォームのShopifyの活用方法も交えながら考察しました。
Shopifyでの越境EC構築について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
情報収集やショッピング形態の違い
アメリカと中国では、消費者がどのように商品を知って購入まで辿り着くのかというカスタマージャーニーの大筋から傾向が分かれています。
まずは、それぞれの国に合わせたプロモーションと販売手段を知っておきましょう。
アメリカ|日常のSNSチェックから好みの商品を見つける
アメリカでは、Instagram、TikTok、X等を使った日常的な情報収集を通じて人気商品やブランドを知ってから購入へ至る傾向が強いため、SNSマーケティングが欠かせません。情報の発信源になるインフルエンサーは著名人だけではなく、消費者と年齢、趣味、ライフスタイルが近い普通の人であることも多いです。
Shopifyでは、アフィリエイトプログラムのShopify Collabsを使えば、自社ブランドのターゲット層と相性の良いインフルエンサーを探して契約することができます。
SNSでのフォロワー数やエンゲージメントなどの各種ステータスも確認でき、オファーから報酬の支払いのほか、売上の追跡および分析の機能も揃っているため、効率的にインフルエンサーマーケティングを行うことが可能です。
中国|ショッピングの第一線はライブコマース
中国では、ライブストリーミングを通じたショッピング、いわゆるライブコマースが圧倒的に人気です。
例えば、母親が家で家事をしながら、テレビドラマの代わりにライブコマースを見て、商品をチェックする、というようにショッピングがエンターテインメント化しているそうです。
中国国内で提供されているライブコマースのプラットフォームの種類は900以上、年間利用は約3億9600万人以上にのぼります。最も人気のある中国版TikTokのDouyin(抖音)をはじめ、各プラットフォームで独自のカート機能を有しているため、ライブコマースから自社ECへ誘導するのは難しいかもしれません。
主に利用されているECプラットフォームの違い
上記の消費行動の違いはECプラットフォームの機能やシェアに大きく影響しています。アメリカと中国で人気のプラットフォームの特徴をまとめます。
アメリカ|革新的で成長しやすいShopifyが人気
D2Cモデルの最先端国といわれるアメリカのEC市場において、プラットフォームはShopifyが最大のシェアを持っており、利用率は約30%を占めています。次点のWix Storesが約23%、WooCommerce、Squarespaceがそれぞれ約15%と続きます。
ShopifyはアプリやAPI連携による拡張性が高く、CV率に優れたチェックアウト、強固なサーバーシステムなど、ビジネスを成長させやすい要素が豊富です。
Goldman Sachs’ のセッションでは、アメリカ経済の特徴として投資、成長、イノベーションの分野で優位性を持っており、文化やイノベーション精神に影響していると語られました。そういった面がShopifyの強みと合致し、シェアを伸ばし続けていることにも繋がっていると考えられます。
中国|プラットフォーム独自のライブコマース機能
中国のECプラットフォーム市場ではECモール型が強く、どちらもアリババグループが提供するCtoC向けのTaobao(淘宝)とDtoC向けのTmall(天猫)が、全体の約45%を占めています。続いてJD.com(京東)、Pinduoduo(拼多多)、Douyin(抖音)などがありますが、そのどれもが独自のライブコマース機能を有していることが特徴的です。
ライブコマースを配信するインフルエンサーの中でも、特定の専門分野を持つKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれる人々が絶大な人気を博しています。そのインフルエンサーがメーカーと価格交渉をして、ライブコマースの方が安く購入できることもあるほどです。
中国のライブコマースで成功するにはKOLを活用したマーケティングが有効といわれています。
ECにおける支払い方法の違い
主要な支払い方法は、同じ通貨を利用している場合でも国や地域ごとに異なります。希望する支払い方法ができないと購入を諦めてしまう可能性が高まるため、最適な決済手段を用意しておくことは越境ECにとって必須です。
アメリカ|カード決済をはじめとした多様な支払い方法
アメリカのECで最も一般的な支払い方法はクレジットカードが約31%、デビットカードが21%と全体の大半を占めています。
一方でPayPal、Apple Pay、Venmoなどのデジタルウォレットも29%と伸びてきており、年齢層やライフスタイルによって、好まれる支払い方法の多様化が進んできています。
日本でもECの決済はクレジットカードが大半を占めていますが、ターゲットによってはコンビニ払いやキャッシュレス決済が欠かせません。アメリカの支払い事情と近いと言えるでしょう。
中国|ほとんどの人がデジタルカードやキャッシュアプリ
中国では、国策としてもキャッシュレス決済が推奨されているため、あまり現金を使われず、デジタル決済の利用が非常に普及しているのが特徴です。ECでの利用率は、カード決済も一定の割合で利用されていますが、Alipayや、WeChat Pay筆頭にデジタルウォレットが8割を超えている状況です。
シンプルかつ効率的なデジタルウォレットはライブコマースのようなリアルタイム感のあるショッピングとも相性が良く、中国国内のあらゆるチャネルで導入されているそうです。
外部の決済代行サービスで対応できる支払い方法を拡大
Shopifyでは、標準の決済方法として各種クレジットカード、Apple Pay、Google Pay、Amazon Pay、Shop Pay、PayPalに対応しています。さらに外部の決済代行サービスを導入して、世界中のローカルな決済手段に対応することも可能です。
手数料や利用料は各サービスによって異なるため最も利益率の高い決済サービスを導入すると良いでしょう。
世界各国のローカルな決済手段をShopifyに導入できるKOMOJUについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
越境ECでの取引にかかる税金の違い
越境ECの取引において、一定金額以上の商品には個人輸入でも関税がかかります。税率は相手国と品目によって異なり、関税も1種類ではありません。
さらに、関税のほかにも税金が発生することもあるため、消費者には全ての税金を含めた代金で決済してもらう必要があります。
アメリカ|政策による高額な関税や地域特有の税金に注意
現在アメリカではインフレと財政赤字の管理が課題となっており、2024年にトランプ政権に変わってから、関税の大幅な見直しが進んでいます。従来より主に靴や衣類に高い関税がかけられていましたが、最近では自動車や関連部品に25%の関税がかけられることになりました。
その他の税金は、特定の農産品や工業製品に対する輸入税、州ごとに決められた州税、地方自治体による地方税のほか、税関を通過する際に通関手数料が発生し、送付する地域によって税金が異なることに注意が必要です。
中国|国内のプラットフォームへ出店すれば税が優遇される
中国への越境ECの取引には、品目ごとの関税のほか、行郵税もしくは電商総合税、付加価値税(VAT)、特定品目に対する消費税がかかります。
国外の企業がTmall(天猫)やJD.com(京東)などの中国のECプラットフォームに出店して行われた取引に関しては、「個人使用目的で5,000元以下かつ、ポジティブリストの掲載品」など一定の条件下に限り、行郵税よりも税率が優遇された電商総合税(越境EC総合税)が適用されます。
税金を含めた代金でスムーズなチェックアウト
関税や税金は品目、対象国、配送地域によって異なり、実際に必要な金額の計算は非常に複雑です。チェックアウト時に税込みでの会計ができていないと、受け取り時に顧客が別途支払うことになり、クレームや受取拒否といった事態なってしまうこともあります。
Shopifyでは、税金を自動計算して決済代金の含めることができるアプリやサービスが充実しているため、越境ECでもスムーズなチェックアウトが簡単に実現します。
チェックアウト画面で適切な関税と税金を自動計算できるGlobal-eについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
アメリカ、中国それぞれで越境ECを成功させるには?
以上のように、EC先進国と言われているアメリカ、中国ではショッピングトレンドやルールが異なるため、越境ECを展開するにしても、それぞれに合わせた戦略が必要だと考えられます。
それらを踏まえた上で、どのような方向性で展開していくのがベストであるかをまとめます。
アメリカ|SNSマーケティングに注力し、ブランドファンを増やす
アメリカの消費者に向けた越境ECの基本として、まずはSNSでブランドへの認知を広めていくことから始めると良いでしょう。
ターゲットがどんな属性や好み、ライフスタイルであるかを詳細に想定し、理想に近いインフルエンサーを活用したり、UGCを増やすためのキャンペーンを行うなど、消費者と密にコミュニケーションをとることで、ブランドへのロイヤリティを高めていくことができます。
Shopifyは、Instagramを始めとした各種SNSとの連携も柔軟で、ショッピング広告も簡単に配信できるなど、SNSマーケティングを通じて成果を上げやすい機能が豊富に揃っています。
ShopifyとFacebook、Instagramを連携できるMetaの公式アプリ
中国|日本製品へのニーズを掴み、差別化要素を見出す
中国の消費者に向けて越境ECを展開したい場合、D2Cの自社ECを持つよりも、独自のライブコマース機能があり、税制優遇もされる中国のECモールに出店する方が容易かもしれません。
しかし、2024年のインバウンド客の中で中国人観光客の割合は約26%、消費総額は1.73兆円(約11.2億ドル)と最も多く、日本製品に対するニーズがあるのは明らかです。
ECモールは売上が上がるほど手数料も高額になるうえ、類似商品との価格競争になりやすい傾向にあります。自社のブランドにどのようなニーズがあるのか、類似商品との差別化ポイントなどを明確にし、それら強調できる自社ECを構築することができれば、競争率の高いECモールよりも売りやすい可能性が高まります。
BiNDecがEC構築を支援しているアパレルブランドの「火消魂」では、外国人客の割合が9割を占めており、アメリカと中国にも多くのファンがいます。店頭のインバウンド客から得る情報だけでなく、直接現地に赴いてマーケティングを行うことが売上につながっています。詳しくは下記の記事をご覧ください。
グローバル展開で売上を伸ばすならShopify
Shopifyは、世界175の国と地域でシェアを伸ばし続けており、アメリカや中国はもちろん、その他の国に向けた越境ECにも対応できる機能が豊富です。
Shopify Plusプランなら最大10サイトまで構築でき、地域ごとに独立したECサイトで最適な戦略を実施することも可能なうえ、それらを一元管理できるため、効率的な越境ECの展開が実現できます。
株式会社ウェブライフでは、Shopifyを利用したECサイト構築から運用までサポートする「BiNDec」を提供しています。
ハイレベルな技術力・知識量を認められたShopify Premierパートナーとして、国内企業の越境ECの事例も豊富です。越境ECの構築や運用に関してお悩みの方は、気軽にお問合せください。