火消魂(HiKESHi SPiRiT)は、インバウンド客で賑わう浅草の店舗と、Shopifyによる越境ECで世界各国にファンを持つアパレルブランドです。
ブランドのオーナー兼ディレクターの佐藤 寿洋氏にインタビューし、ブランドの立ち上げから現在に至るまでの海外市場への戦略と成功の理由を探ります。
火消魂では、WEBLIFEの提供するEC構築・運用を支援するサービスBiNDecを導入しています。越境ECについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
ターゲットは海外市場。「日本の粋」「和の心」を表現するアパレルブランド
火消魂は、「日本の粋」「和の心」をコンセプトとしたアパレルブランドです。江戸時代の消防士=火消しのスタイルを様々な技法とデザインによって、ファッションアイテムに落とし込んだ独自の世界観でブランドを展開しています。
原宿のアメカジブランドのコンセプトをリニューアル
火消魂の前身となったのは、佐藤氏の父が1993年から原宿で手掛けていたアパレル小売事業の「FIRE FIGHTERS (その後RESCUE SQUAD)」。ニューヨークの消防士のユニフォームの輸入からオリジナルアイテムまで展開するアメカジスタイルのショップでした。
2016年に佐藤氏が事業を引き継ぐにあたり、日本版のFIRE FIGHTERS=火消しとして、海外市場に日本の文化を発信する「火消魂」を誕生させました。
インバウンドをターゲットに、拠点を原宿から浅草へ
ブランドの創設当初は御徒町に店舗を構えていましたが、インバウンド客が集まりやすく、火消しが活躍した町としてブランドイメージともマッチする浅草での出店を模索し続け、2019年3月に現在の本店である浅草店をオープンしました。
ブランドの商品構成は、Tシャツ、アウター(半纏)、シャツ、ハットなど。江戸時代の火消しが実際に着用していた半纏の柄や紋の入れ方に倣った和のデザインに仕上げています。
店舗の2階フロアではブランドと親和性の高い作品やアーティストとのコラボイベントが行われることもあります。
海外で人気の日本のコンテンツとのコラボ展開
佐藤氏はブランドの強みとして、和のデザインであることの他にも、様々な日本のコンテンツとのコラボアイテムを挙げられました。
火消魂はこれまでに世界的に知名度の高い日本のアニメや特撮映画とコラボし、その作品のモチーフを取り入れた和のデザインの商品を数多く展開することで、コンテンツを通じたブランドファンの輪を広げています。
火消魂の商品を求めに来店したインバウンド客の方々からも「この作品とコラボした商品を出してほしい」といった期待の声がよく寄せられるとのことでした。火消魂は日本の文化を世界に伝えることがブランドの軸であるため、コラボ先も日本のコンテンツのみとしているそうです。
日本のインバウンド需要の増加と越境ECの成長
日本のインバウンド需要は、現在飛躍的に高まっています。2024年7月の訪⽇外客数は3,292,500人に上り、前年同月⽐は 41.9%増、コロナ禍前の2019年同月⽐では10.1%増となりました。
さらに、日本のD2Cの越境EC(米国・中国)の総市場規模は3,954億円となっています。(*1)
*1=経済産業省 令和4年度 電子商取引に関する市場調査
インバウンド需要に備えた越境ECのポイントについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
越境ECで人気の商品とその理由
日本の越境ECで人気の商品として、BEENOS 株式会社の調査では、ホビー・グッズ、音楽、アパレル(*2)、イーベイ・ジャパンの調査では、アパレル、時計・アクセサリー、アニメグッズ(*3)が上位を占めているとの結果が出ています。
火消魂の展開する和のデザインのアパレル、日本のコンテンツとのコラボは海外顧客が求める越境ECのトレンドにマッチしています。
*2= BEENOS 越境EC ヒットランキング、*3=イーベイ・ジャパン 2023年間 越境ECレポート
その他の地域ごとの商習慣や越境ECの基本については下記の資料をご覧ください。
Shopifyで実現するインバウンドと越境ECのローカライズ戦略
佐藤氏によると、火消魂の海外顧客の居住地は多い順にアメリカ、台湾、香港、ヨーロッパ各国とのことです。海外顧客に向けたEC運用やマーケティングの戦略についてお話しいただきました。
日本のECカートからグローバルにリーチできるShopifyへリプレース
火消魂の前身のRESCUE SQUADが、アパレルブランドとしてはかなり早い段階からD2CのECサイトを運用していたため、火消魂でも初期からECで商品を販売していました。
立ち上げ当初はmakeshopでECを運用しており、WEBLIFEではLPの制作を請け負っていましたが、Shopifyが日本に上陸してから、越境ECに強みを持つShopifyにリプレースしました。決済や翻訳など越境ECに対応するための機能が多数のアプリで揃っており、短期間で実装できることが決め手になったそうです。
ShopifyへのECリプレースについて、詳しくは下記の資料をご覧ください。
Shopifyアプリの導入をサポートし、スピーディにOMOを実現
実店舗の購入客層は9割がインバウンド客とのことですが、新規客とリピート客の割合はほぼ均衡しているそうです。そのため、越境ECと連動したリピーター育成のための施策も実施しています。
火消魂のECの構築・運用をサポートしているBiNDecでは、ShopifyアプリのeasyPointsを導入し、店頭のPOSシステムであるスマレジと連携することで実店舗とECのどちらで商品を購入しても共通のポイントシステムが利用できるようにしました。
購入履歴も共通化されるため、1to1マーケティングに活用することも可能です。
Shopifyのストア分析を活用し、トライ&エラーで広告の成果率を上げる
D2CのECサイトの集客方法として、より多くの人にブランドを知ってもらえるWeb広告は必須です。
火消魂でもSNSを中心に広告配信をしており、地域によって、Instagram、Facebook、メッセンジャーなど成果の出やすいメディアに差はありますが、配信先は海外のみに絞っているそうです。広告配信のスタート時期は代理店の支援を受けていましたが、現在はノウハウも蓄積されてきたため、運用を完全内製化しています。
佐藤氏も山岡も、広告で成果を出すためにはトライ&エラーが大前提だと言います。具体的には配信する国・地域ごとに使われているSNSを調査して予算を組み、新規・顧客それぞれどのクリエイティブが購買に繋がっているかなどのA/Bテストを繰り返していきます。
広告施策のPDCAには、Shopifyのストア分析、GA4、広告マネージャ、SNSの分析ツールなどの様々なデータを得て総合的に判断することがポイントとなっています。
Shopifyのストア分析機能について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
越境ECを成功させるマーケティングの3つの秘訣
火消魂の拠点は国内のみで、海外への配送も全て国際便を利用しています。しかし、越境ECといえど海外に商品を売りたいなら、現地に直接行ってみなければ成功しない、と佐藤氏からお話しされました。
SNSで現地向けに特化したインフルエンサーマーケティング
新規客の最初の接点として最も多いのがSNSだそうです。火消魂では、影響力のある海外のブランドファンを公式のアンバサダーとして、各国向けに商品のPRを依頼する、インフルエンサーマーケティングを実施しています。
インフルエンサーマーケティングは日本でも徐々に定着しつつありますが、海外ではすでに定番の手法となっており、2027年には1300億円以上の市場規模になると予測されています。(*4)
佐藤氏は、インフルエンサーマーケティングは継続性が課題であるとしています。インフルエンサーをきっかけに知名度を上げて一時的な売上を作ることはできますが、その後もリピート購入で安定した売上を築くには、いかに他にはない価値を提供できているか、ブランドの本質的な魅力が求められるといいます。
*4=サイバー・バズ、デジタルインファクトの調査
店頭のインバウンド客の反応から販売戦略のヒントを得る
同じ火消魂のブランドファンでも、顧客の居住地によって人気のサイズ、スペック、デザインに差があるそうです。年間を通して温暖な地域の顧客はTシャツがメインになり、寒冷地や南半球の国の顧客は夏でもアウターとなる半纏を購入します。
佐藤氏は、店頭での接客を通じて、この国の人に提案するならこういうコーディネイト、というものが感覚的に得られ、商品企画にも繋がっているとのことでした。
現地でのポップアップイベントでターゲット像をよりリアルに掴む
火消魂では、2024年8月に台湾のアパレルブランドDYCTEAM®とコラボしたポップアップイベントを、台北・台中の2ヶ所で開催しました。期間中は佐藤氏も店頭に立ち、火消魂のファンの方々で行列ができるほどの盛況ぶりでした。
台湾現地での販売は今回が初めてではありません。佐藤氏は購入客の居住地に台湾が多いことに着目し、数年前から現地の小規模なジャパンマーケットなどに出店して反応を見る、ということを毎年繰り返して、今回のポップアップイベントの規模にまで拡大しました。
同じくShopifyで越境ECを展開している一保堂茶舗のポップアップイベントの事例も併せてご覧ください。
店舗のインバウンド客にオンラインなら何を提供できるか
佐藤氏は、実際に現地で販売することによって、火消魂の商品がどのようにして手に取られ、どんな人に着られているかのイメージをすり合わせることを重視しており、その先に越境ECでのオンライン販売がある、とお話しされました。
商品以外にパッケージングなどの購入体験の面においても、現地に赴くことでどんなサービスが喜ばれるのかが細かくわかるため、山岡も現地での実体験やマーケティングは非常に重要だと言います。
Shopifyでは各国で独立したECサイトを運用している場合でも全てのデータが1つの管理画面に集約されます。在庫データを分割したり、複数の店舗間でのデータ同期する必要もなく、地域や顧客ごとにECサイトのデザイン、商品リストと価格、通貨、言語、コンテンツ、ドメインなどをカスタマイズできるため、それぞれの拠点で最適なプロモーションが可能です。
インバウンドと越境ECを中心にブランドの更なる成長を目指す
火消魂は、今後も「日本の粋」「和の心」を世界に発信するため、インバウンド・越境ECを中心としたマーケティングでブランドを成長させていく方針とのことでした。佐藤氏に今後の展望を伺いました。
インバウンドの中心地での国内戦略と次なる市場を開拓する海外戦略
浅草と並んで世界中からインバウンド客が集まる場所といえば京都です。以前は火消魂も京都に店を構えていましたが、コロナ禍の影響もあり現在は閉店となっています。
コロナ禍が終わってからインバウンド需要も復活したため、再び浅草と京都の2拠点で火消魂を成長させていきたい、と佐藤氏の出身地でもある京都での出店に意欲的でした。
海外においては、顧客の居住地としても多いヨーロッパ地域へのマーケティングを強化していきたいとのことでした。
ヨーロッパ地域でも国ごとにルールやトレンドが異なるため、時間やコストはかかりますが、台湾での成功例のように、まずは現地に赴いて市場調査をし、イベントやポップアップストアで認知度を高めて、その後ECサイトへ繋げていく狙いです。
生成AIや接客ツールの進化で越境ECの可能性を広げるShopify
火消魂のように、一つ一つの商品に素材・技法・デザインへのこだわりが強いブランドほど、店頭での接客とWeb上での商品説明では情報量の格差が大きくなります。
そのため、ライブコマースやビデオ接客ツールなど、実店舗と垣根のないOMOの購買体験を提供できるECサイトが求められてきています。
Shopifyでは生成AIによる業務効率化の機能開発も着々と進められており、ECサイト上での顧客との接点に人のリソースを集中させていくことができます。頻繁に実店舗に訪れることが難しい海外の顧客にも、インバウンドでの購買体験に近いサービスを提供できるため、越境ECに欠かせない手法になっていくでしょう。
OMOについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
Shopify PlusパートナーによるEC構築サービスBiNDec
WEBLIFEでは、Shopifyを利用したECサイト構築から運用までサポートする「BiNDec」を提供しています。
火消魂をはじめとした、越境ECの豊富な導入実績とハイレベルな技術力・知識量を認められたShopify Plusパートナーとして、中小規模から大規模のビジネスに向けた最適な運用戦略の提案も可能です。
Shopifyでの越境ECの構築・運用をお考えの方は、気軽にお問合せください。
BiNDecのオンライン相談に申込む