膨大な商品をどう売るか。タオル美術館に学ぶ2,000SKU×刺繍カスタムを実現するShopify活用術

膨大な商品をどう売るか。タオル美術館に学ぶ2,000SKU×刺繍カスタムを実現するShopify活用術

この記事でわかること

  • 独自の刺繍カスタムサービスをECでも機能化し、店舗と変わらない特別なブランド体験を提供している
  • Shopifyへ移行したことでサーバー保守や運用の工数を削減し、集客やUI改善などにリソースを集中できる
  • Shopifyの拡張性を活かしたEC設計によって、SNSでの新規獲得やAIによる効率化が実現する

D2Cビジネスの市場トレンドにおいて、単なる商品の売買にとどまらないブランド体験の重要性が注目されています。
機能やスペックだけでは差別化が難しい昨今において、プロダクトの背景にある物語や独自の価値観に深く触れる体験こそが、ブランドロイヤルティを高める原動力となります。

愛媛県今治市に拠点を置くタオルブランドの「タオル美術館」は、実店舗や観光施設などのリアルな場と、Shopifyで構築したECサイトやSNSによるオンラインの場で体験しながらブランドや商品を楽しめる価値を提供し、着実な成長を続けています。
EC構築・運用支援をしているWEBLIFEの代表取締役 山岡義正が、タオル美術館の新作商品が数多く並ぶ展示会に訪れ、さらにオンラインビジネス全般を担当されている池田 正樹氏にもお話を伺いました。
左から、展示会を案内いただいた営業本部 企画部の八代 真穂氏とWEBLIFE代表の山岡

良いものに触れる、ブランド体験で成長するタオル美術館

タオル美術館は、「自然・アート・タオル」の融合をコンセプトに掲げるタオルブランドです。全国の直営店・取扱店、自社ECやモールでの展開のほか、地元の今治では、タオルの魅力やものづくりの背景を見て・触れて楽しめる、レストランやミュージアムを併設した観光施設も運営しています。
タオル美術館の公式オンラインショップ

2,000SKU以上でも回る、ブランド設計の土台

タオル美術館のブランドの魅力を支えているのは、多様化する顧客ニーズへ対応するための圧倒的なバリエーションと確かな商品力です。
現在、ECサイトでは2,000SKU以上という膨大な数のアイテムを取り扱っており、人気のキャラクターIPとのコラボレーションのほか、素材のクオリティや最新の技術を用いたハイエンドなシリーズ、ライフスタイルアイテムとしてブランドを提案するルームウェアなど、幅広いニーズに対して商品開発と提案を続けることで、強固な顧客満足度を築き上げています。
高級志向のギフトに最適な新作の凪白シリーズや、タンブラー乾燥機のトレンドに対応して開発されたTOWEL LAUNDRYシリーズ
さらに、ブランドの象徴とも言えるのが、好きな文字や、あらかじめ用意されたデザインから選んで刺繍できるカスタマイズサービスです。この特別な体験が、他のブランドにはない差別化要素であるとともに、商品に対して愛着を深める理由となっています。

実店舗の全国展開のほか、”楽しむ体験”を提供するアプローチ

それらの店舗網に加え、愛媛県今治市には、タオルの魅力やものづくりの背景を見て・触れて楽しめる、国内でも珍しい大規模な観光施設としてのミュージアムを運営しています。

あえて利便性の高い都市部ではなく、自然豊かな山間部に拠点を置いているのは、日常の喧騒を離れてゆっくりと滞在しながらブランドの魅力に触れてほしいという願いがあるからです。色彩豊かなアート作品としてタオルを展示し、庭園やレストランと融合した空間を提案することで、商品の売り買いだけではない、ブランドをより楽しむための顧客体験を創出しています。

EC規模の拡大に伴い組織体制や施策も強化

オンラインビジネスの成長を支える基盤として、タオル美術館はECプラットフォームにShopifyを採用し、ビジネスの拡大スピードに合わせて組織体制や運用フローの強化を続けてきました。

Shopifyにリプレースした当初は、池田氏を含めて5名ほどの運営チームだったそうですが、オンラインでの売上成長に伴い、現在は10名以上の運用担当者に加え、出荷業務を専任する30名以上のスタッフの体制で、ECビジネスの強化に取り組んでいるといいます。

刺繍カスタムが差別化や体験価値を生み、リピートを加速

タオル美術館の強みである刺繍カスタマイズサービスは、ECサイトでもスムーズに注文できるよう機能化されています。店舗で提供しているものと同じ自由度の高いパーソナライズ体験をECの商品ページ上で実現することで、自分だけのタオルをつくる楽しさや特別感といった付加価値を、デジタル上でも確かなものにしています。

約3,500種類以上の図案に対応。UXを追求した刺繍カスタマイズ機能

タオル美術館の刺繍サービスをオンラインで展開する上で、最大の挑戦となったのが刺繍デザインの管理と出荷管理、オーダーの際のスムーズな導線だったと山岡は語ります。一般的なShopifyアプリでは複雑な選択肢の出し分けをカバーするのが難しく、無理に導入すれば運用コストの増大やブランドの世界観を損ねる懸念がありました。

そこで、既存アプリに頼るのではなく、ソースコードを直接編集する手法を提案し、継続的なランニングコストを抑えながらブランド固有の柔軟な表現を可能にする独自機能の構築に成功しています。
画面設計においては、顧客が迷うことなくスムーズに好みの図案や装飾を選べるよう、何度もUIの調整を重ねました。この機能を実現するための設計力・技術力の高さが、ShopifyでEC構築をする上でWEBLIFEに依頼した決め手になった、と池田氏は言います。
刺繍する文字・モチーフ・位置を選んでプレビューできる。モチーフ刺繍の数は当初の700種類から増え続け、秋頃には4,000種以上になる見込み

WEBLIFE eye
フォーマット化された名入れオプションなら、BiNDecアプリの商品オプションでスピーディに実装可能です。アプリを活用するか、ソースコードで構築するかはサービスの特性に合わせて選ぶと良いでしょう。

リアルとECを分断しないOMO設計が、ブランド体験を最大化

実店舗での売り場経験も長い池田氏は、ブランド体験を考える上で実店舗とECの満足度は等しくあるべきという強い信念を掲げています。ECサイトを単なる便利な販売チャネルとして捉えるのではなく、実店舗で受けるおもてなしと同じ質の感動を、デジタル上でも提供することを目指しています。

好みの刺繍が入った特別なタオルを仕立てるプロセスは、お客様にとって自分だけの価値を手に入れる体験そのものです。
このブランド体験が信頼に繋がり、リピート購入のきっかけとなっています。オンラインとオフラインを分かつことなく、どの接点でもタオル美術館らしい満足度を届けるOMOの意識が、根強いファン層を支えています。

1.5倍の繁忙期でも安定。受注・刺繍・出荷を繋ぐシステム連携

タオル美術館にとって、卒業や異動などのイベントで贈り物が増える2月から3月にかけてのギフトシーズンは、通常の1.5倍以上の注文が集中する年間最大の繁忙期です。
単に既製品を発送するだけでなく、一点一点に異なる刺繍を施すという手間のかかる工程を挟むため、納期管理の徹底と製造ラインの最適化が鍵となります。

この複雑な運用フローを支えているのが、ShopifyのAPIをフル活用して構築された受注・刺繍・出荷をシームレスに繋ぐシステム連携です。
注文が入ると同時に刺繍の工程管理システムへデータが同期され、現場のスタッフが即座に作業に取り掛かれる体制を整えています。池田氏自らも現場に入って状況を把握し、オペレーションの細部を調整することもあるそうで、繁忙期においても正確かつ迅速に商品を届ける高い物流クオリティを維持しています。

WEBLIFE eye
外部システムとの親和性の高いShopifyは、アプリで連携できるWMSも豊富で、iPaaSによるERP連携も可能です。どの連携方法が最適かはShopifyパートナーに相談してみましょう。

Shopifyの日本上陸当初に導入した決め手は「成長しやすさ」

タオル美術館がECプラットフォームにShopifyを選んだ最大の理由は、ビジネスの拡大に柔軟に対応できる将来を見据えた拡張性の高さにあります。日本上陸の初期段階で導入を決定した背景には、過去のシステム運用で直面した課題を解決し、さらなる成長を加速させたいという狙いがありました。

フルスクラッチ、オープンソースを経てShopifyへリプレース

タオル美術館のECビジネスは、2010年に自社サーバーを用いたフルスクラッチECがスタートでした。当時は自社ECで商品を販売する企業は珍しく、同じ地元企業がECビジネスを始めたことが話題となったことがきっかけだったそうです。
その後、ECトレンドの変化に合わせる形で、2013年にはオープンソースのECシステムへ移行しましたが、自社でシステムを維持・管理し続ける運用には、セキュリティリスクの回避やシステムの脆弱性への対応という大きな課題がありました。

また、アクセス集中時にサーバーが負荷に耐えきれず、決済システムが停止して注文が受けられなくなるという機会損失も起こっていたため、2017年に日本でのサービス提供がスタートし、強固なクラウド基盤を持つShopifyへのリプレースを決断したそうです。
Shopifyは世界規模での負荷分散構造を備えたサーバー環境を誇っています。これにより、サーバーダウンのリスクから解放され、繁忙期の大量アクセスにも動じない安定したインフラ環境と成長を止めないビジネス基盤を確立することができました。
Shopifyのサーバー性能について、詳しくは下記の記事をご覧ください。

運用負荷を軽減し、攻めの施策に集中できる環境へ

池田氏は、Shopifyへリプレースしたメリットとして、サーバーの保守管理といった保守運用の負担のほかにも、ECの運用リソースを大きく割いていた専門知識が必要なソースコードの記述が軽減したことを挙げました。これにより、トレンドや顧客ニーズに合わせた新しい施策をタイムリーに実行できる環境が整っています。
マーケティング施策の立案や集客といったコアな業務でも成果が上がったことが、タオル美術館のECビジネスにおける着実な成長につながっています。

新規客を掴むキャラクターIP展開とSNSマーケティング戦略

既存顧客による高いリピート率に支えられている一方で、タオル美術館は旬なキャラクターIP商品の展開やSNSマーケティングで新規顧客との接点作りにも積極的に取り組んでおり、ブランド認知を強化しています。

膨大なIPラインナップを支える企画力とトレンド感度

タオル美術館では膨大なキャラクターやクリエイターのIP商品展開をしています。IP商品には基本的にSS、AWのようなシーズンがなく、そのタイミングで流行しているものが求められるため、企画から商品化まではスピード感が求められます。
展開するIPについては、社長自らがキャラクターグッズの専門店街に頻繁に赴き、いまどのコンテンツやキャラクターがトレンドなのか市場調査を行うほど注力されており、海外で人気のキャラクターはインバウンド需要も高いそうです。

また、通常のタオル製造時に余った素材を再利用するなど、環境に配慮した素材や製法でSDGsと親和性の高いIPで展開するなど、共通のテーマを持たせたストーリー性のあるIP商品も企画されています。
長年コラボを続けている「ムーミン」は、タオル製造時の綿の廃材を中綿に使用した「たおぐるみ」も展開

ショート動画とライブコマースでタオルの魅力を打ち出す

新たな顧客層を開拓するための施策として、タオル美術館が特に注力しているのが動画訴求の強いSNSの活用です。アカウント運営においては、あえてタオル美術館というブランドをメインに掲げない戦略をとっており、商品の魅力や手触りの良さが直感的に伝わる動画配信を優先しています。
ふわふわタオル便 by タオル美術館のTikTokページ
「ふわふわタオル便」というアカウント名で展開されるInstagramやTikTokでは、こだわりタオルのある生活をイメージできるVlog風や、人気IPキャラクターとのコラボ商品をユニークに告知するショート動画をはじめ、TikTok LIVEでのライブコマースも積極的に発信しています。
外部の専門スタッフとも連携しながら、SNS上のトレンドを素早くキャッチし、直感的な購買意欲を高めるエンターテインメント性の高いコンテンツを発信し続けることで、幅広い世代への認知拡大を目指しているそうです。

TikTok ShopはShopifyのECサイトと在庫や注文データを連携することでスムーズな運用が可能です。詳しくは下記の記事をご覧ください。

各種SNSからの流入も細かく分析できるShopifyのストア分析

SNSマーケティングを単なる認知拡大で終わらせないためには、各種チャネルからの流入と売上の相関を可視化することが不可欠だと山岡は語ります。Shopifyのストア分析機能は主要なSNSプラットフォームのどの投稿や広告が最終的な購買に寄与したかを直感的に把握できるため、データに基づいたスピーディな施策の最適化が可能です。

さらに山岡は、今後AIが顧客の好みを学習して商品探しや注文をサポートするエージェンティックコマースの進展によって、SNSからECへの導線はよりシームレスに進化していくと予測しています。
AIエージェントが適切なタイミングで商品をおすすめし、決済まで代行するスタイルが浸透すれば、初めて商品やブランドに出会った時の期待感を冷ますことなくよりパーソナライズされた購買体験の提供が可能になるでしょう。

AI活用と人の温もりが共存する次世代のEC体験

いま注目されているブランド体験において、最新のテクノロジーであるAIを積極的に取り入れる一方で、人が介在することでの信頼性・安心感も欠かせません。

AIによるEC運用の業務効率化への期待感

池田氏は、今後のEC運用におけるAI活用も関心が高く、タオル美術館では数多くのキャラクターIPを扱うため、刺繍オーダーの内容が規約に沿っているかのチェックをAIが対応するなどの構想もお話しいただきました。

山岡からは、Shopifyが提供するAIアシスタント機能である「Sidekick」を活用すれば、過去の売上データに基づいたLP制作やバナー画像の作成といったクリエイティブ業務も飛躍的にスピードアップできることも挙げました。AIが定型的な業務や初期のアイディア出しをサポートすることで、より戦略的で付加価値の高い施策の立案にチームのリソースを集中させることが可能になるでしょう。
ShopifyのAI機能Sidekickについて、詳しくは下記の記事も併せてご覧ください。

AIによって人の価値を最大化する場所へ

どんなにAIが進歩して業務の効率化が進んだとしても、人の手がかかっている温かみは、ブランドにとって最も重要な価値であり続けると山岡は言います。

タオル美術館のように、刺繍の細やかなカスタマイズや、贈り物に込める想いに寄り添う姿勢など、実店舗の接客で培われたホスピタリティの精神をECサイト上でも損なうことなく提供し続けることが、ブランドへの深い信頼を支えています。
テクノロジーが進化して自動化が進めば進むほど、人が介在することによる情緒的な価値やブランド独自のこだわりがより際立つようになります。AIによる高度な効率化と人の手による温かな体験提供のバランスこそが、次世代の体験型ECとしての理想的な姿となるでしょう。

ブランド体験をShopifyで形にし、ビジネスの成長へ

体験型ECを目指すブランドにとって、Shopifyという拡張性の高いプラットフォームを最大限に活用し、実店舗と同等の顧客満足度を提供できるタオル美術館のECは成功へのロールモデルといえます。

株式会社ウェブライフでは、Shopifyを利用したECサイト構築から運用までサポートする「BiNDec」を提供しています。
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