広告費搾取やブランド毀損につながる「アドフラウド」とは?EC事業者が知るべき対策と注意点

広告費搾取やブランド毀損につながる「アドフラウド」とは?EC事業者が知るべき対策と注意点

ECサイトの販促に欠かせないWeb広告ですが、手軽に効果を得られる反面、「アドフラウド(Ad fraud:広告不正・広告詐欺)」によって被害を受ける可能性もつきまといます。そこで、この記事では、気をつけるべき「アドフラウド」の代表的なパターンとそれによる被害やデメリット、そしてアドフラウドからサイトを守るための対策について紹介します。

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効果のない広告費搾取につながる「アドフラウド」とは

アドフラウドとは、無効なインプレッションやクリックによって、成約件数や効果を不正に水増しする行為のことで、それによって広告主は余分なコストを支払う必要が生じます。その不正に搾取された広告費は2022年には1300億円にも上っており、日本の広告不正の発生率は世界平均の2倍以上(※)ともいわれています。しかも、昨年よりも10%も増加しています。
※=日本経済新聞(2023年3月5日)より

これは当然、「効果がないにも関わらず搾取されたお金」であり、広告主にとってはもちろん、広告出稿先である正当なメディアにとっても大きな損失と言えるでしょう。しかもその多くが反社会勢力の資金になっているとも言われており、決して看過できる問題ではありません。意図せずとも悪意を持った事業者に資金が渡ってしまうということを放置したという意味で、企業のコンプライアンスを損ねることにもつながります。

悪意ある「アドフラウド」がブランド毀損にも直結

さらにアドフラウドでは、コンテンツをコピーした海賊版サイトや犯罪行為にを増長する可能性があるサイトなど、悪質なサイトに広告が出てしまう可能性があることも大きな問題です。たとえ犯罪性がなくても、アダルトサイトや匿名掲示板サイト、ヘイトブログなどに掲載されるのは、広告主にとって望ましいとはいえないでしょう。

たとえば、何か主義主張の強いサイトなどにブランドの広告が出てしまうと、閲覧者は広告の出稿主がそのサイトの考え方などに賛同しているかのような印象を受けます。それが人種差別やある特別な主張を掲載したサイトとなれば、ユーザーは違和感を感じ、SNSなどで拡散されることもあります。
そうしたSNSを通じたユーザーの指摘は、印象が可視化され、時に大炎上する恐れもあります。当然ながら大きなブランド毀損につながります。

「アドフラウド」のデータが交じると分析に影響

アドフラウドを放置したままにしておくと、ちゃんとしたメディアでしっかりと広告を見て反応してくれたユーザーと、アドフラウドを見て反応した(反応させられた)偽のユーザーのデータが混同するため、正確なデータ分析が難しくなります。クリエイティブの品質などに影響するだけでなく、アドフラウドによって悪質サイトの方がより効果が高く見えるため、より多くの掲載費用を投入することになりかねません。

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アドフラウドの種類:気をつけたい「アドフラウド」の4つのパターン

それでは、アドフラウドには、どのような手口があるのでしょうか。実のところ、どんどん手法は増えており、イタチごっこの気配すらあります。日本インタラクティブ広告協会 技術委員会が整理したアドフラウドの類型では9つのパターンがあります。また、14パターンなどに分類する例もあります。今回については、日本でECサイトの被害が最も多く、ぜひとも対処いただきたい4つのパターンについて紹介します。

①隠し広告(Hidden Ads)

ブログパーツで表示されない領域に広告を仕込んだり、CSSなどのコードに入れ込んでユーザーに見えない形で広告を配信させたり、隠されている状態の広告のことです。小さなインラインフレーム(iframe)の中に押し込んで表示させていたり、透明な画像で貼り付けてあったり、ピクセル状態で表示していたり、別の広告に重ねて表示したりと、手法は様々。中には広告をびっしり貼り付けたダミーページをポップアップとして開かせ、ページの大きさを「ゼロ」にすることでユーザーには見えないようにするといった手口もありました。

いずれもユーザーの目には触れないものの、広告のシステム上は表示されているのでインプレッション課金の場合は広告費が発生し、”間違って”押してもらえればクリック課金分も徴収できます。当然、興味があって押した場合と異なり、コンバージョンにつながることは100%ないでしょう。
また、広告プラットフォームは広告を配信するサイトに違法性がないかを常に監視しています。ただし広告主からの通報に頼っていることもあり、「見えないこと」でその通報を免れようとしているわけです。
ユーザーが気づかないうちに「クリック」していることに

②過度な自動リロード(Auto Refresh)

ページをリロード(再読み込み)したり、遷移して元のページに戻ったりすると、広告は他のものに差し替わるようになっています。これを数秒単位で自動的に何度も行わせることで、大量の広告を表示し、その分のインプレッション課金を稼ごうというものです。
ページ自体を更新する方法や、ユーザーのスクロールに合わせて広告表示を更新する方法、動画の下に広告を表示し、ユーザーが閲覧中に広告部分だけを更新する方法と様々な方法があります。どの場合も、当然ながらユーザーはじっくりと広告を見る時間すらないため、広告の意味は失われます。

「①隠し広告」とセットで行われていることもあり、見えていないところで高速でリロードされ、どんどん不正な課金がなされていきます。高速リロードを繰り返すために通信やサーバーへの負担も増大します。YouTubeの動画がはめ込まれたサイトに自動リロードをする広告が差し込まれ、見終わるまでに1000インプレッションも発生していた例も報告されています。
動画を見ている画面内で広告がどんどんリロードされる

③クリック洪水

別名「クリックフローティング」や「クリックスパム」とも呼ばれ、実際にはユーザーがクリックしていないにも関わらず、大量のクリックがあったように偽装してクリック課金を得ようというものです。botと呼ばれるプログラムで強制的にクリックさせられる他、不正業者が運営するモバイルWebページやアプリに遷移した際に、バックグラウンドでクリックされるというものもあります。
この場合も、ユーザーは広告を一切見ることがなく、クリックしたことにも気づいていません。中には広告主のサイトを一度訪問してから、広告単価の高いリマーケティング広告に接触するという悪質なプログラムが仕込まれている場合もあります。

そして、いまだ行われているのが、人の手でクリック数を稼ぐというものです。事業者に雇われたユーザーが「サクラ」として広告を表示・クリックを行ない水増しするというものです。ネットワークでつながってそれぞれに行うケースもありますが、近年ずらりと壁面に並んだタブレットを人がクリックしている動画が流出して話題になりました。人件費の安価な国や地域からのクリックが急増することで発見されることがあります。
意味のない広告クリックが大量になされ、洪水状態に

④個人端末の乗っ取り

「インストールジャック」などとも呼ばれ、第三者である個人の端末を不正プログラムによって乗っ取り、不正サイトの広告を強制的に表示・クリックさせるという手法です。ユーザーがアプリをインストールするときに一緒にマルウェアを送り込み、閲覧していなくてもインプレッションやクリックがあったという偽の情報を送信します。

デバイスの画面上ではわからない場合も多く、バックグラウンドで勝手に動いて広告の表示回数を水増しさせるということもあります。このあたりはクリック洪水と似ていますが、個人の端末を操作しているために不正が見抜きにくく、さらに端末のIDをリセットし続けて繰り返すタイプもあり、非常に厄介なものとして見られています。
スマホを乗っ取り、強制的に広告を閲覧させられる
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アドフラウドから自社ECと広告を守る5つの対策

次々と様々なアドフラウド手口が登場しており、すべてを防ぎ切ることは難しいものの、しっかりと対策することで、広告費用の効率化やブランド毀損の回避、広告の効果向上などが期待できます。

まず広告代理店などを利用している場合は、アドフラウド対策を行っているDSP事業者に限定することが必須です。DSP事業者を選定する際は、①どのようなアドベリフィケーション(アドフラウド対策)事業者と連携しているか、または②自社で行っている場合、どのような自社でツールを導入し対策をしているかを確認することが大切です。
アドフラウド対策に取り組む業界団体「デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)」などに加入しているパートナーであれば一定信頼性は担保されるでしょう。もちろん任せっぱなしにするのではなく、定期的にレポートをもらいながらチェックする必要があります。

しかし、広告出稿の規模がさほど大きくない場合、自前で対策をする必要があります。ここでは自社またはパートナーなどの支援を受けて行える「アドフラウド対策」について紹介します。
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①定期的にレポートを取ってモニタリングする

広告配信については必ず成果を確認すると同時に、その内容についても確認するようにしましょう。アクセス解析ツールには、広告にアクセス解析用のタグを設定してモニタリングできるようになっているので、そこからユーザーの挙動を確認できます。たとえば、「同じユーザーから何度もアクセスがある」「数秒単位でリロードが繰り返される」「ある外国から大量にアクセスがある」といった挙動は、アドフラウドである可能性が高いです。
アクセス解析で発見されることが多い

②広告配信を行わない「ブラックリスト」を作成する

①でアドフラウドと思われるものは「ブラックリスト」に追加していきましょう。たとえば、Google広告の場合、IP単位でブラックリストを作成できるので、ピンポイントで外部の不正なサイトやメディアについて配信を除外することができます。
アドフラウドの恐れがあると思われたもの以外でも、閲覧やクリックが多いけれどコンバージョンに至らないサイトなども登録しておくとよいでしょう。

ただし生成AIでコンテンツを乱造している広告収入目的の”ゴミサイト”が1日1000本規模で更新されているという報告もあり、また不正事業者は刈り取りが終わると再びIPアドレスを変えて参入してくるので、定期的な更新が必要です。

③広告を配信したい「ホワイトリスト」を作成する

掲載したくないメディアをリスト化する「ブラックリスト」に対し、「ここは安心」と信頼できるホワイトリスト(許可リスト)を作成するという考え方もあります。しかし、リストを作成するのはなかなか大変であり、配信先を絞りすぎると入札単価が高騰したり、そもそも配信数が稼げない可能性もあります。

④アドフラウド対策ツールを使う

①〜③について、AIなどを活用して自動的に行えるようになっているのが「アドフラウド対策ツール」です。初期設定をしておくだけで、AIが不正なクリックを自動的に検知・除外し、不適切なサイトに広告を掲載しないようにすることも可能です。
それによって反社会的なサイトやアダルトサイトなどはもちろん、前述したように広告を無理やりユーザーに押させる仕組みが動いているのサイトなどを察知し、除外することができます。

既に広告配信運用をご自身でされている方ならば、簡単な運用で広告を健全化できるので、月々数万円という手頃な金額で導入してみるとよいでしょう。なお、「SPIDER AF」や「Momentum」など複数のアドフラウド対策ツールが登場しており、日本語のサポートやダッシュボードも充実しています。

⑤PMP(Private Market Place)を活用する

これもホワイトリストと同じ考え方で、参加するメディアを限定し、広告主が指名買いできるようにすることで、広告枠の信頼性を高めようというものです。どのようなメディアかが把握されており、オーディエンスデータなどと組み合わせれば、ターゲット設定なども可能です。出し面を指名して出す純広告と似ていますが、純広告は事前に決めた条件(期間・インプレッション数)で掲載するのに対して、PMPは配信の様子を見ながら、期間やインプレッション数、予算などを途中で変更できます。

PMPは広告発注プラットフォームであるDSPを用いて買付を行います。欧米ではCriteo、FreakOut、MarketOne、DV360(Google)などが2010年以降に登場し、PMP販売事業者として一般化しつつあります。
しかし、日本ではまだ十分とは言えず、代理店経由で利用することが多いようです。近年では国内PMPサービスも増えて来ており、規模や予算はやや大きめになりますが、電通デジタルやソフトバンク、XmediaOne、VOYAGE GROUP、AJAなどで取り扱っています。

確かに事前審査や広告購入の設定に手間がかかり、その作業を外部に委託するとトータルな広告運営費は割高にはなります。しかし、アドフラウドで反社会勢力に流れて効果を生み出さない費用分が1/3も発生していることを鑑みると、手間はかかってもPMPを利用するほうが中長期的なメリットは大きいと思われます。

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Shopifyのアプリ連携でアドフラウド対策をはじめよう

一気にDSP事業者に依頼したり、PMPの出稿を検討したりできる予算規模があれば良いのですが、広告規模が小さいうちはアドフラウド対策は「①定期的にレポートを取ってモニタリングする」からスタートするのが現実解と思われます。

ECプラットフォームのShopifyなら、ダッシュボードやストア分析でも広告の効果を把握できますし、Google Analyticsと連携させて詳しく見ることで、「おかしな広告の挙動」を発見しやすくなります。
また、以下で紹介するShopifyアプリを活用してスムーズに広告配信をしながら、効果を手軽に見られるようにすることで、異常を検知して調整しやすくなり、アドフラウド対策が叶います。

Google & YouTube

ShopifyからGoogleとYouTubeの最新機能にアクセスし、製品、セール、配送に関する情報をGoogle Merchant Centerに同期させることができます。広告配信がスムーズに行いやすくなり、当然ながら広告の成果もGoogle Analyticsでしっかり確認できます。

Yahoo!広告連携

アドフラウド対策として2019年にガイドラインの厳格化による大掛かりな広告出稿先の整理を行ったため、良質なメディアが多いと言われています。Shopify連携で広告の出しやすさも格段に向上しました。

Criteo Sales Growth Ads

文中でも紹介した「Criteo」での広告配信が可能になります。アドフラウド対策を行いながら、商品別の広告効果なども分析できるので、単品ごとの広告を打つECサイトなどにも向いています。(日本語未対応)

アドフラウド対策も日々の運営が必要になってきます。わからないことや困ったことがあったら、プロの手を借りるのがおすすめです。
Shopify公認「Shopify Plusパートナー」のBiNDecでは、これまでの多数のShopifyによるECサイトの広告について運営支援を行っており、サードパーティのアドフラウド対策ツールの導入支援や運営アドバイスも可能です。良質な広告運営を行いながらできるだけ手間をなくし、効率的にShopifyで売上を伸ばしていきましょう。

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