ECサイトの事業拡大を目指すために、LTVは重要な指標となります。収益を上げられるECサイトを運営するために、LTVを活用してさまざまな施策を検討しましょう。本記事では、LTVの意味や重要性、計算方法のほか、LTVの向上方法などについて詳しく解説します。ECサイトの収益率を高めるために、ぜひご活用ください。
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LTVとは、顧客生涯価値のこと
LTV(Life Time Value)とは、顧客生涯価値を意味する言葉です。一人の顧客が、自社と取引を始めてから終えるまでに、自社にもたらす利益の総額を示します。
LTVがわかれば、顧客を一人獲得した際にどの程度の利益を見込めるかを判断することが可能です。例えば、一人の顧客を獲得するために10万円のコストをかけているにもかかわらずLTVが5万円であった場合は、事業がうまくいっていないため、早急な改善が必要といえます。
EC事業の安定にLTVが重要な理由
現代のビジネスモデルにおいて、LTVは非常に重要な指標のひとつです。LTVが重要な理由を、4つの視点から紐解いていきます。
新規顧客の獲得が難しくなっているため
少子高齢化が進む日本においては、今後、新規顧客の獲得が難しくなっていくと考えられ、既存顧客から得られる利益の指標であるLTVが重要視されるようになっています。
少子高齢化によって、高齢者をターゲットにしているECサイト以外ではターゲット層が減っていく上に、人口も減少するため、日本市場全体が縮小傾向です。ターゲットの絶対数が減少していく以上、新規顧客を右肩上がりに伸ばしていくのは簡単なことではありません。
また、新規顧客から売上を獲得するために必要なコストは、既存顧客から同額の売上を得るコストの5倍かかるといわれており、これを「1:5の法則」と呼びます。今後、売上を安定的に伸ばしていくためには、新規顧客獲得ばかりに力を入れるのではなく、顧客一人ひとりの価値であるLTVを高めていくことが重要です。
ロイヤルカスタマーの重要性が増しているため
新規顧客獲得が難しくなる中で、ロイヤルカスタマーの重要性が高まっており、ロイヤルカスタマーの育成度合いの指標となるLTVも重要になっています。ロイヤルカスタマーとは、自社の商品・ブランドなどに愛着を持ち、多くの売上に貢献してくれる顧客のことです。
顧客中心主義が浸透し、EC事業者には顧客一人ひとりの課題を解決できるようなサービスの提供が求められています。CRM(顧客関係管理)ツールなどで顧客データの収集と分析を行い、顧客の課題を解決しつつ、信頼関係を深めるためのCX(顧客体験)の向上を図ることが、EC業界で重要視されるようになってきているのです。そのような取り組みの結果として表れるのが、ロイヤルカスタマーの人数です。ロイヤルカスタマーを増やしていくことが、EC事業の安定的な成長には不可欠だと考えられるようになっています。
購入金額や利用頻度が高く、継続期間も長いロイヤルカスタマーが増えることはLTVの向上にも寄与するため、LTVは重要な指標のひとつと考えられています。
ロイヤルカスタマーについて詳しくは、下記の記事をご参照ください。
サブスクリプション型のビジネスモデルが浸透してきたため
サブスクリプション型のビジネスモデルの浸透によって、LTVという指標の重要性が高まっています。サブスクリプション事業では顧客一人ひとりの継続期間が重要となりますが、LTVの算出には平均継続期間も考慮に入れるため、サブスクリプション事業の状況を表す指標としてLTVが適していると考えられているのです。
LTVの計算方法にはさまざまな方法があり、中にはサブスクリプションモデルに特化した、解約率をもとにした計算式もあります。サブスクリプションモデルにおける収益状況の目安を知るためにも、LTVは役立ちます。
Shopifyでのサブスクリプションの始め方について詳しくは、下記の記事をご参照ください。
Cookie情報の活用が難しくなってきているため
LTVが重要視されている理由として、Cookie情報の活用が難しくなってきていることも挙げられます。Cookieとは、Webサイトを訪れた人の閲覧履歴に関するデータで、自社サイトを訪問した顧客の行動を知るための重要な情報源です。第三者から提供されるサードパーティーCookie情報を利用したマーケティングも、多くの企業で活用されています。
しかし、日本では、2022年4月からCookie情報の利用に訪問者の同意が必要になりました。さらに、Google™が提供するインターネットブラウザ「Google Chrome™」でも、2024年半ばから段階的にサードパーティーCookieの廃止が進められる予定です。
個人情報保護の観点からCookieの利用が制限される流れが強まっており、Cookie情報をもとにしたマーケティング手法は実施しづらくなっていくと考えられます。
そこで役立つのが、Cookie情報に頼らない自社の顧客データを活用したマーケティング施策です。自社の顧客データにもとづいたマーケティング施策の立案や効果測定には、顧客の評価指標が不可欠であるため、LTVの重要性が高まっています。
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代表的な4つのLTVの計算方法
LTVの計算方法には、複数の種類があります。ビジネスモデルや、LTVを算出する目的によって使い分けましょう。代表的なLTVの計算方法としては、下記の4つが挙げられます。
一般的な計算式
LTVは、「顧客の平均購入単価」「収益率」「平均購入頻度」「平均継続期間」をもとに算出する方法が一般的です。下記のような計算式で算出します。
LTV=顧客の平均購入単価×収益率×平均購入頻度×平均継続期間
上記の計算式内の項目は、それぞれ下記のような意味があります。
- 顧客の平均購入単価:顧客の1回あたりの平均購入額
- 収益率:自社の平均粗利率
- 平均購入頻度:一定期間のあいだに、同一顧客が自社ECサイトを利用する回数の平均値
- 平均継続期間:顧客が初めて自社ECサイトを利用してから最後に利用するまでの平均期間
上記の計算は、ECサイト全体で計算することもありますが、カテゴリーごとや商品ごとの計算も可能です。どのような区切りで計算をするかによって、各項目の数値が変わる点に注意しましょう。手動で計算するのは手間がかかり、間違いのもとでもあるため、データを集計して平均値を出せるシステムなどを利用します。
例えば、顧客の平均購入単価が6,000円、収益率が50%、平均購入頻度が年3回、平均継続期間が5年の場合、LTVは下記のように計算できます。
6,000円×50%×3回×5年=4万5,000円
つまり、顧客を一人獲得すると将来にわたって合計4万5,000円の利益を得られるということが、LTVを計算することで判明するのです。
コストを加味した計算式
LTVは、マーケティングにかかるコストを加味して計算することもできます。その場合の計算式は、下記のとおりです。
コストを加味したLTV=顧客の平均購入単価×収益率×平均購入頻度×平均継続期間-(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)
一般的なLTVの計算式でも収益率は参考にしますが、広告宣伝費などは反映されません。そこで、上記の計算では、一般的なLTVの計算によって算出された金額から、新規顧客獲得のためにかかったWeb広告費用などのコストや、既存顧客の維持のためにかかったDMやメール配信などのコストを差し引いています。
顧客の平均購入単価が6,000円、収益率が50%、平均購入頻度が年3回、平均継続期間が5年、新規顧客獲得コストが1万円、既存顧客維持コストが2,000円の場合のLTVは、下記のように計算することが可能です。
6,000円×50%×3回×5年-(1万円+2,000円)=3万3,000円
仮に、上記の計算結果がマイナスになった場合、顧客の獲得や維持にコストをかけすぎているか、平均購入単価や収益率などが低すぎるということになります。事業として継続していくのが困難な状況に陥っている可能性があるため、早急に経営状況の確認と見直しが必要です。
年間取引額をもとにした計算式
顧客の平均購入単価からではなく、年間の平均取引額をもとにLTVを計算することもでき、その場合は下記のような計算式で算出します。
年間取引額をもとにしたLTV=顧客の平均年間取引額×収益率×平均継続年数
年間取引額を参考にしたLTVは、長期契約を前提としたビジネスモデルに適したLTVの計算方法です。反対に、顧客が商品を単発で購入するようなビジネスモデルでは、平均購入単価と平均購入頻度をもとに計算を行う一般的な計算式のほうが適しています。
年間取引額をもとにしたLTVの計算例を挙げると、例えば、顧客の平均年間取引額が30万円、収益率が20%、平均継続年数が7年の場合、LTVは下記のように計算できます。
30万円×20%×7年=42万円
チャーンレートを用いた計算式
サブスクリプションのビジネスモデルで解約が収益に直接影響を及ぼす場合には、チャーンレート(解約率)からLTVを算出するのが一般的です。下記の計算式で、チャーンレートからLTVを計算できます。
チャーンレートを用いたLTV=平均顧客単価×収益率÷チャーンレート
仮に、総顧客数が1,000人、売上が500万円とすると、顧客平均単価は5,000円です。この場合に収益率が60%、チャーンレートが3%だったとすると、LTVは下記のように計算できます。
5,000円×60%÷3%=10万円
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正しいLTV算出のために重要な指標
LTVを算出するためには、平均購入単価や顧客獲得コストといった、計算に必要な数字を正しく把握しなければなりません。計算根拠となる数字が不正確では、正確なLTVを求めることは不可能です。
平均購入単価や新規顧客獲得コストを把握するための重要指標であるARPA、CACの計算方法や、チャーンレートの算出方法を解説します。
ARPA
ARPA(Average Revenue Per Account)とは、平均購入単価をアカウント単位で求めるための指標です。この指標は、クラウド環境下で複数の顧客が同一アカウントを利用できる場合や、一人の顧客が複数のアカウントでサービスを利用している場合のLTVの計算に役立ちます。
例えば、5人のスタッフで1つのアカウントが利用されているクラウドサービスがあった場合、顧客数は5とカウントしますが、ARPAはアカウント数である1という数値をベースに計算されます。「同一人物がスマートフォンとタブレットで同じゲームを利用している」といった場合も、それぞれの端末でアカウントが異なっているのであれば、ARPAは1ではなく、アカウント数の合計である2をもとに平均購入単価を求めるのです。
ARPAは、「売上÷アカウント数」で算出します。例えば、ある年の売上高が1,000万円、アカウント数が200だった場合のARPAは、下記のように計算します。
1,000万円÷200=5万円
よって、ひとつのアカウントあたりの平均購入単価は5万円です。
CAC
CAC(Customer Acquisition Cost)とは、一人の顧客を獲得するためにかかるコストを示します。
CACは、「新規顧客の獲得にかかったコスト÷新規顧客獲得数」で算出することが可能です。例えば、1年間で新規顧客獲得のための施策に80万円かけた企業が、その年に新規顧客40人を獲得した場合、CACは下記のように計算できます。
80万円÷40人=2万円
新規顧客獲得のためにかかるコストとは、新規顧客獲得のための広告宣伝費や営業費の総額です。広告出稿にかかった費用のほか、新規顧客獲得を目指して行ったキャンペーンの費用や、営業活動を行った際のコストなども計上します。
なお、CACは、施策ごとに個別に算出することも可能です。例えば、Web広告やアフィリエイトなど、金銭をかけて広告宣伝にかかった費用と、それによって獲得できた顧客の数をもとに算出するCACを「Paid CAC」と呼びます。新規顧客獲得のための投資を行った場合に、その投資によって獲得できた顧客一人あたりの獲得コストを示す指標です。
広告などを介さずに自然に顧客が増えた場合のCACは「Organic CAC」と呼ばれ、検索サイトやSNSの投稿などからの顧客流入にかかった獲得コストがこれに該当します。
チャーンレート
チャーンレートは、サブスクリプションサービスなどでの顧客の解約率を示す指標です。「一定期間中に失った顧客数÷当初の顧客数」で算出できます。
例えば、1年間に解約した顧客数が100人、当初の顧客数が5,000人のときのチャーンレートは下記のように計算することが可能です。
100人÷5,000人=0.02
よって、この場合の解約率は2%です。
なお、上記では顧客数をもとに算出していますが、収益金額をもとにした算出方法もあります。複数の料金プランを用意しているサブスクリプションサービスでは、収益金額をもとに計算するのがおすすめです。解約だけでなく、下位プランへの変更による影響も含めた指標を算出できます。
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LTVを向上させる5つのアプローチ方法
LTVを向上させるためには、LTVを算出する際に利用する指標のいずれか、あるいは複数の指標を向上させなければなりません。LTVを向上させたい場合は、下記の5つのアプローチを検討しましょう。
平均顧客単価を上げる
平均顧客単価を上げれば、LTVも向上します。平均顧客単価を上げるためには、顧客に押しつけがましさを感じさせないように販売促進施策を行わなければなりません。平均顧客単価を上げるためには、下記のような方法があります。
アップセル
アップセルとは、顧客により上位の商品をすすめて平均顧客単価を上げる手法です。上位商品のサンプルを提供したり、上位商品の魅力を伝えたりして、自然とアップグレードした商品を手に取ってくれるよう働きかけます。
アップセルについて詳しくは、下記の記事をご参照ください。
クロスセル
クロスセルとは、顧客に本来買おうとしていたものとは別の商品も合わせて買ってもらうことで平均顧客単価を上げる手法です。例えば、「人気の商品と関連する商品をセットにして割引価格で販売する」「顧客が買おうとしている商品と同時に購入されることが多い商品をおすすめする」といった方法が考えられます。
クロスセルについて詳しくは、下記の記事をご参照ください。
値上げ
商品を値上げすれば、購入する商品が変わらなくても平均顧客単価が上がります。しかし、値上げをしたことによって顧客離れが起こる可能性があるため、慎重に行わなければなりません。「顧客に対して丁寧な説明を行う」「値上げ当初は割引券を配布する」など、顧客が反感を抱かないような工夫が必要です。
収益率を上げる
収益率を上げることで、LTVの向上を図れます。製造コストを削減したり、仕入れ価格を上げたりする施策などが代表例です。
ただし、仕入れ価格は無理に下げようとすると仕入れ先とのトラブルになったり、品質が低下したりするおそれもあります。大量仕入れによる値下げ交渉など、自社と取引先の双方の利益につながる提案を行いましょう。
平均購入頻度を上げる
平均購入頻度を上げて、以前よりも頻繁にECサイトを利用してもらえるようになれば、LTVが向上します。メールやSNSを活用したマーケティングを実施し、顧客との接点を増やすのが効果的です。顧客の身近な存在になることで、「ここで買おうかな」と思ってもらえる可能性が高まります。また、新商品やキャンペーン情報などを発信し、魅力的だと思ってもらえれば、通常の購入サイクルに加えたプラスアルファの売上を獲得することが可能です。
平均継続期間を延ばす
平均継続期間を延ばせば、それだけLTVも上昇します。平均継続期間の延長は、顧客や仕入れ先が負担を感じることなくLTVを高められる方法です。競合サイトなどに乗り換えられるのを防ぎ、長く良い関係を築いていけるように注力しましょう。
そのためには、顧客ロイヤルティの向上が重要です。長期顧客に対する優遇策などを行うとともに、早期離脱を防ぐための顧客アンケートの実施と手厚いサービスの提供などを実施しましょう。顧客に合わせた適切なアプローチを行い、「このブランドをずっと利用したい」と思ってもらうことができれば、平均継続期間も延びていきます。
顧客獲得・維持コストを削減する
新規顧客獲得や顧客維持コストを削減すれば、コストを加味したLTVの向上が見込めます。LTVがいくら高くても、それ以上にコストがかかっていては利益を上げることができません。コストの削減についても、合わせて検討していきましょう。
マーケティングを自動化するためのMAツール(マーケティングオートメーションツール)や、顧客との関係の分析などに役立つCRMツールを活用して、効率良く施策を実施できるようにすることが大切です。
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まとめ:事業の安定的な成長のために、LTVを向上させよう
新規顧客の獲得が難しくなりつつある昨今、利益を安定させて事業の継続を目指すには、LTVの向上が重要です。顧客単価や購入頻度、継続期間を上げるための施策を実施しましょう。
ただし、闇雲に施策を打つばかりでは顧客維持コストがかさむばかりで、期待通りの効果を得られない可能性があります。効果的な施策を立案するためには、顧客データの収集と分析を行わなければなりません。EC事業者であれば、顧客データの分析機能が付いたプラットフォームを活用すると効率的です。
ECプラットフォームのShopifyには、顧客の行動履歴をもとにした分析機能が搭載されています。標準機能では不足する部分があっても、サードパーティーが開発するアプリを活用すれば、定期購買といったLTVを上げるためのさまざまな機能の追加が可能です。CRM用の機能を付加できるアプリや、マーケティングに役立つアプリも豊富で、プログラミングの知識なしで必要な機能を拡張できます。
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