ニューヨークで開催されたNRF Retail’s Big Show 2025をレポート。AI活用がより多様化し、顧客対応、売り場、物流など様々なシーンで進化しています。
この展示会にWEBLIFEの代表取締役である山岡 義正も参加しました。数々のセッションや展示ブースで発信されていた小売のトレンドや最新技術を、ShopifyでのECを数多く手掛けてきた山岡の目線でレポートしていきます。
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NRF Retail’s Big Showとは?
「NRF Retail’s Big Show」は、全米小売協会(National Retail Federation)が、毎年1月にニューヨークで開催する、世界最大規模のリテールテックに関するソリューションの展示会です。Shopifyを始めとするECプラットフォーム、実店舗や倉庫向けのDXツール、各業界で成功しているマーチャントなど多くのキーパーソンがセッションに登壇したり、ブースに出展しています。
トレンドキーワードは「AI×ユニファイド」
前回のイベントに引き続き、多くのセッションで「AI」と「ユニファイド」に関するトピックや事例が挙げられていました。お問い合わせに対応するAIチャットサービスはすでに定番化していますが、AIによるデータ分析を活用した様々な成功例やサービスが話題になっています。
新しいテクノロジーによって、ユニファイドコマースの実現がより理想に近づき、消費者にとっても身近な存在になってきたAIが、ECビジネスに様々な変化をもたらしています。
止まらないAIムーブメント。次世代の購入体験にAI活用は必須
イベントの現場では様々な企業がAIを活用したソリューションで出展しており、顧客満足度の高い購入体験を作るために、もはやAIは欠かせない時代になっていると感じられる内容でした。セッションでは、カジュアルアパレルのLevi’s®、コスメ専門店のSephora、アクティブウェアのLululemon、コーヒーチェーンのスターバックスなど、業種もターゲットも異なる多くのブランドがAI活用によって成功している事例も印象的でした。
ECプラットフォームのShopifyでも、コマース特化型AIのShopify Magicが搭載されており、運用に関する様々な業務をサポートしています。
Shopify のAI機能について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
データ分析によるパーソナライズと提案
AIの得意分野といえば、人間では処理できない膨大なデータを読み解き、提案することでしょう。AI活用が本格的に始まっていることが影響してか、データ分析系サービスの出展も目立ちました。
顧客のオンライン行動を分析するAIアルゴリズムを用いることで、顧客一人ひとりのデータに基づき、好みやニーズに合致した製品を特定できます。それを適切なタイミングとアプローチ方法でレコメンドすることで、多くのブランドがパーソナルな提案を実現しています。
また、顧客の購買行動を追跡し、カゴ落ち率の高いポイントや改善の余地がある箇所を特定することで、カスタマージャーニーを最適化することもできます。
顧客ロイヤルティプログラムの強化
顧客のLTVを高めるロイヤルティプログラムでも同じように、AIが顧客の購入履歴や行動データを分析することで、会員ランクごとに最適なキャンペーンや誕生月限定のオファーなど、個々にカスタマイズされた特典を提供できます。
コスメ専門店のSephoraでは、カスタマーロイヤリティプログラムの「Beauty Insider」でそれらを実現しています。セッションでは、ロイヤリティプログラムは顧客エンゲージメント戦略の中心となっており、常に顧客に求められているサービスを提供し続けることが重要であると語られました。
Shopifyならパーソナルな顧客情報の取得・活用も可能
このようなロイヤルティプログラムには、まず詳細な顧客情報のデータベースが不可欠です。
Shopifyの顧客データには購入履歴はもちろん、誕生日やポイント残高など任意の属性をメタフィールドとして持たせておくことができます。
さらに、Shopify POSを導入すれば実店舗でもメタフィールドの確認、編集も可能です。メタフィールドについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
スピーディな問い合わせや返品の対応
AIチャットサービスの問い合わせ対応はすでに様々なサービスが提供されており、導入しているECサイトも多いでしょう。基本的な問い合わせならAIでリアルタイムに解決できますが、複雑な問題については、カスタマーチームがいち早く察知し、人が直接対応する必要があります。また、返品データをAIで分析し、製品改善や在庫管理に役立てることもできます。
サポートのクオリティはブランドの信頼性や顧客満足度に大きく影響します。AIをうまく活用すれば、シンプルでスピーディな対応が実現できるでしょう。
一歩先がわかる、AI予測を活用した販売計画
商品計画やマーケティング戦略にもAI活用の領域は広がっています。上記と同じく、ベースはAIによるデータ分析です。実際にAI予測を活用している事例も出ており、進化の速さを強く実感しました。
エビデンスベースのトレンド予測
AIを活用すれば、消費者が日常的に情報発信・収集に利用しているSNSや検索データを分析し、今後どんなトレンドが起こるかをエビデンスベースで予測できるそうです。
これにより、トレンドにピークに合わせた商品開発はもちろん、特定の地域に限定して需要を予測し、最適な在庫配置やプロモーション計画に役立てられます。
フィードバック分析と改善
顧客からの商品レビューも商品計画に活用されています。たとえば、SephoraではネガティブなレビューからAIで商品やサービスの弱点を探り、改善するという施策を実施しています。日常的に集まるフィードバックをAIで分析することによって、コストを抑えながら消費者視点での改善を続けることがブランド成長につながっていく近道であると考えられます。
商品レビューはECに導入することで、ブランドの信頼性やSEOを向上するなどの副次的な効果もあります。詳しくは下記の記事をご覧ください。
買い逃し防止やリピート購入の促進
顧客行動を予測し、先回りしてフォローアップを仕掛けておくと、買い逃しの防止やリピート購入の促進につながります。
AIが予測した顧客行動を基に、再購入する可能性が高い顧客や離脱リスクのある顧客をセグメントして、効果的なアプローチを用意しておくと良いでしょう。
リアルな売り場やバックエンドもAIが活躍
実店舗や物流などのオフラインな現場では、AIを利用したテクノロジー技術が発展し、データの収集や人による作業の補助をしています。物流や在庫管理などの見えない部分のシステムだけでなく、レジを通らずに決済できる店舗用ゲートなど、店舗DXがまた一歩先の進化を見せていました。
損失のリスクを軽減する、在庫管理の最適化
商品在庫の各店舗への配分は、需要よりも多すぎるとスタッフの作業量が増え、場合によっては廃棄につながります。逆に少なければ機会損失になってしまいます。
世界中に700以上の店舗を持つアクティブウェアブランドのLululemonでは、AIによる需要予測を行い、適切な量の在庫を適切なタイミングで各地域や店舗に供給することで、過剰在庫や欠品のリスクを最小化しています。
また、必要に応じて製品を迅速に補充する「追跡型ロジスティクス」によって、サプライチェーン全体で効率化を実現しているそうです。
画像認識による店内のデータ収集&分析
SONYの展示ブースでは、店内に設置したカメラの映像をAIに分析させ、顧客IDを割り出す画像認識システムが特に注目を集めていました。顧客が店内でどんな商品を手に取って、どの商品と比較しているか、という行動も認識し、データ化することが可能です。
また、顧客行動だけでなく商品陳列棚の状態も把握し、在庫の補充が必要な棚と品番をリアルタイムに確認できます。
AI時代のブランド価値を高める「体験の創造」
このようにフィジタルな実店舗が普及していけば、ユニファイドコマースの理想像がさらに進化していくでしょう。
しかし、AIやロボティクスといったテクノロジーの導入が進む一方で、人間的な接触や感情的なつながりの重要性も高まっており、実店舗の強みを活かしたサービス向上や体験型のショッピングスペースの需要が増加しています。
Shopifyも機能強化が進む、どこにいてもサービスを提供するシームレスさ
ユニファイドコマースの基本的な理念は、どこにいても顧客に同一のサービスを提供することです。Shopifyもここ数年でユニファイドコマースに対応するための機能強化が進んでおり、BiNDecが支援しているECサイトでもERPやスマホアプリなどの導入を通じてユニファイドコマースを実現しています。
セッションに登壇したジーンズブランドのLevi’s®では、店頭に顧客が欲しいサイズの商品が無い場合、スタッフは顧客情報を総合的に把握できるプラットフォームから、サイズと好みを調べて類似の商品を勧めるか、別の店舗で在庫を見つけて顧客の自宅に配送するか、店舗で受け取れるようにするサービスが成功例として挙げられました。
また、コーヒーチェーンのスターバックスの店舗は、カフェ、リザーブ、ドライブスルー、ライセンシーの複数の形態に分かれています。しかし、顧客はすべての形態において一貫したサービスを求めています。
そのため、4万店舗と1万9000のライセンス拠点全ての技術スタックを統一し、プラットフォーム全体でイノベーションを推進することに取り組んでいるそうです。
「買うこと」以外でもエンゲージメントを上げる体験の価値
購買目的でない体験を提供することで、エンゲージメントを上げる手法も広がっています。顧客はショッピングに対して、単に商品を求めるだけでなく、体験やブランドへの共感を重視しています。
顧客データを基に、地域特性に応じた体験型プロモーションや、地元のインフルエンサーをアンバサダーに起用してコミュニティとの強い結びつきを形成するなど、様々なやり方でブランドの価値を高めていくことができます。
AI活用でECの成長もよりスピーディに
AIと機械学習は、生産性を1.5%向上させると予測されており、商品の企画段階から流通、小売、プロモーションなど、モノが作られて消費されるまでの全てのシーンにおいて、AIは進化し発展しています。
高度な技術の普及には時間がかかりますが、長期的な経済成長の主要因となるでしょう。
EC運用においても、Shopifyのような独自のAIや詳細な顧客データベース搭載されているプラットフォームなら、セッションで挙げられていた成功事例のような業務効率化やパーソナライズされたマーケティング施策が可能です。
ShopifyでのEC構築や運用は、豊富な導入実績とハイレベルな技術力・知識量を認められたShopify PremierパートナーのBiNDecへ気軽にお問合せください。