後払い決済は、ECサイトにおいてクレジットカードを持たない方や、前払いに抵抗のある方などに好まれる決済手段です。後払い決済を導入することで、支払い手段の幅が広がり、CV率(コンバージョン率)を向上させる効果が期待できます。
本記事では、後払い決済の基本から導入時のメリット・デメリット、ECプラットフォームのShopifyで導入できる後払いの決済代行サービスをご紹介します。
後払い決済とは
まず、ECサイトにとって後払い決済がどのような決済方法なのか説明します。
ECサイトにおける後払い決済は、購入者が商品を受け取った後に代金を支払う決済手段であり、ECサイト上での商品の購入時にはクレジットカードなどの情報を入力する必要がありません。
購入者は請求書や支払い案内に従って、指定された期間内にコンビニ払いや銀行振込、口座振替などで代金の支払いを行います。そして、EC事業者は決済代行サービスを通じて代金を回収します。
なお、海外では後払い決済のことを「BNPL(Buy Now, Pay Later)」と呼びます。Shopifyのような英語圏で生まれたECプラットフォームなどではBNPLと表示されるケースも多いので、BNPL=後払い決済のことだと覚えておきましょう。
後払い決済をECサイトに導入するメリット
ECサイト運営において、決済方法を充実させることはカゴ落ちの防止やCV率の向上に欠かせません。特に後払い決済を導入することで、クレジットカードを持たない若年層などの新規顧客を獲得しやすくなります。
多くのECサイトでは、顧客がクレジットカード等で決済した後に商品が発送される仕組みが主流になっています。しかし、後払い決済であれば商品を受け取った後に支払いが発生するため、例えば、初めて利用するECサイトなどで不安を感じている場合でも、商品が手元に届いた後に納得して支払うことができます。
Shopifyで構築したECサイトであれば、決済手段を追加するハードルも低いので、後払い決済の導入は一考に値するでしょう。もちろん、メリットだけでなくデメリットもありますので、ここからの解説を読んだうえで導入を検討してみてください。
新規顧客の購入ハードルを下げる
初めて利用するECサイトでは、「本当に商品が届くのか」「品質に問題はないか」といった不安から、購入をためらう消費者も少なくありません。後払い決済を導入することで、こうした不安を和らげ、「まずは受け取ってから支払える」という安心感を提供できます。
とくに新規の顧客にとっては、リスクを感じることなく実物の商品を手元で確認できることが大きな魅力となり、初回購入の心理的ハードルを下げる効果が生まれます。
クレジットカードを持たない層の取り込み
ECサイトの決済手段としてクレジットカードは主流です。しかし、ECサイトを訪れる人の中にはクレジットカードを持っていない利用者もいます。特に、未成年や学生など、クレジットカードを作れない若年層にとって、後払い決済は便利な選択肢となります。また、現金払いを好む顧客にとっても、コンビニなどで支払える後払い決済は有効な選択肢となります。
若年層を含むZ世代は独自の価値観やライフスタイルを持ちながら消費の主役になりつつあります。彼らの特徴や価値観、購買行動を理解して売上を伸ばすための施策をまとめました。ぜひ併せてご覧ください。
カゴ落ちを防いでCV率を向上させる
ECサイトでカゴ落ちが発生する原因の一つに、利用者にとって使いやすい決済手段が不足していることが挙げられます。とくに、クレジットカードを持っていない、あるいは使いたくないと考える利用者にとっては、支払い方法が限定されていると購入を断念してしまうケースが少なくありません。
そこで後払い決済を導入することで、こうした層の購入のハードルを下げることができ、結果的に離脱の防止につながります。利用者の選択肢を広げることで、CV率の向上が期待できるのです。
決済手段の拡充以外にもカゴ落ちを防ぐ手段は様々です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
企業からの注文にも対応しやすくなる
BtoC向けに運営されているECサイトであっても、企業や団体から購入されるケースもあるでしょう。しかし、法人の物品購入では、商品を受け取った後に請求書払いを行うことが購買フローの前提となっていることが多く、対応できる決済手段がなければ購入を断念されてしまうこともあります。
そこで、後払い決済を導入することで、掛け売りができないECサイトでも購入に対応することが可能になります。また、後述しますが与信審査や請求・回収業務を決済代行サービスに委託できるため、運営側の業務負担やリスクも軽減されます。
なお、ShopifyはBtoB ECサイトのための機能も充実しており、掛け払いにも対応可能です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ECサイトに後払い決済を導入するデメリット
後払い決済を導入することで利便性は向上しますが、一方で注意すべき点もあります。決済手数料の発生や、与信審査により購入が完了しない可能性や、導入・運用のための設定作業やシステム連携の手間などが挙げられます。導入前にはコストや業務負担とのバランスを慎重に見極める必要があります。
後払い決済の手数料が発生する
後払い決済を導入すると、EC事業者側には決済代行サービスへ支払う手数料が発生し、利益率の低い商品では負担が大きくなる可能性があります。
一方、導入する決済サービスにもよりますが、購入者側にも請求書発行やコンビニ払いに伴う「後払い手数料」が数百円単位で加算されることが一般的です。これにより価格への印象が変わる場合もあるので、支払い関係でのよくある質問や決済画面などで、手数料について丁寧に明記しておくことをおすすめします。
与信審査による購入キャンセルのリスク
利用者が後払い決済を利用する際には、決済サービス側による与信審査が実施されます。審査には購入者の氏名・住所・電話番号などの情報が必要です。審査はリアルタイムで完了する場合もあれば、数分から数十分かかることもあり、この待ち時間や情報入力の煩雑さからカゴ落ちが発生する可能性もあります。
そして、過去の支払い遅延や高額商品の注文では、審査に通らず購入自体がキャンセルされることもあります。こうした事態を避けることはできませんが、あらかじめ「後払い決済は審査の結果によりご利用いただけない場合があります」といった注意書きを表示することで、購入者の混乱を軽減することが重要です。
未回収リスクへの対応が必要
後払い決済では、購入者が商品を受け取った後に支払う仕組みのため、支払いが行われないまま連絡が取れなくなる「未回収リスク」が発生する可能性があります。とくに架空の情報や第三者名義での注文など、不正利用によるトラブルも想定されます。
こうしたリスクは、EC事業者にとって大きな損失につながる恐れがあります。ただし、多くの決済代行サービスでは未回収分を保証する仕組みを提供しており、信頼性の高いサービスを選ぶことでリスクの低減が可能です。
Shopifyに導入できる代表的な後払い決済サービス2選
後払い決済は多くの企業から提供されており、それぞれに特徴が異なります。ここでは、Shopifyなどの主要なECプラットフォームでも導入実績が多く、利用者数の多い「atone」と「Paidy」について、その仕組みや特徴を詳しく見ていきます。
atone

株式会社ネットプロテクションズが提供する「atone」は、月末締め翌月払いの決済サービスで、継続的な顧客接点を重視するECサイトと相性が良い設計となっています。atone独自のポイント制度や会員機能を通じて顧客ロイヤルティの向上を図れる点が強みです。
与信審査も比較的柔軟なため、幅広い層の消費者をカバーでき、カゴ落ちの防止や新規顧客の獲得にも貢献します。また、後払い決済に関するリスクや業務負担は決済代行サービス側が担うため、安心して導入できます。
Paidy

Paidy株式会社が提供する「あと払いペイディ」は、個人消費者向けの即時与信型後払い決済サービスで、特にスマホユーザーや若年層を中心に広く普及しています。
Paidyの本人確認を経た登録者には3回分割払いなどの選択肢も提供されており、高額な商品を購入するためのハードルが低くなるため、顧客単価の向上も期待できます。Shopifyをはじめとする主要カートとの連携実績も多く、比較的スムーズに導入できるのも利点の一つです。
atoneとPaidyの比較
atone | Paidy | |
---|---|---|
提供形式 | 月末締め翌月払い(翌月一括請求) | 即時与信+月締め請求、分割払い対応 |
特徴 | 会員登録型、リピート重視 | 若年層・スマホ世代から支持 |
利用者の支払方法 | コンビニ・銀行ATM(Pay-easy)・口座振替・はがき請求書 | コンビニ・銀行振込・口座振替・分割(本人確認済) |
未回収リスク | 決済代行サービス側が保証 | 売上金100%入金保証あり |
販促・マーケティング支援 | メルマガ・アプリ通知・ポイントキャンペーン実施など | なし(基本機能に特化) |
実店舗連携 | スマホ決済(QR)対応あり | スマホ決済(QR)対応あり ※ペイディカードは2025年9月30日をもってサービス終了 |
Shopifyへの後払い決済導入には決済代行サービスの利用もおすすめ
Shopifyで後払い決済を導入するには、後払い決済サービスを直接導入するのではなく、決済代行サービスを経由してまとめて導入する方法もあります。これにより、後払いに加えてクレジットカード、コンビニ決済、電子マネーなど、複数の支払い手段を一元的に管理できる利便性があります。
中でも「KOMOJU」や「SBペイメントサービス」は、Shopifyとの連携実績も豊富で多くのECサイトに導入されています。ここでは、それぞれのサービスについて詳しく見ていきましょう。
KOMOJU

KOMOJUは、株式会社デジカが提供する決済代行サービスです。大手企業をはじめ1万以上のECサイトに導入されている決済代行サービスで、Shopifyとの相性もよく、後払い決済を含む多彩な決済手段を簡単に導入できる点が高く評価されています。その大きな理由は、国内外の消費者ニーズに合わせた柔軟な決済対応力にあります。
まず、KOMOJUは日本市場向けに、クレジットカード、コンビニ決済、銀行振込、PayPay、後払いなど、国内で利用頻度の高い決済手段を網羅しており、幅広い顧客層に対応可能です。さらに、越境ECにも強く、中国や欧州など海外市場で主流の決済手段(Alipay、Klarnaなど)にも対応しているため、グローバル展開を視野に入れるEC事業者にも適しています。
料金体系も明瞭で、初期費用・月額利用料が不要で、決済手数料を基本として導入可能です。必要なセキュリティ機能(PCI DSS準拠、ISO27001取得など)も標準で備えており、追加コストを抑えて安全な決済環境を構築できます。
また、入金サイクルも「週次」または「月次」から選択可能で、キャッシュフローに合わせて柔軟に設定できるのも魅力です。
KOMOJUについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
SBペイメントサービス

SBペイメントサービス(SBPS)は、ソフトバンクグループが提供する決済代行サービスで、日本市場に最適化された50種類以上の決済手段を一括で利用できる点が大きな強みです。クレジットカード、コンビニ支払い、PayPay、キャリア決済、LINE Pay、楽天ペイなど、消費者の多様なニーズに応える柔軟性が特徴です。
セキュリティ面では、AIによる不正検知、クレジットカード情報の安全保管など、高水準の対策を標準装備しています。これにより、個人情報漏洩や不正利用のリスクを大幅に低減できます。
対EC事業者向けの支援体制も充実しており、契約・審査から導入、運用までを一括で支援するワンストップサービスを提供しています。HDI評価で最高ランクのサポート体制も整っており、はじめての導入でも安心です。
さらに、入金サイクルは月2回払い(15日締めの当月末日払い・月末締めの翌月15日払い)などを選択でき、キャッシュフローに合わせて調整可能です。この柔軟性も、EC事業者にとって大きなメリットとなります。
こちらの資料で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
Shopifyへの後払い決済の導入に迷ったらまずはBiNDecにご相談を
後払い決済は、購入者の利便性を高めるだけでなく、新規顧客の獲得やカゴ落ち防止にも効果的な手段です。Shopifyで構築したECサイトに後払いを導入するには、KOMOJUやSBペイメントサービスなどの決済代行サービスを介することで、より広範囲な決済サービスに対応でき、導入や運用の手間を大幅に軽減できます。とはいえ、どのサービスを選ぶべきか、導入の進め方が分からないという方も多いのではないでしょうか。
BiNDecでは、EC事業者の業種や規模、販売戦略に合わせた決済代行サービスの選定や導入からShopifyの構築・運用までトータルで支援を行っています。Shopifyでの後払い決済導入をご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。