売上規模の大きい企業におけるECシステムには、複数ブランドの運営や基幹システムとの連携、BtoB対応など、単なる販売チャネルではなく、事業を支えるコマース基盤としての役割を担うようになります。
こうした企業が検討する選択肢の一つが、Shopifyの エンタープライズ向けプランShopify Plus です。本記事では、Shopify Plusの特徴や通常プランとの違い、料金体系を整理しながら、EC事業者が直面する課題とShopify Plusの役割について解説します。
Shopify Plusとは|料金・機能・通常プランとの違い

Shopifyには複数のプランが用意されており、事業規模やECの運用要件に応じて選択することができます。Shopify Plusは、その中でも最上位の大規模ECや成長企業の運営を想定したエンタープライズプランです。
| プラン | 主な対象 |
|---|---|
| Basic / Grow / Advanced | 小規模〜中規模EC |
| Plus | 大規模EC・エンタープライズ |
通常のShopifyプランでもECサイトの構築や運用は可能ですが、事業規模の大きい企業では、より自由なカスタマイズや、ERPやBIツールなどの専門的な外部システムとの連携など、高度な要件が求められるようになります。Shopify Plusは、こうした大規模ECの運用や複雑なビジネス要件に対応できるよう、機能やサポート体制が強化されたプランです。
ここでは、Shopify Plusと通常プランの違いを整理しながら、料金の目安と主な特徴について紹介します。
Shopify Plusの料金体系
Shopify Plusの料金は、通常プランのような月額課金とは異なり、基本的に1年契約または3年契約で提供されています。
3年契約の月払いで月額368,000円からが目安となりますが、売上規模によっては追加のプラットフォーム手数料が適用される場合があるため、実際の料金は個別の見積もりとなります。
また、通常のShopifyプランが比較的低コストで始められるのに対し、Shopify Plusは投資額が大きくなるため、単純な料金の高低ではなく、ECをどこまで事業の中核として位置付けるのか、また投資に見合う効果が見込めるかといった観点で判断することが重要になります。
通常プラン(Advanced)との決定的な5つの違い
Shopify Plusは通常のShopifyプランと同じプラットフォームをベースにしていますが、大規模ECの運用を想定して機能やサポート体制が強化されています。
クレジットカードや外部決済サービスの手数料を抑えられる
売上規模が大きくなるほど、決済にかかる手数料の影響は無視できなくなります。Shopify Plusでは、通常プランと比較してクレジットカード決済手数料や外部決済サービス利用時の手数料が他のプランよりも低く設定されています。
国内のクレジットカードの手数料は通常プランで3.55〜3.25%、Shopify Plusでは3.8%、Amexや海外カードの手数料は通常プランで3.9〜3.75%、Shopify Plusでは2.9%です。
また、需要の高いコンビニ決済やQR決済を外部決済サービスで導入した場合に発生する手数料は、Advancedプランの0.6%に対し、Shopify Plusでは0.2%となっています。
Shopifyで導入できる決済サービスについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
同一ブランドなら1アカウント10ストアまで構築できる
Shopifyでは複数のECサイトを構築すること自体は他プランでも可能ですが、ECサイトごとに管理画面が分かれており、それぞれを個別のアカウントで契約する必要があります。ECサイト数が増えるほど管理の手間も比例して増えるため、複数の国や地域でECを展開する企業にとっては、運用負荷が高くなりがちです。
Shopify Plusでは、1つのアカウントのもとで10ストアまでを管理できるため、特定のテーマのポップアップECや、国・地域別のECなどをまとめて運営することができます。
それぞれのECサイトで言語や通貨、商品ラインナップを柔軟に設定しながらも、アカウントを横断した一元的な管理が可能になるため、グローバル展開における運用効率の向上が期待できます。
BtoB(卸売)向けの機能が豊富
Shopify Plusには、法人向け取引に対応するBtoB機能が豊富に用意されています。法人顧客ごとに価格や支払い条件を設定したり、卸取引向けの注文フローを構築したりすることが可能です。
これにより、BtoC向けECだけでなく、卸販売や法人取引を含めたEC運用にも対応しやすくなります。法人取引は金額も大きくなるため、上記の手数料の差も鑑みると、通常プランよりもShopify Plusの方がBtoBにおいてはメリットが多いと言えます。
ShopifyのBtoB ECについて、詳しくは下記の資料も併せてご覧ください。
決済画面(チェックアウト)をカスタマイズする
Shopify Plusでは、決済画面(チェックアウト)に、関連商品のレコメンドやクーポンコードを表示したり、任意のテキストを入れてカスタマイズすることができます。ブランドに合わせた購入体験の設計や、業務要件に応じた機能追加など、購入プロセスを最適化することで、購入体験の向上やコンバージョン率の改善につなげることも期待できます。

チェックアウト画面のカスタマイズは、BiNDecのアプリで行うことができます。詳しくは下記のページをご覧ください。
API連携による外部システム統合
Shopify PlusではAPIの利用範囲が拡張されており、ERPやCRMなどの外部システムと連携しやすくなっています。通常プランでもAPIは利用できますが、Shopify Plusではリクエスト数の上限が引き上げられており、大量のデータをリアルタイムに近い形で処理・同期することが可能です。
例えば、基幹システムと連携することで受注データや顧客情報を自動で同期したり、在庫管理システムと連携することで在庫数をリアルタイムに反映させたりといった運用が実現できます。これにより、EC担当者が手動でデータを転記・管理する手間が減り、業務フローの自動化や人的ミスの削減にもつながります。
大規模な企業では、ECと既存業務システムのデータ連携は複雑になりがちです。Shopify PlusのAPI拡張は、ECを業務システム全体の中に組み込んだ一体的な運用基盤を構築する上で、重要な役割を果たします。
実際にERPをShopifyのECと連携して、業務効率を大幅に改善したジョンマスターオーガニックの事例も併せてご覧ください。
Shopify Plusはどのような企業に向いているのか
Shopify Plusは主に、EC事業の成長に伴いより高度な運用やシステム連携が求められる企業で検討されるケースが多くあります。例えば、次のような企業ではShopify Plusが選択肢となります。
売上額が大きく、手数料を抑えて利益率を上げたい企業
EC事業の売上規模が大きくなるほど、決済手数料がコストに与える影響は大きくなります。上記のとおり、Shopify Plusプランは、通常プランよりクレジットカードや外部決済サービスを利用した際の手数料が低く設定されています。
月間の取引金額が大きい企業では、この手数料の差が積み重なることで、年間を通じた削減効果は無視できない水準になります。Shopify Plusの導入コストを検討する際には、月額費用だけでなく、手数料の削減効果も含めてトータルで試算することが重要です。
越境ECやBtoBで複数ストアを運営している企業
国ごとに異なる言語・通貨・商品ラインナップでECサイトを展開している企業や、BtoCの販売チャネルとは別にBtoB向けの卸・法人取引用ECを運営している企業では、ECサイト数の増加に伴って管理の複雑さが増しやすくなります。
Shopify Plusでは、同一ブランドのもとで1アカウントにつき10ストアまでを管理できるため、越境ECや法人向けECサイトを含む複数のECサイト運営を一元的に管理することができます。また、法人顧客ごとに価格や支払い条件を設定できるBtoB機能も用意されており、BtoCとBtoBを同一のプラットフォーム上で統合して運用することも可能です。
グローバル展開や法人取引を含むEC運用において、管理の効率化と運用負荷の軽減を図りたい企業にとって、Shopify Plusは有力な選択肢となります。
ECを基幹システムと連携しながら事業の中核として運用したい企業
EC事業が拡大するにつれて、受注・在庫・顧客データをERPや在庫管理システムとリアルタイムに同期したいというニーズが高まります。こうした連携が手動や属人的な運用に依存している場合、データの転記ミスや処理の遅延が業務全体のボトルネックになりやすくなります。
Shopify PlusではAPIの利用範囲が拡張されており、既存の業務システムとECのデータを柔軟に連携させることができます。その結果、ECを業務システム全体に組み込んだ一体的なコマース基盤として運用することが可能になります。
ECが単なる販売チャネルではなく事業の中核を担う存在になるほど、プラットフォームには高い拡張性と安定した運用が求められます。Shopify Plusは、こうした成長フェーズにある企業のEC要件に対応できるプラットフォームとして導入が検討されるケースが多くあります。
Shopify Plus導入で失敗しないための3つのポイント
Shopify Plusは拡張性の高いECプラットフォームですが、導入を検討する際にはいくつか押さえておきたいポイントがあります。ここでは、Shopify Plusをコマース基盤として活用する上で重要になる考え方を整理します。
Shopify Plusは標準機能だけで完結するとは限らない
Shopifyには多くの標準機能が用意されており、それだけでもECサイトを構築・運営することは可能です。しかし、企業のビジネスモデルや業務要件によっては、標準機能だけでは対応しきれないケースもあります。例えば、以下のような要件です。
- 標準の連携アプリでは対応できない外部システムとの連携
- モール型などの特殊なストア構成
- 日本の商習慣に合わせたUI/UX
このような場合には、アプリの導入やカスタマイズ、外部システム連携などを組み合わせてECを構築していく必要があります。そのため、Shopify Plusでは 機能を使うこと自体よりも、標準機能・アプリ・カスタマイズをどのように組み合わせてECを設計するかが重要になります。
Shopify Plusでモール型のストア構成を実現している事例も併せてご覧ください。
ECの役割やビジネス目標を明確にしておく
Shopify Plusの導入では、どの機能を使うかやどのアプリを導入するかを検討する前に、ECが事業の中でどのような役割を担うのかを整理しておくことが重要です。
- ECをどのような売上チャネルとして位置付けるのか
- 複数ブランドや海外展開をどのように進めていくのか
- BtoB取引をECにどこまで組み込むのか
- 今後どの程度の事業規模まで拡大していくのか
ビジネスの方向性によって、ECの構成や必要な機能は大きく変わります。そのため、Shopify Plusの導入では機能要件を検討する前に、ECの役割や事業の成長計画を踏まえた全体設計を考えておくことが重要になります。
Shopify Plus導入を支援するパートナーの選定
Shopify Plusでは、ECの構築だけでなく、ストア構成の設計や外部システム連携などを含めた大規模なプロジェクトになることが多くあります。そのため、Shopify Plus導入では知見の高いShopfiyパートナーと連携してプロジェクトを進めるケースが一般的です。
Shopifyには公式のパートナープログラムがあり、構築実績や技術力などに応じてパートナー企業が区分されています。企業はこれらのパートナーの中から、自社のEC要件やプロジェクト規模に応じてパートナーを選定することができます。特にShopify Plusでは、複数ストアの設計や外部システム連携などを伴うケースも多いため、大規模ECの構築経験を持つShopfiy Platinumパートナーがおすすめです。
Shopfiyパートナーの選び方について、詳しくは下記の資料をご覧ください。
ちなみに、Shopify Plusでは Merchant Success Manager(MSM)と呼ばれる担当者がShopify側からアサインされるため、Shopify本体とパートナーが連携しながらEC運用を支援する体制が整っています。
BiNDecが支援するShopify Plusを活用したグローバルEC展開
BiNDecは、Shopifyのパートナープログラムの中でも最上位のShopify Premier PartnerのWEBLIFEが提供するEC構築・運用支援サービスです。事業の成長に合わせたコマース基盤の設計や運用改善まで含めた一体的なサポートを提供しています。
事例:KINTOのグローバルEC展開を支えるコマース基盤構築

タンブラーやテーブルウェアなどのライフスタイル製品を展開するKINTOは、Shopify Plusを活用して日本・米国・欧州・英国の4エリアで合計8つのストアを展開しています。BiNDecはKINTOのECサイト運営・開発パートナーとして、グローバルEC展開を支えるコマース基盤の構築と運用改善を支援しています。
BiNDecの支援においては、ブランドの世界観を損なわずに運用効率を高めることが重要なテーマでした。パーソナライズサービスの刻印機能をShopifyの管理画面から柔軟に設定できるよう改修することで外注作業を内製化し、運用コストの削減と意思決定の迅速化を実現しました。
また、基幹システムとShopifyのデータ連携においても、システムをシンプルに保ちながら安定した連携基盤を構築しています。その結果、新規市場への進出を3ヶ月で実現し、米国では総売上の約3割をECで創出するなどの成果につながっています。
KINTOの事例について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
Shopify Plus導入の流れ
Shopify Plusの導入は、単にECサイトを構築するだけではなく、EC事業全体の設計を伴うプロジェクトになることが多くあります。そのため、事前の要件整理から構築、運用まで段階的に進めていくことが重要です。一般的な導入の流れは、次のようになります。
1. EC戦略と要件整理(適用分析)
まず、自社のECビジネスの目的や運用方針を整理します。
- ECをどのような事業基盤として位置付けるのか
- 海外向けにはサイトを独立させるのか、言語・通貨変換で対応するのか
- BtoBとBtoCをどのように運用するのか
- 基幹システムや在庫管理システムとどのように連携するのか
この段階でECの要件を明確にしておくことで、後のストア設計やシステム構成をスムーズに進めることができます。
また、既存の業務フローやシステムがShopifyにどのように適用できるかを整理することで、実現可能な構成や必要なカスタマイズの方向性を明確にしていきます。
2. ストア構成・システム設計
要件整理をもとに、Shopify Plus上でのストア構成やシステム連携の設計を行います。
- 具体的なストア構成
- BtoB機能の活用方法
- アプリやカスタマイズの必要性
- ERPやCRMとの連携方法
この設計段階で、標準機能・アプリ・カスタマイズをどのように組み合わせるかを検討することが重要になります。
3. Shopify Plusの構築・テスト(UI/UX設計・制作)
設計内容をもとに、Shopify Plusのストア構築を進めます。テーマ設定や機能開発、外部システム連携などを行いながら、実際の運用を想定したテストを実施します。
また、顧客の購入体験を踏まえた画面設計や導線設計など、UI/UXの観点からの最適化もこの工程で行います。特に、注文処理や在庫連携などの業務フローについては、本番運用に近い形で検証を行うことが重要です。
4. リリースと運用改善
ECサイトを公開した後は、運用データをもとに改善を進めていきます。Shopify Plusでは、アプリ追加や機能拡張が比較的柔軟に行えるため、事業の成長に合わせてストア構成や機能を拡張していくことが可能です。ECサイトは構築して終わりではなく、運用と改善を前提としたコマース基盤の構築として進めていくことが重要になります。
Shopify PlusはECをコマース基盤として活用する企業の選択肢
Shopify Plusは、大規模な売上やBtoB取引、基幹システムとの連携など、ECを事業のコマース基盤として活用する企業に向けたエンタープライズプランです。
EC事業の成長に伴い、運用の複雑化やシステム連携の必要性が高まると、ECプラットフォームにはより高い拡張性や柔軟な運用が求められるようになります。Shopify Plusは、こうした要件に対応できるプラットフォームとして、多くの企業で導入されています。
一方で、Shopify Plusの導入ではストア構成の設計や外部システムとの連携など、EC全体の設計が重要になります。自社のEC要件を整理した上で、適切な構成を検討することが成功のポイントになります。
BiNDecは、豊富な導入実績とハイレベルな技術力・知識量を認められたShopify Platinumパートナーとして、中小規模から大規模のビジネスに向けた最適な運用戦略の提案も可能です。
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