EC市場が急速に拡大する中で、大きな購買力を持つ層として注目されているのが、1990年代後半から2010年生まれのZ世代です。
Z世代は生まれながらにデジタル環境に馴染んだ「デジタルネイティブ」であり、独自の価値観やライフスタイルを持ちながら消費の主役になりつつあります。彼らの特徴や価値観、購買行動を理解することは、これからのEC運用を伸ばす鍵となります。
そこで今回は、Z世代の概要を紹介するとともに、その特徴を分析することで、どのような点に配慮し、どのようなマーケティング施策を行えば売上を伸ばすことができるのか?そのための秘訣とECプラットフォームのShopifyにおける応用をご紹介します。
Z世代の概要
Z世代はミレニアル世代に続く新たな消費者層で、一般的に1996年から2010年に生まれた人々を指します。幼少期からデジタル技術と共に成長し、日常的にインターネットやスマートフォンを使用してきた「デジタルネイティブ」で、世界の人口の32%以上を占めています。経産省の調査資料「令和3年度コンテンツ海外展開促進事業」によると、その購買力は15〜22兆円を超えているものと推定されています。
そのような背景から、新しい情報へのアクセスや共有が早く、多様なプラットフォームを駆使して自ら情報を収集し判断する能力に長けています。また、SNSを通じて自ら情報を発信し、カルチャーやショッピングのトレンドを創り出す重要な存在です。さらに、多様性や社会的公正を重んじる価値観を持ち、環境問題や社会問題に対する意識が高いのも特徴といえます。
Z世代の購買行動につながる11の特徴
Z世代は企業の社会的責任(CSR)活動への関心も高く、ブランド選択の際にもそうした姿勢を持ってビジネスに取り組んでいるかどうかを重視します。そして、他の世代よりも強く企業の透明性や誠実さを求め、それが購買行動にも大きな影響を与えているのです。
彼らの家族や友人の購買決定にも影響を与えるため、直接的・間接的に多大な経済効果をもたらす存在でもあります。そのため、EC事業者も、Z世代の特性や購買パターンを深く理解し、彼らの期待に応える形で商品を選択し、販売方法のアプローチを考える必要があるのです。
以下に、11の観点からその特徴をまとめてみました。
1ーデジタルネイティブ
Z世代は、PC、スマートフォン、タブレットといった多様なデジタルデバイスを当たり前に使いこなす世代です。彼らは、オンラインとオフラインをスムーズに行き来し、デジタル空間での活動をリアルな生活と切り離せないものとして捉えています。
新しいアプリやサービスを短時間で使いこなすなど、変化を柔軟に受け入れることにも長けています。企業は、彼らのこうした適応力の高さを理解し、最新の技術やトレンドを反映させたマーケティング戦略を採用することで、Z世代の興味を引きつけやすくなります。
そして、Z世代の多くはスマートフォンを主なインターネット接続手段とする、モバイルファーストな生活をしています。そのため、ECサイトの設計もモバイルフレンドリーにすることが重要であり、いつでもどこからでもアクセスしやすいものにしておくことが求められるのです。
2ーSNSの巧みな活用
Z世代はSNSを主要なコミュニケーションツールとしていて、特に以下のような特徴を持つプラットフォームが好まれています。
- Instagram:ビジュアルに訴えるトレンド情報の収集・発信に最適なSNS。リールやストーリーズ機能も活用することで、視覚的なエンゲージメントが高まります。
- TikTok:Z世代が好むユーモアやクリエイティビティの宝庫となっているショート動画サービス。ハッシュタグを用いたユーザー参加型のチャレンジやキャンペーンが人気となっています。
- YouTube:エンターテインメントや商品レビューの場としても重要な動画共有サービス。ブランドのYouTubeチャンネルを設けて独自コンテンツを展開することで認知度を高められるでしょう。
- X:即時性・拡散力が優れているため、主に新商品の発見や口コミのチェックなどに利用されています。反面、インフルエンサーの情報発信については、他のSNSと比較して弱い面があるため、公式の新製品情報の発信やユーザー生成コンテンツを盛り上げる場としての利用が適しています。
Z世代はこうした複数のチャネルを並行して利用することで情報収集を行い、さらに口コミなども組み合わせて、商品購入前に入念にリサーチを行う傾向が見られます。SNSで気になるアイテムを見かけても、ネット上でリサーチした際に詳しい情報が見つからなければ購買に至らないケースもあるほどです。
さらに、価格に敏感であり、セールになるまで購入を見送る傾向もあります。そのため、マーケティングにおいてもセール情報などの購入チャンスを的確なタイミングで伝えることが重要です。
3ーストーリーテリングを重視
Z世代に対するマーケティングでは、商品の機能や価格だけをアピールしても響きません。その理由は、彼らが情報過多の時代に育ったことで、単なる商品説明ではなく、感情的なつながりや共感を求める傾向があるからです。このため、商品の背後に隠された理念を明らかにし、開発過程や創業者の思いなど、ストーリー性のある情報をメッセージとして発信する必要があります。
特に、ブランドの使命や価値観、社会的な取り組みなどのZ世代が好むストーリーは、購買意欲に大きな影響を与える可能性が高く、実際にも環境保護や社会貢献に積極的なブランドに対して高い支持が集まる傾向が見られるのです。
4ー動画コンテンツが主体
高速ネットワークの普及で動画配信が一般的になった時代に育ったZ世代は、同じチャネルからの情報収取の際にも、視覚的でわかりやすい動画コンテンツを好む傾向にあります。特に、ショート動画の人気が高く、先にも触れたTikTokやInstagramのリール機能を活用したコンテンツが人気です。
また、タイパ(タイム・パフォーマンス)を重視するZ世代の間では、長めの動画に関して倍速視聴のトレンドも広がっています。そのため、倍速で再生されても内容がわかるような構成を考え、キャプションを工夫することで、そのような視聴スタイルにも対応できるようにすることも必要です。
さらに、Z世代はリアルタイムでのコミュニケーションを重視するため、ライブ配信もブランドやインフルエンサーと直接つながる手段として支持されています。EC事業者もライブ配信を通じて商品紹介やQ&Aセッション、イベントの生中継などを行うことで、視聴者とのエンゲージメントを高め、信頼関係を築きやすくなるでしょう。
動画を活用したマーケティング施策について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
5ーカルチャーやトレンドに敏感
ポップカルチャーや最新のトレンドにも高い関心を持っていることも、Z世代の特徴です。SNSを介した情報の共有も、流行している音楽やファッションなどの話題が中心で、新しいスラングなどもすぐに取り入れてオンライン/オフラインの会話の中で使います。2024年上半期のトレンドランキングでは、スラングを含む言葉や、アサイーボウル、シャインマスカットボンボンなどの食べ物が、流行アイテムとしてランク入りしました。
SNS上で話題となった音楽、ファッション、食べ物などをすぐに試してみようとするのもZ世代の特徴です。食品に関しては、特に見た目の美しさに関心が高く、いわゆるインスタ映えする写真にして日常的に共有しています。
6ーユーザー生成コンテンツ(UGC)を信頼
Z世代は、他のユーザーが発信するレビューや評価、SNS投稿などを信頼し、購買判断の決定要因とする傾向があります。それは、企業からの一方的な売り込みのメッセージよりも、実際の生活者であるユーザーが発信するリアルな体験や意見を重視するからです。
そのため、EC事業者がZ世代の共感を得るには、SNS上でのハッシュタグキャンペーンや、ユーザーの投稿を公式アカウントで紹介するなど、UGCを活用したマーケティングを展開することが求められます。また、UGC投稿を活性化させるには、実際のユーザーをアンバサダーとして起用し、他のユーザーにとっての投稿のお手本となるようなリアルな体験や意見を発信してもらうことも有効な手段です。
UGCについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
7ーエシカルな価値観を重んじる
「エシカル」は英語の「ethical」に由来し、「倫理的な」「道徳的な」という意味を持つ言葉で、人や地球環境、社会、地域に配慮した考え方や行動を指します。Z世代は、実際にエシカルという概念や言葉を知っているとは限りませんが、彼らが受けてきた教育の影響や、SNSやネットニュースを通じて日常的に目にする環境破壊などの情報を通じて環境問題や社会的公正に対する意識が高く、結果的にエシカルな価値観を重視するようになったのです。
この価値観は彼らの消費行動にも反映されており、日本国内約6,800人を対象にしたオルタナの調査では、「リサイクル/再利用された材料を多く使用している」と回答した比率が、他世代に比べて上回っています。
また、Z世代はサステナブルな商品に対して「通常の2倍の料金を支払っても良い」と考える一方で、コストと自分らしさの演出の兼ね合いから古着やリサイクルショップを利用することにも前向きです。この点はEC事業者にとって商材の選択や、商品開発のコスト、価格設定を考えるうえでの参考になるでしょう。
8ー誠実さや透明性を好む
Z世代は、企業やブランドの情報も積極的に収集しているため、企業が情報を隠したり、不誠実な対応をした場合、瞬時にその情報が拡散され、ブランドイメージの低下につながる可能性があります。逆に、企業が透明性を持って情報を公開し、誠実な対応を行えば、Z世代からの信頼を得やすくなるわけです。
たとえば、大手カジュアルウェアブランドのユニクロは、サプライチェーンの透明性向上に取り組み、移民労働者支援のため、国際移住機関(IOM)と協働して、送り出し国の市民社会団体の選定と調査を進めています。また、サプライチェーンの労働者に対する複数件の救済措置の結果を開示するなどして、透明性の高い取り組みが評価されるようになりました。
9ー「体験」に惹かれる
Z世代は、企業が提供する体験型イベントに高い関心を示します。たとえば、ポップアップストアやワークショップ、オンラインイベントなど、ユーザーが直接体験できる場を提供することで、ブランドへの愛着を深めることができるでしょう。これらのイベントは、商品の魅力を直接伝えるだけでなく、ブランドの世界観や価値観を共有する場としても機能します。
また、Z世代はデジタルネイティブであるため、オンラインイベントにも積極的に参加する傾向があります。この観点からは、ライブ配信やバーチャルイベントを通じて、ブランドとのリアルタイムなコミュニケーションを図ることが効果的です。
国内のライブ配信の事例について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
10ーマイクロインフルエンサーを身近に感じる
Z世代は、自分の興味や嗜好と合う、フォロワー数が数千から数万人規模のマイクロインフルエンサーを信頼し、彼らの意見を購買判断の参考にしています。特定の分野に強く、専門的な知識を共有するマイクロインフルエンサーは、等身大の日常生活や本音を発信しており、Z世代にとって親近感を抱かせる存在であるためです。
そのような特性から、特定の趣味嗜好を持つフォロワーを抱えるマイクロインフルエンサーは、ニッチなコミュニティに強い影響力を発揮するため、彼らの協力を得ることで、従来のマーケティング手法ではリーチしにくいターゲット層にも効果的にアプローチしやすくなります。
11ー自身の興味や価値観と合うコミュニティを尊重する
Z世代は、自分の興味や価値観に合致するコミュニティを大切にしています。その理由としては、SNSの特性として、多様なカルチャーや価値観に触れる機会が多く、また、自分に合うコミュニティを見つけて参加することが容易になったことが挙げられます。
多様な価値観や生き方を尊重し、自分らしさを大切にするZ世代にとって、そのようなコミュニティに参加することで自己肯定感が高まり、承認欲求も満たされるため、帰属意識や結びつきが強まっていくサイクルが生まれるのです。
Z世代の購買行動に有効なマーケティング施策ができるShopify
Shopifyは、SNSやコミュニティとの連携機能にも強みを持ち、Z世代の嗜好に合ったマーケティングを実現します。ここからは、上で示したような11の特徴を持つZ世代に刺さるECビジネスを目指すうえでの、Shopifyの活用法について書いていきます。
SNS連携
Shopifyでは、日本のEC業者にも人気があるMataの公式「Facebook & Instagram」アプリをはじめ「Instagram Shop & Facebook Shop」などSNS連携アプリを活用することで、スムーズなソーシャルショッピング体験を実現しています。顧客は、SNSから直接、商品の購入に進むことができるため、コンバージョン率の向上につなげられるのです。
Meta公式アプリ「Facebook & Instagram」は、FacebookとInstagramを使った商品プロモーションやターゲティング、販売・在庫管理が簡単に行える
動画コンテンツの活用
Shopifyには、商品画像と説明テキストを購買意欲が高まる動画に自動変換できる「Vimeo Create」や、ShopifyのECサイトにYouTubeからの動画ギャラリーを簡単に追加できる「POWR」などの動画関連アプリもあります。
これらのアプリによって、わかりやすく商品の使用方法を示したりブランドのストーリーを伝えるなど、視覚的で感情に訴えるアプローチを実現できるため、Z世代の興味を引きつけるのに最適です。さらに、SNSと連携させて動画コンテンツを利用することで、視聴から購入へのスムーズな導線を作れるでしょう。
「Vimeo Create」アプリは、商品画像とテキストを使って瞬時に魅力的な動画を自動生成し、ECサイトやソーシャルメディアで簡単にシェアでき、売上とブランド力の向上に貢献する
オンラインとオフラインの融合
Shopifyの「Shopify POS」システムを使用すると、オンラインとオフラインの在庫や顧客情報を一元管理し、整合性のある顧客体験を実現できます。また、Shopify純正の「Stocky」アプリを使うと、「Shopify POS」と連動して在庫管理まで効率化することが可能です。
加えて、同じく純正の「Shopify Flow」アプリを利用すれば、豊富なテンプレートに基づいてローコードで様々なタスクを自動化でき、たとえば、特定商品の在庫が少なくなると自動的にアラートを発するような処理も行えるようになります。
純正の「Stocky」アプリは、適切な在庫管理を支援して店舗運営を効率化し、最適な商品構成で利益の最大化を後押しする
Shopify Flowについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
SDGsにつながるブランドストーリー
Shopifyは、カーボンニュートラル配送のオプションを全注文に対して提示する「Planet」アプリを提供しています。これによって、自社の社会的責任への取り組みをアピールすることができ、Z世代に響くブランドストーリーとして利用できるでしょう。
Shopifyの「Planet」アプリは、全注文にカーボンニュートラル配送オプションを提供し、SDGsに敏感な顧客の要望を満たしつつ、EC事業者の持続可能な取り組みをアピールできる
UGCの活用
Shopify向けの「Loox」は、商品の購入者対象の自動送信メールによって写真や動画付きの製品レビューをSNSで公開してもらうように促し、そのレビューを自動的に収集してECサイト内に表示することができます。また、「Fera」アプリは上記の機能に加えて、Amazon、Etsy、AliExpress、Google などからも商品レビューをインポートして表示させることが可能です。
これらのアプリを利用することで、信頼性の高いユーザー生成コンテンツをマーケティングに活用できるようになります。
「Loox」アプリは、商品の購入者に写真や動画付きの商品レビュー投稿を促して収集し、ユーザー生成コンテンツを販売促進につなげることができる
インフルエンサーマーケティング
Shopifyでは「Affiliatly」や「ReferralCandy」などのアプリを通じて、アフィリエイトプログラムやディスカウントコードを提供できます。これらを利用することでインフルエンサー経由のコンバージョンが得られやすくなり、効率的にブランド認知度を高めることが可能です。
また、純正の「Shopify Collabs」アプリを利用することで、インフルエンサーとの契約や依頼を一元的に管理し、個々のパフォーマンスを追跡しながら、最適なキャンペーンを実施することができるようになっています。
「Shopify Collabs」を利用すると、Shopifyに統合されたアフィリエイトマーケティングを簡単に実現でき、ブランドに合ったインフルエンサーに対する自動支払い歩合の提案などを通じて、売上の促進を図ることができる
コミュニティ連携
Shopifyでは「Mega Community」などのアプリを通じて、ブランドのファンや顧客同士のつながりを強化することができます。また、「Discord Tools」アプリで人気のオンラインコミュニティサービスのDiscordと連携したり、「Gleam Competitionsアプリを活用して、コミュニティを巻き込んだキャンペーンやコンテストを実施することで、ユーザーのエンゲージメントを高め、ファンコミュニティ全体の一体感を生み出すことが可能です。
こうしたコミュニティ連携を積極的に推進していくと、ブランドの信頼性が高まり、長期的なロイヤリティの醸成にもつながっていきます。
「Mega Community」アプリでは、メンバーシップ制のオンラインコミュニティページを簡単に作成し、ファン同士の交流を促進したり、メンバー向けの特典を提供したりすることで、収益の向上が期待できる
Z世代向けのEC構築ならShopify Plusパートナーへ
Z世代の購買力は今後も増加が見込まれており、彼らを理解し適切な戦略を取ることは、EC事業者にとって大きなチャンスとなります。彼らのデジタルネイティブとしての特性、多様性を重視する価値観、コミュニティを大切にする傾向などを踏まえたマーケティング施策を展開することが、成功への近道です。
Z世代の心をつかむためにも、彼らが日常的に利用するSNSやモバイル環境におけるアプローチの仕方を工夫し、データ分析も活用して個々のニーズに合わせてパーソナライズされた体験を提供することで、信頼関係を築き、長期的な顧客を獲得することができるでしょう。
「BiNDec」は、豊富な導入実績とハイレベルな技術力・知識量を認められたShopify Plusパートナーとして、中小規模から大規模のビジネスに向けた最適な運用戦略の提案も可能です。
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