越境ECとは、ECサイトを通して海外へ向けて商品を販売するビジネスモデルです。本記事では、越境EC市場の規模や成長性、成功させるための具体的なポイントと注意点などを解説します。グローバル市場に向けたEC事業を始めたい方は、ぜひ参考にしてください。
越境EC市場規模の最新データと将来予測
世界の越境EC市場は急速に拡大中で国を越えて新たな顧客を獲得するチャンスが到来しています。ここでは、経済産業省のデータをもとに、越境ECの現状と未来についてわかりやすく紹介します。
越境ECの市場規模は5.82兆USドル規模へ拡大

経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査」より
経済産業省の「令和5年度電子商取引に関する市場調査」によると、世界のBtoC-EC市場規模は5.82兆USドルとなっています。日本のシェアは3.4%なので、2023年の越境ECは約1,978億USドルの市場規模でした。
越境EC市場の拡大は、消費者の購買行動の変化やデジタル技術の進歩によって加速しています。今後も企業が競争力を高めるためには、現地のニーズに合わせたマーケティング戦略や、スムーズな配送体制の確立が重要となるでしょう。
越境EC市場をリードする主要国とそのシェア
先ほどの右の円グラフ、「2023年の国別のBtoC-EC市場規模トップ10」では、中国が51.3%、アメリカの市場規模は19.5%となっています。次点がイギリスの3.6%で、以降、日本の3.4%、韓国2.1%、インド1.7%、ドイツ1.6%であり、トップ10とは言うものの、中国とアメリカだけで市場の7割のシェアを抱えていることがわかります。
この背景には、アリババやAmazonなど、各国の大手ECモール企業のグローバル展開も影響しているでしょう。
一方で、日本や韓国、ヨーロッパ各国も独自の強みを活かしながら市場に参入しています。特に、日本は品質の高さやブランド力が評価されており、アジア圏を中心に人気が高まっています。今後、日本企業がシェアを拡大するためには、ターゲット国ごとの消費動向を的確に捉えた戦略が求められます。
今後の市場規模拡大の予測

経済産業省「世界の越境EC市場規模の拡大予測」(Facts & Factors.発表データより作成)
2021年に7,850億USドルだった世界の越境EC市場規模が、2030年には7兆9,380億USドルにまで成長すると予測されています。この成長の背景には、物流インフラの整備や決済手段の多様化により、国境を越えた取引のハードルもこれから更に下がっていき、自国にはない商品がさらに手軽に買えるようになっていくことや、国によっては自国よりも安価に入手できる点が影響していると考えられています。
日本では円安やインバウンド需要も続いており、まだまだ参入の余地はあります。越境ECを始めるならこのタイミングを逃す手はないでしょう。
インバウンド需要と、日本ファンに向けた海外へのECマーケティングの関係について詳しく解説した下記の記事も、ぜひ併せてご覧ください。
注目される消費者層別の市場動向
越境ECの成長を支える中心的な消費者層として、Z世代やミレニアル世代が注目されています。これらの世代は、SNSやスマートフォンを活用して最新のトレンドを追いかけ、積極的にECサイトを利用する傾向があります。
特に、「推し活」や「日本限定コスメ」など、日本でしか手に入らない商品を求めるニーズが高まっています。企業がこの消費者層を取り込むためには、SNSマーケティングの活用や、インフルエンサーとの連携によるプロモーション戦略が鍵となるでしょう。
Z世代の購買行動について、ECと決済のプロが語るこちらの記事も併せてご覧ください。
越境EC市場をけん引する業界と消費者ニーズ
越境EC市場は、さまざまな業界や商品カテゴリで急成長を遂げています。ここでは、越境EC市場をけん引する代表的な業界と主要な商品カテゴリ、そして消費者ニーズの変化について解説します。
人気の業界と主要商品カテゴリ

BEENOS株式会社「越境ECの利用意向に関する意識調査」より
アニメ・キャラクターグッズ
日本のアニメやゲーム文化の人気は世界中で高まっており、フィギュアやトレーディングカードなどのコレクター向け商品が売れ筋となっています。特に限定版の商品や、日本国内でしか手に入らないアイテムは、海外ファンの間で高い価値を持ちます。
アパレル、ファッション・美容、コスメ
日本製の衣料品は品質やデザイン性の高さが評価されており、欧米やアジア市場での人気が継続しています。また、バッグや時計、ジュエリーといった高級ブランド品も安定した需要があり、資産価値を重視する消費者層に支持されています。
日本の化粧品は「安全性の高さ」「肌に優しい成分」といった点で高く評価され、越境EC市場で根強い人気を誇ります。特に、中国市場ではスキンケア商品の需要が高く、継続的な成長が期待されています。また、オーガニックや環境に配慮した商品など、サステナビリティを意識したコスメの需要も拡大中です。
消費者ニーズの変化

近年の円安の影響で、日本の商品は海外消費者にとって「お得」に感じられるようになりました。その結果、従来は高額すぎて購入をためらっていた層にもアプローチが可能になり、新規顧客の獲得につながっています。
また、帰国後も同じ商品を購入したいという日本を訪れたインバウンド旅行者のニーズも増えています。特に、ドラッグストア商品や、化粧品、食品、伝統工芸品などを訪日時に購入し、帰国後に越境ECを利用してリピート購入するケースが増えています。
今後も、越境EC市場は消費者のライフスタイルやトレンドの変化に応じて進化していくと考えられます。日本企業がこの市場で成功するためには、各国の消費者ニーズを的確に把握し、戦略的に商品を展開することが重要です。
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越境EC市場における注意点
越境ECはグローバルな市場で顧客を拡大するビジネスチャンスを提供しますが、国内のEC事情とは異なる課題もあります。ここでは、越境EC市場における主な注意点について解説しましょう。
国際物流のコスト・配送期間の管理
越境ECでは、商品を海外に届ける際の物流の複雑さが大きな課題となります。国ごとに配送コストや所要時間が異なるほか、関税や通関手続きによっては予定よりも時間がかかることもあります。
しかし、消費者は国内ECと同じように迅速かつ低コストの配送を期待しているため、適切な配送ルートの選定や、現地物流サービスとの提携が不可欠です。
言語・文化・決済方法に合わせた「現地化」
越境ECの成功には、ターゲット市場ごとの文化や消費者ニーズを反映した「現地化」が不可欠です。ただ英語対応するだけでは不十分であり、現地の言語での商品説明や、消費者の購買意欲を高めるマーケティング表現を取り入れることが重要です。
また、決済方法も国ごとに異なるため、中国ではAlipay(アリペイ/支付宝)、欧米ではクレジットカードやPayPalなど、各市場で主流の決済手段を導入し、購入率の向上につなげるようにしましょう。
国ごとの法規制・税制の遵守で罰則リスクを回避
越境ECでは、国ごとの法規制や税制の違いを正しく理解し、遵守することが極めて重要です。輸入許可が必要な商品や禁止品目を誤って販売すると、罰則や罰金のリスクが生じるため、事前の調査が欠かせません。
また、付加価値税(VAT)や消費税(GST)の申告・納税も必要となるため、適切な税務処理を行う体制を整えることが求められます。こうしたリスクを避けるためにも、越境ECに精通した専門家や事業者の支援を受けることを検討するとよいでしょう。
越境ECに最適なECプラットフォームの選び方
越境ECを成功させるには適切なプラットフォーム選びも大切です。ここでは、特に重要なポイントについて解説していきます。
越境ECを実践するための各プラットフォームについて、こちらの記事でも紹介しています。ぜひご覧ください。
グローバル対応のサポートと支援体制の充実度を確認
ECプラットフォームが対応できない国があると、ビジネスの展開で支障をきたす場合があるため、複数の国に対応できるグローバルなECプラットフォームを選択することが重要です。そして、日本語でのサポートが受けられるかどうかが、国内のEC事業者にとって運営のスムーズさを左右するポイントになります。
また、初めて越境ECに挑戦する場合でも、越境ECの支援事業者と連携できるプラットフォームを選べば、トラブル対応や運用の最適化がスムーズに進むでしょう。ECプラットフォーマーからの直接サポートは対応に時間がかかるケースもあるため、支援事業者の存在が重要です。迅速なサポートを受けるためにも、公式の認定パートナー制度の有無などを確認し、信頼できる支援事業者を選ぶことが、円滑な越境EC運営につながります。
ターゲット国の言語・決済に対応したECプラットフォームを選ぶ
自社の商品を販売する国の言語や通貨、決済手段に対応したECプラットフォームを選ぶことが重要です。
例えば、中国や韓国ではQRコード決済が主流である一方、マレーシアやドイツでは銀行振込が一般的です。ターゲット市場の消費者が利用しやすい決済方法を導入することで、購買率の向上につながります。また、商品ページや決済画面を現地の言語で提供することで、顧客の安心感を高めることができます。
国内外の豊富な決済手段を導入できるサービスのKOMOJUが、越境ECのトレンドをお伝えした下記の記事もぜひ参考にしてください。
国際配送の対応状況や税率計算機能をチェック
スムーズな配送は顧客満足度を左右するため、国際配送業者との連携が可能なプラットフォームかどうかを確認しましょう。配送オプションが充実していれば、物流の柔軟性が高まり、配送遅延やトラブルのリスクを減らせます。
また、国ごとに異なる法規制や税制にも注意が必要です。税率の自動計算や関税の事前表示が可能な機能が搭載されているプラットフォームを選ぶことで、運営負担を軽減し、消費者とのトラブルを防ぐことができます。
越境ECの成功事例とその背景
越境ECは、正しく運営することで国内市場を超えた大きな成長のチャンスを生み出します。近年、グローバル市場での日本ブランドの人気が高まっており、海外の消費者に向けた販売戦略を的確に展開すれば、新たな顧客層を獲得することが可能です。ここでは、実際に越境ECで成功を収めた企業の事例と、その成功の背景について紹介します。
これから紹介する2つのECサイトは共にカナダ発の「Shopify」というECプラットフォームで構築されています。130以上の通貨と50以上の言語に対応するなど、多くの地域に対応したサービスを展開していることもあり、世界175ヵ国、国内外で多くの企業に採用されています。
Shopifyで越境ECを行うメリットや注意点、Shopifyを越境ECに対応させるための方法についてはこちらの記事をご覧ください。
火消魂(HiKESHi SPiRiT)|日本の伝統文化を活かしたアパレル戦略

火消魂の公式ECサイト。翻訳アプリのLangShopを導入し、日本語、英語、中国語に対応している。
火消魂は、江戸時代の消防士「火消し」のスタイルを取り入れたアパレルブランドです。そのルーツは、オーナー・佐藤氏の父親が経営していた、ニューヨークの消防士のユニフォームなどを輸入販売したアメカジショップにあります。事業継承にあたり、海外市場での展開を狙って「火消魂」へとブランドを刷新しました。
日本の伝統的なデザインと、アニメや特撮作品とのコラボレーションを積極的に行い、日本文化を強く打ち出す戦略を取りました。また、海外のインフルエンサーを起用したマーケティング施策を実施し、SNSを活用してブランドの認知度を拡大。結果として、グローバル市場においても高い支持を獲得し、成功を収めました。
越境ECの施策について詳しくインタビューした記事も、ぜひ併せてご覧ください。
一保堂茶舗|2つの越境ECで海外市場を開拓

一保堂茶舗のアメリカ・カナダ向けのECサイト。海外顧客にも信頼感を与えるレビュー機能を搭載している。
京都に本店を構える一保堂茶舗は、300年以上の歴史を持つ老舗の日本茶ブランドです。国内市場で確固たる地位を築きながらも、「全世界の顧客にお茶を届ける」というビジョンのもと、越境ECに参入しました。
アメリカとカナダ向けの北米市場に特化したECサイトと日本から直接配送できる国や地域に向けた「IPPODO TEA Global」の2つの越境ECを運営しています。
一保堂茶舗の高品質な日本茶は世界中の消費者に評価されており、特に、抹茶はその珍しさから人気の高い商品となっています。しかし、日本茶に馴染みのない海外の消費者には購入までのハードルが高いケースもあります。そこで、アメリカ・カナダ向けのECサイトでは、「1対1のチャットサポート」や「お茶の診断プログラム」の導入など、商品選びをサポートする機能を充実させることで、CV率の向上を後押ししています。
一保堂茶舗の柔軟なマーケティングについて、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
越境ECでは、単に商品を販売するだけでなく、ターゲット市場のニーズに合わせた戦略を展開することが成功の鍵となります。今回紹介した事例からもわかるように、ブランドの独自性を活かしながら、マーケティングや顧客対応を最適化することで、グローバル市場での成功が可能になります。
Shopifyで越境ECに参入するならパートナー支援の活用がおすすめ
越境ECは特定の業界に限らず、どのビジネスでも可能性を秘めています。紹介した事例のように、ターゲット市場のニーズを的確に捉えた戦略を展開すれば、世界中の顧客にリーチできる新たな成長機会となります。
ECサイト運営において、販売チャネルの拡大は売上向上の重要な戦略のひとつです。そのターゲットが海外にも広がることで、ブランドの価値を世界へ発信し、新たな市場を切り開くチャンスが生まれます。
越境ECを成功させるには、通貨や決済、多言語対応などの機能が充実したShopifyの活用が有効です。Shopifyはもともと海外で開発されたECプラットフォームであり、グローバル市場に適応しやすい柔軟性を備えています。さらに、Shopify認定の構築・支援事業者と連携することで、Shopifyの公式カスタマーサポートに問い合わせるよりもスピーディに対応してもらいやすくなるでしょう。
BiNDecはShopify Premierパートナーとして、越境EC対応の機能を備えたECサイト構築を支援しています。Shopifyで越境ECの展開を検討の際は、ぜひご相談ください。