2023年秋にロサンゼルスで開催されたEnterprise Partner Summitでも、BtoB関連のセッションに力が入っていたように、これまでBtoCやD2Cを中心に事業展開を行ってきた企業も、ビジネス拡大のためにBtoBの取引を強化する動きが高まってきています。
そして、ShopifyもShopify PlusのBtoB機能によって、こうした企業のチャレンジをサポートする体制を整えてきました。
今回は、これからBtoB展開を考える皆さんの参考にしていただくために、BtoBのECサイトの概要やメリット、成功事例を紹介していきます。
Enterprise Partner Summitで語られた全容はレポートはこちらをご覧ください。
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BtoBのECサイトとは?
BtoBのECサイトとは、インターネットを介して企業間の商取引を効率よく行うために構築されたWebサイトのことです。個人向け商取引を意味するBusiness to ConsumerがBtoC、同じくメーカー直販であるDirect to ConsumerがDTCと略されるように、企業間を指すBusiness to Businessを略したBtoB(またはB2B)がこの種の事業領域を指す通称となっています。
たとえば、文具はオンラインショップを含む販売店を通じて個人客に販売されますが、企業や教育機関などの組織が一括購入をして社員や職員に配布することも少なくありません。後者の場合、一度にまとまった数の取引となるため、納期の確定や見積書の発行、数量や相手先に応じた割引率の設定など、ECサイトは個人客対象とは異なる機能を持つことが必要です。
このようなBtoBに特化したECサイトは、メーカーとそうした企業や教育機関との取引に利用されており、個人客に小売を行うサードパーティの販売店に対して商品の卸を行う場合にも使われています。
重要なのは、このBtoBの電子商取引が年々増加傾向にある点です。これまでBtoCやDTC中心だった企業も、販売店を募って卸業を始めたり、他の企業や組織に対する大口取引を開始することで、ビジネスの拡大を図っていることが、その背景にあると考えられます。
出典:経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書」
そもそもBtoB-ECとは?取引を効率化する仕組みをより詳細に解説した記事もぜひ合わせてご覧ください。
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BtoBのECサイトのメリット
電子商取引という大枠では、これまでも企業間取引のためのEDI(Electronic Data Interchange=電子データ交換)という仕組みがありました。
しかし、それは、取引関連の文書を電子化したうえで相手先企業のシステムに合わせて変換するという非効率的なものでした。共通の変換ルールを定めた標準EDIや、業界ごとに共通ルールを決める業界VANというものもありますが、各企業がそのルールを採用する必要があり、汎用性に課題が残されています。
これに対して、BtoBのECサイトには以下のようなメリットがあります。
受注ミスや問い合わせ対応の低減
手作業による受注・検品・発送では起こりやすいミスや、商品情報が体系化されていない状態では不可避な顧客からの問い合わせ対応は、ビジネス効率化の大敵といえ、働き方改革にとってもマイナスになります。
BtoBのECサイトでは、受注業務がシステム上で完結し、顧客に対する価格や在庫などの情報提供もリアルタイムで適切に行えるため、ミスや問い合わせ対応を減らすことが可能です。
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顧客管理やマーケティング施策の実現
BtoBのECサイトでは、受発注の帳票管理だけでなく相手先や掛率の異なる取引でも一元的に扱うことができ、顧客管理が容易になることも大きなメリットです。
顧客管理をしっかり行えると、そこから得られるインサイトを活かして効果的なマーケティング施策を打つことができるため、業務の効率化だけでなく、販路や売上の拡大にもつなげられるようになります。
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顧客本位の運用
BtoBのECサイトでは商品を電子カタログで提示できるため、紙のカタログ制作にかかる費用も節約でき、情報の修正や新商品の追加などもタイムリーに行えます。また、通常の業務時間外でも注文を受け付けることができ、海外からの発注でも商機を逃しません。
こうしたメリットは顧客にとってもサービス体験の向上につながるため、顧客本位のビジネス姿勢を示すことにもなるのです。
将来的に必要になるシステム改修のコストが不要
この他にも、EDIではISDNの専用回線を利用するため、ISDNサービスが終了する2024年には他の方式に乗り換える必要があることや、2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法によって電子取引の帳票の電子データ保存が義務付けられたことでシステム改修が必要になっていたりします。
前者の2024年問題には、インターネット回線を利用するWEB-EDIによる解決案もありますが、相手先企業のフォーマットに合わせることに変わりないため、「買い手主導」になりがちで、取引先の増加に伴って個々の管理画面が増えて煩雑化し、コストアップにもつながりかねないことが難点です。
Shopify Plusを利用するBtoBのECサイトでは、こうした問題が発生せず、将来的な法改正などにもShopify側が対応するため、本来の業務に専念できることが大きなメリットとなります。
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なぜ、今 BtoB ECサイトが注目されるのか?
こうしたメリットを持つBtoBのECサイトが、近年、特に注目されるようになったことには、企業の取引先構造とリソース配分が関係しています。この点を少し掘り下げておきましょう。
「マス取引先」向けのEC化がBtoBビジネスを底上げする
一般にBtoB事業の取引先構造は3層に分かれており、売上の半分以上を占める少数のトップ取引先、同じく1/4程度を占める数十社程度の中堅取引先、そして、売上的には1割に満たないものの多数の企業が含まれて処理が煩雑になりがちなマス取引先から構成されます。
上位の2層は、それなりの担当者をつけて費用をかける、つまりリソースを割いても見返りとのバランスが取れますが、マス取引先は人海戦術で手数をかけても、それに見合う成果を得にくいものです。
逆に、マス取引先は的確な省力化やマーケティング施策を行えれば、母数が多い分、業績アップにつなげやすい領域だといえ、EC化によってビジネスの底上げを実現しやすいのです。
BtoB ECサイトの2つのパターンとは?
ちなみに、BtoBのECサイトには2パターンがあり、それぞれ「クローズド型」と「スモール型」(または「専用ストア型」と「ブレンド型」)と呼ばれています。
クローズド型では、BtoBの専用サイトを設けて認証された法人のみがアクセスできるのに対して、スモール型ではBtoCとBtoBの顧客のどちらもアクセス可能で、法人顧客の認証を行うとBtoB向けの商品や価格を確認できる仕組みです。
スモール型のほうが管理が一元的で楽ですが、クローズド型には個人顧客と法人顧客に対して別々の施策を打ちやすいという特徴があります。
Shopify Plusはどちらにも対応でき、後述する成功事例でも個々のビジネスに合わせたパターンで利用されているので、自社がどのようなBtoB展開を目指しているかによって選択されると良いでしょう。
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Shopify流 BtoBサイトのための機能&テクノロジー
さて、Shopify Plusには、BtoB向けのメイン機能とそれらを支援するフォロー機能が用意されています。
Shopifyが作り込んだBtoB向けの便利機能
メイン機能は次のようなものです。
企業プロファイル
BtoBでは、取引先によって支払条件や権限が異なってきます。つまり、掛け払いなのかクレジットカードか、あるいは、割引率などが個々に違うわけです。
そこで、それぞれの企業に対する取引条件や価格、決済方法などをプロファイルとして設定できるようになっています。
価格リスト
従来はタグや専用アプリを使う必要があった、購入者ごとの個別の価格設定を標準機能として利用できます。
支払い条件
支払い条件を自動的に設定する機能です。支払い期限が来た注文を、管理画面から追跡して回収していくことができます。
下書き注文の作成
購入者に代わっての注文作成や見積提案などで使える、注文の確認と承認が管理画面で行える下書き注文(ドラフトオーダー)では、ディスカウントを反映することも可能です。担当者同士の交渉で価格が変動するBtoB事業者にはかなり使える機能と言えるでしょう。
カスタマイズ可能なBtoBロジック
Shopify Functionsを使うことで、購入者に合わせた配送と支払い、卸売割引などをカスタマイズして自動的に適用するためのロジックをチェックアウト画面に直接構築できます。
セルフサービスポータル
取引先が、アカウントの管理や購入拠点の選択、自社の購買履歴の確認などをセルフサービスで行える機能です。
メイン機能を側面支援するフォロー機能
BtoB向きの機能としては、上記のほかにも以下のようなものがあります。
- BtoBとBtoCのストアフロントを連携させてログインできる機能
- 卸売先登録や取引のサマリー
- 卸価格の一括または個別設定機能
- 自社の営業担当者が、取引先からの電話発注に基づいてECサイトで仮注文を代行できるSales Rep Support
- あらかじめ、取引先企業に応じた専用の登録フォームを用意して登録作業を簡略化でき、楽に取引が開始できるようにするCompany Account Requests
- 取引先企業ごとのコミュニケーションメールや、注文状況に基づく請求書通知などのルーティン化した処理を自動化するMore Automations with Flow
- 商品のリスト表示とカートへの一括追加を可能とし、まとめ買いを行いやすくするQuick Order List
- 購入数に応じた割引率を設定可能可能なVolume Pricing
- スモール型のECサイトで、BtoBのIDでログインした顧客に対して、専用商品のリスト表示や一括カート追加を実現するStore front Contextualization
Shopifyは、このような機能を定期的に追加し、常に進化を続けているのです。
BtoB ECサイトでShopifyが優れている理由と構築時の注意点を紹介した記事も、ぜひ合わせてご覧ください。
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ShopifyのBtoB ECサイトで成功した10社
ここで、ShopifyベースのBtoB ECサイトで具体的に成功した国内外の事例として、10社を挙げておきましょう。一見するとBtoC中心のビジネス展開をしているように思える企業でも、BtoBで業績を伸ばしていることがわかります。
BtoCとBtoBの二刀流で売上高400%アップのダイソー
100円ショップの先駆けとしてBtoC企業として見られがちなダイソーは、大口需要の拡大に伴い、BtoCサイトの「ネットストア」に加えてBtoBサイトの「オンラインストア」を開設しました。
後者をさらにスケールアップしながらリプレースすることになり、計画された移行期間内に実現可能なプラットフォームとしてShopify Plusを選択した結果、大きな売上アップを果たすことができたのです。
従業員向け販売にBtoB機能を活用したカンロ
キャンディやグミ製品で知られるカンロは、ブランドサイトにEC機能を一体化した「Kanro POCKeT」というサイトをShopify Plusで運用しています。ユニークなのは、BtoB機能を他企業向けの取引ではなく、従業員向けの販売に利用することで、社員割引にあたるサービスを実現したことでしょう。この仕組みがうまく機能していることから、同社は、株主向けの商品販売への応用も計画中です。
店舗向け什器販売を効率化したSHOP COPACK
様々な業種の小売店や飲食店向けにデザインの優れた什器やマネキンを販売しているSHOP COPACKでは、ECサイトで多種多様な商品をカテゴリー別にわかりやすく提示する必要がありました。
また、サイト内の導線を明確化することで顧客の便宜を図っており、顧客本位のBtoBオンラインストアをShopify Plusで構築しています。
Instagramのフィードをサイト内に表示したり、購買促進のためのレコメンド機能やチャット機能なども取り入れながら、店舗用什器やマネキンなどの効率的な販売を実現しています。
BtoCとBtoBをつなぎ海外にも販路を広げる京都醸造
日本発であることを強く意識したクラフトビールの製造販売を手掛ける京都醸造は、それに留まらず、バーの経営やグッズ販売も行っています。
一般消費者向けのBtoCのECサイトから販売店や飲食店向けのBtoBのECサイトに飛べる構造で、後者は登録ユーザーのみがアクセスできる仕組みです。メッセージングアプリとの連携や海外向けの英語サイトの運用も行っており、ECサイトをうまく活用して事業を拡大しています。
Shopifyでの越境EC(海外販売)設定方法・成功事例も紹介しています。ぜひ合わせてご覧ください。
BtoB機能の活用して売上高を200%アップしたAMR Hair & Beauty
6000以上ものヘアケアや美容用品を扱うAMR Hair & Beautyは、過去に別のプラットフォームを使ってBtoBのECサイトを運用していたときにブラックフライデーの需要の負荷によってシステムがクラッシュしたことがあり、安定性やチェックアウトのスムーズさからShopify PlusのBtoB機能を利用するようになりました。
その結果、売上高200%アップに加えてBtoBの平均受注金額の77%アップ、コンバージョン率の前年比プラス93%の成長と、順調にビジネスを伸ばしています。
顧客に寄り添うBtoB事業を実現できたBrooklinen
顧客を大切にしたD2Cビジネスで信頼を得てきたベッドリネン業者のBrooklinenは、BtoBの卸事業において、リアル店舗を通じたオフラインでの取引でしか同等のホスピタリティ(もてなしの心)をもって商品を販売することができない点が悩みでした。
しかし、Shopify PlusによりBtoB事業のEC化により効率化を実現、顧客サポートの時間を80%も増やすことができました。それにより、企業間取引に伴う複雑さを解消しながらBtoB顧客にもD2Cのバイヤーと同質のブランド体験を与えられる使いやすいサイトを実現しています。
BtoB機能で卸部門の収益を3倍に増やしたKulani Kinis
800品目もの高品質な水着を扱うKulani Kinisは、常にD2Cと卸事業の2本建てでビジネスを行ってきました。しかし、近年、D2C部門の成長によって卸部門の拡大も目指すことになり、マス取引先を増やすためにBtoB向けECサイトを刷新する必要に迫られたのです。
すでにD2C向けにShopify Plusを利用していた同社は、そのBtoB機能を活用して卸部門の顧客数と収益を3倍に増やし、年間60%の収益の伸びをも達成させました。
カスタムチェックアウトとBtoB対応で収益性を上げたEn Gold
オーストラリアでアジアのテイストを取り入れたモダンな家具を製造販売しているEn GoldはD2Cを核とするビジネス展開をしてきました。しかし、大口の家具需要にも応えるべくBtoBの重要性を認識したことから、Shopify PlusのBtoB機能の活用によって売上を大きく向上させることができたのです。特に、家具のサイズに応じて送料を的確に調整できるなど、細かなカスタマイズに対応可能なだけでなく、取引先のニーズに応じてパーソナライズされたオンラインカタログや価格リストを表示できる点が評価されています。
売上に直結Shopifyのチェックアウトのカスタマイズ改善ポイントについてまとめた記事も合わせてご覧ください。
多国展開の収益310%アップを果たしたMemobottle
クラウドファンディングを成功させてデザイン性に優れたウォーターボトルのビジネスを軌道に乗せたMemobottleは、急激な成長によって70カ国に散らばる14000人の支援者に製品を届けるというチャレンジに直面しました。それをきっかけに、増加した海外の販売業者などからの大口の取引にも対応できるBtoB向けのECサイトをShopify Plusによって実現。今では世界中の扱い店も1200箇所に増え、年間収益の310%アップも果たしています。
Shopify PlusでBtoB顧客の24%増に成功したTileCloud
オーストラリアでのタイル販売で、住宅のリフォームに新風を吹き込んだTileCloudは、月間の収益が1200万ドルを超えたときから、事業の成長を維持するためにD2CとBtoBの双方を扱うECサイトの最適化に着手しました。
特に、BtoB部門がより多くの卸業者と取引できるようにすることを重視して、従来のShopifyからShipify Plusへとアップグレードし、BtoB専用のECサイトも立ち上げた結果、年間の平均受注金額の34%増、コンバージョン率の26%増、BtoB顧客の登録者数の24%増を達成。業務店顧客にも個人客と同質のオンライン体験を実現しています。
Shopify Plusの詳細はこちらの記事をご覧ください。
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ここに注意!BtoB ECサイト構築のポイント
実際にBtoBのECサイトを構築するうえでは、以下のような注意点もあります。これらのポイントを押さえて効果的なサイトを作ることが重要です。
明確なターゲットを持つ
まず、不特定多数の消費者を対象とするBtoCのECサイトとは異なり、BtoBのECサイトでは、業界や商材に応じて顧客となる企業や組織がはっきりしています。そのため、ターゲットの絞り込みを行ない、それに適した構成のサイト構築を心がけてください。
明快なサイトデザインを心がける
BtoCのECサイトでは、見た目重視のデザインによって顧客の興味を惹くこともありますが、実用性が優先されるBtoBの場合には、かえって使いづらいことがあります。
Shopifyテーマライブラリには卸業者向けのテンプレートもありますが、テーマをダウンロードし、Liquid(Shopify独自のテンプレート言語)などを使って自社のビジネスにマッチするように編集を加えテーマをカスタマイズすることで、BtoBのECサイトに相応しい一覧性や網羅性に優れたサイト構築を実現できます。明快でわかりやすいサイトを目指しましょう。
ShopifyのECデザイン参考サイト事例はこちらをご覧ください。
規模拡大に応じてShopify Plusを選択
そして、取引が小規模なうちはShopifyのプレミアムまでのプランとアプリの組み合わせでもBtoB対応を図れますが、取引量の増大に応じてBtoB機能が充実したShopify Plusへの移行を考えてください。基本料金の負担は増えますが、事例にもあるように有効活用して、それに見合うビジネスの拡大を得ることで、対投資効果の高いプランとして利用できるはずです。
BtoBのEC事業展開には実績豊富なShopify Plusがおすすめ
人々の消費マインドが回復しつつある今は、BtoBによる事業拡大を目指す良いタイミングともいえます。そして、BtoBで事業展開を考えている企業にとって、Shopify Plusが最適のソリューションを提供できるECプラットフォームであることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
BtoBのECサイトを構築するのであれば、Shopify Plus Partnerとして豊富な経験と実績を持つBiNDecにおまかせください。ご相談を承り、的確なサイト提案をいたします。
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