ECサイト運営で必ず意識しなければいけないのが、ランニングコストです。いくら売上があってもランニングコストが高ければ利益率が下がってしまいます。
ECサイトを構築・運営を始めるのであれば、事前に初期費用やランニングコストを算出し、問題なく運営できるかどうかを検討すべきでしょう。
この記事では、ECサイトの運営にかかるランニングコストの種類や費用の目安に加え、支出を抑えるコツなども紹介します。ECサイトを始める方、ランニングコストにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
ECサイトを始める時に知っておきたい、ビジネスモデルの種類や集客運用方法などをまとめた記事もありますのでぜひご覧ください。
知っておくべきECサイト運営のランニングコスト
実店舗であれば家賃や光熱費など、私生活に関連する経費が多いので、店舗運営にどれくらいの費用が必要かイメージしやすい部分もあります。ですが、ECサイトの場合は想像しにくい部分が多いという方もいるでしょう。
運営を開始してから「この費用も毎年かかるのか?」と資金不足に気づく前に、きちんと必要なランニングコストを把握しておきましょう。
サーバーの維持費用
ECサイトを運営するのであれば、サーバーが必要になります。サーバーは、自社で専用のサーバーを構築するか、レンタルサーバーを利用するかを選ぶ必要があります。
ですが、よほど大規模なECサイトでない場合は、通常レンタルサーバーで十分です。レンタルサーバーの維持費用としては、利用するプランやレンタルサーバーのサービスによって変動しますが、年間500〜20,000円程度かかります。
なお、サーバーを選ぶ際にはセキュリティの強固さも重要です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ドメイン登録の維持費用
ECサイトを運営するためには、ドメインと呼ばれるお店の住所のような存在が必要になります。ドメイン取得サービスで、独自ドメインを登録しましょう。ドメイン登録の維持費用は、年間500〜6,000円が目安です。
費用に差があるのは、ドメインの種類で価格が変わるためです。「〇〇.com」「○○.jp」「〇〇.net」など、一般的に浸透しているトップレベルドメインを選択すると高額になります。
独自SSLサーバー証明書取得費用
独自SSLサーバー証明書とは、インターネット上で行われるデータ通信を暗号化する技術を導入していることの証明書です。SSLと短縮して呼ばれることも多いです。
個人情報やクレジットカード情報を扱うECサイトでは、顧客に対する責任はもちろん、顧客からの支持を受けるためにもセキュリティ面で安心できる仕組みは必須でしょう。
この独自SSLサーバー証明書には、無料のものと有料のものがあり、有料の独自SSLサーバー証明書を取得する場合、年間12,000〜90,000円が目安となります。価格帯に幅がありますが、これは認証タイプの違いや、マルウェアのセキュリティ診断が受けられるサービスの有無などで変動します。
決済代行サービスの利用料金
様々な支払い手段を持っている日本のECサイト利用者では、それらに対応すべく決済代行サービスを利用することになります。決済代行サービスを利用すれば、クレジットカード決済やコンビニ決済、ネット銀行決済などが利用できるようになります。
決済代行サービスと契約すると年間42,000〜96,000円(月額手数料3,500円〜8,000円)かかります。また、実際に商品が売れた場合、売上の3〜5%を決済手数料として支払う必要があります。
各ターゲットに適した決済方法について詳しく解説した記事もありますので参考にしてください。
ECプラットフォームの利用料金
ECサイトをカートシステムから自社で構築するケース以外、多くのECサイトではECプラットフォームの利用料金がかかります。例えば、ASPカートシステムを利用する場合、年間36,000〜120万円(月額3,000〜10万円)が目安です。
機能によって金額が大きく変わるので、自社の要件合わせて費用対効果を考え、検討するとよいでしょう。各ECプラットフォームの金額感については、後ほど詳しく解説します。
ECプラットフォームそれぞれの特徴については、こちらの記事をご覧ください。
ECサイトの保守費用
ECサイトは構築した後も、定期的な点検保守が必要です。例えば、セキュリティ対策やOSなどのアップデートへの対応も行わなければいけません。
これらの保守点検費用は月額で10万円前後が目安となります。
外注人件費
ECサイトの業務範囲は多岐に渡ります。販売業務だけでなく、商品ページに掲載する写真の撮影や説明文の作成、SNSの更新やSEO対策なども必要です。
これらは、自社のスタッフで行うこともできますが、「商品ページに利用する綺麗な写真を撮れるのか?」「商品紹介ページのテキストは読みやすいか?」「サイト全体のSEO対策の知識はあるのか?」などを考えると、自社スタッフだけでは対応が難しいケースもあるでしょう。
そこで、商品ページなどのコンテンツ制作やSEO対策などを外注する費用も、ランニングコストに予め入れておくと安心でしょう。目安としては、月額50,000〜30万円です。
ほかにも、外注人件費としては、発送作業の代行費や、コールセンターの委託費などがあります。これらは、ECサイトの規模などで必要かどうかが変わってきますので、自社のスタッフで手が回らなくなってきてから対応してもよいでしょう。
ECサイト運営以外の費用
ECサイト運営のランニングコストの括りからは多少外れますが、必ず必要になる費用があります。
例えば、商品を発送する際には、ダンボールなどの梱包材や商品を傷つけないための緩衝材、ガムテープなども必要です。また、商品に同梱する納品書を印刷するためのプリンターやインク、用紙に加え、見栄えをよくするための封筒などもあるとよいでしょう。
また、ECサイトであっても、商品自体の在庫を持つのであれば、規模によっては倉庫を借りる必要があるかもしれません。このように、ECサイトの運営にはさまざまな費用がかかるのです。
もちろん、ランニングコスト以外にも開業時に必要な資金も細かく把握しておくのが良いでしょう。使える補助金と構築・運用コストについてこちらの記事で紹介していますので、合わせてご覧ください。
ECサイトのランニングコストはプラットフォームによって異なる
ECサイトを運営するランニングコストは、利用するプラットフォームで異なります。また、構築の際にもプラットフォームごとに初期費用も異なりますので、トータルコストにも注意する必要があるのです。ここでは、プラットフォームごとの初期費用と月額の目安をご紹介しましょう。
ECモール
ECモールとは、AmazonやYahoo!ショッピング、楽天市場などのECサイト内に出店できるプラットフォームです。
初期費用は無料~数十万円、月額利用料は10万円以内が目安となります。ただし、それに追加して売上に応じた手数料を支払う必要もあります。
そのため、初期費用こそ安いものの、売上が上がればトータルコストは増えていきます。ですが、保守やシステムのバージョンアップなどはベンダー側が行ってくれますので、これまで解説したランニングコストのいくつかはかかりません。
ASPカート
ASPカートは「ASP型EC」とも呼ばれるように、ショッピングカートシステムだけでなく、ECサイト全体を構築する機能も搭載されているプラットフォームです。
初期費用は数万円~100万円、月額利用料は10万円以内が目安です。ECサイトのデザインや独自の機能をカスタマイズする場合にはさらに高額になるケースもあります。
ただし、ASPカートも保守やシステムのバージョンアップ、新機能の開発などはベンダー側が行ってくれますのでランニングコストを抑えることができるプラットフォームの1つと言えるでしょう。
ネットショップごとの手数料を詳しく比較した記事もありますので、合わせてご覧ください。
オープンソース
オープンソースとは、WordPressやEC-CUBEなど無償で公開されているソースコードを利用してECサイト構築することを指します。
カスタマイズ性は高いですが、社内にコードを扱えるスキルを持つスタッフがいない場合はECサイトの構築から保守やアップデートなど、すべて外注などに頼ることになります。そのため、初期費用は無料〜数百万円、月額費用は無料〜50万円が目安です。
また、コードが公開されているためにセキュリティ面で危険にさらされやすいという課題もあるため、保守にはしっかりとコストをかける必要があるでしょう。
ECパッケージ
ECパッケージは、ECサイトの構築に必要な機能が最初からそろっているプラットフォームです。こちらもカスタマイズの自由度がかなり高いものの、ゼロからプログラミングをする必要がない点が魅力でしょう。
ですが、ECパッケージは自社のサーバーにパッケージをインストールしてECサイトを構築する必要があるため、サーバーやシステムの保守費用も必要になります。
初期費用は50万円以上、月額費用は30万〜100万円が目安です。月額費用以外にも、パッケージという特性上自動的に機能やセキュリティがアップデートされることはありません。時代にそぐわないセキュリティ状態や、OSのアップデートによって問題が生じる可能性があるため、定期的にコストをかけて改修する必要も出てくるでしょう。
クラウドEC
クラウドECは、ECパッケージのクラウド版とも言えるプラットフォームです。ECパッケージと同様に、ECサイトの構築に必要な機能が最初からそろっていますし、カスタマイズの自由度も高いです。また、クラウド上で機能しますので、サーバー関連の費用などは必要ありませんし、アップデートなどもベンダーが対応します。
初期費用は100万〜500万円、月額費用は5万〜50万円が目安です。
フルスクラッチ
フルスクラッチとは既存のプラットフォームを利用するのではなく、自社で新規のECサイトを構築する方法です。フルスクラッチは予算次第で望む機能をすべて実装できますが、もちろんそれだけの開発費用がかかります。フルスクラッチの場合、初期費用は数千万円以上、月額費用も50〜100万円が目安です。
また、また開発が完了しても、システムの保守やアップデートなども必要ですので、自社で行わない場合は外注費がかかります。
費用以外にも、各プラットフォームの特徴をまとめた記事もありますので、比較検討の参考にしてください。
ECサイトのランニングコストを抑えるコツとは?
ご紹介したように、ECサイトの運営には初期費用や様々なランニングコストが必要です。ですが、これらはあくまで目安でしかありません。実際に構築するECサイトによって、安くも高くもなりますので、まずは自社の事業規模に合わせて調整してくことが大切です。ここでは、ECサイトのランニングコストを抑えるコツをご紹介しましょう。
必要な機能のみを導入する
必要な機能のみを導入することで、ランニングコストを抑えることも可能です。例えばECパッケージには豊富な機能がありますが、その中には自社のECサイトでは使用しない機能も存在するでしょう。
使わない機能の分まで利用料金に含まれてるので、自社ECにそぐわないプランを選んでしまうと余計なコストをかけていることになります。ECプラットフォームやプランの検討時には、自社にとってそれが本当に必要な機能かどうかを検討してください。
とはいえ、今は必要ではない機能でも、ECビジネスの成長とともに将来的に必要と考えられるものもあり、構築時の要件に含めるか判断が難しい場合もあると思います。そんな状況での解決の糸口には、Shopifyがおすすめです。
Shopifyは、ECサイトに必要な機能をスマートフォンのようにアプリで追加する点が特徴で、10,000以上のShopifyアプリから事業規模や成長したいタイミングに合わせて好きな時に機能の追加、変更が可能です。
運用や保守費用を抑える
運用や保守費用を抑えるのも、ランニングコストを下げる方法のひとつです。ですが、顧客の大事な情報を預かるECサイトではセキュリティ対策などは必須ですし、システムを安定させるための保守も行わなければなりません。とはいえ、自社でセキュリティ監視体制を持つのは現実的ではないでしょう。
そこで、自社でサーバーを管理しなくてよいプラットフォームを選ぶという方法があります。例えば、ASPやクラウドなどのサービスの中には、24時間体制でセキュリティを監視してくれて、常に最新のセキュリティ対策も施されているものもあります。大半は基本の利用料金の範囲に含まれるので、運用や保守にかかる費用を削減できる上に、安心してEC運用を行うことができるでしょう。
Shopifyサーバーのセキュリティ対策について解説した記事もありますので合わせてご覧ください。
人的ミスによるコスト負荷を低減させる
実店舗とECサイトを並行で運営していたり、複数のECサイトを運営していたりする場合は、在庫管理などで人的リソースが必要です。ですが、スタッフを増やせば、人件費がかかるためランニングコストが高くなりますし、人の手による管理ならではのミスにより余計なコストを割かれるケースもあります。
そういった場合には、外部連携機能を使って、コストを削減させる方法を検討しても良いでしょう。
1つの手段として、OMS(Order Management System)と呼ばれる注文管理システムがあります。OMSは主に、入金や出荷などの注文状況の確認や、注文の変更・キャンセルなどの管理を行うことができます。さらに、在庫や顧客管理といった機能も有しているのが一般的です。
表計算ソフトなどでこれらの管理をしている場合には、入力ミスなどが起こりやすくなります。ECサイトと連携して自動で注文状況を管理画面に反映できるOMSを活用することで、ミスを削減してコストパフォーマンスの高い管理ができるでしょう。
OMSについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
業務効率化サービスの活用でリソースを低減
業務効率化サービスを活用することで、人的リソースを低減することも可能です。例えば、受注から出荷までの業務を自動化したり、複雑な受注処理を自動化したりできれば、人的リソースは格段に減少するでしょう。結果として、残業代が減少しますし、新しいスタッフを雇用する必要がなくなれば、トータルで人件費が減ります。
ECサイトの改修コストを抑える
構築したECサイトを改修する場合にもコストがかかってきます。特に、初期構築で機能をふんだんに盛り込んだECパッケージやフルスクラッチの場合は、改修時にもその影響範囲から、かなり高額な改修費用がかかる可能性もあります。
そこで、あえて初期構築ではASPカートなどから既存で提供されている範囲でECの立ち上げを行い、改修コストを下げるという方法もあります。
実際、Shopifyのように、ある程度のカスタマイズ性を備えたプラットフォームであれば、ミニマムにECビジネスを開始して、事業の成長に合わせて徐々に機能を足し引きすれば大がかりな改修に至るケースを抑えることができます。
そういったことからも、ECサイトを構築する際には将来的な改修の可能性も踏まえてプラットフォームを選択することが大切です。
ここまでで挙げたこと以外にも、ShopifyでECコストを削減するコツを解説した記事もありますので、合わせてご覧ください。
ランニングコストを抑えるならプラットフォーム選びも重要
ご紹介したように、ECサイトの運営には様々なランニングコストがかかります。ですが、ECサイトの事業規模によっては、本来支払う必要のないランニングコストがあることもご理解いただけたかと思います。
将来を見据えてECサイトを設計し構築するのも重要ですが、まずは着実にECサイトの運営を軌道に乗せることも大切です。それには、事業規模にあったプラットフォームを選ぶことが重要といえます。
初期投資やランニングコストが低く、カスタマイズ性も高いShopifyのEC構築をご検討の際には、Shopify PlusパートナーであるBiNDecにご相談ください。必要な機能の選定から、その先の運用までご提案が可能です。
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